1

甲南大学経営学部卒業後、株式会社リクルートに入社。同社HR事業部門(現:株式会社リクルートキャリア)に所属。多くのクライアントとカスタマーのマッチングを実現。またクライアントの事業戦略とリンクした人材採用基準の策定、組織業績拡大、新人育成戦略立案、社内トレーナーとしても従業員向け研修企画設計、キャリア開発プロジェクトに関与するなど幅広い業務を経験。その後、2014年6月株式会社HRディレクション・パートナーズ設立後、各種研修企画設計・開発・講師業務及び求職者への就活支援業務を行っている。
面接の重要な機能として、「Judge(見抜く)」と「Attraction(惹きつける)」の2つがあります。入社後活躍&定着する人材の採用を強化していくためには、どのような人物なのか、自社に適した人材なのかを見抜くことが何よりも重要です。
そこで、今回は「Judge(見抜く)」にフォーカスし、面接で評価すべきポイントと、STAR理論をベースとした具体的な質問例をご紹介します。
「自社が求める優秀な人材はすぐに見抜くことができるだろう」と思っている面接官の方も多いのではないでしょうか?しかし「この人が欲しい」とすぐに思う優秀人材は市場において10%の割合であり、すぐに出現することはありません。ボリュームゾーンとなるのが、普通評価の人材です。
一見秀でた能力・評価かどうかわかりづらく、「一回の面接だけでは判断しづらい」「他の候補者と比較したい」などと迷いだしてしまいがちなゾーンです。このように迷ってしまうと、売り手市場の今、他企業に取られてしまう可能性も高いです。そのために、できる限り1回の面接で「見抜く」ことが求められるのです。
上の図の三角形は、海に浮かぶ氷山だとお考えください。
「コンピテンシー(行動特性)」を有しているから「スキル」を自分のものにできる、「スキル」を有しているから「行動(プロセス)」できる、「行動」するから「成果」があがる。個人が仕事で成果を創出する過程は、このような階層構造になっています。つまり構造の根底になっているコンピテンシーが豊富な候補者が、必然的に即戦力として活躍ができると想定されるわけです。
図では、「スキル」「コンピテンシー」は、海面下にあります。採用候補者が即戦力かどうかを評価するには、これらスキル、コンピテンシーを知りたいところですが、聞き出すことが非常に難しい部分です。例えば、「あなたはコミュニケーション力がありますか」「論理的思考力は高いですか」という質問をしたところで、「はい」と答えられてもそれは候補者の主観的な評価であり、面接官が求めている情報ではないからです。それでは、面接官はどうすればよいのでしょうか。
答えは、図で海面上に突き出ている「行動」に注目すること。採用候補者がこれまでの仕事において、どのような行動をとってきたのかについて、できるだけ情報を集めることです。そこから必要なスキル、どのようなコンピテンシーがあるかを見立てるのです。図の大きいほうの三角形のように、成果を挙げるためにとった「行動」の質が高くバリエーションが豊富であれば、必然的にスキル、コンピテンシーも十分に有しているはず、と判断できるでしょう。反面、行動のバリエーションが少ない方は、海面上に出ている「行動」部分が小さい、すなわち、海面下にあるスキル、コンピテンシーも十分でないという見立てができるというわけです。
行動事実はどうしても抽象度がきわめて低くなる傾向にあります。鵜呑みにすることなく、「再現性があるのか」「環境や運、他人の力によるものではないか」をチェックしながら、「候補者がとった行動」について深掘っていく必要があります。
さて、どのように質問すれば、候補者の過去の「行動」をうまく、たくさん引き出せるのでしょうか。ここで参考にしたいのが、「STARモデル」というフレームです。「STAR」とは、「Situation(環境・背景)」「Task(課題・任務)」「Action(行動事実)」「Result(結果)」の頭文字を取ったものです。
たとえば、「直近1年以内に、最も成果を挙げたエピソードをお聞かせください」というクエスチョンについても、4つの切り口で深く掘り下げていくことが可能です。
どのような環境で、何を担当して、具体的にどのような行動をとって、どんな結果を導き出したのか。これら「STAR」の流れに関わる「事実」を聞き出していくことで、海面上に出ている氷山の一角である「行動」を知ることができ、ひいては自社に必要な「スキル」「コンピテンシー」を採用候補者が有しているかどうかを判断できるという仕組みです。
必ずしも「S→T→A→R」の順に聞き出せなくても構いません。フレームに沿って、パズルのピースを埋めるように質問をして、その人の過去の「行動」を明らかにしていきましょう。「何を質問しようか」と困ることなく、選考に必要な情報を漏れなく聞き出すことができるはずです。
ただ、この際に注意すべきことがあります。それは、評価の対象とするのはあくまでも「事実」だということ。具体的に話してもいないのに、面接官が「察する」ことは厳禁です。勝手に想像してはいけません。分からないことは想像で埋めるのではなく、より具体的な質問で深掘りしていく必要があります。以下に質問例を挙げていますので、ぜひ参考にしてください。
今はベテラン社員だけではなく、だれしもが面接官になる時代です。しかし面接官によって質問の仕方・掘り下げ方・評価に必要な考え方など、理解レベルが異なると、適切な採用を行うことができません。ぜひ本記事を参考に、貴社が求めてる人材の採用面接に役立ててください。
(2019年3月11日更新)
はてなブックマーク
Clip
1
d's JOURNAL編集部
2
社会保険労務士法人クラシコ 代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】
3
d’s JOURNAL編集部
4
d’s JOURNAL編集部
5
社会保険労務士法人クラシコ 代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】