いい質問で内定承諾率UPへ!はじめてのダイレクト・ソーシング(面接・内定許諾編)

株式会社アイスブルー・アンド・カンパニー 粟井英仁
株式会社アイスブルー・アンド・カンパニー

代表取締役 粟井英仁

プロフィール

一般的に、面接とは「選考」と「情報入手」の場です。そこで採用候補者のことを知り、採用上の競合を知り、その情報をもとにすることが、採用候補者に対して、自社への入社意向を高め、内定を許諾してもらうための打ち手が決まってきます。

転職希望者にとって売り手市場の時期は特に、企業は「選ぶ」よりも「選ばれる」立場になるため、「情報入手」の重要性が高くなります。採用プロセスにおいて採用候補者と直接話せる機会は少なく、面接は貴重な機会です。

概念図1

その中で、採用可否の判断に必要な情報を得て、さらに採用候補者の興味を自社に惹きつけるには、どのような面接にするべきなのかを解説します。

※この記事は、doda主催のセミナーで、アイスブルー・アンド・カンパニー 粟井英仁氏に、ご講演いただいた内容をもとに制作しています

自社や自己の開示

■ NG例…
アイスブレイクのみ

■ 良い例…
自社についての一般的な説明/採用背景の説明

■ 理想的な例…
候補者に合わせた自社の説明(強み、課題の開示)/面接官の入社動機や経歴、現在の役割を説明

ポイント解説

通常、面接に臨む採用候補者は緊張してなかなか思っていることを話せないものです。そこでまずは、面接官自ら襟を開いて自社の魅力を伝えながら、採用候補者が話しやすい環境を作ることに注力しましょう。

ダイレクト・ソーシングによる採用活動の場合は、アプローチのメールから面接までストーリーがつながっていて、お互いの情報のやり取りも進んでいるはずです。そのため、アイスブレイクはほどほどにして自社について理解を深めてもらうことに、より多くの時間を割いたほうが採用候補者を惹きつけられるでしょう。また会社だけでなく、面接官個人の入社動機や経歴を話すと、採用候補者との距離はぐっと縮まるはずです。

採用背景を伝えられる場合は、伝えるべきです。組織拡大や増員という背景ならば話しやすいですが、欠員補充、特に短期で辞めるケースが続いているポジションの募集背景を話すのはためらうかもしれません。しかし、そういう場合も、次の採用に自信があるなら、誠実に話したほうがよい場合も多いです。入社した後に、どの道分かることですし、良いこともネガティブなことも正しく伝えることで、誠実さが伝わります。

採用候補者を知る

■ NG例…
高圧的な態度での質疑応答/ 一方的な質問攻め

■ 良い例…
あいづちを打ちながら、「志望理由、成功・失敗事例、時系列での経験」についての質疑応答と、将来の希望について傾聴

■ 理想的な例…
現職で働いている意義を知る(価値観やモチベーションの源泉を知る) /希望の傾聴から、自社での実現性のすり合わせ

ポイント解説

採用候補者と直に会える時間は、とても貴重です。限られた時間でできるだけ採用候補者のことを深く知ることができるよう、質問攻めにするのではなく、話に耳を傾けましょう。一方、貴重な場だからこそ、自社のプレゼンテーションをうまく挟んでいくことがポイントになります。

また経歴や仕事で挙げた成果だけでなく、その成果をなぜ、どうやって挙げられたのか、そのために具体的にどのような行動をとったのか、深掘りしていきましょう。

話を聞いていくと、採用候補者の働く動機、仕事に対する価値観、キャリアの志向が見えてきます。自社の環境に適合するかどうかを判断すると共に、内定を出した際に承諾してもらうための自社のアピール材料を見極めましょう。

これまでに実績を挙げてきた行動を「自社に入った時に実現できるか」という視点で見極め、採用候補者を理解していくことが重要です。

採用上の競合を知る

■ NG例…
何も聞かない

■ 良い例…
転職活動についてのヒアリング(応募企業、進捗状況、職種、志望度合い、条件面、決断のタイミング)

■ 理想的な例…
なぜその企業を受けているのかを知り、転職での判断軸を知る /自社についての懸念点をヒアリングして、その場で回答

ポイント解説

採用上の競合となる企業を聞き出すのは難しい、そう感じている人事・採用担当者は多いかもしれません。しかし、ここまでに自社のことをしっかり開示した上で、「あなたのことをもっとよく知りたいのです」という姿勢で面接を進めていれば、「今、ほかに受けている企業はありますか?」と聞くと、採用候補者は、さらっと本音で答えてくれることのほうが多いです。

ほかのどの企業を受けているのか、進捗状況はどの辺りかを聞いておくことは、最終的な採用の判断をする上で重要です。ただ、それと同じくらい、その採用候補者の転職の「判断軸」を知ることに価値があります。

また、競合を知ることで、採用候補者が自社についてまだ知らないことが明らかになるケースがあります。例えば、競合のB社をなぜ受けているか聞いたら、「入社後に、希望するキャリアチェンジの道が開けているから」という場合があります。自社にも競合と同様のチャンスが提供できるのであれば、「当社でも実現できますよ」と、しっかりアピールしておくことが肝心です。

これらのことは、人材紹介サービスを利用していると人材紹介会社の担当者がやってくれることですが、ダイレクト・ソーシングの場合は全て自分たちで聞き出さないとなりません。後の判断で困らないよう、しっかり把握しましょう。

オファー提示

■ NG例…
実施しない

■ 良い例…
オファー面談(資料のみ提示し、質疑応答)

■ 理想的な例…
評価結果の説明/入社後の期待値の説明/遠隔地問わず訪問してのオファー提示

ポイント解説

人材紹介サービスを利用している場合、オファー面談は「やるように言われたからやる」という感じの企業も多いかもしれません。

しかし、ダイレクト・ソーシングの場合は、積極的にオファー面談を実施すべきです。「会いたい」と思って熱烈にアプローチし、何度かの面接を経て内定の判断を下した相手です。ぜひ直接会う場をつくってください。入社後に、その人と接点の多い社員で、面接の時に会わせられなかった社員がいれば、顔合わせの機会をつくるのも良いでしょう。

オファー面談で、勤務条件や福利厚生などを説明するのが通常ですが、内定を承諾してもらう最後の一押しのためにぜひやっておきたいのは、面接の評価を伝えることです。一次面接、二次面接、最終面接、それぞれの評価を伝えます。選考を勝ち抜いたという感覚を持ってもらうことがポイントです。また、スキルや能力で足りないと考えている部分や、今後の課題なども伝えてあげると、入社意向が高まるはずです。

フォローアップ

■ NG例…
特になし

■ 良い例…
上司や社員との顔合わせ(懸念点の払拭)/ 同僚社員との食事会

■ 理想的な例…
(スタンスとして)新卒採用並みのフォローアップを実施

ポイント解説

基本的には、オファーを出してから2~3日で回答がもらえるような採用が、いい採用だと言えます。ですので、ここに至る前にまずはそれを目指しましょう。内定承諾から入社までに、通常でも1~2カ月、役職者などの採用では数カ月期間が空くことがあります。その間、定期的に食事会を開いたり、そこで同僚となる社員と会う機会をつくったりして、コンタクトポイントを定期的につくりましょう。

今後、少子高齢化で新卒採用数は減少していきます。優秀な人材を採用する上で、中途採用の重要性は増していくでしょう。新卒採用である程度予算をとってフォローアップを実施する企業は多いですが、中途採用でも新卒並みのフォローアップができると、理想的なモチベーションを持って入社日を迎えられるはずです。

まとめ

冒頭でも述べたとおり、面接は「選考」と「情報入手」の場です。自社・面接官自身について情報を開示して話しやすい雰囲気をつくり、より多く有効な情報を聞き出すことを主眼に置きましょう。

面接で自社のことを話しているうちに、候補者に「響く」ポイントが見えてきます。例えば、「社内でキャリアチェンジするケースも多い」といった話をすると、パッと表情が変わるような人がいれば、何らかのキャリアチェンジを視野に入れている可能性が高いです。そのようなポイントを見逃さず、一つ一つフォローしていくことで、うまく候補者の気持ちを惹きつけていってください。

※粟井英仁氏による「ソーシング 編」はこちらから