人材確保の取り組み11選!改善ポイントも紹介

d’s JOURNAL編集部

企業において、人材確保はすべての活動を支える重要な取り組みです。長引く少子高齢化にともない、多くの企業が人手不足の問題を抱えるなかでは、単に待っているだけで安定した人材確保を行えるわけではありません。

この記事は人材確保を進めるうえで、企業が実行すべき具体的な取り組みを11個に分けてご紹介します。また、人材確保の施策を検討するうえで重視すべきポイントもあわせて見ていきましょう。

人材確保とは


「人材確保」とは、文字通り自社に人材を確保する行為を指します。しかし、具体的な施策について考えるうえでは、もう少し解像度を高めて把握する必要があります。

ここでは、人材確保の基本的な意味合いについて詳しく見ていきましょう。

人材確保の4つの分類

厚生労働省が公表している「人材確保に効く事例集」では、人材確保における問題が大きく4つに分けて定義されています。

人材確保にまつわる4つの問題
・採用管理
・定着管理
・就労条件
・理念・価値観

採用管理は「募集」や「選考」に関する問題であり、定着管理は「配置や配属」「評価・処遇」「教育訓練・能力開発」に分解することができます。人材確保に問題を抱えている企業では、まずこれらのマネジメントがうまくいっていない可能性を考える必要があります。

また、さらに分析を進めると、企業が行っている就労条件に問題が隠れている可能性もあるでしょう。労働条件や労働環境、人間関係といった就労条件に難がある場合も、人材確保に悪影響を及ぼすケースがあります。

そして、これらの3つの要素に影響を与える根本として考えられるのが、企業の理念・価値観に関する問題です。必要に応じて経営理念や組織文化を見直すことで、企業の採用力や人材の定着率にもプラスの影響が生まれる可能性があると考えられています。

人材確保における3つの課題

現代の経営環境は、主に3つの課題によって人材確保のハードルが高まっていると考えられています。そのうちの一つに挙げられるのは、前述のように「生産年齢人口の減少」という点です。

そのうえで、「働き方の多様化」も大きな影響を及ぼしています。終身雇用制が崩壊したことにより、一つの企業で長く働き続けるという前提はなくなっているため、組織戦力の安定化が難しくなっている側面があるのです。

また、「採用チャネルの多様化」も、人材確保の難易度を高めている側面があります。近年では、SNSを通じて求職者との接点を築く「ソーシャルリクルーティング」や、企業が求職者に直接的にアプローチする「ダイレクトリクルーティング」など、さまざまな採用手法が確立されています。

体力のある企業は、これらの手法も積極的に活用していくため、その他の企業も採用競争に負けないためには早急な対応が求められるでしょう。

人材確保の取り組み11選


人材確保の取り組みを進めるうえでは、必要なプロセスを細かく分けたうえで具体的な施策を検討することが大切です。ここでは、厚生労働省の「人材確保に効く事例集」を踏まえて、具体的な取り組み方について見ていきましょう。

募集における取り組み

「採用計画を達成できない」「応募者がずっと来ない」といった問題が生じている場合は、募集段階における現状の見直しを図ることが大切です。まずは、求人サービスや求人広告の表示内容をチェックし、改善すべきポイントがないかを探りましょう。

例えば、利用する求人広告が固定化している場合は、直近の効果を数値で振り返り、本当に有効な出稿先であるかどうかを見極める必要があります。また、求人票を出しても反応が薄い場合は、「求職者のニーズ」や「自社の強み・魅力」「キャリア形成のイメージ」などを具体的に洗い出し、広告内容のブラッシュアップを図りましょう。

そのうえで、現代では多くの求職者が事前にインターネットで企業の情報を収集するため、Web上の情報コンテンツを充実させることも大切です。会社案内のページを作成したり、SNS・ブログの運用に力を入れたりすることで、求職者への信頼性アップにつながるケースもあります。

選考に関する取り組み

選考に関する取り組みとしては、人材のミスマッチを防ぐために、求める人材像の明確化が重要なポイントとなります。採用したい人物像について特徴を細かく描き出し、社内で共有することで、選考基準のブレを防ぐのが重要です。

また、応募者の面接辞退を減らすためにも、日程連絡やメールでの受け答えは速やかに行うことが欠かせません。丁寧な応対を可能にするためにも、採用担当において十分な人員確保を行うなどの仕組みづくりに力を入れましょう。

選考の質を高めるためには、面接官の実力を伸ばすことも重要な施策となります。面接官は候補者と接する重要なポジションであり、企業の顔といっても過言ではない存在です。

面接官の教育にはしっかりと力を入れ、必要に応じて現場の責任者などの力も借りながら、マッチ度の高い人材を見極められるようにしましょう。

配置や配属における取り組み

採用した人材の定着を促すには、配置や配属にも細心の注意を払う必要があります。まずは、内定者フォローや新人研修といった受け入れ体制にしっかりと目を向け、スムーズに入社へ導ける仕組みを整えましょう。

また、入社後は先輩従業員などに指導役やメンター(相談相手)を担ってもらい、業務面や精神面でのサポートを行うことが大切です。業務に適応できないメンバーや組織になじめないメンバーを置き去りにせず、丁寧にフォローしながら、人材の取りこぼしを防ぐことが重要となります。

評価や処遇に関する取り組み

人材の定着率に問題がある場合は、評価や処遇に関する状況を見直すことも大切です。人事評価の方法に問題がある場合は、従業員もうまくモチベーションを保てず、優秀な人材ほど自社から離れていってしまう可能性が高くなります。

そのため、成果に紐づいた評価制度を構築するなど、実力をきちんと評価できる仕組みを整えることが大切です。また、従業員が「将来のイメージが湧かない」「前向きなキャリアパスが描けない」といった悩みを抱えないように、将来設計をサポートすることも重要です。

例えば、キャリア相談窓口を設置したり、定期的にキャリア研修やミーティングを行ったりするといった方法があります。なお、人事評価制度の方法や種類については、以下の記事で詳しく紹介されているので参考にしてみてください。

(参考:『人事評価制度の種類と特徴を押さえて、自社に適した制度の導入へ【図で理解】 』)

教育訓練や能力開発についての取り組み

採用した人材を戦力として活用するためには、社内の教育システムを改良していくことも重要です。新人教育の代表的な手法として挙げられるのが、「OJT」(On the Job Training)です。

OJTとは業務を通じて実践的な学びを深めるプロセスであり、座学と組み合わせることで仕事の習熟度が大きく向上していきます。OJTを成功させるためには、教育役の選定とスキルアップが重要なカギを握ります。

教育係となった従業員にはしっかりと研修を行い、丁寧にOJTを実行できるようにサポートしましょう。また、長期的な人材定着を促すには、従業員自身が成長していると実感できる体制を構築することも大切です。

経験年数や職種に応じた体系的な育成制度を整備し、必要に応じて資格取得の手当を創設するなど、従業員の主体性を引き出す仕組みを整えましょう。

労働条件に関する取り組み

労働条件については、会社ごとの現状によって優先すべき取り組みに大きな違いが生まれます。長時間労働が横行していたり、給与体系に問題を抱えていたりする場合は、何よりも優先的にその課題と向き合わなければなりません。

具体的には、「賃金の公平性・透明性を高めて納得できる内容にする」「労働時間を過重でないものにする」「退職金制度を整備する」といったものが挙げられます。また、表面上は適切な仕組みが設けられていても、「有給休暇を取りにくい」「給与アップの兆しが見えない」など、心理的な側面に課題が隠れているケースもあります。

こうした状態を防ぐためには、1on1ミーティングなどで日ごろから従業員の考えをヒアリングすることが大切です。

労働環境に関する取り組み

労働環境の改善については、まず「労働負荷の軽減」に目を向けてみる必要があります。業務の特性上「重いものを持つ」「ミスが許されない」といった作業が続く場合には、分担方法の見直しを図り、負荷が分散するように注意することが大切です。

それ以外の取り組みとしては、「多様な働き方を実現させる」というのも重要といえます。リモートワークや時短勤務制度の導入などにより、育児や介護などとの両立を希望する従業員でも、安心して仕事を続けられるようになります。

また、男性中心の職場では「女子用のトイレや更衣室を設ける」といった基本的な整備を行うだけでも、女性従業員の受け入れが行いやすくなるでしょう。

人間関係における取り組み

人間関係に関するトラブルは、主要な離職原因の一つです。人材の定着率を高めるためには、社内の人間関係を向上させる取り組みが欠かせません。

そのためにはまず、管理者を中心に研修を行い、ハラスメントなどのトラブルが起こらないように徹底することが大切です。そのうえで、社内のコミュニケーションを活性化させる仕組みづくりに力を入れるとよいでしょう。

具体的な施策としては、「フリーアドレス席の導入」や「ランチミーティングの開催」「社内イベントの充実」などがあります。従業員の年齢層によっても適したアプローチは異なるので、社内の状況に合わせて柔軟に施策を選定しましょう。

福利厚生に関する取り組み

福利厚生については、競合他社と比較して基本となる条件を満たしているかをチェックする必要があります。そのうえで、自社の状況に合わせて、独自性のある制度を検討していくとよいでしょう。

例えば、「長期勤続者へのインセンティブの導入」「資格手当や書籍代の負担」「スポーツ・レクリエーションの利用サービス」など、福利厚生にもさまざまなパターンが存在します。有効に利用してもらうためにも、自社の従業員にしっかりとヒアリングをして、どのような制度が求められているのかを的確に把握することが大切です。

例えば、「子育て世帯が多い」あるいは「若者世代を多く採用したい」という場合は、「結婚祝い金」や「入学祝い金」の導入、「家族手当」の導入などを検討してみるのも一つの方法です。福利厚生の種類や導入方法については、以下の記事で詳しく解説されているので参考にしてみてください。

(参考:『【3分で読める】福利厚生を選ぶならコレ!種類や導入方法など知っておきたい基本事項 』)

経営理念に関する取り組み

長期にわたって人材確保がはかどらない場合は、より根本的な問題に目を向ける必要があります。例えば、離職率が高い状況が続く場合、「従業員が帰属意識や連帯感を持てない」といった点に起因するケースも考えられるでしょう。

このケースでは、経営理念について改めて見直すとともに、社内にしっかりと浸透させるための取り組みを行うことが重要です。社内研修の実施や経営者・管理職者との1on1ミーティングなどを行い、理念を従業員に共有することが大切となります。

また、人材採用においても、自社の魅力や価値観、社会貢献への姿勢などをしっかりとアピールし、広く共感が得られるようなPR活動を行う必要があります。経営理念の策定や浸透の方法については、以下の記事で詳しく解説されているので参考にしてみてください。

(参考:『よい経営理念を作り、浸透させ、成長していくには?5つの事例から考える/テンプレ付 』)

組織文化についての取り組み

組織文化とは、組織における共通の信念や価値観、行動規範などの総称です。組織文化がハッキリしており、社内にきちんと浸透されていれば、従業員は企業に対する帰属意識を持ちやすくなります。

そのためには、「リーダーのポストを設けて適切な職場階層を設定する」「管理職の研修やサポートに力を入れる」「ワークショップなどでチームワークを磨く」「従業員の声に耳を傾ける」といったアプローチが有効です。また、各従業員の役割を見える化することで、チームの一員としての自覚が芽生え、結束力が高まるケースもあります。

企業文化の醸成方法については、以下の記事で詳しく解説されているので参考にしてみてください。

(参考:『企業文化とは?事業成長へとつながる企業文化の醸成方法を事例を交えて紹介◆NG例付 』)

人材確保の施策を検討するときのポイント


人材確保の戦略を立てる際には、基本のポイントを押さえたうえで自社に合った施策を探ることが大切です。ここでは、施策を検討する際のポイントを3つに分けてご紹介します。

自社の現状を正しく把握する

人材確保における課題を解決するには、まず自社が置かれている現状を的確に把握する必要があります。人材確保の要素である「採用管理」「定着管理」「就労条件」「理念・価値観」のうち、どの分野を優先的に改善すべきかを分析することで、効果的な施策を打ち出せるようになります。

そのうえで、各分野のなかでも、特に改善すべきポイントを探り、費用対効果も踏まえて施策を決めていくことが大切です。例えば、採用管理に問題があるなら、募集や選考、内定者フォローなどの採用工程を一つずつ見直し、優先度の高いプロセスを見極めましょう。

勤務形態に柔軟性を持たせる

業種や業態にもよりますが、人材確保の側面だけを考えるのであれば、勤務形態にはできるだけ幅を持たせるほうが優位になります。フルタイムを想定した勤務形態のみの場合、リモートワークや時短勤務などを希望する人材は集まりにくくなるため、どうすれば柔軟性を持たせられるのかをじっくり検討してみましょう。

複数の採用手法を用いる

人材採用につまずいている場合は、既存の採用手法にこだわるのではなく、できるだけさまざまな方法に目を向けてみることが大切です。例えば、広告宣伝力でどうしても競合他社に負けてしまう場合は、リファラル採用やダイレクトリクルーティング、SNSでのきめ細やかなアプローチにも取り組んでみるとよいでしょう。

複数の手法を組み合わせることで効果が高まる場合もあるため、予算の範囲でさまざまな可能性を検討してみるのがおすすめです。

まとめ

労働人口の減少にともない、人材確保はこの先もますます重要なテーマとなっていきます。採用手法の多様化により、企業はさまざまな可能性を試せるようになった一方、体力に劣る中小企業は採用競争についていくのが難しくなるケースもあります。

他社に後れをとらないためにも、まずは自社の特徴や状況を客観的に分析し、最適な人材確保戦略を立ててみましょう。

(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)

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