「グローバル人事塾」が探る人事像。アフターコロナ時代の新たな課題とは【潜入レポート】

グローバル人事塾

代表理事 樫村 周磨(かしむら しゅうま)

「人事のチカラで世界を変える!」をテーマに、人事・雇用・採用・育成など"人財"に携わるオピニオンリーダーを講師に招き、経営ボードや企業人事向けの勉強会を開催してきた日本最大級の人事コミュニティ。これまでの開催数は120回を超え、延べ7,000人近くが参加。リクルートグループやソフトバンクグループ、楽天、マイクロソフトといった大企業の方々も多く参加する他、企業の人事担当者に限らず、慶應義塾大学や法政大学といった最高学府で学生の就職支援を行う職員やベンチャー企業の経営者など、幅広い業種の方々が参加しています。代表理事の樫村周磨氏(ゼスト株式会社 代表取締役CEO)が投げかける「グローバル化社会の中で、いかにはたらく人全員が生き生きと自尊心を持ちながら、生涯キャリアを築いていける環境を継続的に創れるのか?」という問いに応えたいという人であれば、人事職以外の方でも参加できる開かれた場となっている。

コロナ状況下で経営者や人事責任者が肌で感じた現場のリアル
「生き生きと働ける職場作り」に主体的に関わる人たちのコミュニティ
働く人たちの希望になり得る“人事担当者”の存在

新型コロナウイルスのまん延によって混沌とする今日、運営側と会員メンバーそれぞれが置かれた状況や課題を共有するため、グローバル人事塾としては初めてのオンラインオフ会「人事交流会(0次会)」が開催されました。参加者は34名。通信業界や広告・PR業界、金融、スクール運営、法律事務所や人材会社など多岐にわたる業種の人事担当者の他、講師業を生業としているフリーランスやベンチャー企業の経営者など、多様な属性の顔ぶれが集結し、 “職場の今”について活発な意見交換が行われました。

各社の心臓部、司令塔として日々さまざまな対応を行っている人々の “リアルな声”は、これから起こり得るであろう課題への参考になるのではないでしょうか。今回はその模様をレポートします。

コロナ状況下で経営者や人事責任者が肌で感じた現場のリアル

交流会は主催者が用意した4つのテーマに沿って進行していきます。

《ディスカッションテーマ》
1.直近、自分のまわりはどんな状況になっているか?
2.会社の状況はどう変わると思うか?どんな問題が起こりそうか?
3.アフターコロナ時代の人事に求められるミッションとは?
4.今後どのようなコミュニティにしていきたいか?

テーマ1. 直近、自分のまわりはどんな状況になっているか?

4月16日、特別措置法に基づく緊急事態宣言(※取材時点では緊急事態宣言解除前)が発令され、多くの企業が休業やリモートワークへの対応を求められる中、各企業の業務はどのような状況になっているのでしょう。コロナ禍の現状を語る多くのコメントから、いくつか共通の課題が見えてきました。

新入社員への対応

某システム会社:会社は原則全員リモートワークですが、管理部門の一部(人事・情報システム)だけはほぼ出勤。新入社員研修はオンラインと並行して、少人数ずつの出社で研修を行っている。

某人材会社:入社式や研修はすべてオンライン上で実施。4月1日の中途入社の方へも、オンボーディングプランを色々変更し対応しています。歓迎会はオンラインで実施しました。

某研修会社:4月は新人研修の仕事がほとんどですが、オンライン化、延期、中止と会社によって対応方法が分かれました。大手はオンライン化へシフトできましたが、中小はなかなか難しいですね。

某人材育成会社:4月1日入社はオンライン上で受け入れできた。しかし会社は全国で休業。新卒の配属先に困っている。

某人材会社:新卒は4月6日から人事担当。押し通す形でオンライン研修になりました。しかしテレアポの研修はオンライン上ではなかなか難しい。

某人材会社B:自社開発のチャットツール上で専用のトークルームを作成し、いつでも気軽に声をかけられるようにしています。チャットから音声に切替えられる仕様で、できるだけ声でコミュニケーションを取るようにしています。

新入社員の受け入れ時期にあたり、多くの企業が対応に苦慮されていました。しかし研修や入社後のサポートなど、オンライン対応へシフトすることで解決を図る企業が多いようです。今後はさらに幅広い業務でオンラインへの対応が求められることが予想されます。今回の”新入社員受け入れの対応”も、一つの経験値として対応を振り返りつつ、今後もさまざまな業務のオンライン化への推進が必要となると思われます。

会社、事業の動向

某採用代行:求人広告業界は3~4割ほどの仕事が減っている感触。飲食業向け採用専門は廃業業者も出ている。

某人材育成会社:会社は全国休業し、法人営業はオンラインへ切り替え。採用計画もストップしました。

某人材会社:デリバリー系、建築、通販、介護は人手が足りない状況だが、他の業界は軒並み業績が下落し、求人数も減少している認識。ただ、地方は活性化している。法人営業は大ダメージ…。

某証券会社:営業職はリモート環境だと仕事がやりづらい。新しい営業職の採用もオンラインでは難しそう。

某研修会社:リアルからオンラインのウェビナーに舵を切り替えた。ウェビナーのコンテンツ開発が今後大切になってくる。

所属不明:訪問営業からオンライン営業へ。今をどう乗り越えてオンライン化にシフトしていくかを共有する勉強会に参加し、情報収集をしている。

やはり各社とも新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、今後の業績が見通せないとのコメントが多く見受けられました。またあわせて、企業活動の先陣となる「営業部門」への課題と不安の声が非常に多く、新しいビジネス接点の在り方は、緊急の課題となることが予想されます。新たな営業フローの構築に向けてのサポートが必要になるであろう人事・労務の方々にとっても大きな課題となることでしょう。

コロナ状況下で経営者や人事責任者が肌で感じた現場のリアル※画像は過去に開催された際の写真になります。

テーマ2. 会社の状況はどう変わると思うか?どんな問題が起こりそうか?

先行き不透明な状況の中、企業はどう変わりどんな課題が起こり得るのか。「業績への影響は深刻」など現実へのシビアなコメントと合わせて、大きな変革に挑む前向きな声が多く挙がりました。

某研修会社:オンライン化が進むからこそ価値が高まる対面研修も出てくるはずと考えている。

某人材会社:採用はほぼオンライン化に向けてシフトするだろう。効率化は進み、仕事のフローは大きく変わる。

某広告代理店:オンライン上での連携を前提とした組織改編が進むのではないか。

某出版社:リアルとオンラインが融合した新しい職種が生まれそう。

某人材会社:営業フローをはじめとした既存業務フローの淘汰が進み、これまでとは抜本的に変わると思う。

所属不明:オンライン営業・商談を進めようかと考えている。メリットもあるが、課題もある。勉強していく必要がある。

某保険会社:保険業界は模索中。セキュリティやコンプライアンスに関わるので簡単にオンライン化できないところがある。

某人材会社:対面じゃないといけないという概念がいい意味で薄れた。リモートワークに対応できるツールが大事になってくる。ツールが充実しオンライン面接が普及することによって、地方が活性化するではないか。

業種毎の状況に違いはあるにせよ、共通のキーワードとしてオンライン化への「対応力」とのコメントが多く見受けられました。単に会議をオンライン化するだけではなく、営業や採用、人事評価など、幅広い業務でオンライン化への対応が必要になると思われます。大きな変化によりさまざまな方面での淘汰も進むことが見込まれる中、アフターコロナ時代を見据えた新しいワークスタイルへのシフトに向けてアンテナを張った情報収集は、今後さらに重要になることでしょう。

コロナ状況下で経営者や人事責任者が肌で感じた現場のリアル※画像は過去に開催された際の写真になります。

「生き生きと働ける職場作り」に主体的に関わる人たちのコミュニティ

テーマ3. アフターコロナ時代の人事に求められるミッションとは?

リーマンショック、世界大恐慌を上回る未曾有の不況が予測される状況で、“会社や社員へのサポートを行いつつ、いかにしてこの苦難を乗り越えるか”という課題に、もっとも熱を帯びたのがこのパートです。今回の大変革を前向きに捉え、どのように変化へ対応していくべきか、アフターコロナ時代の人事として今できることを模索する、活発な意見が交わされました。

某研修会社:これまで暗黙知だったものを明文化、数値化することが求められる。属人的な評価、コミュニケーションがAIなどによって働く人みんなの知見となる。

某人材会社:スキルや成果の可視化が行われ、圧倒的な成果主義の世の中がやってくる。

某証券会社:大きな転換期を迎え、当面は組織にとって人事・労務職が担う役割の重要性は益々高まってくる。これからも変化の動向に敏感であるべき。

所属不明:どのような状況にせよ、「人事とは経営に資すること」を大事にしている。仕組みも含めて、いかに変化に対応できるか。難しい課題も多いが、枠に収まらない柔軟な思考が大事。

某人材会社:キーワードは”役割創造”。「変えること」や「止めること」だけではなく、変化への対応にハードルのあるミドルシニアや、子育てとの両立が必要な社員の方向けに新たな役割をいかに創るかことができるかが重要。

某人材会社:市場ニーズが大きく変化し、働き手が自身の市場価値を再確認したくなる時、これからも個人が最大限に輝けるようサポートしていきたい。

所属不明:自分で考えて仕事を作りだせる人を育てていきたい。それにより会社全体の売上を上げていけるのではないかと考えている。

グループ内まとめ意見:事業を存続させるために会社の軸となり働きやすい環境を作っていく。

人材は会社の重要な資産と改めて捉えつつ、先行きの不透明な中でも会社の中心として組織を支え、この苦難を乗り越えようとする人事の方々の想いが伝わるパートでした。4月の緊急事態宣言が発令されてからまだ日は浅く、リモートワークの定着化や、オンラインでの人事評価の在り方も、さらなる変化へ向けての序章なのかもしれません。今後もさまざまな課題が起こる中で、業務の見直しや組織の再編なども必要となってくるでしょう。多くの方が“人事が会社の軸となって”と言われるように、アフターコロナ時代への対応に人事部門の存在はますます重要になってきています。

働く人たちの希望になり得る“人事担当者”の存在

先行きが見通せない状況では、すばやく情報をキャッチアップして変化に対応していくことが必要となってきます。「グローバル人事塾」のような多業種・多企業間での情報交換や勉強会を行うコミュニティは、益々重要な存在となってくるでしょう。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、初の「オンライン開催」となった交流会での最後のテーマは、アフターコロナ時代に向け、さらに有意義な情報交換の場となるよう、今後の活動についての前向きな意見交換が行われました。

テーマ4. 今後どのようなコミュニティにしていきたいか?

某人材会社:これから「分からないこと」が多くなる。人事塾には人事・経営者・講師などプラットフォームの土台を作ることができる色々な人が参加している。これから起こる「分からないこと」への解決策を共に発見できるような会だといい。

某人材会社:今後「リモートワーク」への切替えは必須です。ここを起点としたさまざまな施策をスピーディに行っていかなければいけないので、成功事例などの共有・意見交換ができる場としてもっと活性化していきたい。

所属不明:この場で出てきた知見をまとめ、各社のリモートワーク環境下でのメンタル対策、生産性向上につなげる取り組みを共有できればより良い。

某法律事務所:ここで議論するだけではなく、何か具体的な成果物やビジネスを作り、意見を発信したい。

某研修講師:貪欲に情報を求め合うメンバーが集うコミュニティだからこそ、先々の課題解決に向けた情報交換の場としてさらに活性化していってほしい。

働く人たちの希望になり得る“主体的な人事担当者”の存在※画像は過去に開催された際の写真になります。

これまで当たり前とされてきたさまざまな物事が、新型コロナウイルス感染症拡大の余波を受け、大きく変わりつつあります。この誰もが想像し得なかった状況で、多くの課題を解決するべく業界や企業の枠を超えて意見を交換し合う姿勢こそが、不確実なアフターコロナ時代に求められる新たな人事像の1つではないでしょうか

【まとめ】

新型コロナウイルスの感染拡大は、誰も経験したことのない大変革時代の呼び水になってしまったのかもしれません。それでもこの苦境を乗り越えるべく、会社や社員をどうサポートするかを真剣に考える人事の方々の姿勢は、不透明なアフターコロナ時代を乗り越えるための大きな力になることは間違いなさそうです

今回のように苦難へ立ち向かうビジネスパーソンの集いが、各所で活発に開催されれば、日本の多くの企業がこの困難な時代を乗り越えていけるはずです。今後も、「グローバル人事塾」の活動に注目していきたいと思います。

>グローバル人事塾が気になった方はこちら

取材/酒井禎雄、構成・文/阿部志穂、編集/d’s JOURNAL編集部