人材を推薦したくなる人事とは【人材紹介会社とパートナーシップを築く2つの方法】
d's JOURNAL
編集部
中途採用で人材紹介会社(エージェント)利用されている企業も多いのではないでしょうか。しかしながら、サービスを利用する中で、「何十社もの人材紹介会社とお取引しているが、なかなか推薦があがってこない」「要望にあった人材を推薦してくれないのは、コンサルタントにやる気がないからなのではないか」…など、推薦に対して疑問や不満に感じている企業もいるかもしれません。
売り手市場の中で、人材採用チャネルの活用方法が重要視されています。そこで今回は、「人材紹介会社との付き合い方」をテーマに、自社にあった最適な人材を推薦してもらうために心得ておくことをご紹介します。
「人材を紹介しづらい!」のは、こんな人事・採用担当者
人材紹介に限らず、採用支援を行っている会社は、「企業と転職希望者の最適なマッチング」を目指してサービスを提供しています。もちろん企業が求める人材を紹介していくために全力を尽くしますが、人事・採用担当者の応対次第では、なかなか候補者(キャンディデート)をご紹介できない場合もあります。では、その応対とはどのようなものかみていきましょう。
自社の魅力を語ってくれない
「当社の商品が一番の魅力です(具体性がない)」や「現場のことは分からないから」と、自社の訴求ポイントを語ろうとしない人事・採用担当者は意外と多いです。求職者にとっては非常に魅力的なことであっても、企業にとっては当たり前の情報のため、「こんなことは言っても意味がない」と魅力的な情報を出してくれないと、どのように推薦したらいいのか、どのように企業をアピールすればいいのかと、人材紹介会社は困ってしまいます。
言うことバラバラな“風見鶏”
あっち向いたりこっちを向いたりする風見鶏同様、人事・採用担当者に採用ターゲットイメージがなく、面接官や決裁者の意見に左右されてしまう人事・採用担当者だと、人材紹介会社として、「結局、何が正しいのかわからない」「どうしたいのかわからない」と困ってしまうのです。このタイプは、専門性が高い人材を求める(現場に決定権がある)企業に多い傾向があるようです。
進捗(選考状況)を教えてくれない
進捗(選考状況)が伝えられないのは、「人材を紹介されたが忙しくて書類を見ることができない」「面接官が出張に出てしまい結果がわからない」「来週面接の候補者を待って結果を出したい」などと理由はさまざまでしょう。しかし、企業に人材を推薦し、それがどうだったのか分からないと、人材紹介会社も動きようがありません。仮に検討中だったとしても、合否のどちらに近い状態なのか、何で迷っているのか、必ず状況を共有するようにしましょう。
「なんとなく」「ピンとこない」と結果があいまい
選考の合否に関わらず、あいまいな表現でフィードバックをしてしまう人事・採用担当者は多いです。「なんか違う」「話していると違和感があった」など、NG理由を言語化できずにフィードバックしてしまうと、人材紹介会社も何が良かったのか/良くなかったのか理解できず、次の推薦者を出すことが難しくなってしまいます。
「面接に参加=志望度が高い」と思っている
人材紹介会社が推薦する人材は、すべてか自社への志望度が高い状態ではありません。「気軽に話を聞いてみたいので応募します」という候補者が多いのは事実です。つまり、「面接しても自社への意欲を感じられなかったから」といった理由でNGが続いてしまうと、いくら企業の応募要件にあった人材だったとしても「志望度がないから無理だろう」と推薦を見送ってしまう場合もあります。
候補者の応募要件を絶対ゆずらない
選考NGが続いてしまうと、人材紹介会社は応募要件に合致する人材がいなくなってしまいます。そこで、「給与を上げる」か「条件を緩和する(例:TOEIC点数を下げるなど)」ことを提案しますが、一向に譲ることをしない企業だと、人材紹介会社はどのようにしたらいいのかわからずに、合致する求職者が現れるまで推薦ができなくなってしまいます。
関係性を良くするために、人事・採用担当者が意識すべき2つのこと
では、会社が求めている人材を継続的に推薦してもらうために、人事・採用担当者はどのような意識を持って人材紹介会社と付き合っていくのがよいのでしょう。押さえておくべきポイントはたった2つです。
1.他社じゃなくて自社に応募するための差別化情報を出すこと
キャリアアドバイザーが候補者に求人を紹介する際、単に「条件がいいから」「希望にあいそうだから」勧めるわけではありません。求人票からわからない「その企業が他社と比べてどんな優位性があるのか」を加え、応募意思の醸成を行っています。
キャリアアドバイザーは候補者に企業紹介を行う際、仕事内容やキャリアプランはもちろん、業界動向や企業情報、組織構成、福利厚生にいたるまで、どんな情報でも、その候補者にとって選択するにあたっての条件になると判断すれば説明していきます。
今は口コミサイトやSNSなど情報発信メディアが多数ある中で、キャリアアドバイザーの存在意義は、「業界動向や競合情報を踏まえた上で、フラットな目線で企業紹介ができること」です。客観的な第三者の視点で企業の魅力を語ることで、候補者の応募意思が高まり企業推薦へとつながっていくのです。
2.選考フィードバックはできるだけ早く、的確に行うこと
人材紹介会社の営業・キャリアアドバイザーが企業に人材紹介をする際は、求人要件や募集背景を考慮することは大前提です。それに加えて、書類選考や面接結果を踏まえて、企業に推薦する人材をブラッシュアップしていきます。
そのときの参考になるのが、「なぜその人材を合格/不合格にしたのか」という情報です。選考を通過させるかどうか迷っている場合は、なぜ迷っているのかも重要な要素となります。人材紹介会社はどんな些細なことでも企業からのフィードバック情報はストックをしておき、次の候補者の推薦精度をあげていきます。
また、連絡がまったくないと選考中で待たせている候補者に対してどのような温度感(通過の見込みがあるのか、厳しいのかなど)で状況を説明したらいいのか、そして、次の推薦はどのような人材をあげればいいのか判断がつかなくなってしまいます。
フィードバック内容を共有する際に心がけたいことがあります。いくらNG理由を伝えたとしていても、「スキル不足のため」「うちには雰囲気があわないから」だと、今後どのような人材を紹介すべきなのか判断が付けられません。
例えば、
○スキル不足→
どのスキルが足らないのか?将来的にどういうスキルが必要なのか?そのスキルがないとどうなるのか
○雰囲気があわない→
会社はどのような雰囲気でどのような人が働いているから、▲▲▲▲という部分があわない
などと、詳細にフィードバックすることで情報精度が高くなっていきます。面接官が応募者に「それはなぜですか?」と具体性を求めるときと同様に、「なぜ良かったのか/なぜだめなのか」「どういうところがポイントなのか」とWhy・Whatを詳細に伝えるようにしてください。そうすることで、「どのような候補者を推薦すればいいのか」をさらにブラッシュアップすることができ、次の候補者推薦につながっていきます。
もし、言語化しづらい場合は、その職種で必要なスキルをペンタゴンチャートなどにし、欲しい人材に対して今回の人材がどのようなスキルだったのかを可視化するのもよいでしょう。
人材紹介会社を味方につけて、上手に付き合うためには
人材紹介会社とパートナーシップを築き、PDCAを回していく上で重要なのは何よりも「コミュニケ―ションを密にとること」です。選考の進捗状況はもちろんですが、「企業組織がこのように変わった」「プレスリリースでこんな発表があった」など、会社全体の情報を積極的に共有することが大切になります。
どんな些細なことでも共有していくと人材紹介会社のストックとなり、候補者に企業紹介する際の武器となります。また、他の人材紹介会社での進捗状況(通過者・決定者の情報)も共有しておくとよいでしょう。
情報を共有することで、「私はあなたのことを信頼しています」という関係性が生まれ、今度は、転職市場や求職者側のトレンド情報など、人材紹介会社からの情報発信も多くなってきます。
人材紹介会社にお金を払うのだからやってもらって当たり前という姿勢では、いくら時間をかけても上手く進みません。人材紹介会社をはじめ、人材サービス企業は「人事部のイチメンバー」であるととらえて採用活動を行うようにしましょう。
(文・編集/齋藤 裕美子)