「副業」は人材獲得のためのアドバンテージとなるか?副業を正しく捉えるポイント【セミナーレポート】

パーソルイノベーション株式会社

lotsful代表 田中みどり(たなか みどり)

社会構造の変化により、もはや副業は無視できない働き方
今や企業の5割は副業を容認し、個人の7割が副業に意欲を示している
企業が得られる副業の恩恵
副業を解禁する企業が押さえるべき3つのポイント
副業者を受け入れる際の抑えるべき4つのコツ

近年、個人の副業ニーズはかつてないほど高まっています。その一方で、企業からは「副業を解禁したら優秀な人材が他社に行ってしまうのではないだろうか」「副業者を受け入れたいが仕組みづくりに悩んでいる」など、不安の声が上がっているのも事実です。そもそもどのような背景で副業が促進されたのか。企業と個人の副業への取り組み状況はどうなっているのか。そして、今後のために企業は具体的に何をするべきなのか。パーソルイノベーション株式会社で、挑戦したい個人とベンチャー企業の戦略ポジションをつなぐ副業人材マッチングサービス『lotsful(ロッツフル)』の代表を務める田中みどり氏に、今とこれからの副業について、正しく捉えるためのポイントを解説していただきました。

※文末に当日の動画や資料へのリンクがあります。

社会構造の変化により、もはや副業は無視できない働き方

現在、副業に対して、多くの企業や個人が注目しているのは間違いありません。では、なぜこれほどまでに副業が注目されるようになったのでしょうか。まず、日本社会を取り巻く環境をあらためて振り返ってみたいと思います。

人手不足は日本社会が直面する大きな課題です。2030年には約7,000万人の労働需要に対し、約644万人の人手不足が起こると予測されています。

社会構造の変化により、もはや副業は無視できない働き方01※当日の資料より抜粋

その中で、企業のビジネス環境がどうなっているかというと、テクノロジーの発展によって市場の変化は年々加速しており、ヒット商品のライフサイクルも短命化しています。企業としては、そのような変化に対応するために、働き手の改革が急務です。

社会構造の変化により、もはや副業は無視できない働き方02※当日の資料より抜粋

そして、個人には職業寿命の長期化に対応しながら、自身のキャリアを形成することが求められています。よく言われるのが、人生100年時代の到来。2050年には100歳以上の高齢者が50万人を超えるとされており、それに伴って働き手の職業寿命もますます伸びていくでしょう。もし70歳まで働く社会となると、20代前半から約50年は働くことになります。

社会構造の変化により、もはや副業は無視できない働き方03※当日の資料より抜粋

しかし、1970年代までは40年近くあった企業の平均寿命も、今では23年ほどしかありません。職業寿命と企業寿命が完全に逆転してしまったのです。一人が1社を勤め上げる時代は終わり、これからは学び直しや個人の自律的なキャリア形成が求められる時代になっていきます。

政府は、このような労働課題を解決すべく、2017年に「働き方改革実行計画」を定めました。2018年にはモデル就業規則の改定が行われ、それまで「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」とあった規定を削除し、原則として副業・兼業を認める方針が初めて示されました。これにより副業促進の動きが加速。まさに2018年は副業元年といわれています。

社会構造の変化により、もはや副業は無視できない働き方04※当日の資料より抜粋

社会構造の変化により、もはや副業は無視できない働き方05※当日の資料より抜粋

今や企業の5割は副業を容認し、個人の7割が副業に意欲を示している

副業に対する企業と個人の状況も大きく変化しました。パーソル総合研究所のデータによると、全面的に副業を容認している企業は13.9%、条件つきで容認している企業を合わせると容認企業の割合は50%に達します。そして、残りの50%の企業は副業を禁止しています。企業規模別では、大手企業の禁止割合がやや高くなっている状況です。それでも容認企業の半数が、ここ3年以内に解禁しており、促進の動きが進んでいることは確かです。

今や企業の5割は副業を容認し、個人の7割が副業に意欲を示している01※当日の資料より抜粋

今や企業の5割は副業を容認し、個人の7割が副業に意欲を示している02※当日の資料より抜粋

一方で、働く個人側の副業意欲はとても高く、すでに副業している方々は約30%、現在副業をしていない方々でも約70%が「副業をしたい」と答えています。その動機としては、収入補填・自己実現・スキルアップ・活躍の場の拡大といったことが挙げられています。

今や企業の5割は副業を容認し、個人の7割が副業に意欲を示している03※当日の資料より抜粋

今や企業の5割は副業を容認し、個人の7割が副業に意欲を示している04※当日の資料より抜粋

とは言え、現時点では企業と個人の需給はアンバランスな状態です。副業を解禁する企業は徐々に増加し、個人の希望者も多数いますが、それに対して副業者を受け入れる企業は圧倒的に足りていません

副業は、単にお金を得る手段ではなく本業だけでは得られない、自身の成⻑につながる挑戦とlotsfulでは定義しています。挑戦したい個人だけでなく、副業を解禁する企業、副業者を受け入れる企業、この三者が成長できるサイクルを実現して初めて、副業が日本社会に定着していくのです。

今や企業の5割は副業を容認し、個人の7割が副業に意欲を示している05※当日の資料より抜粋

企業が得られる副業の恩恵

今後、副業解禁に踏み切る企業や、副業者を受け入れる企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。

まず、副業者を受け入れる企業は多様な人材との接点が生まれるため、採用活動において普段出会えないような、企業にとって最適な人材を獲得する機会が増えます。採用におけるミスマッチの低下も大きなポイントです。今後は面接のみで人材の適正を判断するのではなくて、「お試し入社」や「副業から始めてもらう」といったことが、新たな採用手段の一つとなっていく可能性があります。

エンゲージメントの観点で言えば、副業の解禁はスキルやキャリアに広がりを感じられる大きなきっかけとなり、自社社員のモチベーション向上が期待できるでしょう。外部の優秀な副業者を受け入れることによって、組織に対してもよい刺激が生まれるはずです。

そして、自社の社員が副業によって成長する、あるいは副業者という新たな知見を入れることによって、これまでなかった発想やアプローチが生まれ、企業のイノベーションにつながる可能性があります。新規事業に関しては、イチから自社内で育てるよりも、すでにある領域に精通した外部人材から教えてもらった方が、事業強化のスピードは圧倒的に速くなるでしょう。

企業が得られる副業の恩恵※当日の資料より抜粋

副業を解禁する企業が押さえるべき3つのポイント

副業を解禁する企業と副業を受け入れる企業、それぞれどのように取り組んでいけばよいのか。自社で副業を解禁する際に大事なポイントは3つあります。それは①ルールづくり②フォロー体制③社内実践です。

まず①のルールづくりですが、これは副業の許可基準をつくります。たとえば、競合での副業はNG、W雇用はNG、個人の業務委託はOKなど、働き方のルールを明確にします。さらに、機密情報の取り扱いや通常の業務に支障をきたさないなどの誓約条件もしっかり決めましょう。

副業を解禁する企業が押さえるべき3つのポイント01※当日の資料より抜粋

②のフォロー体制では、定期的なフォロー体制を築いておくことが大切です。上司との定期面談はその一つでしょう。労働時間や健康状態を把握しながら、過度に干渉するのではなくて、副業へ理解を示しながら社員をバックアップする体制が望ましいと思います。

副業を解禁する企業が押さえるべき3つのポイント02※当日の資料より抜粋

③の社内実践とは、社内の他部署、あるいはグループ会社で副業体験の機会を提供することで、これも有効です。ちなみに、グループのパーソルキャリアには「社内ダブルジョブ」という制度が設けられており、年に2回行われるプロジェクト募集の選考に通過すると、他部署の社員でも参加することができます。同じグループ内なのでお互いに業務の進め方がわかっています。たとえ他部署の社員が参加してもキャッチアップがとても早いので、未経験の業務でも比較的スムーズに進みます。働く個人としても、普段の業務とは違った経験ができることから非常に好評です。

副業を解禁する企業が押さえるべき3つのポイント03※当日の資料より抜粋

副業を解禁する企業が押さえるべき3つのポイント04※当日の資料より抜粋

副業者を受け入れる際の抑えるべき4つのコツ

自社で副業者を受け入れる際の大事なポイントを紹介していきます。ここでは「自社ニーズの洗い出し」「権限付与・情報開示」「リモートコミュニケーションの促進」「業務の進め方」の順に見ていきましょう。

一番大事なのは、自社ニーズの洗い出しです。「なんとなく優秀そうだから副業を依頼しよう」ではうまくいきません。自社にどのような課題があり、どのようなニーズがあるのかを洗い出してから、副業者を受け入れる必要があります。

副業者を受け入れる際の抑えるべき4つのコツ01※当日の資料より抜粋

副業者を受け入れる際の抑えるべき4つのコツ02※当日の資料より抜粋

たとえば、大手企業の場合は良くも悪くもカルチャーが固まっているため、新規事業のように、何かが新たに始まるタイミングで副業者を求めるケースが多いです。最近ならば、デジタル領域に強みを持っている人材など、攻めたい領域のトップランナーに入ってもらうケースも少なくありません。

また、権限付与・情報開示は、プロジェクトにおける成否の鍵を握ります。副業という時間の制約がある中で、優秀な副業者に最大のパフォーマンスを出してもらうためには、しっかりとNDA(秘密保持契約)を結んで、できる限り社員と変わらない情報公開をすることが不可欠です。

そして、円滑なリモートコミュニケーションのために、SlackなどのITツールを活用した体制を構築しましょう。このとき、プロジェクトマネジャーがキーポイントです。連絡の窓口が複数になると、副業者へ余計な負担がかかってしまいます。責任者や担当部署を決めて、しっかりと進捗を把握しながら上手に副業者をサポートすることが重要です。

最後に、業務の進め方についてです。基本的には、互いに食い違いがないように進めていくのがポイントです。契約期間はなるべく短期で、業務内容の詳細を明確にした上でチューニングを行っていきましょう。特に業務内容は、「営業アドバイザリー業務」などとざっくりとしたものとせず、「何を目的にどんなアウトプットをしてほしいのか」を具体的にして、副業者とすり合わせなければなりません。

プロジェクトが始まったら、関係者でキックオフを行うことも忘れないでください。同じマインドでかかわってもらうために、事業やサービスの戦略部分はもちろん、ゴールやアウトプットイメージの共有を行います。また、副業者はいつも一緒にいられるわけではないので、最低でも週に1度はミーティングの場を設けて、進捗状況の確認と今週やるべきことを共有しましょう。

意外とありがちなのが、遠慮してしまうことです。そうならないためにも、最初の段階でできることとできないことを明確にした上で、お互いに業務を進めていくことが大切です。

副業者を受け入れる際の抑えるべき4つのコツ03※当日の資料より抜粋

副業という形で社員が自律的に力をつけることは、いずれ自社の成長として必ず返ってくるでしょう。さらに、先の見通しがなかなか立ちにくい中、副業の人材を活用して、必要なときに必要な人材を早期に獲得していくことは、組織としてのしなやかさにつながります

新型コロナウイルスの危機に直面した全ての企業が、これからの時代は変化に耐え得る強い組織をつくる必要がある、と体感したはずです。自律的な社員と組織のしなやかさを実現してくれる副業の仕組みは、今後強い組織を形づくるのにとても有効に機能するのではないでしょうか。

取材後記

画一的な働き方は終わりを迎えようとしています。これからは「副業ができるから」「副業者を受け入れているから」といった理由で入社を決める方々も多くなりそうです。副業制度が整った企業は人材の多様性に恵まれ、顧客に提供する付加価値にもますます磨きがかかるでしょう。副業に対する取り組みの違いによって、企業の人気や力強さを左右する時代が迫っているのかもしれません。

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取材・文/橋本歩 EJS、編集/d’s JOURNAL編集部