ベンチャーを複数経て確信した採用への想い。ココナラ泉谷氏が大事にする手触り感とは

株式会社ココナラ

経営管理グループ 人事リーダー 
泉谷 翔

プロフィール

ココナラ』は、知識やスキルを個人間で売り買いできるCtoCプラットフォーム。その運営を担う株式会社ココナラは2017年7月からTV-CMによるプロモーションを開始しました。「得意を売り買いココナラ♪」というキャッチコピーに聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。

中小企業、ベンチャー各社を渡り歩き、新卒時から一貫して人事・総務などの管理部門を経験してきた泉谷さんは、2016年4月、ココナラにおける初の人事担当者として入社しました。泉谷さん入社後、採用数は飛躍的に向上。更なる事業成長に向けて組織拡大を図っています。前編では、泉谷さんが経てきたキャリアを紐解きながら、なぜココナラに入社したのかをお伺いします。

“手触り感”のある仕事を求めて

“手触り感”のある仕事を求めて

ずっと管理部門のお仕事をされてきたとお聞きしました。

泉谷氏:はい。新卒時は地元・青森で飲食のフランチャイズ店を経営する会社に就職しました。そこで、新卒では珍しいと思うのですが、人事、労務、総務など管理部門全般を経験しました。特に面白かったのが採用業務でしたね。採用業務は、会社の魅力を必死に伝えた相手が、入社後活躍してくれる。自分と同じぐらいの歳の子たちが、自分を介して、笑顔で働いてくれる…、そんな姿を見るのが何よりやりがいに感じていました。

その後、地元の物流会社に転職しました。そこでも人事・総務を担当しました。ただ、最初の会社は分割、2社目も人を大切にしない社風により人の入れ替えが多く発生するなど、地元で働くことに希望を持てなくなってしまいました。もっとポジティブな環境で勝負したいと思い、上京を決意しました。

上京後、最初に勤めたのはナビタイムジャパンです。当時は、いまでいうガラケー向けのナビゲーションサービスを提供していた企業です。もともとサービスを知っていたのと、管理部門の経験が活かせそうで面白そうというのが志望理由でした。そこでは労務がメイン業務で、社内ルールを作成・運用したり、勤怠管理やそれに伴う給与周りを担当していました。

3年半ほど勤め、狭い領域を深掘っていくより、もともとやっていた広く管理系業務に携われる環境に戻りたく、ピクスタに転職します。この時、ピクスタにおける「1人目の人事・総務」だったんですね。
そのため、人事に関わることなら何でも幅広くやらせてもらいました。Webエンジニアなど専門職を採用するために苦労したのを覚えています。
当時は、採用競合となる勢いのあるソーシャル系ゲーム企業が台頭していて。また、まだダイレクト・ソーシングやリファラル採用みたいな今では普通の採用手法がなかったこともあり、採用候補者をどうやって集めればよいのか日々苦戦していました。なかなか推薦があがってこず、媒体からの応募もなかった状況でした。
そこで、状況を打開するために2週間おきに開発責任者とともにインテリジェンス(現:パーソルキャリア)さんを訪れて、週刊少年ジャンプ(集英社から出版されているマンガ雑誌)2冊分ほどの直近登録者のレジュメを何時間もかけて読み込んだりもしましたね(笑)。
その後、Speeeに転職し、Speeeラウンジと名付けた大規模なフリースペースをディレクションするなど総務業務をメインで担当していました。

過去のご経歴をお聞きしていると、東京に来てからはベンチャーということで一貫していますが、何か思いがあるのでしょうか。

泉谷氏:ナビタイムジャパンに入った当時は、ベンチャーということは全く意識していませんでした。その後については、規模があまり大きくない会社のほうが、色んなことにチャレンジできそうと思ったくらいで。

ただ、振り返って思うのは、小さな組織では自分がコミットしたことがダイレクトに成果へ反映しますよね。事業成長に自分が貢献できている実感を、敏感に感じ取りやすい。自分を介して入社した人がイキイキと働いている。汗水かいて採用したエンジニアが大きくサービスを拡充させていく…。そんな実体験がベースにあるのだと思います。そういう“手触り感”を求めてきた結果が、今の自分のキャリアにつながっているのかもしれません。

あとは、特性としてこぼれ球を拾うのが好きで。ベンチャーでは色々整っていない分、球がこぼれることが多いので、自分に合っているんだろうなと感じています。

会社のビジョンと事業戦略、採用をつなぐ

会社のビジョンと事業戦略、採用をつなぐ

ココナラに入られた際にも、ベンチャーということが念頭にあったのでしょうか。

泉谷氏:ココナラに転職した理由はいくつかありますが、やっぱり1番はユーザーであり、サービスが好きだったこととなります。好きなサービスの成長に貢献したい、一緒に成長していきたいという強い思いです。

また、ピクスタの時と同じ「1人目の人事」の募集でしたので、自分と同じ想いを持つ仲間を集めたいという想いです。あとは、社長の南のブログを読んで心から共感したことでしょうか。

社長のブログには、どのようなことが書いてあったのですか。

泉谷氏:「よい会社をつくりたいのか、よい事業をつくりたいのか」という話です。「よい会社をつくりたい会社」は、まず人ありき。会社のビジョンは明確でないが、起業家精神がある優秀な人材を集めて自由にチャレンジさせれば、自ずと良い事業が生まれていくという考え方ですね。

でも南は、ココナラは「よい事業をつくりたい会社」だ、と。まず会社のビジョンありき。そのビジョンに共感し、実現に向けて走れる人を求めるのだ、そんな話が書いてあったと思います。
ココナラのビジョンは、[一人ひとりが「自分のストーリー」を生きていく世の中をつくる]なのですが、その実現のために会社は事業を生み出していますし、ビジョンに共感した人が集まってきます。ベンチャーだったら尚更、会社を成長させていく上で“ビジョン”が根幹にあるわけです。
どうしても“人ありき”になってしまうと、優秀か優秀でないかに判断軸が置かれてしまう。「あ、自分と考えが合う社長だな」と思いましたね。

ビジョンに共感してもらうことが前提になるわけですか。

泉谷氏:そこが一番大事です。当社はまだ社員数が少なく、若手やポテンシャル層を採用して育てる余裕はありません。だから、自走できる人を採用したい。
ただ、自走してもらう上では、目指す方向が合っていなければなりません。まだまだ当社も立ち上げ期で、形のないサービスを扱うプラットフォームというマーケットをつくっている状況ですから、皆が好き勝手やっちゃうとバラバラになってしまいますよね。その意味で、「ビジョンに共感できるかどうか」を最も重視しています。

昨秋、人事評価制度を新しく立ち上げました。その際に、個人の目標設定の手法としてOKR(※)という手法を導入しました。事業計画を四半期ごとに分けて、それをグループの目標、さらに個人の目標に1段ずつブレイクダウンしていくやり方です。ざっくりいうと全員が目標を達成すると事業計画も達成するという立て付けです。だから、各社員の目標が必ず事業戦略と結びついているんですね。
「実現したい社会」があって、そのために事業計画・戦略があり、それを一人一人が愚直に実行する、そのような会社のあり方を体現した制度だと言えます。

※OKR:「Objective and Key Result」の略。「目標と主な成果」と訳される。チームや個人の目標を明確化する手法の一つ。

泉谷さんinterview

今の事業上の課題としては、例えば具体的にどんなものがあるのですか。

泉谷氏:細かくはいろいろありますが、大きなところをお話しすると、「ココナラ」は今、総合的な相談プラットフォームになることを目指しています。いろいろな悩みや困りごとを抱えている人が、ココナラに来れば解決できる、そういう場にしていきたい。
そのためには、あらゆる相談に対応できる必要があるので、サービスやカテゴリの幅を広げたりしています。

例えば、去年の秋には『ココナラ法律相談』という、弁護士に無料で相談できるサービスや、今年の春には手作りの雑貨やアパレルなどを出品・購入できる『ココナラハンドメイド』をリリースしました。

今まで世の中にない新しいマーケットをつくるビジネスなので、前例がない。手探りでやってみて、検証して、改善するという繰り返しです。
ただ、前例がないからこそ、「自分たちでやってやろう」と気概ある人材が集まって来る。これからも、ビジョンに共感し、自分で考えて走ることができる、そんな人に来てもらいたいですね。

【取材後記】

学生時代ずっとサッカーをやっていたという泉谷さん。スポーツマンシップ溢れる泉谷さんならではで、「汗をかいて成果を出す」ことにこだわり、何事にも愚直に取り組まれている印象を持ちました。1人目の人事は責任もプレッシャーも大きいはず。それをポジティブにとらえ楽しんでいる姿が、インタビュー中にも感じることができました。
後編の記事では、泉谷さんの入社後、ココナラはどのような採用をされているのか、また、人事として何を意識して取り組まれているのか、お話を伺いたいと思います。

(取材・文/畑邊 康浩、撮影/石原 洋平、編集/齋藤 裕美子)