入社直後に転職サイトに登録した新社会人が過去最多に。「賃上げラッシュ」が転職期待を後押しか

パーソルキャリア株式会社

転職サービス「doda」を運営するパーソルキャリア株式会社は、2025年版「新社会人の転職サイト登録動向」を発表。入社直後の4月にdodaに登録した新社会人の数が過去最多を更新したことが明らかになりました。

この傾向は、(1)より良い労働条件を求める意識の高まりと、(2)「転職ネイティブ」世代の価値観の定着、という2つの大きな要因によって後押しされているようです。

新社会人の「doda」登録者数は過去最多を更新

2025年4月における新社会人のdoda登録者数は、前年比で113%。調査を開始した2011年と比較すると約31倍の大幅な伸びを記録しました。これはdoda会員全体の登録者数の伸び(2011年比で約7倍)を大きく上回っており、新社会人の間で入社直後から転職を視野に入れる動きが急速に拡大していることを示しています。

2025年4月度「doda」会員登録者数の推移

2025年4月度「doda」会員登録者数の推移

好待遇企業への転職機会をうかがう動き

doda編集長の桜井貴史氏は、この背景に2つの要因を挙げています。

1つ目は、給与をはじめとするより良い待遇を求めて、転職の機会を探る登録が増加したことです。

2025年卒の大学生の就職内定率は過去最高水準となり、若手人材の売り手市場が続いています。多くの学生が夏前には就職活動を終えていましたが、その後、2024年の夏以降に物価高などを背景とした賃上げの動きが活発化しました。特に33年ぶりとなった高い賃上げ率の発表や、初任給を30万円以上に引き上げる企業の登場は、就職活動を終えた学生たちに大きな影響を与えました。

その結果、「より条件のいい企業に挑戦したい」「大手企業へ再挑戦したい」という心理が働き、転職サイトへの登録につながったと考えられます。加えて、近年は中途採用市場においても若手層は売り手市場であり、転職によって年収が上がるケースも増えていることから、転職そのものへの期待感が高まっていることも、この動きを後押ししていると推測されます。

「転職ネイティブ世代」の情報収集

2つ目は、現在の新社会人が「転職ネイティブ世代」であり、今後のキャリアを見据えた情報収集を目的として転職サイトに登録するケースが増えていることが挙げられます。

パーソル総合研究所の調査によると、20代の約7割が転職を「総合的に見てよいこと」とポジティブに捉えています。また、仕事選びにおいて重視する点として、従来の「資格取得」や「スキル習得」といった自己成長志向の項目が減少し、「さまざまな仕事を経験できる」「社会に貢献できる」「キャリアを生かせる」といった、「自分らしい働き方」につながる項目が上昇傾向にあります。

終身雇用の崩壊が現実そのものとなり、転職がキャリア形成の当たり前の選択肢となった現代において、新社会人は将来の転職を前提として最初のキャリア(ファーストキャリア)を選ぶことが一般的になっています。彼らにとって転職は、自分らしい働き方を実現するための前向きな手段であり、すぐに転職する意図がなくても、将来の可能性を探るための情報収集ツールとして転職サービスを活用しているのです。

このように、2025年の新社会人による入社直後の転職サイト登録者数の増加は、賃上げなど経済状況の変化を捉えてより良い条件を求める現実的な視点と、転職をキャリアの一部として柔軟に考える新しい価値観が複合的に作用した結果であるといえそうです。

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筆者/モリタアヤリ