カルチャー採用で“びっくり離職”をゼロに――AIが可視化する、採用の選択肢

株式会社ミライセルフ

代表取締役社長 表 孝憲

プロフィール

企業文化と人材の相性を可視化するサービス「mitsucari適性検査」と、求職者に適した情報を届ける求人サービス「mitsucari」。双方を提供する株式会社ミライセルフは、社員や求職者の性格データを人工知能によって分析し、企業文化(カルチャー)を採用基準とすることの有用性を提案しています。

データ分析が可視化するカルチャーとは?そして、カルチャー採用はどんな未来をもたらすのか?同社代表の表孝憲さんに伺いました。

「彼らはなぜ辞めた?」―不透明な離職と採用面接の在り方に疑問を感じた

表さんが採用に課題を感じたきっかけは何だったのでしょうか?

表氏:前職で採用面接官を担当した際、優秀だと評価した方が1年で辞めてしまったのがきっかけです。なぜ辞めてしまったのか?その理由を求めて、自社で活躍する同僚の素質を分析し、採用面接の評価と照らし合わせると、そこには相関がありませんでした。つまり私には、自社で活躍する素質を見抜く力がなかったのです。ではどうしたらよかったのか、良い面接とは一体何なのか…。そんな疑問が生まれました。

「彼らはなぜ辞めた?」―不透明な離職と採用面接の在り方に疑問を感じた

そのご経験の後、退職してカリフォルニアのビジネススクールに留学されたのですね。

表氏:人と組織の関係性について深く学びたいと思ったのです。このスクールの授業で出会った先生の調査が、「mitsucari(mitucari適性検査)」の原点となりました。

性格に関する54問のテストを会社員に解かせ、その解答の平均値と応募者の関係性を分析する。単純な方法なのですが、この結果を活かすことで調査対象である企業の離職率が下がる、勤続年数が伸びるなどの効果が見られました。この方法をカルチャー測定に応用すれば、留学前に感じていたような採用課題の解決にも直結すると確信したのです。

そのほかに、アメリカでは一般的なMBTIテスト(性格をパターン化するテスト)にも影響を受けました。まったく違う専門分野を志しているけれど、このテスト結果では同じ性格傾向を持つ知人同士で集まったところ、とても気が合ったんです。

こうした留学時の経験がアイディアとなって生まれたのが、mitsucariです。

カルチャー採用で離職率ゼロに?個人の集合体としての企業を可視化する

mitsucariはどのようなサービスなのでしょうか?

表氏:社員を対象に性格テストを実施し、カルチャーをデータ化します。同様に求職者のテスト結果も抽出し、人工知能によって算出されたマッチング率を、企業と求職者に提示するのがmitsucari(及びmitsucari適性検査)の内容です。

カルチャーをデータ化する、というのは?

表氏:前提として、私たちは法人を個人の集団と定義しています。したがって、企業カルチャーは個人の傾向の集積と言えるでしょう。極端な話ですが、100人中100人が論理的な社員であれば、その企業は論理的な企業と定義して間違いないですよね。

カルチャーをデータ化する

こうした考えから、一定数以上の人のテスト結果から導き出された傾向を、カルチャーと定義しています。精度の高い結果を出すためには、できる限り多くの社員の協力が必要です。

なるほど、そして求職者がそのカルチャーに合うかどうかが、採用における意思決定の基準になるのですね?

表氏:その前に、何をもって「合う」と定義するかが難しいですね。たとえば、外交的な人と内向的な人は「合う」のか?外交的な人同士は?そもそも外交的・内向的という項目が「合う」「合わない」の判断にどの程度影響を与えているのか……?こうして突き詰めて考えていくと、人の判断は複雑なものです。

mitsucariはこうした「合う」「合わない」のデータを社員の主観によるテストから集めており、どの評価軸が判断の決め手になるのか機械学習を重ねています。そのうえで求職者と企業がどの程度「合う」のかを1〜100%の確率で確認できるのです。この数値をマッチ率と呼んでいます。

マッチ率

カルチャーのマッチ率を活かした採用は、どんな成果を生み出していますか?

表氏:新卒採用の例になりますが、マッチ率50%以下の人は面接に呼ばないというルールをつくったA社は、翌年1年間の新卒離職率が0%になりました。また、B社ではマッチ率の高い人材を優先して選出することで、内定承諾率が20%向上したそうです。これらの成果は企業規模を問いません。1000人以上の企業や、新卒採用を年間50人程度行う企業でも同様の評価があります。

離職者が減れば人材教育の質は向上し、企業全体のスキルや売上が長期的に見て伸びていくことは言うまでもありません。こうした形で企業の売上に貢献できることを、誇らしく思います。

企業全体のスキルや売上

企業にとって、マッチ率が高い人材を採用することが正しいのでしょうか?

表氏:大雑把な言い方をすれば、マッチ率の高い人を集めたほうがうまくいく可能性は高いです。もちろん確率論上の話なので、個々のケースに触れると話は変わります。あえてマッチ率の低い人材を採用するという選択も可能ですし、それが効果を発揮するケースもあると思います。

具体的には?

表氏:たとえば、30人以下のベンチャー企業であれば、スキルの多様性は必要ですが、カルチャーは全員一致していたほうがスピーディな意思決定がしやすいでしょう。一方、3000人以上の企業では1〜2割の価値観が違う人がいることで新しい事業が生まれるかもしれません。

ビジネスモデルについてもこうしたパターンがあります。限定した業界でサービスや商品を展開するならば、その業界への愛で組織がまとまる場合も多く、カルチャーの重要性は低いかもしれません。コスメ業界を変革するといったミッションを掲げている企業が、一つの例になると思います。一方で、メンバー発信の新規事業を次々に取り入れ、多種多様な事業を展開する場合、確たるカルチャーフィットがなければ組織の存続が難しいでしょう。

カルチャーフィット

採用問題解決から組織の最適化まで―データの活用方法は無限大

mitsucariのデータ活用について、今後の展望を教えてください。

表氏:データの掛け合わせを活かし、人事配置面での活用も提案していきたいです。イノベーション人材の発掘ツールにしたり、各人材がどの部署で活躍する可能性が高いか提示したり……。個人の性格と、「部署」や「役職」などの軸を重ねることで生まれる傾向も可視化できれば、企業と個人双方にとって満足な人事配置につながるでしょう。

また、社内コミュニケーションのサポートとしても利用できます。たとえば、マネージャーとスタッフが面談をするとき、伝え方って大切ですよね。同じことを話すとしても、論理的に話すのか、感情をこめて話すのかによって伝わり方はまったく違います。どんな話し方が相手にとって適切かデータから把握することで、マネジメントコストを削減することができます。

AIによるデータ分析は、人事・採用にどのような変化をもたらすのでしょうか?

表氏:第一に、予想外の“びっくり離職”をなくすことができるでしょう。企業が望まない離職の原因は、入社前後の認識のズレと言い換えることができます。この認識について事前に可視化するのがカルチャーであり、合うか合わないかの判断基準となるのがマッチ率です。自分自身の性格や企業のカルチャーを把握して、入社前に合う部分や合わない部分がわかっていれば、より透明な分析と選択ができる。

カルチャーのマッチ率を高めることで、さらにその人材の力を発揮する採用を叶えたい。そのために、今後もカルチャーの可視化の精度を高めることに努めていきたいです。そして、データ解析による答えが、望まない離職をなくす未来につながればと願っています。

今後

採用側だけでなく、求職者側にもたらす影響も教えてください。

表氏:カルチャーの透明化は求職者にとっても有益です。人材不足の昨今、求職者は求職サイトを通じて何千と求人情報を見ることができます。それら全てを見て検討するのは無理ですし、mitsucariを通じて、カルチャーの整合性を基軸とした選択肢の抽出を図れば、適職との出会いも効率化できるでしょう。

もちろん、95%の確率でうまくいかない企業だったとしても、残りの5%を信じて入社することは決して間違いではありません。ただ、適性を知ったうえで選択する権利と手段が、企業にも求職者にもあることを伝えたいですね。

カルチャー採用が普及すると、人事・採用そのものの在り方も変わっていきそうですね。

表氏:mitsucariを実際に導入してくださる企業は、経営者と人事・採用担当者が通貫している企業が多い印象です。視点を変えれば、これはカルチャー採用が、経営者の課題解決に直結していることの裏打ちと言えるかもしれません。

現在の転職市場は、まだスキル採用がメインだと感じます。KPIを定め、100人から10人、1人と選択を絞っていく採用プロセスも一般的でしょう。カルチャー採用という選択肢を増やすことで、こうした転職の常識に対し、新たな可能性を生み出せたらと思っています。

最後に

【取材後記】

大好きだった仕事、一生懸命働いた日々。けれど“何か”が合わなくて退職。そんな経験をした方も多いのではないでしょうか?

今回お話を伺った、テストとデータ分析によって導き出されるカルチャーの存在は、衝撃的なものでした。「蓄積したデータから、求職者の傾向やミレニアル世代の思考などをレポートとしてリリースしていく予定です」と表さん。採用のミスマッチを減らしたいという願いは、研究と発表というアカデミックなアプローチにまで広がりつつあります。

長く働いてくれる可能性の高い人材を採用し、大切に育て、企業もまた育っていく。そんな採用が一般化する未来を願ってやみません。

(取材・文/宿木 雪樹、撮影/黒羽 政士、編集/檜垣 優香(プレスラボ))