採用手法のこれからを考える ダイレクト・ソーシング ジャーナル

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「東京が選ばれなくなる時代」を前にファーストリテイリング渡瀬氏が巡らせる想いとは

PROFILE

株式会社ファーストリテイリング

キャリア採用チーム
渡瀬 雄平

京都大学文学部卒業後、株式会社インテリジェンス(現 パーソルキャリア株式会社)に入社。約6年間キャリアコンサルタント業務に従事した後、事業企画部門へ異動し、人材紹介事業のサービス戦略策定・戦術推進を2年間担当。2015年、ファーストリテイリングへ転職し、IT、物流、経営企画・事業監査、法務など多岐にわたる本部系職種の採用を手がけるほか、本部要員計画の立案・推進およびHRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)も担当。現在はキャリア採用専任となり、チーム全体のKPI管理、ダイレクト・ソーシング推進のための企画推進にも携わる。

2017年3月、製造小売業から情報製造小売業(DIGITAL CONSUMER RETAIL COMPANY)への変革を宣言した株式会社ファーストリテイリング。グローバル企業として名実ともに世界トップ企業を目指す同社で本部系職種のキャリア採用を統括しているのがキャリア採用チームの渡瀬さんです。
前編では、現在の同社におけるキャリア採用の変化、それに伴う課題、ダイレクト・ソーシング(ダイレクトリクルーティング)に関する独自の施策・取り組みについてお伺いしました。記事後編では、ダイレクト・ソーシング以外に注力している採用手法や今後の採用プロセス変革、第2の課題として挙げられていた「日本や東京という場所が魅力的な勤務地ではなくなっている」という問題に対する想い、2017年2月に立ち上げられた有明オフィスの環境などについてお聞きしました。

正攻法の練度を上げると同時に、採用プロセスのイノベーションも見据えていく

正攻法の練度を上げると同時に、採用プロセスのイノベーションも見据えていく

ダイレクト・ソーシングの他に、採用に関して取り組まれている特別な施策などはありますか?

渡瀬氏:正攻法の施策の練度・研磨の度合いを上げていくという考え方ですね。採用に飛び道具はない。やっていることは極めてシンプルですが、力を入れているのはエンジニアの方を対象とした、勉強会とミートアップイベントです。

ミートアップといえば、柳井社長とソフトバンクの孫正義氏によるキャリアフォーラムなども開催されていましたね。御社の勉強会とミートアップイベントに関して詳しく教えてください。

渡瀬氏:はい。ただキャリアフォーラムはあくまでも、現在転職活動中の方はもちろん、これから転職を考えるであろう候補となる方に向けての、“ファーストリテイリングはこんな採用をやっていきます”というアナウンスに近いイベントでした。

勉強会に関しては当社のエンジニアが技術に関するTIPSを説明するようなものが多いですね。こちらはほぼ採用色を出さずに行っており、1回の参加者は100〜200名になります。一方のミートアップに関してはもっと小規模で密にコミュニケーションできる場にしています。1回の参加者が10〜15人。そこに当社の社員が5、6名加わり、参加者と社員の比率が2:1程度になるように設定しています。当社のカフェテリアで朝食とコーヒーを出して、ライトな雰囲気でやっていますね。さまざまな職種で開催していますが、特に採用に力を入れているエンジニア系は多いときだと毎週のようにやっています。

その人数のミートアップであれば一人ひとりが腹を割って話せそうですね。

渡瀬氏:人数を絞っているので参加者の年齢や職種といった属性を見ながら、どんな社員に出てもらうかを考えることができます。イベント終了後、「どんな人がいたのか、その人のどこが良かったのか、どんな話をしたのか」ということを社員にヒアリングします。その後、「ミートアップであなたと話していた社員Aが、あなたのこんな部分に興味を持っていて、もっと話がしたいと言っています。すぐに応募ということではなく、ランチなどでお時間をいただけますか?」というサンクスメールをすぐに送るとかなりの確率で返信がきます。ミートアップは決して派手な施策ではありませんが、磨けば磨くほど成果が上がることを実感できるので、今後も続けていこうと考えています。

前職ではプロセスイノベーションなどにも携わっていたとお聞きしています。前編でお伺いしたダイレクト・ソーシング以外の部分で採用のフローを変えていく構想などはありますか?

渡瀬氏:将来的な話になりますが、個人的には人材に関する採用時のデータと入社以降のデータをつなぎ合わせ、採用活動に活かしたい思いはあります。採用の効果検証というと、採用活動時の歩留まりやコスト、狙ったグレードの人材が採用できたかどうかという程度の検証しかできていない会社がほとんどです。入社後のデータまで参照して「その人は本来採るべき人だったのか」というフィードバックが得られ、当社で活躍する人材像に関してある程度定量的な指標が把握できれば、面接でのヒアリング方法やスクリーニングなど、採用時のプロセスに活かすことができます。

入社後のデータで「本当に活躍する人材像」が分かると、採用の現場ではどのような変化が起こるのでしょうか?

渡瀬氏:面接で誰が何を聞かなければならないか、どんな聞き方をしなければならないか、ということも分かるでしょうし、その質問に対してどんな答えが返ってくるとベストなのかということも分かるかもしれません。逆に「この面接官が高評価した人材はだいたい活躍していません」というデータが出れば、「この人に評価させたらマズいよね」ということが起こる可能性もあります。採用活動の効率化というよりは、採用する人材の質の向上という観点の話になりますが、今後は入社後のデータを採用活動につなぎ込むことで、そうした世界をつくっていかなければならないと感じています。

「働く場所」としての日本・東京の魅力が下がっていく中で取り組むべき課題

「働く場所」としての日本・東京の魅力が下がっていく中で取り組むべき課題

前編で伺ったもう1つの課題である「日本や東京という場所がトップタレントにとって魅力的な勤務地ではなくなっている」ということについて、御社として考えていることはあるのでしょうか?

渡瀬氏:日本の労働市場の問題も絡んでいるので、一企業にできることは非常に少ないと思います。とはいえ「働く場所」としての日本・東京の魅力が下がっていく中でも、相対的に当社自身の魅力を高めていくことは必要です。当社を含む日本・東京の企業が他国・地域の大企業に劣っているのは、報酬、就業時間も含めた労務環境、フレキシビリティ、言語などが考えられます。

そうした日本企業特有の問題を改善することで、グローバル人材から選ばれる会社を目指すということですね。

渡瀬氏:最初にお話しした「チェンジエージェントたる汎用的なスキルセットが極めて高い人」を採用するためには、高額な報酬提示が必要になるケースもあります。もちろん、そうしたケースに対しては現行の報酬制度を守りつつ、その範囲である程度フレキシブルに対応しているのですが、現行の報酬制度そのものを見直していくことも人事部としては継続的に検討しています。

あとは言語ですね。日本語は特殊な言語ですし、外国人が学ぶには敷居が高い。社内でも一定のグレード以上になるにはTOEIC(R)テストの証票提出が必要です。とはいえ社内を見回すとまだまだ英語が十分にできない人もいます。こうした部分は引き続き改善を重ねていく必要があるでしょうね。

このように、採用という視点でも当社の働く場の見直しや制度改革は常に行われています。現在の採用競合は、日本国内企業ではなく、海外のグローバル企業たち。優秀な人材に「うちで働いてもらうために」どうしたらいいのか、採用・選考プロセスだけではなく、場としても考えていくことが、人事のミッションだと思っています。

渡瀬さんはファーストリテイリングでどのように勤務されているのでしょうか?

渡瀬氏:子供を保育園に迎えに行く時間が17時ですので、毎日16:15にはオフィスを出るようにしています。私の定時は7:00〜16:00ですので、残業は実質的にはほとんどできません。フレキシビリティに関してはまだまだ改善の余地はありますが、在宅勤務制度やチャイルドケアリーブ(子の看護休暇)もありますし、従業員の柔軟な働き方をサポートする制度の導入に関しては会社としても比較的前向きだと感じます。

「東京で働く」を先導するために。有明オフィスを開設

「東京で働く」を先導するために。有明オフィスを開設

2017年2月、六本木オフィスで働く2000人の社員のうち1000人が有明の新オフィス「UNIQLO CITY TOKYO」へ異動されたと聞いています。有明オフィスの特徴について教えてください。

渡瀬氏:非常にクリエイティブなオフィスであり、当社の働き方改革の一端を担っています。もともとは、アパレルの製造小売業から、情報製造小売業(DIGITAL CONSUMER RETAIL COMPANY)へ変革していくために有明オフィスが設立されました。MDやデザイナー、マーケティング、商品計画、ITなど商品カテゴリーごとにチームを組んで働ける環境です。ほとんどの会議室がガラス張りなので、誰がどこで仕事をしているのか分かりやすいという特徴もあり、役員と仕事をする社員にとっては非常に便利です。至急の要件であれば会議室に突っ込んでいって、「ちょっと一瞬だけ時間ください!」と決裁をもらうこともできますからね。

また、有明オフィスにはカフェスペースや最大で2万5000冊が所蔵できる図書館など、従業員の創造力をかき立てることを第一に考え設計されています。

私たちは服を作っている会社なので、本当に上質なもの、インスピレーションを掻き立てられるものが近くにあることは重要です。それは商品を作っている人たちだけでなく、採用においても同じだと思いますね。人事はクリエイティブな仕事だと思っています。クリエイティブに発想して物事を組み替え、作り変えていく…それができる環境は働く上で非常に大事です。すごく感覚的な話ですが。

有明オフィスができたことで、ファーストリテイリングの採用に何か影響はあるのでしょうか。

渡瀬氏:直接的には難しいですが、先ほどもお伝えした「東京で働くことを選択肢に入れてほしい」に、つながっていくと思っています。今後、優秀な人材が働く場として選ぶポイントになるのは、グローバルな環境や多様でクリエイティブな働き方だと感じます。「東京で働くことってこんなに素晴らしいことなんだ」ということを私たち従業員自らが体現できるようになれば、当社にジョインしてくれる方がさらに増えていくでしょう。また、従業員満足につながることでリファラル採用を強化していく一助にもなると思っています。

最後に、渡瀬さんが考える御社の目指すべき人事組織や採用の理想像について教えてください。

渡瀬氏:会社としての理想的なあり方というのは、当社のビジネスリーダーたちがさまざまな局面で議論しているところですが、私個人としては、これからも人々の生活を少しずつ豊かにできる商品を作り続け、選ばれる会社でありたいと思います。
人事としては、リクルーターが頑張らなくても人を採用できる状態、選ばれる会社を目指したいですね。採用イベントもそうですし、有明などに代表される働き方の見直しや制度改革もその一環だと思っています。つまり、私たち自身が当社の価値を磨き続けていかなくてはなりませんし、対外的にも周知していく必要があります。現段階では、採用活動を通して素晴らしい人たちを採用し、その方々と一緒によりよい会社を作っていきたいと考えています。

【取材後期】

喫緊の課題だけでなく、将来的に訪れることが予測されるスケールの大きな問題に対しても、さまざまな打ち手、壮大な想いを巡らせている渡瀬さんのお話を伺い、成長著しいグローバル企業が考える「人事の未来」が見えてくる思いがしました。また、会社や事業の成長に対して、人事部門が与えられるインパクトの大きさについても改めて認識できたのではないでしょうか。「生活を少しずつ豊かに」していただいているユーザーの1人として、日本を代表する企業となった今でも一切手を抜かずに改革を推し進める、同社のさらなる躍進に期待が膨らみます。

(取材・文/佐藤 直己、撮影/加藤 武俊、編集/齋藤 裕美子)

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