【今の採用手法や予算は最適!?】よくある5つの課題をデータを基に解説(無料調査データ付)

-
売り手市場が続き、企業側では目的や状況に応じた「採用手法の選別・使い分け」が進んでいる
-
採用難度の高い職種ではダイレクト・ソーシングの活用が増加。採用活動における「内部費用」を削減するために人材紹介サービスを活用する動きも
-
今後取り組んでいく課題では「現職社員の離職防止」や「エンゲージメント向上」が大きなテーマに。リモートワーク実施の再検討も不可避か
採用成功に向けて有効な打ち手を実行するためには、自社のことだけではなく、転職市場全体の動きを俯瞰することが欠かせません。とは言え転職市場や他社の動向を把握するのは簡単ではないのも事実。そんなときに活用していただきたいのが、パーソルキャリアが定期的に実施している法人市場調査結果(2024年度上期)です。
採用の現場で直面する課題に対して、データに基づいて考えられる解決策とは?新たな打ち手を実行する際に社内への説得材料となるデータの活用法とは?「法人市場調査 2024年度上期」(※)の結果を取りまとめたパーソルキャリアの髙尾氏とともに、実際のデータをひもときながら考えます。
(※)調査概要
■調査手法:Web調査(調査会社:LECT 調査モニター:クロス・マーケティング社保有パネル使用)
■調査対象者:全国、20~69歳男女、「会社役員、正社員、公務員・教職員・非営利団体職員、専門職」のいずれかで、正社員の中途採用サービスの「導入・利用するサービスの委託先を決めている/決めてはいないが、情報収集し検討している」人
■調査時期:【2024年8月調査 】2024 年8月26日~8月28日【2024年2月調査】2024年2月23日~2月26日
■サンプル数:各回2,000人
採用難度の高い状況が続く中、「採用手法の使い分け」が進む
——今回実施した2024年度上期の調査全体について、髙尾さんはどんな所感を持っていますか。
髙尾氏:前回調査(2023年度下期)に引き続き、企業の採用ニーズは高い状態にあり、採用難度が高い状況が続いています。

一人当たりの採用単価に関する設問では、「1年前と比べて一人当たりの採用単価が上昇傾向にある」という回答が、「下降傾向にある」という回答を上回る結果となりました。

つまり、採用難度の高まりの背景には、今までと同じ手法では採用できなくなった、採用単価が高くなったと捉えられます。
またこうした中で、採用手法の選別や使い分けが進んできている印象もあります。後ほど詳細をお伝えしますが、課題に応じた採用手法を聞いたデータでは、「早く採用したいときには○○(手法)」など、目的別に手法を使い分けていることがわかりました。
以前は「複数の手法がある中では、どの目的で何を使っていいのかわからない」という回答が多かったのですが、さまざまな手法を試す中で、目的別に適した手法を見いだす企業が増えている、つまり、各社の採用力が高まっているといえるのではないでしょうか。
——企業規模別(従業員数別)で見ると、採用難度にはどのような変化が見られるのでしょうか。
髙尾氏:採用実績の推移について見てみると、従業員数20名未満の企業が突出して高い伸長率となっています。

コロナ禍明けから、大企業では中途採用を積極的に進めてきました。このゾーンでの採用が進み、伸長率が落ち着きつつある中で、中小企業が戦える状況になってきたと言えるのではないでしょうか。
ただ、「採用難度の高まりを受け新たにチャレンジしたいこと」という質問項目で、大企業は採用強化(未利用だった有料人材サービスを増やす、採用担当者を増やす)の回答が増えていました。目的に応じた採用手法の導入など、大企業はさらに採用力強化に取り組むのではないでしょうか。
——今回の調査結果で、エリア別に見た特徴の違いはありましたか?
髙尾氏:採用手法が大きく異なるといったことは見られませんでした。ただ、それぞれの手法の活用状況を見てみると、「自社での募集(自社ホームページ)」で採用する企業が一定数あり、特に、東名阪エリアはその他のエリアを比べて採用に至るケースが多いようです。東名阪エリアでは知名度の高い企業があるなど、企業のブランド力に起因していると考えられます。
また、東名阪以外のエリアでは、採用手法の中でもハローワークの活用率が高い状況です。大手人材サービスがどのエリアまでカバーしているかによって、各採用手法の活用状況が異なってくるのではないでしょうか。
職種別・採用課題別に見る「最適な採用手法」とは
——ここからは、実際に直面することが多い採用課題や困りごとに対して、今回の調査結果を活用するためのヒントをお聞きします。
課題①:特定の職種で採用に苦戦しており、最適な採用手法を知りたい
髙尾氏:最適な採用手法を考える上では、職種ごとに聞いた「採用に至った手法」の調査結果が参考になると思います。

たとえば営業職では、ハローワークに次いで人材紹介サービス、求人広告(Web媒体)の順で採用できていることがわかります。また、採用が難しいと言われるIT系エンジニアの場合は、人材紹介サービスが最も効果的だと言えますが、他の職種に比べても比率が高いダイレクト・ソーシングも有力な手法になっていると言えるでしょう。
課題②:管理職や専門職など、特に難度の高い採用に向けて有効な手法を知りたい
髙尾氏:課題に応じた採用手法を聞いたデータを分析すると、転職希望者が少ないなど採用難度の高い人材の採用や、役員・管理職クラスの採用については、ダイレクト・ソーシングが最も選ばれる手法となっています。

また、スペシャリストや特殊なスキルを持つ人の採用という項目では、人材紹介サービスが1位です。人材紹介サービスとダイレクト・ソーシングのどちらか、もしくは併用する企業も多いかもしれません。
課題③:採用予算の確保に向け、他社と比較したデータを根拠にして経営層へ説明したい
髙尾氏:採用単価については、職種別の採用単価の調査結果を参考にできるのではないでしょうか。

上図は、左側が24年度、右側が23年度の調査結果となっており、平均単価と昨年比の伸長率を職種ごとにまとめています。自社の現状を認識するためには、取り組んでいる職種の採用単価が全体平均と比べて高いのか低いのかを確認してみてください。仮に自社の採用単価が全体より低い状態にあるとすれば、採用難度の上昇や他社の平均単価の伸長率などを踏まえ、さらなる予算確保を進める必要があるかもしれません。
外部・内部費用を含めた「採用活動のコストダウン」に向けて人材紹介サービスの活用例が増加
課題④:リソースや工数を割けない状況でも効率的に採用活動を進めたい
髙尾氏:前述の「目的別採用手法の使い分け調査」を見ると、工数をかけたくない状況での採用手法は人材紹介サービスが選ばれていることがわかります。

今後1年間(短期)で取り組む予定の課題を見ると、「採用活動におけるコストダウン」への注目度が高まっていることがわかります。別の調査でコストダウンの中身を詳しく見たところ、採用活動における費用は「外部費用(有料サービスへの外部委託費)」と「内部費用(採用担当者の稼働工数など)」に大きく分かれました。
外部費用削減のためには採用手法を見直したり、早期退職を防いだりする取り組みが必要です。一方、内部費用削減に向けては人材紹介サービスの活用を拡大する傾向が多く見られたのです。
人事としては一人当たりの採用単価で計画を立てることが多いかもしれませんが、限られたリソースで効果を最大限に出すために、人材紹介サービスの活用はさらに重要になっていくのかもしれません。
課題⑤:2025年度に向けて取り組むべきテーマや打ち手を考えたい
髙尾氏:中途採用業務に関する困りごとを聞いた調査結果では、「採用した人材が活躍しない」「すぐに辞める」など、オンボーディングに関する問題が多く挙がっていました。

出典:法人市場調査結果(2024年度上期)
人事全般への興味・関心について聞いた調査では、「ワークライフバランスの実現」が伸びているという結果も出ていました。この裏側には、現職社員の離職防止やエンゲージメント向上が大きなテーマとなっている現状が見えてくるのではないでしょうか。
転職希望者の側からも、働き方については高い関心を持たれています。最近では多くの企業で出社回帰の動きが鮮明になっていますが、転職希望者のニーズに応えるという意味では、リモートワークの実施なども再び考えなければならないテーマとなっていると思います。
離職防止やエンゲージメント向上を目指す施策は、自社の採用力向上にもつながります。他社の関心ごとを参考にして、2025年度に取り組むテーマを見いだしていただければと思います。
取材後記
採用難度が高まっている中でも、青天井に採用費用を確保できる企業は少ないでしょう。だからこそ今後は、髙尾さんが繰り返し指摘していたように「目的や求める人材に応じた採用手法の選択」がより重要になっていくのだと感じました。1年前に正解だった手法も、転職市場の変化によって通用しなくなりつつあるかもしれません。髙尾さんは「外部のパートナーへ依頼する際には、自社の現状や目的に応じた採用手法として何が最適なのか、先入観を持たずに幅広く相談していくべき」ともアドバイスしてくれました。
企画・編集/田村裕美(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介
中途採用市場の企業動向がわかる!法人市場調査結果(2024年度上期)
資料をダウンロード