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日本で独自の進化を遂げるHR Tech。グローバルとは異なるトレンドに

PROFILE

PERSOL INNOVATION FUND

代表パートナー
加藤 丈幸

一橋大学商学部卒業後、1998年インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。人材紹介事業、転職メディア事業、人材派遣事業、アウトソーシング事業の事業企画部門のマネジメントと、6つのビジネスの立ち上げを経験。現在はパーソルグループのオープンイノベーション推進を担当している。

人事の世界的な潮流になっているHR Tech(HRテック)。コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)「PERSOL INNOVATION FUND」の代表パートナーを務める加藤丈幸氏は、2017年に一気にHR Techの波が日本に押し寄せたと分析しています。2018年もHR Techがますます浸透していくことが予想される中、どのようなポイントを押さえておけばよいのか。今回は今後のHR Techトレンドについてご紹介します。

HR Techはいかにして広まったか ―海外と日本の違い―

HR Techはいかにして広まったか ―海外と日本の違い―
グローバルにおけるHR Techの動きは、まず2012年に起こりました。この年に人事関連のクラウドにおいて代表格だったWorkday上場やTaleoの買収があり、その後数年、人事領域のシステムやタレントマネジメントシステムのクラウド化の流れが生まれました。個人のプロフィールや入社後のキャリア、評価、育成など、これまでバラバラに存在していた人事関連のデータが一元管理されるようになったのです。

こうした流れを踏まえ、2014~2015年にかけて、注目が集まってきたのが、社員の行動データを収集・分析する「ピープルアナリティクス」。これは、Googleの人事がいかにデータ活用しているか、分析しているかを例示する『How Google Works』 が出版されたことが大きく影響していると思われます。最適な面接の回数、生産性や満足度を高めるにはどうすべきかなど、さまざまな人事施策がデータに基づいて行われていたのです。この後、ピープルアナリティクス関連のサービスが数多くリリースされました。

またほぼ同時期ですが、世界的に人材不足の問題が取りざたされるようになります。社員の離職をいかに減らすかが大きなテーマとなり、社員の企業への愛着を醸成するエンゲージメントに、どの企業も着目する流れができました。

世界的にはこのように段階的にHR Techが定着していったのですが、日本には2017年にこの「クラウド化」「ピープルアナリティクス」「エンゲージメント」3つのうねりが一度に押し寄せました。その意味で、昨年は日本にとってのHR Tech元年だったのです。

HR Tech2大トレンド「ピープルアナリティクス」と「エンゲージメント」

HR Tech2大トレンド「ピープルアナリティクス」と「エンゲージメント」
あらゆる人事情報をデータ化し、分析するというピープルアナリティクスの流行は人事に必要なスキルにも変化を及ぼしています。人事にデータサイエンティストを配置する企業が増えてきているのです。2018年1月現在、「LinkedIn」でPeople Analyticsと検索すると30万人以上がヒットするほどに。今後、日本においても、「ピープルアナリティクス」に関わる職種が増えてくるかもしれませんね。

また、社員の会社に対する「愛着」や「思い入れ」を意味するエンゲージメントは、HR Techでもっとも注目されている領域です。人事の予算消化の70~80%は採用費と言われる中、従業員エンゲージメントは定着率という点に大きな貢献を果たします。合わせて近年、リファラルでの採用が促進される傾向にありますが、リファラルとエンゲージメントは一体と言えます。というのも、自社への愛着がなくては、リファラルが進まないからです。エンゲージメントは見えにくいものなので、従業員のコンディションを可視化するサーベイ型クラウドを取り入れる企業が非常に増えています。

日本におけるHR Techとは。グローバルとは異なる動きを見せると予測

日本のおけるHR Tech、グローバルとは異なる動きを見せると予測
では、グローバルの流れが日本にそのまま起こるかというと、そうはならないと予測しています。その理由の一つは、海外と日本における一人あたりの転職回数の違いです。転職が当たり前の海外において、HR Techはどちらかというと、いかにリクルーターの工数を減らすかという点で用いられることが多い。求職者数も採用数も日本とは比べものにならないほど多いため、1企業当たりに所属するリクルーターの数も多く、リクルーターの効率が採用数に影響してくるのでしょう。

またグローバルで昨年末から盛り上がりを見せているのが、採用プロセスのオートメーション化です。面接動画をデータ化し、AIによるスクリーニングを行うサービスや、チャットボットで求職者とコミュニケーションをするサービス。ビジネスSNS「LinkedIn」をはじめ、様々な求職者データベースから、自社にマッチした人材を自動ピックアップするサービスなど、いろいろなモノが出てきています。

一方、国内ではリクルーターの工数を削減するというよりは、求職者の意向を高めるところでHR Techが力を発揮するでしょう。日本の場合、求職者の母数がそもそも少ないため、海外のように求職者の絞り込みなどを強化すると、対象者がどんどん少なくなってしまう。であれば、対象者となりそうな人や転職潜在層に、いかに興味を持ってもらえるかを効率化したり科学していくほうが採用につながりやすい。

例えば、面接や面談でどのような質問をすれば候補者の転職意欲が高められるか、自社の魅力を伝えるには何を言うのがもっとも良いか、というところで使われているのです。日本の求職者は転職経験が少ないこともあり、自分自身でも何をやりたいのか明確にわかっていないことが多い。そのため、企業側の工夫によって、面接や面談の中で自社への意向を高めやすいという側面も影響しているでしょう。

日本でもソフトバンクやセプテーニといったいくつかの先進的企業が、AIによるスクリーニングに取り組んでいますが、これは結局のところ、人事が候補者と対面で接する時間を増やすために導入しているもの。こうしたHR Techの発展は日本独自の特徴です。

また、ピープルアナリティクスについて、日本で本格的に広がりを見せるのはまだ先のことになるでしょう。というのも、HR Techの3つのうねりが同時に来てしまったため、日本の企業には分析に必要な人事関連データが蓄積されてないことが多いからです。先駆的にデータを集めていた企業もありますので、将来的に採用力や定着率に差がつく結果となるかもしれません。

重要なことはツールの導入ではない。まずは課題の特定を

重要なことはツールの導入ではない。まずは課題の特定を
世界的には、人事領域を最適化するテクノロジーがいくつも出ています。一方、国内では旧態依然のまま人事という業務を進めている場合が少なくありません。ある意味、人事の世界は非常に閉ざされています。まずはこうした状況を打破することが必要です。ただし、やみくもにツールを導入すればいいというわけではありません。まずは自社の人事や採用における課題を特定し、その課題を解決するためにどうしたらいいかを考えることから始めましょう。

そのうえで、人事を取り巻く環境がどのように変化しているかを把握し、HR Techを含め新しいものを積極的に取り入れる、使ってみる、または取り入れられる体制を築くことが重要なのです。

もちろん、なかなか予算が取りづらい事情があることも理解しています。しかし、今「働き方改革」の波が押し寄せているので、チャンスとも言えます。働き方を変えるために人事ができることは多くあるはずです。人事を変える大きなチャンスととらえ、積極的に働きかけてみるのはいかがでしょうか。

【取材後記】

HR Techがこれから日本でも広がりを見せることが予想されます。HR Techは人事の業務を効率化し、また、採用や人材配置などで大きな力を発揮します。取り入れない理由はない、とも言えますので、積極的な活用が望ましいはずです。新しいテクノロジーを取り入れるのはなかなか難しいことかもしれませんが、加藤氏が指摘するように「働き方改革」が叫ばれています。HR Techと働き方改革は相性のいい組み合わせです。これを機会に、HR Techの導入を働きかけるのは、非常に有効だと考えられます。

(取材・文/中谷 藤士、撮影/石原 洋平、編集/岩田 巧・齋藤 裕美子)

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