新型コロナによる採用マーケットへの影響とは。最新状況と今後を読み解く【セミナーレポート】

パーソルキャリア株式会社

執行役員 dodaエージェント事業部 事業部長 大浦征也(おおうら せいや)

日常化した「転職」。好不況に関係なく、転職者は増加傾向にある
新型コロナウイルス感染拡大がもたらす、4月以降の採用活動への影響とは
採用を「様子見」していた企業は、積極的に採用活動を行った企業に差をつけられた
オンラインへの対応・非対応で大きな格差が生まれる
求職者のメンタリティーに変化。「働き方」を重視する人が増えている
「Z世代」の採用には、企業の「タレント・アクイジション」がキーになる

新型コロナウイルス感染症のまん延は、今後の中途採用など労働市場にどのような影響を与えるのでしょうか。パーソルキャリアは2020年5月21日、「コロナで変わる採用マーケットの最新状況と今後」と題してウェブセミナー(ウェビナー)を開催。パーソルキャリア株式会社 執行役員 doda編集長・大浦征也氏(以下、大浦氏)に、市場の状況についてお話しいただきました。

※役職名は5/21時点(現在はdodaエージェント事業部 事業部長)

※文末に当日の動画や資料へのリンクがあります。

日常化した「転職」。好不況に関係なく、転職者は増加傾向にある

中途採用における新型コロナウイルス感染症の影響を定量的に見てみましょう。厚生労働省が発表している有効求人倍率(「有効求職者数*1」に対する「有効求人数*2」の割合)によると、リーマンショック時の2008年9月を底にして、2019年までは右肩上がりに増えていました。いわゆる「売り手市場」の状態が続いていたのですが、2019年度下期から天井を打つような色合いが出始め、2020年3月の有効求人倍率は1.43と下がってしまいました。そこに新型コロナウイルス感染症のまん延という問題が拍車を掛ける形で、4月のデータはさらに下がっています(後ほど解説)。

*1 「有効求職者数」:公共職業安定所に登録している求職者数
*2 「有効求人数」 :企業からの求人数

好不況に関係なく、転職が日常化して転職者が多い状況でいかに採用するかがポイント01※当日の資料より抜粋

厚生労働省の他のデータである「有効求人数」と「有効求職者数」も見てみましょう。「有効求人数」は当然のことながら、3月は昨年同月比で86.4%と、10ポイント以上下がっています。ところが、「有効求職者数」の方はほとんど変化せず、100.7%という数値が出ています。これは「転職が日常化」しているからです

好不況に関係なく、転職が日常化して転職者が多い状況でいかに採用するかがポイント02※当日の資料より抜粋

リーマンショック時は、有効求人数が87.9%と減少しましたが、失業などによるやむを得ない転職であったり、望んだ転職ではない、いわゆる「非自発的転職」が多かったりしたために、有効求職者数は108.2%と増加していました。

好不況に関係なく、転職が日常化して転職者が多い状況でいかに採用するかがポイント03※当日の資料より抜粋

リーマンショック時とは異なり、求人数が減った、あるいは辞めざるを得なくなったという状況に関係なく、人材サービス会社に登録して転職を日常的に行う人が増えていることが、有効求職者数100.7%という数字に表れていると思います。4月、5月、6月と有効求人数がさらに減ったとしても、有効求職者数の方は大きく変動することはないと見ています。転職者が多い状況が続く中で、企業側がどのような工夫をして採用活動するか。それがポイントになっているのです。

新型コロナウイルス感染拡大がもたらす、4月以降の採用活動への影響とは

3月までのデータから市場の状況が読み解けました。では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた4月はどうなっているのでしょうか。私たちパーソルキャリアのデータを見てみると、「新規求人数」も「doda新規登録者数」も、共に減っています。4月は67.2%と大きく求人数が減っていますが、これは季節性を加味した数値だからです。4月は毎年求人数が増えることから「季節性を加味した予測値」として加算しているために、前年同月比で比べると大きく減少してしまうのです。一方、先ほど求人数が減っても求職者数は減らないと述べましたが、「doda新規登録者数」は76.1%と減っている状況です。これは、新型コロナウイルス感染拡大を受け、私たちのような人材企業が「積極的に転職しましょう」というプロモーションを手控えたことが大きく影響しています。緊急事態宣言解除後にプロモーションを再開すれば、この数値はもっと上がっていくため、求人数の減少ほど新規の登録者数が減らない傾向は、アフターコロナでも続くということです。

新型コロナウイルス感染拡大がもたらす、4月以降の採用活動への影響とは01※当日の資料より抜粋

求人数の減少ほど求職者数は減らないという状況では、1つの求人に対する応募数が増える傾向にあります。また、求人数が減っていくと、転職希望者は応募する企業の数を増やすことが多く、実際に4月の1人当たり応募数は114.7%、1つの掲載求人当たりの応募数は111.3%と、昨年対比で大きく増加しました。新型コロナウイルス感染症の影響は、もしかしたら1年、長ければ2年続くのではないかという見立てもあります。そうなると、求人数は増えないどころか、減り続ける可能性もあります。その一方で求職者数は減らないわけですから、5月以降のこの2つの数値はもっと上がっていくと予想できるでしょう。

新型コロナウイルス感染拡大がもたらす、4月以降の採用活動への影響とは02※当日の資料より抜粋

採用を「様子見」していた企業は、積極的に採用活動を行った企業に差をつけられた

採用する企業側はどうなのでしょうか。数は多くないのですが、当社が企業に行ったヒアリングの結果を見てみましょう。新型コロナウイルス感染症とは関係なく、もとから採用を予定していなかった企業を除くと、やはり多くの企業で新型コロナウイルス感染症の悪影響が出ています。そのうち7割近い企業は、採用時期のめどが立っていない状況であることがわかります。注目してほしいのは、逆にここがチャンスと見て、採用を積極化した企業があることです。他の企業が採用活動を停滞させているときに、積極的に採用活動を行って内定を出していた企業は、必要な人材、最適な人材を採用していました

採用を「様子見」していた企業は、積極的に採用活動を行った企業に差をつけられた01※当日の資料より抜粋

今回の新型コロナウイルス感染症による経済への打撃は、リーマンショックと同じかそれ以上になるのではないでしょうか。また、リーマンショックでは打撃を受けた業種が限られていましたが、今回は幅広い業種が影響を受けています。さらにリーマンショック時よりも転職活動が一般化していたため、転職者自体がそもそも多いにもかかわらず、幅広い業種の求人数が減少していますから、求職者1人当たりの応募数と、1つの掲載求人当たりの応募数が増加しています。そして募集をかけている企業でも、採用活動を停滞させている企業が多かったために、求職者がより積極的に活動した結果、採用活動を続けていた企業に応募が集まっているという状況になっているのでしょう

採用を「様子見」していた企業は、積極的に採用活動を行った企業に差をつけられた02※当日の資料より抜粋

オンラインへの対応・非対応で大きな格差が生まれる

新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、採用活動を停滞させず積極的に行ったことで、転職・採用活動で優位に立てた企業に共通する特徴は、以下の3つです。

① 採用プロセスの全面オンライン化
② スピーディーな採用計画へのつくり直し
③ 採用競合が激しくなり転職市場を意識して差別化

①に関しては、応募から最終面談までオンラインで完結しているかどうかが明暗を分けました。オンラインツールを導入している企業は多いですが、「最終決定は実際に会う」という企業もまだまだ多い。そのような企業は緊急事態宣言発令に伴い、「最終決定は実際に会えるようになってからにしましょう」と採用フローを保留にしたため、採用候補者たちは全面オンライン化されている企業へ流れてしまうというケースが見られました。また、オンラインで完結させていた企業であっても、何らかの工夫をしていた企業、具体的には社内のオンラインミーティングなどで培ったノウハウをオンライン面接に活かそうと意識的に取り組んでいる企業の方が、うまくいっていると言えます

②は、採用するポジションと採用しないポジションを明確にしたり、あるいは採用基準を見直したりといった、採用計画を速やかにつくり直したことです。当初の採用計画通りに採用できないのであれば、できるだけ速やかに採用計画を見直してつくり直さなければならないのですが、自粛要請によって出勤できないために、なかなか対応が進まなかった企業とで差が出ました。

③は、競合との差別化です。4月に他社で内定取り消しや面談保留になってしまった人に対して、積極的にアプローチした企業もあります。競合が足踏みしているときをチャンスと捉え、積極的に採用活動をした企業は他社と差をつけることができました

オンラインへの対応非対応で大きな格差が生まれる01※当日の資料より抜粋

これを具体的な数字で見てみましょう。面接数の4月対前年同月比増減を見ると、現在は1つの掲載求人当たりの応募数が増えているために、書類通過率は11.8%とダウンしていますし、1次面接通過率も2.0%とダウンしています。その一方で、1次面接設定率は3.1%とアップし、内定承諾率も3.2%とアップ。1次面接設定率がアップしているのは、積極的に面接を受ける採用候補者が多いことに加えて、オンラインで面接を受けられる環境になっていることが影響していると思われます。在宅勤務へシフトしていても、オンライン面接であれば受けやすいですし、平常時のリアルな面接であれば移動を含めると数時間は確保しなければいけませんが、オンラインなら移動時間がないので対応しやすくなるからです。

オンラインへの対応非対応で大きな格差が生まれる02※当日の資料より抜粋

採用するポジションを明確にして、最終面接までオンラインで完結できる仕組みづくり、そして競合よりも積極的に、工夫を凝らした採用を行った企業、①②③のポイントを押さえていた企業は、このように採用で結果を出せたと言えるでしょう。

求職者のメンタリティーに変化。「働き方」を重視する人が増えている

求職者のメンタリティーはどう変化したのでしょうか。もともと「働き方改革」として自分の働き方を見つめ直す人が多かったときに、今回の新型コロナウイルス感染症に直面したことで、さらに「働き方」を重要視する人が増えました。たとえば、新型コロナウイルス感染症への対応では、企業のスタンスや特長、柔軟性といったスタイルが、自分の求める働き方に合っているかどうかということを意識的に見ていると言えます。働き方の自由度を求人選定のポイントにしているということです

また、私たちのサイトでも「在宅勤務」や「テレワーク」というリモートワークに関するキーワードでの検索が急上昇しています。働き方の柔軟性だけで転職先を決めてよいのかという課題もありますが、柔軟な働き方が必要条件になってきているのは事実です

一方では、慎重な姿勢の求職者も増えています。積極的に転職に動いている人たちと、慎重に選んでいる人たちとに二極化が進んでいる状況です。このような局面では、積極的な求職者は取りこぼさないように採用しつつ、慎重な求職者にどうアプローチして採用につなげるかがポイントになります。

「経験を活かせる転職」を希望する比率も増加しています。このような不況(求人数が減る状況)では、新しい職種にチャレンジするための転職よりも、経験を活かして転職しようという流れになるものですから、企業としては経験者を採用しやすいタイミングになっているといえます。

求職者のメンタリティーに変化。「働き方」を重視する人が増えている01※当日の資料より抜粋

転職市場は需給バランスによって成り立つものです。これまでは「売り手市場」でした。企業はなかなか採用できない状況が続いていましたが、新型コロナウイルス感染症によって状況は一変したと言ってよいでしょう。「応募が集まりやすく」「辞退率が下がる」「採用バッティングが減る」「採用の費用が下げられる」といった状況の中で、いかに採用を工夫するか。今までとは違った環境で採用ができる可能性が出てきたのです

求職者のメンタリティーに変化。「働き方」を重視する人が増えている02※当日の資料より抜粋

「Z世代」の採用には、企業の「タレント・アクイジション」がキーになる

最後に、「働く」ということが今後、どのように変化するのかについて、20〜30年というスパンで考えてみましょう。2000年前後に起こるITバブル崩壊以前は、企業の「過去」を判断基準として就職先を選択していました。企業の過去の実績を基準に判断しますので、結果的に「大企業に行けば安心」という感覚で就職先を選んでいたかもしれません。ITバブルがはじけた2000年代初頭になると、ネット系企業が台頭します。その経営者たちは「未来」を語る、いわゆるビジョン経営でした。経営者の語るビジョンや理念、経営スタンスなどを基準にして、魅力を感じる企業に入社する人が多かったようです。

そして、リーマンショックと東日本大震災を経たことで、「今」を重視して企業を選ぶ人が増えたように思います。今この瞬間に、誰と何をするのか。どこに配属され、上司はどんな人なのか。経営者よりも直属の上司が気になるという、「今」を重視した職業選択になってきたと言えるでしょう。振り返ってみると、いずれの時間軸でも、企業のとある側面を基準に就職先を選択していました。それが新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに大きく変化しています

これからは、自分自身の生き方や人生を第一に考え、ライフステージやライフイベントを重視して就職先を選択していくのではないでしょうか。そして時代も、今後は「Z世代」と呼ばれる1996年から2010年ごろに生まれた世代が、採用の中心になってきます。このニュージェネレーションをどのようにして採用していくかが、企業の採用戦略の中心になるでしょう。この世代はマスメディアの情報に流されず、個人にカスタマイズされた情報を重視します。SNSは当たり前で、口コミの情報を自分で収集する能力に長けています。そして固定観念がなく、フレキシブルで多様性を尊重し、ありのままを受け入れる世代だとも言われています。物事に執着せず、取捨選択が早いのが特徴です。

では、「Z世代に選ばれる企業」になるには、何が必要なのでしょうか。一つは、マスマーケティングだけでなく、ワンツーワンのダイレクトマーケティングです。なぜなら、Z世代は「信用できる人」の情報はきちんとキャッチしますが、興味のない情報には見向きもしないからです。情報発信者の信用度と情報の届け方がポイントになるでしょう。また、ファーストコンタクトにもこだわります。取捨選択が早い、物事に執着しない、直感的に判断する傾向が強いということから、求人票の1行目に書かれている内容や、貼られている写真は興味を引くものか、という点にも注意を払わなければなりません。

「Z世代」の採用には、企業の「タレント・アクイジション」がキーになる02※当日の資料より抜粋

そして、もう一つは「タレント・リクルーティング」から、「タレント・アクイジション」への移行です。これは、非日常的にリクルーティング活動を工夫しながらやることだけでなく、日常的な企業活動自体を採用に直結させていくことです。従来のリクルーティング領域に加えて、根本的な企業ブランディングやメッセージングを日常的に行い、入社後の活躍と定着をはかる。そして分析をきちんと行って、その結果を人事戦略全般に反映させていく。このような「タレント・アクイジション」の取り組み自体が、Z世代の採用では重要です。

新型コロナウイルスの感染拡大によって問われたオフィスの在り方、働き方、経営方針という日常的なことを刷新することが、実は採用力向上につながっていきます。採用活動に費用をかけるより、働き方の刷新、社員同士のつながり、今までの常識を疑って変革していく。DX(データとITを使いこなす)といった活動を表に出しながら応募につなげる。そうした流れが今後もさらに強まっていくでしょう。

「Z世代」の採用には、企業の「タレント・アクイジション」がキーになる02※当日の資料より抜粋

取材後記

新型コロナウイルスの感染拡大によって中途採用の在り方も大きく変わりそうです。オンライン面接が当たり前になり、オンライン対応ができる企業とそうでない企業の格差が開くと語る大浦氏。求職者側の視点も大きく変わることで、採用のための採用活動ではなく、普段からの企業活動や働き方に共感した人が求人に応募する。そして、今後はその傾向がさらに強まると予測されていました。企業のブランディングなど「経営の根本が人材採用にとって重要になる」という大浦氏の主張に、共感する企業経営者は多いのではないでしょうか。

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取材・文/石山新平 EJS、編集/d’s JOURNAL編集部