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2017年8月の転職求人倍率は2.44倍(doda調べ)。企業の求人数にいたっては、33カ月連続で調査開始以来の最高値を更新しています。景気の好転に伴って企業の求人募集は増加し激化を見せていますが、転職希望者にとっては以前有利な売り手市場となっている状況です。待ちのままでは求める人材が集まらない、集まっても他社に決まってしまうということになりかねないと、難色を見せる企業が増えてきました。その中で、新たな手法として注目され始めたのが、企業自らが積極的に、採用候補者となる人材を採りにいく「ダイレクト・ソーシング」。パーソルキャリアでも、「ダイレクト・ソーシング」の普及に向けて、セミナー企画、情報発信など、日々取り組んでおります。そこで、日本の転職市場においてダイレクト・ソーシングの考え方がどのように変化しているのか、人事・採用担当者からのアンケート結果をもとに分析しました。
1年間で認知度がどのように変化したのか見てみましょう。2016年8月の段階では、ダイレクト・ソーシングのことを知っている人が72.7%であったのに対し、2017年8月では87.3%となり、約1.2倍の増加率となりました。1年の間に人事・採用担当者内でのダイレクト・ソーシングに対する認知度は着実に上がっているようです。
ただし、『知っている』と回答した人の中には、『ダイレクト・ソーシング自体は認知しているが、詳しい内容は分からない』、『既存の採用手法で十分なのでまだ導入していない』という人事・企業採用担当者も見受けられており、日本の採用市場ではこれから発展していくサービスであると考えられるでしょう。
次に、ダイレクト・ソーシングサービスを利用している企業を対象に、「導入の背景」および、「利用するに当たってのメリット・デメリット」を伺いました。
まず、導入に至った理由について伺いました。その結果、『自社にマッチする人材獲得・母集団形成に課題を感じたため』と回答した人が合計51%にもおよび、何かしら次の採用手法に挑戦してみようと導入し始めた企業が多いことが分かりました。一方、ポジティブな理由として、『採用候補者となる人材に直接アプローチでき、新しい母集団を形成できる』と回答した人も、24.7%と大きな割合を占めていました。ダイレクト・ソーシングならではの“第三者を介さず直接自分たちでアプローチ・コンタクトが取れる”ことに魅力を感じて導入を開始した企業も増えていることがわかりました。
次に、利用してみて「どのような点を魅力に感じているのか」について質問しました。その結果、『優秀な人材が採用できる』と回答した人が36.5%と大多数を占め第1位に。次点で『採用単価の削減(33.6%)』、『採用までのスピードが短縮(15.6%)』と続きました。「ピンポイントにアプローチをすることができる」というダイレクト・ソーシングの印象の通り、あまり市場に表れることがないハイスキル人材/カルチャーマッチした人材を集める手段として適している手法であると言えるでしょう。企業自ら候補となる人材を探し出すため、マッチング度合いも高く、採用満足度が高くなっていると推察されます。また、第三者を介さないことから、費用も抑えられ選考スピードも早くなっているようです。転職データベースに現れづらいニッチな人材を採用したい、短期間で採用しなければならない…など、企業ニーズにあわせて活用している企業も多いのではないでしょうか。
海外では一般化されているダイレクト・ソーシングですが、日本においてはまだ新しい採用手法とでありノウハウやナレッジは一般化されていません。だからこそ、その企業にあった採用スタイルを構築することができるのだと言えます。
導入・運用時の課題では、企業自らがデータベースを検索し、スカウトメール文面を作成するために『工数がかかる』と回答した人が全体の61.8%と過半数を超える結果となりました。内訳を見ると、一番工数がかかる部分は、『求職者検索(23.2%)』で、次に『スカウト文面作成(21.9%)』『求人票・募集概要作成(10.8%)』と続きます。広く網をかけて、応募来た人を精査(書類選考)するという方法ではなく、「入社して欲しい」と思った人に直接声をかけるという方法であるため、今まで第三者に委ねていた、1人1人の情報を読み込み、「自社が求める人材なのか?」「自社と合うのか?」と判断し、アプローチをする作業に時間がかかってしまっている模様です。次に多かったのはスカウト文面にかかる工数ですが、『求職者に響くスカウト文面が分からない』と回答する人も16.5%と多いのも特徴でしょう。懸命に探し出した候補者に対する自社の魅力となるポイントの洗い出し、および、それをどのように表現するのか、に頭を抱えている企業が多いことが推測されます。
「(他手法に比べ)応募が集まりづらい」と考えている人は少ないものの、自分で対応する分、かかってしまう工数をどのように削減すればよいのか、どのように生産性を上げていけばよいのか、今後の課題となってくるのではないでしょうか。
求人倍率は上昇し続け採用活動が活発になる中で、待てば人材が集まるのではなく“攻めの採用”を自ら行っていかなければならない人事・採用担当者。「どのような人材を、どのように自社の魅力を伝えて、集めてくるのか」という母集団形成のフェーズに力を入れていく必要がある中、以前と比べて、ダイレクト・ソーシングは広く認知されるようになり、活用する企業も増加しているようです。
使ってみると求めるハイスキル人材の獲得という目的達成はもちろんのこと、結果採用スピードが早まり、採用にかける費用も抑えられているという結果になっているようです。しかし、一方で工数がかかっていると感じる企業が多いのも事実です。ダイレクト・ソーシングだけを使うのではなく、さまざまなサービスを組み合わせながら、自社にあった採用手法を見つけていくと良いのではないでしょうか。
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d's JOURNAL編集部
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社会保険労務士法人クラシコ 代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】
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社会保険労務士法人クラシコ 代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】