よい経営理念を作り、浸透させ、成長していくには?5つの事例から考える/テンプレ付

d’s JOURNAL編集部
経営理念とは?
なぜ経営理念が必要なのか?経営理念があるとどんな効果がある?
よい経営理念の条件
よい経営理念10選
経営理念の作り方
5社の事例から見る、経営理念を浸透させ、組織を活性化していく方法

経営を行う上での基本的な考え方・価値観や、経営者の思いを明文化した「経営理念」。経営理念は、「経営を進めていく上での判断基準」となります。また、経営理念には、「従業員の意識統一」「企業価値・ブランドイメージの向上」といった効果も期待できます。今回は、経営理念の定義やよい経営理念の条件、経営理念の作り方などを、企業の事例を交えながらご紹介します。作成フォーマットもダウンロード可能ですので、ご活用ください。

経営理念とは?

経営理念とは、経営を行う際の基本となる「考え方」や「価値観」「創業者・経営者の思い」を言葉で表したもの。英語では、「management philosophy」や「management principles」などと表現されます。経営理念は企業の創業者や経営者によって社内外に広く示され、「事業を進めていく上での根本的な考え方・信念」や「経営を進めていく上での判断基準」とも言えるでしょう。

また、経営理念は企業経営を考える上で最も重要な要素の1つとされています。その経営理念を軸として、企業として到達したい未来像として策定されるのが、「経営ビジョン」です。そして、経営ビジョンを実現するためのシナリオとして「経営戦略」が、さらに経営戦略を実現するための具体策として「経営戦術」があります。最も上位の概念である経営理念は、これら3つに比べて中期的かつ抽象的なものと位置付けられています。

経営理念とは?

また、経営理念と似た要素として、「企業理念」「ミッション・ビジョン・バリュー」「社是・社訓」があります。

企業理念との違い

経営理念と比較・混同されやすいのが、「企業理念」です。経営理念と企業理念は、いずれも「企業にとって重要な考え方・価値観を明文化したもの」という点では共通していますが、異なる側面もあります。経営理念と企業理念の違いを、下の表にまとめました。

経営理念 企業理念
何を明文化しているか

創業者・経営者が大切にしている、経営を行う上での基本的な考え方や価値観

企業として、最も大切にしている基本的な考え方・価値観

何を決める際の基準となるか

経営を進めていく上での判断基準

企業として重要な意思決定をする際の基準

内容が変化しやすいかどうか

変化しやすい

変化しにくい

企業理念とは、企業として最も大切にしている基本的な考え方・価値観を明文化したもの。企業としての在り方や存在意義、目的などを示したものとも言えます。企業理念は、企業として重要な意思決定を行う際の基準となります。企業としての「哲学」であるため、経営者が交代しても引き継がれることが多く、「変化しにくい」とされています。

一方、経営を行う上での基本的な考え方・価値観を明文化した経営理念は、経営を進めていく上での判断基準となるものです。経営理念には、経営者の「思い」「信条」が反映されるため、経営者の交代に伴って変化する可能性があります。また、時代やニーズの変化を受け、経営理念を変える企業もあります。

従って、「内容が変化しやすいかどうか」が、経営理念と企業理念の一番の違いだと言えるでしょう。また、企業としての基本的な考え方・価値観があってこそ、経営を行う上での基本的な考え方・価値観を定めることができます。このことから、経営理念と企業理念とを比べると、企業理念の方が上位概念と位置付けられています。なお、企業によっては経営理念と企業理念とを明確に区別せず、「理念」として掲げている所もあるようです。

ミッション・ビジョン・バリューとの関係

「ミッション・ビジョン・バリュー」とは、企業理念を構成する3つの要素を表したものです。「ミッション」は企業として日々果たすべき使命や企業としての存在意義を、「ビジョン」は企業として実現したい未来や将来ありたい姿を、「バリュー」とは企業として約束する価値・強みや従業員が日々意識する指針を意味します。企業理念とほぼ同義の言葉であるため、ミッション・ビジョン・バリューと経営理念の違いは、企業理念と経営理念の違いと同様と考えられます。なお、企業によっては「ミッション」や「バリュー」を経営理念と同様に捉えている所もあるようです。

社是・社訓との関係

「社是」とは、企業が是(正しい)とする考え方や企業の経営上の方針・主張です。一方の「社訓」は、従業員が企業で働く上で意識したいこと・守るべき行動や、創業者や経営者の教え・戒めを意味します。社是はミッションに、社訓は行動規範に近いものとも言えるでしょう。また、定義を見てもわかるように、経営理念と企業理念の両方の要素を含んだものとも考えられます。実際に、企業によっては社是・社訓を経営理念や企業理念と同じものとして扱っている所もあるようです。

経営理念は変更してもいい?

先ほど説明した通り、経営理念は「内容が変化しやすい」ものです。経営者の交代や、企業を取り巻く環境の変化に応じて変更しても問題ありません。むしろ経営理念を何度も再定義し、時代の流れや社会のニーズの変化に対応していくことが重要でしょう。

なぜ経営理念が必要なのか?経営理念があるとどんな効果がある?

経営理念は、なぜ必要とされるのでしょうか。経営理念を策定することで、どのような効果が期待できるのかをご紹介します。

企業としての方向性や判断軸を示すことで、従業員の意識が統一される

経営理念を策定する一番の目的は、従業員に対して、「経営を進めていく上での判断基準」を明確に示すことにあります。経営者には、必ず経営を行う上での「信念」や「哲学」がありますが、それを言語化し、周囲に伝わるようにしたものが経営理念です。経営理念を通じて、「何のために、この会社は事業を展開しているのか」「どのような経営を目指しているのか」といった企業としての方向性や判断軸を示すことができます。それにより、「何のために」「どのような業務に」取り組む必要があるかを、従業員一人一人が理解し、従業員の意識が統一されるでしょう。また、企業と従業員との間で共有・形成される独自の価値観や文化を意味する「企業文化」を醸成する上でも、経営理念は重要とされています。
(参考:『企業文化とは?事業成長へとつながる企業文化の醸成方法を事例を交えて紹介◆NG例付』)

従業員のエンゲージメントやパフォーマンスが向上する

経営理念には、「どのような社会づくりに貢献していきたいか」「社会に対して、どのような価値を提供していきたいか」といったメッセージが込められることもあります。こうしたメッセージ性の強い経営理念を策定することで、従業員は「自分の仕事が社会のためになる」「社会に貢献できる企業に所属している」といった実感を得やすくなるでしょう。それにより、従業員が企業に対して持つ帰属意識や貢献意欲である「従業員エンゲージメント」の向上が期待できます。従業員エンゲージメントが向上すれば、自発的・積極的に仕事に取り組む従業員が増えるため、パフォーマンスの向上にもつながるでしょう。
(参考:『エンゲージメント向上は生産性UPや離職防止に効果あり。概念や測定法、高め方を解説』)

企業価値やブランドイメージが向上し、人材の確保や顧客の獲得につながる

経営理念は、企業の公式ウェブサイトやパンフレットなどを通じて社内外に発信されます。経営理念を通じて、「このような思いで、経営を行っています」という経営者の信条や、「●●な社会の実現を目指します」といった企業の社会的責任を伝えることは、社外に対して企業の魅力を発信することにもつながります。経営理念を社外に示すことにより社会的信頼が得られ、企業価値やブランドイメージが向上するでしょう。それにより、「この会社で働きたい」と希望する求職者が増え、人材を確保しやすくなるといった効果が期待できます。また、経営理念に共感した個人・法人が、「この会社の商品を買ってみよう」「この会社と取引をしよう」と思うようになり、結果的に顧客の獲得にもつながるでしょう。

よい経営理念の条件

では、どのような経営理念が「よい経営理念」と呼べるのでしょうか。下記によい経営理念の条件をまとめました。

よい経営理念の条件

●わかりやすい言葉で表現されていること
●内容がしっかりしていること
●内容に一貫性があること
●自社の置かれた状況にマッチしていること
●経営ビジョンや経営戦略などを考えるヒントがあること
●企業の成長性を感じられること
●社会貢献につながる内容であること

経営理念は、「ただ策定すればよい」ものではなく、「社内に浸透してこそ価値がある」ものとされています。そのため、まずはわかりやすい言葉で表現されていることが重要です。「経営を行う際に最も大切にすること」を社内外に示すものであるため、内容がしっかりしていることや、内容に一貫性があることも重要だと考えられます。また、「企業としてのフェーズ」や「市場のニーズ」などに各社で違いがあることから、自社の置かれた状況にマッチしていることも必要です。企業経営を考える際の最上位の概念が経営理念であるという点を踏まえると、経営理念を実現させるための経営ビジョンや経営戦略などを考えるヒントがあるということも重要な条件と言えるでしょう。

そして、企業の成長と従業員の成長は密接にリンクしていることから、企業の成長性を感じられることも重要です。このほか、企業の社会的責任(CSR)の観点から、社会貢献につながる内容であることも重要だと考えられています。

よい経営理念10選

「他社がどのような経営理念を掲げているのか」を知っておくと、自社の経営理念を策定する際のヒントとなるでしょう。よい経営理念10選をご紹介します。

パナソニック株式会社

家電事業や住宅事業を展開するパナソニック株式会社が掲げる経営理念は、以下の通りです。

綱領
産業人たるの本分に徹し社会生活の改善と向上を図り
世界文化の進展に寄与せんことを期す

信条
向上発展は各員の和親協力を得るに非ざれば得難し
各員至誠を旨とし一致団結社務に服すること

私たちの遵奉すべき精神
産業報国の精神、公明正大の精神、和親一致の精神、力闘向上の精神、
礼節謙譲の精神、順応同化の精神、感謝報恩の精神

(パナソニック株式会社『ブランドスローガン・経営理念』より引用)

創業者の松下幸之助氏が定めた「綱領」は、経営理念の根幹として、あらゆる経営活動のよりどころとなっています。経営理念を基に、「A Better Life, A Better World」というブランドスローガンが決まりました。「社会生活の改善と向上」という言葉からもわかるように、私たちの生活に欠かせない事業を担っている企業ならではの経営理念であることがうかがえます。

トヨタ自動車株式会社

自動車事業を展開するトヨタ自動車株式会社は、「基本理念」という呼び方で、経営理念を以下の通りに掲げています。

1.内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
2.各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
3.クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
4.様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
5.労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
6.グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
7.開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する

(トヨタ自動車株式会社『基本理念|経営理念|企業情報』より引用)

「企業を取り巻く環境が大きく変化している時こそ、確固とした理念を持って進むべき道を見極めていくことが重要」という考えの下、1992年に「基本理念」を策定し、1997年に改定しました。世界的に有名なグローバル企業らしく、「国際社会」「世界中」「グローバル」といった言葉を「基本理念」で使用しているのが特徴と言えるでしょう。

株式会社クレディセゾン

クレジットカードをはじめとする決済ビジネスを展開する株式会社クレディセゾンの掲げる経営理念は、以下の通りです。

私たちは、サービス先端企業として
「顧客満足主義の実践」「取引先との相互利益の尊重」「創造的革新の社風創り」の
3点を共通の価値観として浸透させ競争に打ち勝ち
お客様、株主の皆様、そしてすべての取引先の皆様の
期待に添うようにチャレンジを続け、社会的責任を果たしてまいります。

(株式会社クレディセゾン『企業情報』より引用)

株式会社クレディセゾンでは、経営理念を実現するために従業員が意識することを「行動宣言」として、行動宣言に沿った行動を行うための具体的な指針を「行動基準」として定めています。多くの個人や法人に利用されるサービスを展開していることを踏まえ、顧客に対する姿勢や企業としての責任などを示す経営理念となっていると言えるでしょう。

ANAグループ

航空事業を中心としたANAグループが掲げる経営理念は、以下の通りです。

安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します

(ANAグループ『ANAグループ経営理念・ビジョン・行動指針』より引用)

人々を安全に運ぶことが最重要とされる航空事業だけに、経営理念では、真っ先に「安心と信頼」を顧客に約束しているようです。経営理念からは、社会の発展に欠かせない事業を請け負っているからこそ、「夢にあふれる未来」作りの一役を担っていこうとする姿勢が感じられます。

ソフトバンクグループ

情報通信事業を展開しているソフトバンクグループの掲げる経営理念は、以下の通り、とてもシンプルなものです。

情報革命で人々を幸せに

(ソフトバンクグループ『理念・ビジョン・戦略 経営理念』より引用)

ソフトバンクグループでは、創業以来一貫して、「情報革命を通じた人類と社会への貢献」を推進してきました。経営理念からは、「情報革命の無限の力を、人々の幸福のために正しく発展させていきたい」という企業の思いが感じられます。

京セラグループ

産業・自動車用部品や半導体関連部品を製造販売している京セラグループの掲げる経営理念は、以下の通りです。

全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。

(京セラグループ『社是·経営理念』より引用)

今でこそ大企業に成長した京セラグループですが、もともとは小さな町工場からスタートしました。企業のために従業員一人一人が精一杯努力し、経営者は従業員の信頼に応えるという社風があったからこそ、成長につながったと捉えている同社。経営理念には、従業員の幸せを追求し、社会の発展に貢献していきたいという思いが込められていると言えるでしょう。

ヤマトグループ

宅配便事業を展開しているヤマトグループが掲げる経営理念は、以下の通りです。

ヤマトグループは、社会的インフラとしての宅急便ネットワークの高度化、より便利で快適な生活関連サービスの創造、革新的な物流システムの開発を通じて、豊かな社会の実現に貢献します。

(ヤマトグループ『グループ企業理念』より引用)

ヤマトグループの経営理念は、1931年に策定された「社訓」をベースとした「グループ企業理念」の3本柱の1つです。経営理念では、「事業を営んでいく目的」や「企業としての目指すべき方向」を端的に表現しているようです。私たちの暮らしを支える事業を展開している企業として、「豊かな社会の実現」に貢献していきたいという思いが伝わる経営理念と言えるでしょう。

全農グループ

JA(農業協同組合)を運営している全農グループが掲げる経営理念は、以下の通りです。

私たち全農グループは、生産者と消費者を安心で結ぶ懸け橋になります。

私たちは「安心」を3つの視点で考えます。

営農と生活を支援し、元気な産地づくりに取り組みます。
安全で新鮮な国産農畜産物を消費者にお届けします。
地球の環境保全に積極的に取り組みます。

(全農グループ『経営理念』より引用)

全農グループが取り扱っている農畜産物は、私たちが口にするものであるため、「安心」「安全」「新鮮」が求められるでしょう。日本全国の農家から農畜産物を仕入れ、消費者に提供している全農グループ。経営理念には、「安心」を何よりも重視し、環境保全にも取り組みたいという意志が感じられます。

PPIHグループ

ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を展開しているPPIHグループが掲げる経営理念は、以下の通りです。

第一条 高い志とモラルに裏づけられた、無私で真正直な商売に徹する
第二条 いつの時代も、ワクワク・ドキドキする、驚安商品がある買い場を構築する
第三条 現場に大胆な権限委譲をはかり、常に適材適所を見直す
第四条 変化対応と創造的破壊を是とし、安定志向と予定調和を排する
第五条 果敢な挑戦の手を緩めず、かつ現実を直視した速やかな撤退を恐れない
第六条 浮利を追わず、中核となる得意事業をとことん突き詰める

(PPIHグループ『源流 PPIHグループの理念について』より引用)

PPIHグループの経営理念は、創業者の安田隆夫氏が出版した企業理念集「源流」で紹介されました。同グループでは、「顧客最優先主義」という「企業原理」を実現するための行動理念として、6カ条からなる経営理念を定めています。多種多様な商品を店頭で販売していることもあってか、「いつの時代も、ワクワク・ドキドキする、驚安商品がある買い場」という言葉を使っているのが印象的な経営理念と言えるでしょう。

株式会社ねぎしフードサービス

飲食店「牛たん とろろ 麦めし ねぎし」を展開している株式会社ねぎしフードサービスが掲げる経営理念は、以下の通りです。

お客さまに おいしさを
お客さまに まごころを
ねぎしはお客さまのためにある
そして
お客さまの喜びを自分の喜びとして
親切と奉仕に努める

(株式会社ねぎしフードサービス『企業情報 ねぎし精神』より引用)

株式会社ねぎしフードサービスの経営理念は、とてもわかりやすく、温かみのある言葉で表現されています。一度読んだだけで、顧客を大切にしたいという企業の姿勢が伝わってくる経営理念と言えるでしょう。「お客さまの喜びを自分の喜びとして親切と奉仕に努める」という言葉からも、顧客のための店づくりをしていきたいという思いが感じられます。

経営理念の作り方

では実際に、どのように経営理念を作成すればよいのでしょうか。経営理念の作り方を、順を追ってご紹介します。

経営理念の作り方

なお、経営理念の作成フォーマットは、こちらからダウンロードできます。

フロー①:他社の経営理念を見て、イメージを膨らませる

経営理念をいざ作ろうと思っても、最初のうちは「まったくイメージが浮かばない」「漠然としたイメージしかない」といったこともあるでしょう。まずは、「経営理念とはどのようなものか」をイメージすることが重要です。他社の経営理念を見て、イメージを膨らませましょう。その際は、「自分の好きな企業」や「同業種の企業」「企業規模や企業としてのフェーズが近い企業」など、経営者自身が共感しやすい企業や自社と類似点のある企業を選ぶことが重要です。

フロー②:経営者自身の実体験を振り返る

経営理念は、経営者の思いや信条を言語化したものであるため、策定する際のヒントが経営者自身の実体験にあることもあります。時間をかけて自分自身と向き合い、実体験を振り返りましょう。振り返る際のポイントは、以下の通りです。

実体験を振り返る際のポイント

●これまで、どのような経験をしてきたか?(どのような経験が印象に残っているか?)
●どのようなときに、喜びや感動を感じたか?(どうして、喜びや感動を覚えたのか?)
●どのようなときに怒りや悲しみを感じたか?(どうして、怒りや悲しみを覚えたか?)
●どういう理由で、この事業に取り組み始めたのか?(何のためにやっている事業なのか?)

フロー③:将来的に「実現させたいこと」「絶対にやりたくないこと」を書き出す

経営理念を作る際には、「どのような会社にしていきたいのか」「どのような事業を展開していきたいのか」などを考えることも重要とされています。将来的に、企業として「どのようなことを実現させたいのか」「反対に、絶対にやりたくないことは何か」を書き出しましょう。その際は、以下のようなポイントを意識することが重要です。

「実現させたいこと」「絶対にやりたくないこと」を書き出す際のポイント

●どのようなことで、「ナンバーワン」「オンリーワン」となりたいか?
●社会に対して、どのように貢献したいか?(どのような社会づくりに貢献したいか?)
●従業員には、どのようなことを意識してもらいたいか?(どのような従業員になってもらいたいか?)
●将来的に、必ず実現したいことは何か?(企業として、経営者として、どのような未来を望んでいるか?)
●今後、絶対にやりたくないことは何か?(企業として、経営者として、どうしても避けたいことは何か?)

フロー④:社会的意義や企業の置かれた状況などと擦り合わせる

企業として果たすべき役割は、業種や規模によって異なります。経営理念を作る際は、その点を意識する必要があります。将来的に「実現させたいこと」や「絶対にやりたくないこと」を、社会的意義や企業の置かれた状況などと擦り合わせましょう。「どのような社会づくりに貢献していきたいか」「自社の強みをどう活かしていきたいか」といった観点で考えることが重要です。

フロー⑤:入れたい「キーワード」を考え、経営理念の原案を作る

次に、経営理念に入れたい「キーワード」をいくつか考えます。それを基に、経営理念の原案を作成しましょう。多く作り過ぎると、選ぶのが大変になったり、方向性が定まらなくなったりするため、原案は2、3個にとどめておくのが望ましいとされています。

フロー⑥:納得いくまで、何度も作り直す

経営理念の原案ができたら、「これで本当によいのか」をじっくり時間をかけて考えます。「経営に込める思いを言葉にできているか」「他社の経営理念とほぼ似たようなものになってしまっていないか」「自社の置かれた状況に合ったものになっているか」などを確認することが重要です。納得のいく経営理念が作成できたら、社内報や企業のウェブサイトなどで社内外に示し、浸透させましょう。

5社の事例から見る、経営理念を浸透させ、組織を活性化していく方法

経営理念は、人材育成や採用などに活用できます。企業の理念を浸透させていくためには、どのような取り組みを行えばよいのでしょうか。経営理念や企業理念を浸透させ、組織を活性化していく方法についてご紹介します。

事例①:株式会社LIFULL ~ビジョン採用や社内制度への活用~

不動産情報サービス事業を展開する株式会社LIFULLでは、「利他主義」を社是に、「常に革進することで、より多くの人々が心からの『安心』と『喜び』を得られる社会の仕組みを創る」を経営理念に掲げています。「見つけるべきは、僕らと一緒に経営理念を目指してくれる仲間」という思いの下、従来のスキル重視の採用から、経営理念に重きを置いたビジョン採用へ、人材採用の基準を見直しました。また、経営理念を実現するために必要な新規事業のアイデアを募る「SWITCH」制度や、経営理念や部門ごとのビジョンの理解度を図る「LIFULLテスト」を実施するなど、経営理念を社内制度にも活用しています。
(参考:『「日本一働きたい会社」から「世界最高のチーム」へ。ビジョン・カルチャー採用の実践』)

事例②:株式会社スタメン ~メッセージの発信によるエンゲージメントの向上~

エンゲージメント経営プラットフォーム「TUNAG」を運営する株式会社スタメンの経営理念は、「一人でも多くの人に、感動を届け、幸せを広める」です。理念実現のために必要な手段として「エンゲージメント経営」を位置付けている同社では、経営理念に基づいたメッセージを社内に意識的に発信しています。例として、オフィスを改装する際には、「スタメンは一人でも多くの人に感動を届けなければいけない。そのためにどんどん成長していく会社であることを実感するために、みんなでオフィスをつくりたい」というメッセージを伝えました。このように、経営理念に沿ったメッセージを日常的に伝えることで、従業員のエンゲージメント向上を図っているようです。
(参考:『まずは「知るきっかけ」づくりから―事業成長に欠かせないエンゲージメント経営とは』)

事例③:株式会社スープストックトーキョー ~成果発表会や人材採用への活用~

「食べるスープの専門店」を全国展開する株式会社スープストックトーキョーでは、「世の中の体温をあげる」という企業理念を掲げています。企業理念を体現する経験を従業員一人一人に積んでもらい、「こうすればいいんだ」と実感してもらえるように始めたのが、「SSTグランプリ」という成果発表会です。オープンな場で称賛されることにより、従業員は客観的な視点で「自分たちの価値」に気付けるようになりました。また、企業理念を実現するために重要なのは「店舗」や「そこで働く従業員」だと考え、商品のこだわりをジブンゴトとして伝えていく力・共感を生む力がある「表現力がある人」を採用する「表現力採用」を行っています。
(参考:『「飲食店」を言い訳にしない。スープストックトーキョーが考える、人が集まる会社創り』)

事例④:エイベックス株式会社 ~構造改革の一環として、企業理念を改定~

音楽事業を展開しているエイベックス株式会社のタグライン(企業理念)は「Really! Mad+Pure」です。同社では、市場で求められる価値観が「所有(モノ)」から「体験(コト)」へ変化したことや、ユーザーの置かれた環境が以前よりも格段に便利なものになったことなどを受け、新しい価値・イノベーションの創出のため、2015年に構造改革を開始しました。構造改革の一環として改定されたのが、企業理念です。従業員の意識を高め、主体的に行動できる人材を増やしていくため、理念の浸透を四六時中考える「理念浸透プロジェクト」を、人事担当者や広報、経営陣を主体に実施しています。
(参考:『エイベックスが挑む大胆な改革。成功と失敗を繰り返す組織開発【セミナーレポート】』)

事例⑤:ピクスタ株式会社 ~「押し付けないけどみんなで大事にする」という距離感~

クリエイティブ・プラットフォーム事業を展開するピクスタ株式会社は、「才能をつなぎ、世界をポジティブにする」という企業理念を掲げています。「理念に共感してもらうことが大事」という風潮もある中、同社は「個人の想いは人それぞれ違うんだから、完全に共感することなんてできない」というスタンスです。しかし、企業理念をまったく重要視しないわけではなく、「押し付けないけどみんなで大事にする」という距離感を大切にしています。採用段階では、応募者にこれまでの経験や日ごろから大切にしていることを振り返ってもらった上で、同社の企業理念や行動指針と重なる部分があるかを考えてもらっているようです。
(参考:『盛らずに、ありのままの自社を伝える。自律した個のつながりを生むピクスタの採用広報』)

まとめ

経営を行う上での判断基準となる経営理念は、時代の流れや社会のニーズに対応する形で、何度も再定義することが望ましいとされています。経営理念を策定し、社内外に浸透させることで、「従業員の意識統一」や「従業員エンゲージメントの向上」「企業価値・ブランドイメージの向上」などが期待できます。「他社の経営理念を見て、イメージを膨らませる」「将来的に実現させたいことを書き出す」といったフローを踏んだ上で経営理念を作成し、企業や従業員の成長につなげてみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)