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現場の責任者に、求める人物像を確認しても「企画力がある人」「マネジメントの経験がある人」といった漠然とした回答ばかり…。『採用基準が明確にならない』という悩みを持つ人事・採用担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。採用基準の摺合せが曖昧なまま、選考を進めても、現場と意見が噛み合わず、なかなか採用成功には結び付きません。
ここでは採用基準を明確化するために、人事・採用担当者と現場の責任者の間で、擦り合わせておきたいポイントについて解説します。
採用をスタートする段階で、事業責任者や現場から、人事・採用担当者への要望で発生しやすい問題。それは採用したい人材の”求めているスキル”や”任せたい仕事の範囲”など人材要点・基準がまとまっていないこと。採用基準が明確ではない状態で、募集をスタートすると採用成功のハードルが上がり、採用が上手くいかなくなる恐れがあります。
この問題が起こる原因の多くは、現場の責任者が、転職市場・転職マーケットの現状を理解しきれていないことかもしれません。人が欲しいと思っている現場の社員は事業を成長させるために、できるだけ優秀で仕事の守備範囲が広い人材を採用したいと考えているはずです。そのため、例えば”顧客への対応力”があって、”商品やサービスに対する企画力”もあって、加えて”Webプロモーションの知識”もある人材に入社して欲しいなど、たくさんの希望を持っているでしょう。
しかし、転職市場の中で、全ての条件を満たしている人材は稀有な存在である場合がほとんど。また全ての条件を満たしている人材の場合、同業他社や自社と似ているサービスを展開している企業が採用競合となり、採用成功のハードルが非常に高くなります。
そのため人事・採用担当者が、転職市場の“今”を知ることが解決への糸口になります。現場の責任者に対して、「求めている人材を取り巻く環境がこういった状況なので、まずは”顧客への対応力”と “商品やサービスへの企画力”がある人材であれば、採用基準を満たしていると考えてみませんか?」と、求職者の動向や採用難易度を踏まえて、”本当に譲れない部分”と”譲歩できる部分”を明確化でき、採用すべき人材を提案することができる。結果、採用成功の確率を高めることが可能になります。
それでは転職市場の”今”を知るには、どうすればいいのでしょうか?まず日ごろから業界のニュースに目を通したり、人材サービス企業が提供している転職求人倍率レポートをチェックすることで、全体像をつかむことができます。
そして、さらに詳細な情報を得る方法が3つあります。
転職サイトや人材紹介を扱っている企業に情報提供を求めれば、トレンドに沿った具体的な話が聞けます。
例えば「先日も大手IT企業の○○社に、貴社の採用基準を満たしている人材を紹介し、採用されています」であったり、「いま、貴社が求めている採用基準を満たしている人材は、転職市場の中で○○人くらいですね」といった情報です。もっとも第三者から聞いた情報だけでなく、自ら情報収集することで、より転職市場の”今”に対する実感を持てるようになるはずです。そのため次で紹介する、その2・その3の方法を実施することも効果があります。
現在、企業の人事・採用担当者が直接、転職希望者が登録している人材データベースを閲覧できるサービスがいくつか存在しています。そういった人材データベースから、自社の採用基準を満たしている人材が転職市場の中にどれ位いるかを確認できます。例えば、doda Recruitersの場合、転職希望者が登録している「現在の職種、年収、スキル、希望条件、居住地、自己PR」まで確認が可能。今、まさに転職を希望している人材の情報を知ることもできます。
面接で人材に会うだけでなく、求めている採用基準を満たす人たちが、参加していそうな勉強会やセミナーに出向いたり、人脈を構築して会いに行ってみたりといった行動にも大きな価値があります。これらの行動で採用基準を満たしている人たちのリアルな情報を得ることは、現場責任者への情報提供の精度が高まるだけでなく、人材紹介サービス企業とやり取りをする上でも役立つはずです。
転職市場の”今”を知り、それを現場責任者にお伝えすることで、採用基準に対する意識が合致してくると思います。現場責任者からは「そういった転職市場の状況なら、“Webプロモーションの知識”の部分は妥協できる。採用した後で身に着けて貰えるように促していく」といったように、”本当に譲れない部分”と”譲歩できる部分”が、明確化されていくのが理想です。
採用成功させるための採用基準を作る上で、さらに大切なことがあります。それは、現場責任者から随時フィードバックをもらうこと。書類選考だけで人材のスキルや志向性を見極めるのは限界があります。そのため現場責任者からすぐにフィードバックをもらうことで、採用基準をさらに細かく擦り合わせていってください。
フィードバックをもらう上でのポイントは現場責任者から、面接した人材の”良かった部分”と、”物足りなかった部分”をおおよそ5項目ずつ提示してもらうことです。そのために、現場責任者とのコミュニケーション頻度を高めることが効果的です。
人事・採用担当者と現場責任者の間で、採用基準の摺合せができるようになった上で、最後に覚えておきたいポイントがあります。それは最終決裁者である部長や役員との連携です。
部長や役員に対して、採用候補者の最終面接をしていただく前に情報共有をすることで、より採用活動がスムーズに進むケースが多いのです。そのため人事・採用担当者は、転職市場の”今”を伝えることや、採用候補者が転職活動の状況(分かっている範囲で)を、しっかりお伝えしていく必要があります。
また、現場責任者には、次のことを最終決済者である部長や役員に伝えてもらうようにすると効果的です。
■その1.採用候補者を評価している部分
(※評価ポイントを責任者として、どのように受け止め、感じているかも併せて伝えてください)
■その2.採用候補者に入社後、担当してもらう具体的な業務内容
■その3.部長や役員に、面接では○○の部分を見極めてほしいこと
(※○○な部分について具体的に提案してください)
このように、面接で最終ジャッジをするための判断軸を明示していただくことが大切です。判断軸が分かれば、部長や役員も採用候補者を積極的に口説いてくれるはずです。
人事・採用担当者は、現場責任者だけでなく、最終決済者である部長や役員とも、日ごろからコミュニケーションを計り、事業計画を基にした採用計画について意識や情報共有をしておくことが大切です。社内を巻き込んでいくことが採用基準を明確化し、採用成功に結びつく秘訣なのです。
まず、人事・採用担当者は転職市場の”今”を知り、それを事業責任者や現場にきちんと伝えること。その上で、一緒に採用基準の方向性を定め、詳細については様々な採用候補者と面接を重ねる中でフィードバックをもらい明確化していくこと。フィードバックはできるだけ具体的にヒアリングしていくことが大切です。日々の業務の忙しさにかまけず、それを続けていくようにしましょう。
そして、最終決済者である部長や役員に対しても、採用における情報を随時報告することでコミュニケーションを図っていきましょう。社内を巻き込んでいくことが、採用成功につながる鉄則なのです。
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d's JOURNAL編集部
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社会保険労務士法人クラシコ 代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】
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社会保険労務士法人クラシコ 代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】