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「人事の複業」に本気で挑む髙橋実氏に聞く、これからの人事の在り方

PROFILE

株式会社モザイクワーク

取締役COO 国家資格 キャリアコンサルタント GCDF-Japanキャリアカウンセラー  髙橋 実

1991年、株式会社ジェーシービー に新卒入社し、新規事業企画を中心に従事。金融業界で経験を積み、1998年NTTファイナンス株式会社、2001年にトヨタファイナンス株式会社にて新しくクレジットカード事業立ち上げに携わる。2008年に社内異動で、トヨタファイナンス株式会社東京本社の総務人事マネージャーに着任。人事としてのキャリアをスタートさせる。2013年には株式会社HDEに転職し、人事部長として活躍。5年の月日をかけ、採用ブランディングから組織改革までを手がける。2018年春からは株式会社モザイクワークなど3社に籍を置き、人事の複業に取り組んでいる。

変化が多く、先行き不透明な時代に、人事としてのキャリアをどう築いていけばよいのか迷われている方も少ないでしょう。そのような中で、「人事の複業」という先進的な取り組みに着手しているのが、株式会社モザイクワークの髙橋実氏。もともと金融業界で企画系の業務を長く手がけており、「人事は嫌いだった」を話す髙橋氏は社内異動がキッカケで2008年から人事としてのキャリアを歩みだすことに。直近では、クラウドセキュリティサービスを手がける株式会社HDEの人事として社員60名から130名の組織拡大に貢献し、ワーキングマザー活用やグローバル人財採用などを実現。数々のメディアやイベントにも出演しており、HR業界で知る人ぞ知る方です。
“人生100年時代”と言われる今、ちょうど折り返し地点である50歳を迎える髙橋氏。なぜHDEを卒業し、「人事の複業」に取り組むのでしょうか?そして、人事パーソンがキャリアを築き上げるために必要な知識・スキルとは?じっくりとお話を伺いました。

「本気の複業」で、社会課題を解決していく

本気の複業」で、社会課題を解決していく

髙橋さんは、2008年から人事としてのキャリアを歩んでちょうど10年の節目に、「人事の複業」という新しい挑戦をされるとお聞きしました。

髙橋氏:はい、約5年在籍していたHDEを2018年3月で卒業し、採用コンサルティングを手がける株式会社モザイクワークに籍を置きながらも、寺田倉庫の人事や飲食系企業の人事業務も行い、複数社の人事改革・マネジメントを務めています。

副業は一種のブームのようになっていますが、複数社で人事を担うという事例はあまり聞いたことがありません。まずは、このチャレンジに取り組もうとお考えになったキッカケを教えてください。
※弊メディアでは、副業=本業ありきのもの、複業=本気で何社かの仕事に取り組むもの、自分のスキル向上やビジョン実現のために行うもの、という位置づけで使用します。

髙橋氏:今、確かに“副業”が大きく注目されていますよね。ちなみに、現在言われている副業とは、「本業ありきの仕事」という色合いが強いと感じています。いまだに世の中では、フルタイム就業後の余った時間で副業を行う…、つまり、本業に加えて収入を増やす「お小遣い稼ぎ」の要素として認知されているのではないでしょうか。もちろん、それを目的に行うのであれば問題ないとは思いますが、その延長として注目が集まっているのは違うと思うんですよね。片手間で副業をやるという考え方ではなく、お金をもらう以上は本気でやるべきだと。そこで、僕自身が「本気の複業」に取り組むことで、どんな効用があり、どんなハードルがあるのかをあぶりだしてみたいと思っています。これは一種の“人体実験”ですね(笑)。

確かにPCやデバイス、通信環境などが整えば、職場にいなくとも十分に仕事ができるようになりつつあり、複業に取り組みやすい時代になってきました。

髙橋氏:HDE時代に人事として色々な取り組みをしてきましたが、中でもこだわって追及していたのは『時間や場所にとらわれない働き方』です。日本社会の働き方の前提となっている「8時間労働」の定義って、背景からきちんと説明できる人はなかなかいませんよね?でも今の日本ではこの労働時間がスタンダードになっている。それってただ単に、昔ながらの制度を踏襲しているからなんです。しかし、その既存の在り方に疑問を持ったんですよ。パフォーマンスや成果をちゃんと出していれば時間や場所は関係ないはず。次のキャリアを考えるにあたっても、「仕事にフルコミットはするけども、それは“フルタイム勤務”でなければならないのか」という問いはずっとありましたね。会社や組織としては、HDE時代に実現できたので、今度は個人として実現したい。オフィスや時間に縛られずにさまざまな会社のミッションを同時に遂行することで、自ら「本気の複業」で証明していきたいと思います。

今年50歳を迎えられる髙橋さんの世代となると、「攻め」よりも「守り」の思考のほうが強くなってしまうのではと感じます。新しい取り組みを手がけようというモチベーションはどこから来るのでしょう?

髙橋氏:同級生と話をしていても、「お前大丈夫か!?」と言われますよ(笑)。『人生100年時代』と言われている中で、僕はちょうど折り返し地点にいます。今までの『60歳定年時代』であれば、じっと会社にしがみついていればよかったのかもしれません。人事職でなくなったとしても、いくらでもいる方法はあると思うんですよ。でも、自分にとってそれはチャレンジじゃなかったんです。新しい環境に身を置いてチャレンジすることで、組織・枠組みにとらわれずに世の中に広く影響を与えることをやってみたい。それが、原動力になっています。

また、“人事パーソン”として1つの会社だけしか見えなくなってしまっていいのか、って疑問が生まれてきたのも大きいですね。人事を長年やってきた中で、いろいろな事業課題、つまり世の中の課題が見えてきたわけです。世の中に課題が山積しているのに、ただ指をくわえて傍観しているのは、我慢できませんでした。「もう少し幅広く貢献できる方法は何か」「自分の価値が発揮できるのは何か」…って考えた結果ですね。
「本気の複業」で、社会課題を解決していく

髙橋さんが解決したい世の中の課題というと?

髙橋氏:例えば、労働生産性です。みずほ総合研究所の発表では、2065年には、就業人口が現在の4割も減るとも言われています。それをどうやって行き渡らせるかというと、労力ある人間がいろんな企業に価値提供を行い増やしていくことが重要になります。プロフェッショナルな人材が、たくさんの企業で同じ課題があるのであればそれを一気にやるのが一番シンプルですよね。ただ今の世の中ではその働き方の形になっていない。だから今、本気の複業に取り組みを通じロールモデルとなることで、課題解決のきっかけが生まれればいいと考えています。

“労働生産性”は、多くの企業で課題となっています。

髙橋氏:個社に違いはあれど人事は、採用、労務、制度など、やっているタスクはほぼ一緒なんですよ。自分の価値提供って本来いろいろな企業でできるはずなのに、「1社だけに属しているから、他はできないよね」となると、そのタイミングを逃してしまうことになる。そのタイミングでやれる人間がいなかったら極端な話、その会社はダメになっちゃうわけです。でも、人事の共通プラットフォームを作っておけば、個社ごとに多少のアレンジを加えるだけで就業規則の変更などもそれほど労力をかけずにできるわけじゃないですか。3倍の力を使わなくても1.5倍ぐらいの力で実現可能になる。労働再配分という考え方ですよね。1人の労働力でも、同時にできれば労力が行き渡ることになります。

その点でも、複業という手法は、パフォーマンスが出しやすいと思っています。複業はユニット単位で取り組んでいるのですが、 “壁打ち”の相手としても最適です。他企業の課題解決のアイデアが生まれることだってある。さきほどお伝えした「個社ごとのアレンジを加えれば活用できる」という考え方が早速実現できています。パートナーとはメッセンジャーなどでやり取りしていて、思いついたら都度、意見交換を行っており、その頻度は家族以上かもしれません(笑)。意思決定も、以前に比べて10倍くらいのスピードになりましたね。

人事パーソンに必要なのは、労務知識と経営者視点

人事パーソンに必要なのは、労務知識と経営者視点

人事の業務は忙しく、また、経営側と現場の板挟みのポジションでもあります。新しい試みへの挑戦を続ける髙橋さんの方がいらっしゃる一方で、キャリア形成に迷われている人事パーソンもいらっしゃいます。人事として確かなキャリアを歩んでいくためには、どういった知識やスキルが必要だと思われますか?

髙橋氏:大切となるのは、人事労務の知識ですね。特に、会社経営や採用戦略などすべての土台となる労務知識は、人事業務すべての基礎となります。給与計算や勤怠管理など、一見ルーティーンに思えるかもしれませんが、それを安定的に回すことができないと組織も回すことができないと思うんですよね。

基礎を身に付けることで、組織のベースラインをつくるということですね。

髙橋氏:重要なポイントは、ただ単にオペレーショナルにならないということです。給与計算を淡々と間違えないようにするのは基本ですが、それだけではなく、「この給料は、売上や評価に対して適切なのか」など、会社課題と照らし合わせて考えながら取り組むことが必要なんですよ。これって、労務知識があるかないかで大きく変わってきますし、経営視点も求められてきますよね。就業規則はもちろん、労務管理の仕組みを作るうえでも、ベースとなる知識をしっかりと把握しておくことがとても重要です。

髙橋さんはもともと人事畑ではなかったと思いますが、どのように労務知識などを学んでいたのでしょうか?

髙橋氏:参考書籍などを読むのは当然のことのようにやっていました。ただそれだけでは机上の空論になってしまう。それと同時に、社外に先生となる人を見つけることも有用ですね。ここでポイントなのが「社外」ということ。社外人事の取り組みを学びディスカッションすることが何よりも重要なのではないでしょうか。僕の場合は、セミナーなどに出席して優秀な人事パーソンとコミュニケーションを取って人脈をつくり、さまざまな知識を教えてもらいました。最初は人事用語が全く分からず、まるで外国人と話しているような感覚でしたが(笑)、3年くらいすると次第に実感として掴めている感覚が持てましたね。社内に精通していることはもちろんですが、社外に「自分の先生」を作ることは非常にポイントになると思います。

労務知識以外にも、人事パーソンにとって必要なことはありますか?

髙橋氏:人事の仕事は「経営課題を組織・人軸で考えること」、そして「本来経営がやるべき課題を代わりにやること」だと思っています。つまり、人事パーソンに必要なのは、経営層と同じ目線で、事業課題を見つめ、事業を成功させるためにどうしたらいいのか「人的」部分で考える視点を持つことです。人事というと採用業務に目が向きがちですが、採用は一種のマーケティング。母集団形成し、この会社良いよってアプローチし、内定決定を目指す…これだけであれば人材サービス企業にアウトソースすることもできます。人事の仕事って本来そこだけではなく、事業課題を解決するためにどういう人材を採用する必要があるのか、なんですよね。でも、目の前の母集団形成に追われてしまい「どんな採用手法をやればいいのか?」「採用ってどうやればいいんですか?」という視点でしか語れない人事は多い。「どんな経営課題があるか」「今事業課題はどうなっているのか」という考え方がインストールされていないんです。

上から、もしくは、現場から求められる採用人数を達成することだけにコミットする考え方ではダメということですね。

髙橋氏:この人を採用したことで、事業がどうなっていくのか、そこまで見届けることが人事の仕事。その考え方があれば、「経営層に言われたから/現場に言われたから」といって右往左往することなく、自分事として採用業務に取り組むことができるでしょう。私自身も採用業務に携わっていることが多かったので実感しているのですが、採用って賞味期限があると思っています。特に新卒採用は「学生と近い目線」に立てることができる若手がアサインされることも多いと思いますが、その視点のまま40代を迎えたらどうなるでしょうか。時代にあわせた採用マーケティング知識は身につくかもしれませんが、「他の仕事に就け」と言われた瞬間、何もできない…という可能性も出てきます。人事をやる以上必要なのは、会社で生きていくベースとなる労務知識。その理解と経営視点があれば、会社や事業、組織のフェーズにあわせた制度作成・組織改革に取り組むことができるし、課題に対して何が必要か、判断できます。

最後に、人事パーソンに向けて、これからのキャリアの築き方のアドバイスをお願いします。

髙橋氏:「人事プロ」を目指してほしいです。人事プロとは、すなわち経営者視点を持てる人のこと。先ほどの話の繰り返しにもなりますが、経営者視点で考えれば、誰かに振り回されることなく、おのずと答えが見つかるはずです。また、昔は会社に所属していれば安泰でしたが、今はそういう時代ではありません。安定雇用に期待していれば、それはリスクになります。「50超えた自分の市場価値」が何かが求められる時代になりつつある。だからこそ、他人と1ミリでも違うような「武器」となる知識やスキルをたくさん身につけておく必要がありますね。僕はこれからも、人事プロを目指しひたすら武器を身につけていこうと思っています。
人事プロを目指す

【取材後記】

今後、少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、ますます“複業”は重要視されてくるでしょう。そのような背景の中で、「人事の複業」という、未踏のテーマに本気で取り組むことを宣言している髙橋氏。このチャレンジは、社会課題解決への一歩であり、人事という領域にとっても重要な礎になるでしょう。髙橋氏は、イベントへの登壇やメディアのインタビューなどを通してこの挑戦に関するアプトプットを続けていくはずなので、今後の展開にも引き続き注目していきたいと思います。

(取材・文/眞田 幸剛、撮影/石山 慎治、編集/齋藤 裕美子)

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