採用力を高める答えは「社内」にある。採用担当者に求められる行動とは

2017.01.17
株式会社モザイクワーク

代表取締役 杉浦 二郎

大学卒業後、証券会社勤務などを経て、2001年に三幸製菓株式会社へ入社。2007年より人事担当となり2015年9月まで人事責任者を務めた後、同年10月より株式会社モザイクワークを設立し、採用プランナーとしても活動中。また、外部アドバイザーとして三幸製菓の2017年の採用にも関与。「カフェテリア採用」「日本一短いES」等々を生み出し、TV、新聞、ビジネス誌等、多くの媒体に取り上げられる。イベントでの講演多数。また、地元新潟において、産学連携キャリアイベントを立ち上げるなど、「地方」をテーマにしたキャリア・就職支援にも取り組んでいる。

ポジショニングが明確になれば、戦略を考えられる
人事・採用担当者が能動的に動ければ、チャンスは多い

わずか10秒で完了する「日本一短いES」や、応募者に合わせたユニークな選考方法を複数用意する「カフェテリア採用」。これらの仕掛け人が、元・三幸製菓人事責任者で、現・株式会社モザイクワーク代表の杉浦二郎氏です。今回、杉浦氏に新たな採用手法を積極的に導入してきた理由や、採用担当者が取り組むべきことについて、お話を伺いました。

後編では、採用プランナーとしても活動し、企業の採用課題に向き合う杉浦氏が考える、採用担当者に求められるアクションにフォーカスします。自社採用力向上を目指すうえで、どんな行動をすべきなのか?ダイレクト・ソーシングは有効な手段なのか?いまの想いを語っていただきました。

ポジショニングが明確になれば、戦略を考えられる

プロフィール画像_杉浦氏

前編でお話しいただきましたが、杉浦さんが前職で「負け組」と感じたように、自社採用力に不安を感じる人事・採用担当者は少なくないと思います。そうした方々が、まず取り組むべきことは何だとお考えですか?

杉浦氏:まずは自社のポジショニングを明確にすることですね。採用マーケットにおいて他社に劣っていると感じるのならば、「負け組」と認めてしまう。現時点である程度採用ができていたとしても、偶然の結果という可能性もあります。何も悲観してくださいと言っているわけでありません。現状を正しく認知できれば、今後の戦略や他社といかに差別化を図るかといった発想が生まれてくると思うからです。

対外的なポジショニングを通して、自社を見つめなおすわけですね。

杉浦氏:現時点で優劣の差がついているのであれば、他社と同じことをしていても、現状以上は望めません。
どの企業も行っている採用手法を使うことや、どの企業も欲しい人を採用しようとするのは、いわばレッドオーシャンです。そこで勝負するのではなく、自社なりの強みを発揮できる採用とは何か?我々が持っている特徴的なリソースは何か?を考え、誰に何を打ち出し、逆に何を打ち出さないのか……一つひとつ検討していけば、各社各様の戦略が見えてくるはずです。採用に関しては、「これが正解」という必勝法はありませんからね。

十社十色の手法を模索すべきだと。

杉浦氏:むしろ、そうならないといけないと考えています。現状、他社と横並びの手法で採用が出来ていたとしても、今後を考えれば人口減少も進む中で、採用力は相対的に落ちていきます。
その時に「採用できない」と嘆いても遅い。現在、私はフリーの採用プランナーとして活動したり、様々な企業の人事担当者のお話を伺う機会がありますが、現在採用がうまくいっていない企業は、遡っていくと数年前から何らかの問題を抱えている傾向があります。とすると、今アクションを起こさなければ、これから数年後に採用が上手くいかなくなる可能性が高い。ですから今、自社にとってベストな採用手法を探る必要があるのです。

人事・採用担当者が能動的に動ければ、チャンスは多い

インタビュー画像_杉浦氏

採用プランナーとして活動していると、新たなアクションを起こしている企業に出会うことも多いのではないでしょうか?

杉浦氏:ちらかというと、意欲はあっても行動はまだ起こせていない企業が大半という印象です。特に採用活動がうまくいっていない企業ほど、採用担当者が能動的に動けていない。だからこそ、今アクションを起こせればチャンスを掴みやすいとも言えます。

企業によっては採用専任ではなく、人事以外の業務と兼任の人事・採用担当者も珍しくありません。そうした方には、新しい手法に挑戦するのはハードルが高いかもしれませんが……。

杉浦氏:実は私も、前職で人事を任された当初は、採用専任ではなかったんです。人事業務全般に加えて、総務も兼務していました。ただ、採用成功を目指すならば、むしろ幅広い業務を経験していた方がいいとも考えています。
例えば給与計算を担当していれば、自社の人事制度や給与の仕組みへの理解が深まります。給与の感覚が深まれば、「このスキルの人材を採用するなら、給与レンジはこの程度」というイメージを持てるようになり、人事制度に精通すれば「採用力を高めるために、こんな制度を導入すべき」という発想も持てます。

自社の制度や給与システムを知ることが、採用力の向上に繋がるわけですね。

杉浦氏:経営や組織作りといった観点まで考えなければ、本質的な採用課題を解決するのは難しいです。ですから、他の業務を兼任している方は、むしろ活かせるスキルと捉えてほしいですね。

手前味噌な質問ですが、「DODA Recruiters」を含めたダイレクト・ソーシングは、採用力を高めたい企業にとって有効な手段の一つになり得るでしょうか?

杉浦氏:中途採用なら、採用候補者のスキルが人材データベースを覗くことで一定可視化できるダイレクト・ソーシングはありだと思います。効率や費用対効果という面で考えても、限られた期間の中でスカウトメールによる直接アプローチに特化した採用手法は使う意味があるでしょう。
ただし、「採用」をゴールにしないよう注意が必要ではないでしょうか。

もう少し詳しく伺えますか?

杉浦氏:ダイレクト・ソーシングによる採用手法は、人事・採用担当者が採用候補者を直接スカウトするわけですから、信頼関係性が重要になりますよね。だからこそ採用候補者の人生に対しても、会社の成長に対しても、責任を持って採用を進める必要があります。
これが仕組みありきになると、「目標の○○名を採用できた」ということがゴールになりかねません。あくまで大事なのは、採用した相手が、自社で価値発揮して活躍し続けられること、そして会社の業績に寄与することです。

「採用して終わり」は避けなければいけないということですね。

杉浦氏:そのためにも人事・採用担当者は、採用ポジションの社員を巻き込んで採用のプランニングをしていくことも大事です。採用した人材が一緒に働くのは、人事ではなく採用ポジションの社員達ですから。これからの人事・採用担当者には、そうした採用全体の構想や戦略作りに注力することが大事になると思います。

まとめ

人事・採用担当者が取るべき行動は、まず「自社の採用市場におけるポジショニングを明確にする」、次に「採用すべき人材像を洗い出す」、そして「新しい手法を積極的に活用する」という順番。

杉浦氏へのインタビューを通して、採用力向上に繋がるアクションが見えてきました。そして「能動的な人事にこそチャンスがある」というヒントもいただきました。採用に、必勝法はない。だからこそ、自社に最適な手法をいち早く見つけることが重要になる。そのスタンスが、これからの時代の採用には求められていくはずです。