採用してはいけない“リスク人材”3タイプの特徴と面接での見抜き方【質問例付】

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株式会社人材研究所

ディレクター 安藤健(あんどう・けん)

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  • 採用の要件定義に必要なのは4分類。応募者を落とす基準になる「自社にあってはいけないもの」を明確にし、採用関係者で共有することが重要
  • リスク人材には「ハラスメント」「勤務態度不良」「コミュニティクラッシャー」の3タイプが存在。入社すると、エンゲージメントの低下や大量離職を招くおそれも
  • リスク人材を見抜く面接のコツは、過去の経験や行動を深掘りすること。応募者の希望的観測ではなく、具体的な事例をできる限り細かく聞く

中途採用が厳しさを増す中で、本来は入社させるべきではなかった人材も採用してしまっていませんか?

さまざまな人材がいる転職市場には、入社すると自社に悪影響をもたらす「リスク人材」が存在するのも事実。数多くの企業の人事・採用支援を手掛ける株式会社人材研究所の安藤健氏は、「リスク人材の存在によって離職者が増えたり、最悪の場合は組織が崩壊してしまったりすることもある」と指摘します。

採用すべきではないリスク人材の特徴と、面接で見抜くためのポイントを詳しく聞きました。

要件定義は「あってはいけないもの」も明確に

中途採用が厳しさを増す中で、「落とす」ことを想定したり注意を向けたりすることができなくなっている企業も多いと思います。採用に携わる人事や現場管理職は、どのような意識を持つべきでしょうか。

安藤氏:確かに、応募者を落とすことへの意識を持てなくなっている企業が増えているかもしれません。

さらに言えば、採用要件があいまいなまま、採用活動を進めている企業が多いとも感じます。ほとんどの企業はMUST要件とWANT要件しか設けていませんが、私は「自社ではどのレベルまで許容できるか」を明確にするため、採用要件をさらに細かく定義するべきだと考えています。

私がお勧めしているのは、以下の4分類での要件定義です。

①ないといけないもの
いわゆるMUST要件、これがなければ採用できないものです。
②あった方がいいもの
いわゆるWANT要件、選考時の加点材料となるものです。
③ない方がいいもの
選考時の減点材料となるものです。「転職回数が多い」など、軽いネガティブ要因が当てはまります。
④あってはいけないもの
組織に悪影響を与える可能性が高い、致命的な減点材料です。これが確認できれば不採用と判断します。

このように4分類にきちんと分け、採用に携わる現場の関係者と擦り合わせて明文化することが大切です。

どんなに売り手市場とは言え、④の人を採用してしまうと、結果的に採用費用の何倍ものコストを支払うことになるかもしれません。市況感によらず、自組織で絶対に許容できないものは明確にしておきましょう。

採用すべきではない「リスク人材」3タイプ

安藤さんが考える、採用すべきではない「リスク人材」とは。

安藤氏:健全に組織を機能させるためには、はたらく人の信頼関係とコミュニケーションが重要です。目には見えにくいものですが、これらの絶妙なバランスの上で組織が成り立っているのです。私たち人事もこの2つの観点を忘れてはいけません。信頼関係とコミュニケーションが一度崩れると、元通りになるまでにものすごく時間がかかります。

採用すべきでないのは、このバランスを崩してしまう人。大きく分けて3つのタイプがあると考えています。以下に説明します。

ハラスメントタイプ

周囲に対してパワハラやセクハラなどを行ってしまう人です。特に気を付けるべきなのは、境界線があいまいになりがちなパワハラ。厳しい指導とパワハラの境界線が難しく、上司としては「愛のある指導」のつもりでも、受け手からすればパワハラになってしまうことも珍しくありません。客観的に見て、あからさまなハラスメント人材は採用すべきではないと考えます。

勤務態度不良タイプ

簡単に言えば誠実ではない人です。欠勤・遅刻が多かったり、上司の指示に従わなかったり、協調性が著しく低かったり。こうした人はチームの輪を乱してしまいます。昔ながらの日本企業では、人事評価制度に「情意評価」を盛り込んでいるケースが少なくありません。これはまさに勤務態度の評価であり、この観点で採用してはいけない人材を見極めることが重要です。

コミュニティクラッシャータイプ

あまり聞き慣れないかもしれませんが、このタイプが最も厄介だと感じています。コミュニティクラッシャーの典型例は、社内で立場の強い者に徹底的にこび、立場の弱い者には徹底的に高圧的になるような姿勢。影では上司の悪口を言ったり、平気でうそをついたり、他人の手柄を自分のものにしたりします。その場を取り繕うことに長けているので、面接で見抜きにくいという面もあります。

リスク人材によって周囲のエンゲージメントが低下、大量離職も

この3タイプの人材を採用してしまった場合、組織にはどのような悪影響がもたらされるのでしょうか。

安藤氏:ハラスメントタイプについては、被害者から人事へ声が上がってくるケースが多いですね。最近では職場全体でハラスメントに対する意識が高まっていることもあり、同僚など第三者が声を上げて発覚することもあります。

ハラスメントは構造的に上司の立場にいる人がやりがちで、こうした人はハイパフォーマーでもあり、通報を受けた会社側が組織的に隠蔽(いんぺい)してしまうこともあります。現在の業績だけを見て上司の責任を問わず、うやむやにしてしまうのです。さらにひどいケースでは「被害者側にも落ち度があるのでは」と対応してしまうことも。そうした対応を見た他の従業員もエンゲージメントが大幅に低下し、大量離職につながるおそれもあります。

勤務態度不良タイプでは、他のチームメンバーから「あの人とは一緒にはたらけない」という声が上がり、直属のマネージャーが対応に迫られることが多いです。

よく聞くのは、IT企業のエンジニアなどで「スキルはとても高いけどコミュニケーションが苦手」というタイプ。評価としては「勤務態度が悪い」とされますが、本人には悪意があるわけではない場合も多いです。その意味では、企業の組織文化や環境に左右される部分も大きいと言えるでしょう。

コミュニティクラッシャータイプは、影響力のある社内の人にこびるのが上手です。それを知っている他のメンバーは、直属のマネージャーになかなか声を上げられません。マネージャーからすると、コミュニティクラッシャーは表面的には「よく頑張っているし、素直に尽くしてくれる良い人材だ」と見えるでしょう。

周囲のメンバーにとっては、上司に言っても取り合ってもらえなかったり、問題を過小評価されたりする厄介な存在です。この場合は、第三者である人事が現場に介入しなければいけません。採用してしまった後では対応にパワーがかかり、組織全体が疲弊してしまいます。メンバーの会社へのエンゲージメントが低下し、離職者が増えてしまうかもしれません。

「リスク人材を見抜く」タイプ別の面接法

リスク人材を採用しないためには、どのような面接を行うべきでしょうか。タイプ別の見抜き方を教えてください。

安藤氏:リスク人材のタイプ別に、どのような質問を投げかけ、深掘りし、評価していくかを解説します。

ハラスメントタイプを見抜くには、過去の職場での指導経験を聞き、その結果として相手とどのように信頼関係を築いたかを深掘りすることが重要です。評価観点としては、相手の感情に対する想像力があるか、指導と称して支配的な行動・言動を取ることがないかなどを見ましょう。

勤務態度不良タイプについては、過去の仕事で自分が納得できない指示を受けたときなど、具体的なシーンでどのようにセルフコントロールしてきたかを聞きましょう。不満を抱えたときにどう自己処理しているか、改善への意思があるか、などが評価観点となります。

コミュニティクラッシャータイプでは、「ウマが合わない人」との接し方を聞くことが重要です。過去の場面でどのような行動を取ったのか、その結果としてチームがどのように変わったかなどを深掘りし、立場が上の人と下の人への対応に二面性が出ていないかなどを評価してください。

ただ、実際の面接で見抜くのは簡単ではありません。面接では「自分を盛る」応募者も多いからです。これを踏まえて、リスク人材のタイプによらず、面接で強く意識していただきたいポイントもお伝えします。

希望的観測ではなく、具体的な過去の事例を丁寧に聞く

応募者本人の願望や意識ではなく、「具体的に過去に何をしたのか」を聞いてください。たとえば仕事にやる気が出ないときに、「こんなことを心がけている」「こんな風にやりたいと思っている」というのは本人の希望的観測です。実際に取った行動をできるだけ細かく聞くことで、言行一致しない部分が見えてくるはずです。

面接官は「好かれようとする」意識を捨て、「見抜く役割」を担っていると心得る

昨今の売り手市場では見極めよりも自社の魅力付けに意識が向き、面接官が「応募者に好かれようとする」ことに終始してしまうこともあります。応募者を見抜く面接を行うのであれば、「自分は見抜く役割なのだ」と強く意識しておきましょう。一次面接では口説きを意識し、二次面接では見抜くなど、フェーズを分けることも大切です。

リスク人材の入社は、組織に悪影響をもたらすだけでなく、入社した人自身も不幸になってしまう可能性が高いと言えます。だからこそ面接では、「見抜く」意志を強く持ち、応募者と関わっていただければと思います。

資料・写真提供:株式会社人材研究所

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取材後記

安藤さんは「“リスク人材を採用しないようにしたい”という企業ニーズはより拡大するはず」だと指摘していました。企業側の実情としては、転職市場に選べるほど人がいない状況で、ほぼスクリーニング基準がない状態になっているところも多いかもしれません。そんな状況だからこそ、自社が採用すべきではない人材の要件を明確にし、「適切に落とす」ことが求められているのだと感じました。

企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介

採用してはいけない“リスク人材”3タイプの特徴と見抜くための面接質問例

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