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1999年、新卒でユーザー系SIerに入社し、人事としてキャリアをスタートさせる。1社目を約5年間経験した後、採用コンサルティング企業に転職し、外資ITハードウェア企業のオンサイトリクルーターを約2年間に渡って担当する。その後、外資系ITソフトウェア企業に人事として入社。2012年よりフューチャーアーキテクトに入社し、現在、人材戦略グループのチーフを務めている。
人事自ら採用候補者を探し直接アプローチするダイレクト・ソーシングは、新しい採用手法の一つとして注目されています。
もっとも、今回お話を伺った宮原さんは、今から約10年前からダイレクト・ソーシングによる採用を始めていたそうです。そんな宮原さんが、いち早くダイレクト・ソーシングに目を付けたきっかけとは。採用成功に結びつけるための考え方や行動とは。
これまでのキャリアを振り返りながら、じっくり語っていただいた内容をご紹介します。
宮原氏:私は、現職のフューチャーアーキテクトを含めると、これまで4社を経験しており、いずれも人事業務に携わっています。その中で大きな転機となったのが、3社目の外資系ITソフトウェア企業で働いていた時のことです。その会社では、人材紹介サービスを中心に利用しながら年間200~300名強の採用を行っていました。ところが、入社から約3年目の時に変化が起こります。日本を含むアジアパシフィックの採用を統括する海外の責任者が来日し、突然「人材紹介サービスは利用させない」と厳命され、方針が切り替わってしまったのです。
宮原氏:もちろんです。正直なところ、本気で言っているの…と思いました。欧米と日本では採用のあり方が違うと主張しましたが受け付けてくれません。
アジアパシフィックの採用責任者の意図するところは、「人材紹介サービスの成果報酬は高いからダメ」ということでした。具体的には、ダイレクト・ソーシングのみで採用しなければならないということなのですが、経験が無いので十分な成果が得られるかは不明です。そもそも、エグゼクティブ層や即戦力の人材として、経験が豊富な方とお会いしたかったから、人材紹介サービスを使っていたという背景もありましたし、不安でしかありません。
どうしようかと悩みもしましたが、「ダイレクト・ソーシングは、すでに欧米では当たり前のように取り組まれ実績があるということなので、私も自身で採用候補者を探し出し、アプローチも行い、自ら会社の良さを伝えてみるか」と出来る気が全くしませんでしたが、最後は覚悟を決めて、ダメ元で欧米と同じことをしてみることにしました。
宮原氏:そうですね。企業の事業責任者やトップタレントなど、高い成果を残してきた方々は、インターネット、場合によっては企業ホームページなどで名前を確認することができます。社名と氏名がわかり、ソーシャルネットワーク利用者であれば、直接アプローチすることが可能でした。私は、会いたいと思える方を見つけては、「カジュアルに情報交換から始めませんか?」という内容のアプローチを積極的に行っていました。
宮原氏:2008~2009年ごろです。他にも当時、徐々に注目されはじめていたビジネスSNSを活用したり、社員からの紹介による採用も積極的に行っていました。求人サイトも利用しましたが、私が目を付けたのはスカウトメールです。
当時のスカウトメールは求人サイトに付随するオプションといえる存在で、「掲載中の求人広告を見てください」と誘導するのが主な使われ方だったように感じていました。それを応募検討してもらうための「カジュアルな面談確約」で送ることにしました。そういったスカウトメールを企業の採用担当者から直接受け取ったことのない人がほとんどだったのでしょう。返信率は高かったので、大きなインパクトを与えられたのだと思います。
宮原氏:何しろ、当時の採用競合他社では、当たり前のように利用されていた人材紹介サービスが使えないので、必死でした。やり始めた当初は本当に出来るのだろうかと不安ばかりでしたが、振り返ってみると、この時に得られた経験が今の採用活動にも役立っているなと感じています。
また、人材紹介サービスとは違って、私からコンタクトした方が興味を持ち、正式応募してくれて、見事入社に至ってくれた時は、これまでにない達成感を得ることができて、やっていけそうだという自信にも繋がりました。
宮原氏:正直なところ、一概には言えないと思います。確かに今はダイレクト・ソーシングが国内でも盛り上がりを見せ、採用成功に結びつけている企業も増えているようです。しかし、だからといって安易に飛びつくのは良くないと思います。新しい採用手法を試しても結局うまくいかず、中途半端な結果に終わるように思えます。
宮原氏:まずは現状行っていることをやり切ってみることです。人材紹介サービスでも求人サイトでも、やれるだけのことをやり、それでもうまくいかなかった時に初めて次の採用手法を試してみるのが良いのではないでしょうか。
例えば、人材紹介サービスを利用しているのなら、エージェントとどれだけ連携できているかを検証します。きちんと自社が求めている人材の採用基準は提示できているか、推薦してもらった採用候補者について、こういう部分が良くて、こういった部分が物足りなかったといったフィードバックができているか、定期的な連絡をする手段を構築しているかなどです。そして、エージェント担当者に納得感を持ってもらうことで「この人と一緒に仕事をしたい、紹介したい」と思われるようになれば、採用成功率は高まってくるはずです。
宮原氏:その場合は、全力で取り組みます。採用候補者を自ら探し、求人票やスカウトメールを作るのは工数がかかります。それに、自社の業界、業務に対する知識や採用候補者を訴求するためのスキルを蓄積した方が良いので、専任の担当者を付けるのがいいのではないでしょうか。
特に導入直後は、ダイレクト・ソーシングだけに、専念するようにします。他の採用手法も使いながらだと、どうしても従来の採用手法に頼ってしまうからです。私自身、人材紹介サービスが使えなくなり、言ってみれば背水の陣の中での活用でした。だからこそ、自分なりのノウハウも蓄積できたのだと思います。
今、ダイレクト・ソーシングが広まると同時に、多くのノウハウも公開されています。情報収集は非常に重要ですが、他のやり方を真似しても上手くいくとは限りません。なぜなら会社ごとに事情が異なるからです。自分自身で試行錯誤し、経験を積み上げることで見えてくることがあるはずです。
宮原氏:現在は6人体制で、人材紹介サービスとダイレクト・ソーシング、そして採用ブランドの向上、潜在的な採用候補者を発掘するためのイベント企画、実行を行うマーケティングで、それぞれ専任担当者を配置しています。
宮原氏:もちろん、それは大事なことです。しかし、会社によっては規模や文化により、なかなか距離が縮めづらいということもあるでしょう。それに、経営陣とコミュニケーションを深める前に、やらなければならないことがあると思っています。それは、自分がいる業界を知ることです。
業界のことを知り、会社のことを知り、仕事のことを知る。私自身、IT業界に属する一人、IT業界の人事という思いを強く持っています。手前味噌ですが、人事の割にはITにも詳しいですよ。面談の際に採用担当ですと言い忘れてしまうことがあるのですが、そのまま人事だと気づかれずに私のことをエンジニアだと思い込んでしまった採用候補者もいます。
宮原氏:そう考えています。人事としてのキャリアプランや与えられた業務については考えているのに、業界や会社の事を知らない、というのではどうかと思ってしまいます。全体を見て、その上で、個別の状況を鑑みる。そうすることで個別の状況もよりはっきりし、新たな気づきも得られるのではないでしょうか。結果として、採用力の向上にもつながっていくと思っています。
ダイレクト・ソーシングが盛り上がりを見せる中、この新しい手法に安易に飛びつくことに、宮原氏は警鐘を鳴らしています。「やり切る」ということには、現状の採用活動が本当にうまくいっていないと言い切れるのか、というメッセージも込められているのではないでしょうか。既存の採用手法を、やり切った上でダイレクト・ソーシングを導入するのなら、専任の担当を付けることについて、上層部の理解も得やすいかもしれません。
また、人事をしているとつい人事のことばかり考えてしまいがちですが、業界全体を見ることの大切さも訴えています。業界を知ることで、見えてくることもあるはずです。ぜひ実践を試みてください。
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社会保険労務士法人クラシコ 代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】
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