リファラル採用成功の秘訣は、社員の“エンゲージメント”向上【セミナーレポート】

株式会社MyRefer

代表取締役社長 CEO 鈴木 貴史

プロフィール
株式会社MyRefer

Customer Success部マネジャー 三加 裕記

プロフィール

2019年4月24日(水)、株式会社MyRefer主催による「第4回リファラル採用人事カンファレンス〜OurRefer〜」が開催されました。リファラル採用(社員紹介)を実施する企業の取り組み・情報交換する場として開催された本イベント。エンゲージメント向上コンテンツの作り方を考えるワークショップから始まり、リファラル採用に積極的に取り組まれている5社の施策発表(ライトニングトーク)など、充実した内容でした。本記事ではその一部をご紹介していきます。

第一部:社内エンゲージメントを向上させるアプローチ法

リファラル採用を考えるために/株式会社MyRefer 三加 裕記氏

最近では、企業と社員が互いを理解・信頼し、貢献し合う概念である「エンゲージメント」に注目が集まっています。企業の業績向上にも大きな影響を与えると考えられており、それは採用においても同様です。そこで、まずはエンゲージメントを構成する要素について考えていきたいと思います。

リファラル採用を考えるために

エンゲージメントには、「動機付け要因」「衛生要因」の2つがあります。動機付け要因を構成するのは、「ビジョン・理念の浸透」や「成長機会」「当事者意識」です。ビジョン・理念に共感し、社員自らが当事者意識を持つことで、エンゲージメントが高まっていきます。一方、衛生要因となるのは「福利厚生」や「給与水準」「職場・対人環境」などです。

リファラル採用を活性化していくには、動機付け要因に出てきた「社員の当事者意識」が非常に大事になります。実際、リファラル採用に協力する社員は「会社が好きである」「会社に貢献したい」と思っている方が多い。つまり、自分たちが「どういう人と働きたいか」「どういう人がジョインすれば会社は成長するのか」と考え、行動に移すことで、仲間集めを自分事化することができる。結果、エンゲージメントが高まっていくわけです。

リファラル採用とエンゲージメントの相関関係

では、リファラル採用をどのように活性化していけばいいのか。社員に当事者意識を持ってもらうにはどのようにすればいいのか。これを考える上で大事なのが、弊社で提唱させていただいている「ASIPSモデル」です。リファラル採用を促進する上で重要なポイントを「認知する(Attention)・共感する(Sympathize)・確認する(Identify)・参加する(Participate)・共有&拡散する(Share&Spread)」と定めたものです。社員のエンゲージメントを高めながらリファラル採用を加速させるという意味では『共感』の部分をいかに意識して生み出していくかが重要になります。

ASIPSモデル

リファラル採用を促進するための社員の方々への声かけの際に、「社員が共感するコミュニケーションを取っていますか?」「求人の紹介依頼だけに終止してしまっていませんか?」ということを皆さんに問いたいと思います。情報共有において、きちんと「社員が共感するコンテンツを配信できているのか」を考えなければいけません。一方的に「紹介してね」という声かけや求人情報を共有するだけでは社員は一切興味を持たず、メールをゴミ箱に入れて終わりになってしまいます。会社が目指しているビジョンや求める人材のバリューを改めて伝えて共感を得たり、採用状況を共有して人事がどのくらい助けを求めているかを伝えて共感を得たり、認知されていないけど実は社員の方々にとってメリットの多い福利厚生や人事制度を改めて伝えて共感を得たり…など、共感を生むコミュニケーションを取っていくことが重要になります。

MyReferではメール配信をすれば「メールの開封数・メール内のリンククリック数」などからリアクション数を算出して社員の方々がどのくらい人事からの発信に共感してくれたかを可視化する機能があります。このリアクションの良し・悪しを分析して、次の施策につなげるPDCAを回していくことができるようになっています。配信しないと数値は測れないので、まずはさまざまな情報を配信してみることをお勧めします。ただし、社員が共感するコンテンツを考える上で気をつけたいのは、単なる条件の伝達になっていないかということ。例えば、インセンティブのお知らせをするときも、単純な内容だけ伝えるのはNGです。「なぜやるのか」「それをやることで何が起こるのか」などリファラル採用の意義まで伝えることが社員共感の鍵となります。

ある会社では、社内で意外と知られていない「結婚お祝い金制度」に関するアナウンスと共に「こんな制度もあるので、是非ご友人に紹介する際にお話してみてください!」と配信をしたところ、通常の3倍近くのリアクションを得ることに成功しています。また別の会社では、リファラル採用を積極的に促進している社員へのインタビュー記事や、友人への声掛けを行う上で気をつけている点やオススメの声掛け方法をまとめた記事を共有。社員からの共感を得ることで、リアクションの増加(反応)とその後の紹介数増加につなげています。

本日はエンゲージメントを高めながらリファラル採用を成功させるポイントとしてASIPSモデルの「共感」にフォーカスしたコンテンツ配信を行っていくことが重要というお話をさせていただきました。リファラル採用は、現場と経営の双方を理解できる、コミュニケーションエンジンである人事・採用担当者にしか推進することはできません。取り組むことが多いように感じるかもしれませんが、最も大事なのは「現場社員と向き合うこと」です。是非、共感を生み出すコンテンツ配信でリファラルを活性化させていきましょう。

第二部:参加企業5社による、リファラル採用成功に向けた施策共有

取り組み事例①:株式会社Speee 川上氏

株式会社Speee 川上氏
Speeeでは、「解き尽くす。未来を引きよせる。」をコーポレートミッションに掲げ、多岐にわたる複数事業を展開しており、年間を通して様々なポジションの採用を行っております。当社の文化として、「全員人事」「自分の仲間は自分で見つけてくる」という考え方があり、リファラル採用には数年前から積極的に取り組んでおります。主体的に協力してくれる社員も多く、リファラル経由での入社は年々増加しています。この度、さらにその波を加速させることを目指し、MyReferの導入をいたしました。

最初の取り組みとして、社員が気軽に友人を招待できるMeetUpイベントを社内のLoungeにて開催しました。当時の課題に、「友人にどのように声をかければ良いのかわからない」「何の情報を伝えれば良いのかわからない」という社員の声がありました。その課題を打開すべく、リファラル採用に関するナレッジをMyRefer上に集約したり、MeetUpイベント専用ページを作成したり。そのページを拡散させることにより、社員の手間を省き声を掛けやすい状態を作りました。イベント開催にあたり集客目標人数等の定量目標を掲げていたのですが、おかげさまで大幅に達成でき、とても嬉しく思っています。さらに、イベント参加者のお人柄や転職意向等を事前に把握し、MyRefer上で管理できていたので、適切にコミュニケーション設計をしたうえで、イベント運営することができたのも非常によかったと感じております。今回のような大規模でのイベントは初の取り組みだったのですが、参加者の皆様からもご好評をいただき、大変良い場となりました。よりたくさんの方に当社を知っていただくことを目的として、こういったイベントは引き続き実施していきたいと考えております。

取り組み事例②:パーソルキャリア株式会社 溝口氏

当社は年間1000名もの中途採用を行っていますが、総じて順調に推移しています。しかし最近では、エンジニアなどの人材の獲得が難易度の高い採用も増えてきており、新しい手法、つまり、リファラル採用を強化する意思決定を下しました。もともと友人紹介制度はあったのですが、そこまで注力されておらず(笑)。制度としてあるものの、リファラル採用が進まない現状があったので、まずは課題特定することから始まりました。今回はそのリファラル採用を整備した事例について紹介します。

パーソルキャリア株式会社 溝口氏

課題をひもといてみると、そもそも「リファラル採用をやっていることを知らない」もしくは、知っていても「紹介するメリットを感じられない」という傾向がありました。そこでまず実施したのは、リクルーターを「中途入社者」に絞り、ひたすら地道な活動をすることです。中途入社者にターゲット絞ったのは、前職での知り合いが多く、かつ入社後はエンゲージも非常に高いためです。

課題を設定し、まずは3つの取り組みを開始しました。1つ目は、月平均80〜90名の中途社員が入社するタイミングで友人紹介制度を説明し、活用を促すことを徹底しました。その後も、「入社後、半年が勝負」と考え、1カ月、3カ月、6カ月と定期的に告知するようにしました。2つ目は、カジュアル面談の仕組みを導入しました。募集職種が200案件以上ありますので、社員がすべて把握するのは難しい。そのため、営業系・エンジニア系など5つのカジュアル面談を用意しました。5つのうちのどれかに案内すればいいだけですから、社員も紹介しやすいですよね。ものすごく気軽に応募できる面談で毎月20名程度、面談を実施しています。最後は、入社される方の配属先のトップからお礼・感謝を伝えるメールを送ることです。当社は効果的なリファラル採用を実現するための制度変更ができず、インセンティブの動機付けが弱いという課題もありました。普段なかなか接点のない役員・事業部長からメールを送るだけでも、従業員規模5000名以上となった当社では十分なインセンティブとなっております。このようなちょっとしたことでも、社員には嬉しいものなんですね。
これらを地道に行った結果、一昨年13名から昨年57名とリファラル経由の決定数が向上しました。上記を進める上で気をつけたこと/ポイントは人事と現場の信頼関係構築にこだわったこと。これだけ大きな組織になると、現場からすれば人事って何をやっているのかわかりづらい。だから人事から積極的に、丁寧なコミュニケーションをとり「社員と近い存在」になれるようにしました。「こういう人いるけど、どうかな?」「こんな募集ありますか?」って気軽に社員から相談が増えるようになったのは大きかったですね。

取り組み事例③:株式会社ラクス

私たちラクスでは、人材紹介サービス以外の採用ルートでは成果が出ていないことが大きな課題でした。リファラル制度自体はあったのですが、そもそも社員が制度を認識しているかも怪しい状態だったんです(笑)。また、年130%もの事業成長に伴って、採用数の増加も急務です。既存チャネルでもなんとか間に合うレベルでしたが、中長期的に新しいチャネルの開拓は必須と考え、自社採用力を強化する方針でリファラル採用を戦略的に行うことにしました。まず取り組んだこととして「課題把握のための全社員に向けたアンケートを実施」があります。

結果、90%前後がリファラル採用制度を知っていましたが、社内サイトに掲載されているリファラル採用に関する情報を見ていない人が50%もいたんです。そこで「社員紹介制度は知っているが、自分には興味がない・関係ない」と思っているのかなと考えたのですが、そうではありませんでした。「友人を紹介しても選考で見送りになることを懸念している」「勉強会やキャリア相談会など採用色のないイベントであれば声をかけやすい」「入社後のキャリアパスに関する情報不足」といったことがネックになっていました。このような実態を踏まえて、選考を伴わないカジュアル面談や技術イベントの実施に加え、『自社を紹介しやすくなるようなコンテンツ制作・広報』を実施することにしました。具体的には、キャリアパス・入社後イメージがつきやすいよう、入社後▲カ月、▲年の社員をリストアップしてシリーズ化して、MyReferからお知らせメールを配信し、地道に社員に届けるようにしました。それ以外にも、「リファラル採用って何?」「なんでラクスは大量採用しているのか?」「各拠点の応募・決定報告」「カジュアル面談のリマインド」など、社員の採用に対する気持ちの醸成ができるよう意識して行っています。結果、2018年度社員紹介経由の決定が0名だったのが、2019年現時点で7名決定しています。まだまだ施策は始まったばかりですが、現状できていることはしっかり継続しつつ、今後はタレントプールなどにも取り組んでいきたいですね。

取り組み事例④:株式会社ベイクルーズ 木村氏

木村氏
ベイクルーズも他社同様で、売り手市場による優秀人材の確保に苦戦を強いられていたこと、人材紹介サービスメインによる採用コストが膨らんでいたことから、2018年6月にリファラル採用に取り組み始めました。もともと社員紹介制度は存在していたものの、年間約80名と紹介数は横ばいで、かつ、オペレーションはアナログなので応募者・社員・人事ともに処理が煩雑で対応しづらい状態でした。誰か紹介したいと思ったら、FAXに書いて本部に送信してもらう…いつの時代だって話ですね(笑)。しかし、当社は正社員だけでも3000名はいますから、たとえそのうちの5%の紹介だったとしても150名と会えるのは大きなポテンシャルです。そこで、まずはMyReferを導入して紹介しやすい制度づくりに着手。3部門に絞ってトライアルをスタートしたり、Meetupイベントを開催したりしました。しかしいずれも大失敗。原因を探るために現場社員にヒアリングしたところ、「担当ブランドだけを紹介するのは難しい」「謝礼金が変わらないのでメリットが薄い」「女性が女性を紹介しにくい」「20〜30代の方が動くのでは?」など意見はさまざま。イベントも同様で「職種を絞ってほしい」「イベントで何を話していいのかわからない」など厳しい意見が多かったですね。そこで考えたのが「アンバサダー制度」の創設です。アンバサダー(紹介者)は立候補制をとり、社員にやる気を出してもらうようにしました。また、紹介すればするほど謝礼金額がアップする制度に変更。社員が「楽しみながら取り組んでもらえる」ことを第一に考えました。結果、2019年1月から4月末時点で、60名の紹介、26名が決定するなど、紹介数は約2.2倍に、採用決定数は約2倍のペースにまで増えています。

最後に、私自身が取り組んでみてわかったこと、感じたことをお話しします。1つ目は、会社の良いところが見えてきたということ。分析によって推しポイントが言語化されてわかりますので、それを次のエンゲージポイントとして考えることができています。2つ目は、社員紹介にポジティブな人を可視化することの重要性です。積極的な紹介者が複数いると声掛けや相談が効率的に実施できますからね。一方、課題も大きく、エンジニアやその他専門職はブランド力だけでは紹介につながらないこともわかってきました。今後はブランドの魅力だけでなく、組織や事業ミッションの魅力を引き出し、社員紹介を含めたダイレクトリクルーティングのシェア向上を目指していきたいですね。

取り組み事例⑤:株式会社サーキュレーション 樺澤氏

実は、私自身もリファラル経由です。約3年前、当社主催のイベントをきっかけに入社しました。私が入社した時は30名の組織でした。今では約140名となっており、3年で4倍以上に成長しています。当社のビジョン実現に向けて、同じ志を持った素敵な仲間が必要です。
当社の採用チャネルは皆さんと同じかと思いますが、エージェント、ダイレクト、リファラルの3つ。全てのチャネルから素晴らしい仲間にご入社いただいていますが、リファラルの実績としては社員数約130名(2019年4月時点)の中でリファラル経由の入社者は29名、そのうちマネジャー・リーダーは14名。組織の中核となっているメンバーも多いです。

樺澤氏

では、当社のリファラル施策である「NAKAMA CIRCULATION」についてご紹介します。主に取り組んでいるのは4つ。まず1つ目は「NAKAMA CIRCULATION COMPLETE BOOK」という当社のリファラルのマニュアルです。「どんな人が当社に合いそうか」「選考フロー」「採用会食の申請の仕方」など、当社のリファラル採用についての情報をまとめています。こういったマニュアルって情報を詰め込みすぎてしまうのですが、極力シンプルにわかりやすく伝えることを意識して制作しました。これからもメンバーの声を聞きながらアップデートしていく予定です。
2つ目が「CIRCULATION LOUNGE」という採用・交流イベント。過去1500名以上の方に参加頂きましたイベントです。経営者・専門家をお招きし、当社代表の久保田と“これからの新しい働き方”などのテーマでパネルディスカッションすることがメインコンテンツですが、当社の事業内容をより知ることができ、社員と触れ合える機会でもあります。私も実際交流していく中で、事業と人に魅力を感じて入社をした一人です。また、チームイベントも開催しています。各チームのリファラル担当とイベント内容を企画し、社員の知人や友人を集め、気軽に会社に遊びにきていただく機会を創っています。
3つ目は「賞品・表彰制度」です。採用に協力してくれた社員には、ちょっと豪華なディナーをプレゼントしたり、半期に1度のキックオフで、最も仲間集めに取り組んだしたチーム・個人を久保田から直々に表彰し、感謝を伝えています。
最後の4つ目は、皆さんもかなりやられていると思いますが、「ひたすら地道なコミュニケーションを続けること」です。仲間の入社の大切さって経営陣や人事だとよく理解できるのですが、一メンバーだと少し見えにくいことがあると思います。一人の素敵な仲間が入ることがどれほど力になることか、個別でも全社の場でも、役員の力を借りながら、何度も伝えるようにしています。この地道な私たち人事の働きかけが何よりも大事だと思っています。
今後は、今以上に「紹介したくなる会社」になるために、様々な施策を検討していきます!

【取材後記】

リファラル採用はバズワードとして話題になっていますが、「決して魔法のツールではない」と、株式会社MyRefer代表取締役社長 CEOの鈴木氏。重要なのは人事の地道な啓蒙活動。ただ自社だけで取り組んでいては、なかなか頭打ちになってしまう。だから、人事同士のコミュニティを定期的に開催することで、お互いの取り組みや生々しい悩みの共有を行い、リファラル採用を業界全体で盛り上げていきたいとのこと。
リファラル採用をどのように取り組めばいいのかわからない、成果が出ないといった悩みを持たれている人事・採用担当者の方は是非一度このようなイベントに参加してみてはいかがでしょうか。

(取材・編集/齋藤 裕美子、撮影/西村 法正)