採用手法のこれからを考える ダイレクト・ソーシング ジャーナル

DODA 中途採用をお考えの方へ

2017.03.30

キーワードは「理論」。採用学の第一人者が考える、科学的知見からの採用力向上の術

PROFILE

横浜国立大学大学院 国際社会科学研究院/経営学部

准教授 服部 泰宏

1980年、神奈川県生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了後、滋賀大学経済学部専任講師、准教授を経験した後、横浜国立大学大学院の准教授に着任。現在に至る。日本企業における組織と人の関わり合いや、日本のビジネス界における知識の普及に関する研究などに従事。2013年以降は、人材の採用に関する科学的アプローチである「採用学」の確立に向けた研究・教育活動に取り組み、「採用学研究所」の代表も兼務。近年の主な著書に「採用学」(新潮選書)がある。

横浜国立大学大学院准教授の服部泰宏先生が提唱する「採用学」。人材業界や人事情報の専門サイトはもちろん、最近では一般の経済誌などでも注目されている新たな研究テーマです。

人口減少、採用活動の複雑化、グローバルマーケットでの競争……。そうした様々な社会変化により、あらゆる企業にとって自社にマッチした人材の採用は今や大きな経営課題の1つです。今回は、この「採用学」にフォーカスし、なぜ今人事・採用担当者に専門知識が必要なのか、採用学は企業の採用力にどのような影響を与えるのかを、服部先生のインタビューから考えていきます。

採用に関する英知を収集・分析して、企業のサポートに活かしたい

インタビュー_服部教授

まずは服部先生が、「採用学」を必要だと考える理由について教えてください。

服部先生:以前から欧米の経営学の講義や、リーダーシップ育成のビジネススクールなどでは、「良いマネジャー・経営者になるために必要な要素とは?」という議論がなされてきました。そこでは大体、3つの要素が不可欠で、それらをバランスよく持ち合わせるべきだとされています。

この3つの要素とは、まず1つ目は「経験」。どんなリーダーにも、職務経験は欠かせません。
2つ目は、“このビジネスは成長しそうだ”と判断できる「直感・勘・ひらめき」といったもの。
そして3つ目が、「理論・科学的な見地」です。
ビジネスや組織作りに関して、“統計・理論的に突き詰めると……”と検討できることが重要であるとされています。

この3つの要素が、「採用」でも必要だとお考えでしょうか?

服部先生:おっしゃるとおりです。「経験」と「直感」に関しては、多くの人事・採用担当者は、キャリアを積む中でいずれ持てるようになるでしょう。2つを備えている上司・先輩の仕事ぶりから吸収する、ということもできるかもしれない。ただ3つ目の「理論」に関しては、企業全体でまだまだ不足している状況です。

たしかに、採用活動の体験談やハウツーは見聞きしますが、体系立った「理論」はあまり馴染みがありません。

服部先生:なぜあの会社は採用に成功し、この会社はうまくいかないのか? 採用データを押しなべて比較・検討すると、統計的にはどうなるのか?
そういったサイエンスの視点であったり論理については、我々のような企業から一歩引いている研究者などが培っていくべきではないかと考えています。特に昨今は、以前に比べて自社にマッチした人材の確保が難しいと悩む企業が、圧倒的に増えています。それにもう一つ、大きな課題として日本の場合、採用サイクルが非常に早い。

新卒採用のスケジュールに合わせて、業務を進める企業は多いようです。

服部先生:その結果、日々の業務に追われるケースは多々ありますし、人事部門の採用担当者は数年間で部署異動というケースが少なく無いですよね。そうなると、採用活動のプロ・専門家が育ちにくい上に、会社の中に専門知識が残っていかない。こうした様々な課題が浮き彫りになり、採用に関する英知を蓄積していく必要性を、企業の人事・採用担当者の方々も実感されるようになってきました。そうしたこともあり、採用学に対する注目度も高まっているのだと思いますね。

企業力だけでなく、人事・採用担当者の知恵と戦略が価値を発揮する時代

インタビューに応える_服部教授

海外では、以前から採用に関する研究は行われてきたのでしょうか?

服部先生:アメリカでは、「採用を科学する」という動きが数十年前から始まっています。そもそも、欧米は中途採用がメインということもあり、ひとりの求職者に対してかける採用費用が日本とは比べ物にならない規模です。さらに、アメリカの場合、訴訟文化が根付いていることも大きい。

訴訟文化、ですか?

服部先生:ええ、日本ではありえないことですが、「なぜ私が落とされたのか?」「この人を採用した理由はなんだ?」と万が一クレームが来た際に、明確に回答できないと訴訟のリスクがあるわけです。また、社内で稟議を通す際にも、具体的な採用可否の理由に関する説明責任が問われます。
そうした時に、エビデンス(証拠・根拠)が欠かせません。そうした社会だからこそ、以前から採用データの検証や科学的分析を行う土壌があったわけです。

採用に関する専門知識を吸収することで、具体的にどのような変化が起こりますか?

服部先生:「自社にマッチする人材を確実に採用できる力」を、”採用力”と定義したとすると、この採用力の向上を目指した様々な施策が検討できるようになると思います。以前の就職市場であれば、大都市の一等地に本社を構えている、自社ビルが非常にラグジュアリーであるといった、人事・採用担当者にはどうしようもできない事柄で採用成果が左右される時代もありました。

企業規模やブランド力などで、採用の勝負が決してしまう時代があったということですね。

服部先生:
ただ最近では、少しずつ学生や求職者の目線も変わってきています。仕事の中身・やりがいはもちろん、採用活動の手法や人事・採用担当者自身の魅力・能力・信頼性も重視する。中途採用であれば的確な評価を得られるかどうかなど、人事・採用担当者そのものの力で決まるケースが増えてきます。
そういう意味では、中小企業や一般的な知名度のない企業も、知恵を絞って採用の勝負ができる余地が生まれたとも考えられますよね。

人事・採用担当者が専門性を高めることが、採用力の向上に繋がるわけですね。

服部先生:実際、アメリカで行われたある中途採用に関する調査結果で、人事・採用担当者に問われる要素として「信頼に足ると評価できること」と「専門家だと感じられること」という2つが上がっています。

信頼感というものは誠実なコミュニケーションによって一定担保ができますが、その上で例えば「転職マーケットや自社に関する知識を持っているな」「採用活動の意図や方法がしっかり考えられているな」「転職者の気持ちが理解できているな」と、採用候補者に実感してもらえるかどうか。こうした人事自身の力というものが、採用成功を目指す上でまず必要な土台になると思います。

取材後記

服部先生のお話によると、欧米では「リクルーター」はひとつの明確な職種となっており、メディアによる“クールな仕事ランキング”でも上位にランクインするほどだそうです。これは、専門性が問われるやりがいある業務であることの、ひとつの証と言えるかもしれません。
一方で国内企業の場合、インタビューにもあった通り採用サイクルが早く、数年単位で異動が発生するケースも多く、採用業務の経験が浅い担当者も多いはず。そこで次回は、「募集」「選考」「面接」と、採用の各フェーズで意識すべき基本的なポイントやアクションについてお話を伺います。

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