内定者のフォローは何をすべき?具体例と実施する際のポイントを紹介

d's JOURNAL
編集部

採用活動において、内定者のフォローはとても重要な点だといえます。内定者はほかの企業からも複数の内定をもらっている場合があるので、しっかりとフォローを実施していかなければ、内定辞退を招く恐れがあるでしょう。

内定辞退を防ぎ、必要な人材を確保するためには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。この記事では、採用活動における内定者のフォローの必要性や施策を実施するときのポイントなどを詳しく解説します。

内定者フォローとは


内定者フォローとは、内定通知書を送付した段階から入社に至るまでの期間において、内定辞退を防ぐために行う取り組みを指します。企業によってどのような取り組みを行うかはそれぞれですが、まずは内定者フォローの必要性や重視される理由を押さえておきましょう。

内定者フォローの必要性

日本においては労働人口の減少から、労働市場においては業種や職種にもよりますが、売り手市場だといわれています。つまり、求職者の数よりも企業が出している求人数のほうが多い状態であり、採用活動を行っても必要な人材を確保するのは簡単ではない状況です。

また、能力の高い人材ほど競合他社との獲得競争にさらされてしまうでしょう。求職者から魅力のある会社だと感じてもらえなければ、そもそも必要な応募が集まらないことも考えられます。

そして、せっかく獲得した人材も入社前のフォローが適切でなければ、内定辞退を招く恐れがあるので注意が必要です。採用活動を行うときには、内定者のフォローも含めてあらかじめ計画を立てておく必要があります。

内定者フォローが重視される理由

内定者フォローが採用活動において重視されるのは、求職者が必ずしもそのまま入社してくれるとはかぎらないからです。採用担当者は入社するかどうかの最終判断が、求職者側にあるという視点を常に持っておく必要があります。

他社ではなく自社に入社をする意思を固めてもらうために、企業が積極的に内定者フォローを行っていくことが大事です。内定者が抱えやすい入社後の不安の解消に取り組んだり、既存の従業員の協力を得て交流会を開いたりしてみましょう。

主体的に情報発信をしていくことで、内定者が常に自社に対して関心を持ち続ける環境を整えていくことが大切です。

内定者フォローを行う意味


内定者フォローを行う意味を、アンケート結果を交えながら紹介します。

内定者/内定通知者は人間関係を深めたい

内定者・内定通知者は人間関係を深めたい

dodaが20代~40代の転職経験者を対象に行ったアンケートによると、転職後まで最も不安に感じていることとして「人間関係」があがっています。新卒の場合は、初めての社会人生活になるため、上司や先輩社員といった会社での関係性をイメージしづらい可能性もあります。

内定者フォローを通して、同じ不安を分かち合える同期や身近な先輩と事前にコミュニケーションを行うことで、安心感を与えるだけでなく、入社後も早めに職場に馴染むことができるでしょう。

内定者フォローのポイントについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『つらい・なじめない・辞めたい…転職1ヶ月、「新しい職場に馴染む」ためにしたい5つのこと』 )

内定者はスキルやマナーを身に付けたい

新卒採用であれば社会人としてのマナー、中途採用であれば入社後に必要なスキルなど新しい環境に入るうえで最低限の必要となる情報を知ることで、心の準備ができます。内定者フォローのなかにeラーニングやグループワークなどを取り入れて、入社前にマナーやスキルを身に付ける機会を用意できれば、自信にもつながります。

内定者フォローを実施するときのポイント


内定者フォローを行うときには、効果を高めるためにいくつかのポイントを押さえておくことが大事です。特に以下の点について意識を向けてみましょう。

・連絡を取りやすい手段で定期的なコミュニケーションをとる
・内定通知書を工夫する
・自社への理解度を深めてもらう
・さまざまな従業員と接する機会を設ける

それぞれのポイントについて解説します。

連絡を取りやすい手段で定期的なコミュニケーションをとる

内定辞退を防ぐために意識をしておきたい点として、内定者とこまめに連絡を取り続けることが挙げられます。例えば、入社前の段階であっても内定者に課題を与え、レポートをまとめてもらうといった形で、定期的に連絡を取っていくことは可能です。

送られてきたレポートに対して、採用担当者や現場の従業員がコメントを返し、自社に対する理解を深めてもらえるように工夫をしてみましょう。丁寧なコメントを行うなどして、きめ細かなフィードバックを行えば、内定者は親身になって接してもらえていると感じやすくなります。

また、電話やメールといった連絡手段だけでなく、内定者が普段からよく利用している連絡手段に注目してみることも大事です。チャットツールなどを導入してみると、内定者は気軽に質問をしやすくなり、コミュニケーションが活発になることが期待できます。

内定通知書を工夫する

能力の高い内定者であるほど、自社以外の会社からも内定をもらっている可能性があります。そのため、内定通知書を送る際はインパクトのある内容にすることを心がけてみましょう。

形式的な内容では他社の内定通知書のなかに埋もれてしまい、自社への関心が相対的に薄れてしまう恐れがあります。採用担当者だけで作成するのではなく、経営層にも協力をしてもらって、代表者自らが文面を作成してみるのも一つの方法です。

会社の代表者から直接メッセージが添えられた内定通知書であれば、内定者の印象に残りやすくなるでしょう。また、単に書類を送って終わりにするのではなく、内定通知書を送った後に電話でメッセージを伝えることも大切です。

内定通知書について、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『内定通知書とは|書類の役割やメール文例・テンプレを紹介』 )

自社への理解度を深めてもらう

内定辞退を防ぐには、入社前までに自社への関心を高めてもらう必要があります。自社の魅力について内定者が感じられるようになれば、志望度が高くなるでしょう。

志望度を高めてもらうには、積極的に情報開示を行っていくことが大切です。入社をすることでどのようなキャリアプランを描けるのかや、どういった業務に携われるのかなど、内定者の関心が強いと思われる項目の情報を伝えていきましょう。

入社前に自社への理解度を深めてもらうことは、内定辞退を防ぐだけでなく、入社後のミスマッチを防止するのにもつながります。せっかく採用した人材が早期離職となってしまわないように、しっかりと情報を共有していく必要があるといえます。

さまざまな従業員と接する機会を設ける

内定者が入社するまでには一定の期間があるため、入社前の時間をいかに有効活用するかが大事です。入社後の働き方などのイメージを持ってもらうために、経営層や現場の従業員の協力を得ながら、自社のさまざまな人間と接する機会を設けてみましょう。

経営者自身が会社のビジョンを語ったり、現場の従業員からリアルな声を聞いたりするのは、内定者にとって入社をするかどうかの大きな判断材料の一つとなるはずです。内定者が知りたい情報を得られる場をきちんと設けることで、丁寧にフォローをしてもらえている実感を得られるでしょう。

特に配属が予定されている部署の従業員とは、事前に交流する機会を設けておくほうが、働いたときのイメージを持ちやすくなります。入社後に実施する研修やOJT(On the Job Training)などもスムーズに行えるようになるでしょう。

内定者フォローの具体例を紹介


一口に内定者フォローといっても、さまざまな形態があります。おもなものとして、ここでは次の8つの具体例について解説します。

1 内定式
2 内定者懇談会
3 座談会
4 面談
5 内定者研修
6 社内イベント
7 社内報の送付
8 入社準備の支援

①内定式

内々定を出した人に対して、内定を正式に伝える場を内定式といいます。内定式を行うことによって、入社の意思を固めるきっかけとなったり、同期となるほかのメンバーと接する機会になったりするでしょう。

内定通知書を代表者自らが渡したり、役員と話をする機会を設けたりすることで、入社してもらいたいという自社の考えが内定者に伝わりやすくなるはずです。遠方で参加が難しい人のために、オンラインでも内定式に参加できるようにするなどして、参加しやすい環境を整えることも大切です。

②内定者懇談会

内定者懇談会は、内定者を集めてコミュニケーションを図る場として設けられます。入社前に内定者が抱えやすい不安の一つに、「同期とうまく関係を築けるか」といったものが挙げられますが、内定者懇談会に参加してもらうことで、不安を解消するきっかけになるでしょう。

内定者懇談会の形式は企業によって異なりますが、一般的には食事会を兼ねて行われるケースや、宿泊を伴う研修として組まれるケースがあります。また、近年ではオンラインで内定者懇談会を行う企業も見られます。

内定者同士が積極的にコミュニケーションをとれる機会とするだけでなく、自社の事業や働き方などについて理解を深める場にもしてみると効果的です。

③座談会

座談会は若手やベテランの従業員、管理職など幅広い人と内定者が話をするために設ける場です。実際に業務を担っている従業員と交流することで、職場の雰囲気を内定者に伝えることができ、入社後の働き方のイメージを持ってもらいやすくなるでしょう。

ただし、座談会によって逆にネガティブな印象を与えてしまうケースもあるため、既存の従業員の誰に参加してもらうかは事前によく検討しておく必要があります。内定者が気楽に話ができるように、年齢が近い従業員や業務で直接かかわる従業員などを選んでみるほうがよいでしょう。

ざっくばらんに話ができるように、明るく楽しい雰囲気を生み出すことを心がけてみてください。

④面談

多人数が一堂に会して行う内定式や内定者懇談会も大事ですが、一方で個々の内定者と少人数で接する面談の機会を設けることも大切です。内定者といっても性格はさまざまであるため、なかには多人数とのコミュニケーションをとることを苦手としている内定者もいるでしょう。

面談は少人数の形式で行えるので、適切にフォローしやすいといったメリットもあります。また、面談は継続して複数回行うほうが効果的であり、内定者との距離も縮めやすくなります。

採用人数が多ければ面談を行うのに多くの人手が必要になるため、他部署の協力も得ながら実施してみましょう。

⑤内定者研修

内定者研修はいわば新人研修の一環として実施されるものであり、基本的なビジネスマナーや社会人としての心構えなどを身に付けてもらう機会とするケースが多いといえます。内定者を集めて実施されるため、同期との連帯感なども生まれやすいでしょう。

内定者研修を行うときに気をつけておきたい点は、いきなり難しい内容から始めてしまうと内定者のモチベーションが低下する恐れがあることです。簡単にクリアできそうなテーマを設定して、内定者が興味を持ちやすいように工夫してみましょう。

⑥社内イベント

従業員向けの社内イベントなどに参加してもらうと、内定者に対して職場の雰囲気を伝えやすくなるでしょう。業務とは関係がない部分での交流の場となるため、既存の従業員との活発なコミュニケーションが生じやすくなります。

業務だけではない雰囲気を感じ取ってもらうことによって、自社の魅力をより伝えやすくなるはずです。ただし、あくまで社内イベントなので、自由参加とするほうがよいでしょう。

社内イベントへの参加を強制してしまうと、かえってマイナスの印象を与えてしまうので注意が必要です。自主的に参加できる余地を残しておくことが大切です。

⑦社内報の送付

社内報を作成している企業であれば、内定者に送付してみるのも一つの方法です。社内報に目を通してもらうことで、リアルタイムで職場の雰囲気や業務の状況などが伝わるため、自社に対する理解を深めてもらえるようになります。

しかし、単に社内報を資料として送るだけでは、読まれずに終わってしまうことがあるので注意しましょう。内定者の興味・関心が強い内容を選定したうえで送ることが大事です。

⑧入社準備の支援

入社するまでの期間は、自社に対する理解を深めてもらうだけでなく、教育を施す期間としても活用できます。内定者が入社後にスムーズに業務を取り組めるようにサポートしていくことも、内定者フォローとしては重要です。

具体的には、通信教育やeラーニングなどを活用し、継続的に学べる機会を提供してみましょう。ただし、いきなり専門的な内容でプランを組んでしまうと、業務についていけるのか不安になってしまうので注意が必要です。

基本的なビジネスマナーが習得できる内容や、パソコンソフトの使い方を学んでもらえる内容などを学習させてみるとよいでしょう。オンラインで学べる環境を整え、達成度を見える化できる仕組みにしてみると、自主的に学んでもらいやすくなります。

学習を進めてもらうなかで生じた疑問や質問をフォローする体制を整えておくと、継続的に学びやすくなるでしょう。

内定者フォローを行うときの注意点


内定者フォローを行うときは、注意しておきたいポイントがいくつかあります。一方的なアプローチとなってしまわないように、以下の点を意識してみましょう。

・内定者の都合を優先させる
・少人数で参加できるイベントも用意する
・フロントに立つ従業員をきちんと選ぶ

それぞれの注意点について解説します。

内定者の都合を優先させる

内定者のフォローを行うために積極的なアプローチを行っていくことは重要ですが、内定者の都合を優先する観点を見落としてはいけません。特に新卒採用である場合、学生であれば卒業論文の制作やアルバイトなどの予定があり、多忙なスケジュールとなっている学生も珍しくないものです。

そのため、予定を組むときは自社の都合が優先してしまわないように配慮し、内定者ができるだけ参加しやすい予定を組んでみましょう。連絡手段としてチャットツールを用いていれば、日程の調整や内定者の希望などを聞きやすいので、スムーズに連絡が取れる手段を確保しておくことも大切です。

少人数で参加できるイベントも用意する

内定者が入社前に抱える不安や悩みは人それぞれなので、個別にじっくりと話ができる機会を設けてみるとよいでしょう。大勢の人がいる前では質問しづらいことであっても、少人数であれば尋ねやすくなることはあるものです。

参加人数を絞り込んだイベントであれば、個々の内定者が抱える問題や関心事に対応しやすくなり、きめ細かな内定者フォローにつながるでしょう。内定者のリアルな意見や悩みに寄り添うという視点からも、少人数でのイベントを開催する意義は大いにあるといえます。

フロントに立つ従業員をきちんと選ぶ

内定者フォローの一環として、既存の従業員と交流する場を設けることは有益ですが、どの従業員に参加してもらうかは精査する必要があります。内定者からすれば、初めて接する自社の従業員は、よくも悪くも企業のイメージそのものにつながる部分があるからです。

最初に接した従業員の印象があまりよくなければ、入社することへの不安が高まりやすくなります。そのため、内定者の状況を見てフロントに立ってもらう従業員の年齢や所属、担当業務などがマッチしている人材を選んでみることが大切です。

内定者にとってコミュニケーションがとりやすい従業員と接する機会があれば、入社後のイメージが湧きやすくなり、入社の意思を固めてもらうことが期待できます。

まとめ

採用活動を円滑に進めていくには、内定者に対するフォローを丁寧に行っていく必要があります。内定者へのフォローが適切に行われていなければ、内定辞退を招くことになり、採用計画に支障が出てしまうケースがあるので注意が必要です。

内定者フォローの具体的な手法として、内定式や座談会を実施したり、社内報の送付や入社準備の支援をしたりすることが挙げられます。さまざまな方法を組み合わせながら、自社に対する理解を深めてもらい、志望度を高めてもらえるように工夫してみましょう。

また、入社までの期間がそれなりにある場合は、通信教育やeラーニングなどを実施してみるのも効果的です。ビジネスマナーを身に付けてもらったり、業務で使用するパソコンソフトの使い方を学んでもらったりする機会にすることで、入社前の準備をスムーズに進めてもらえる支援を行えます。

最終的に入社するかどうかの判断は内定者が決めるものであるため、内定者の目線に立ってどのようなフォローが必要であるかを検討してみましょう。

(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)

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