採用手法のこれからを考える ダイレクト・ソーシング ジャーナル

doda 中途採用をお考えの方へ

「募集要項はありません」。中途採用の常識を覆したボーダレス・ジャパンの狙いとは?

PROFILE

株式会社ボーダレス・ジャパン

代表取締役社長 田口 一成

1980年生まれ。大学2年時に、発展途上国で栄養失調に苦しむ子どもの映像を見て「これぞ自分が人生をかける価値がある」と決意。株式会社ミスミに入社後、25歳で独立。ソーシャルビジネスを手がけるボーダレス・ジャパンを創業する。

株式会社ボーダレス・ジャパン

Backup Office Recruiter 石川 えりか

1990年生まれ。新卒で教育系ベンチャーに入社し、営業職〜人事職を経験。その後、2015年にボーダレス・ジャパンに中途入社し、採用業務全般を担当する。

シェアハウス、ハーブティー、革製品、飲食、子ども服リユース、小型家電リサイクル、ベビーギフト、農業……。これは、株式会社ボーダレス・ジャパンをはじめとするボーダレスグループが手がける事業の一例です。同社は、2007年に創業以来、「ソーシャルビジネスで世界を変える」をテーマに掲げ、現在ではグループ全体で8カ国・19の事業を展開しています。

着々と事業を拡大させている社会起業家集団である同社が8月末に、人材業界内に驚きを与える新しい中途採用施策を発表しました。それが、「募集要項をなくす」というものです。事実ボーダレス・ジャパンの中途採用ページには、以下の文言が記されています。

私たちの採用に 「募集要項」はありません。

「〇年以上の経験必須」「〇〇のスキル必須」
そう書かれたWebページから仕事を選ぶ。
そんな採用は、やめました。

まだ、この取り組みはスタートしたばかりですが、わずか11日間で約100名が登録したと言います。深刻な採用難と言われる市場感の中で、成果が出始めているこの施策はどのようにして生まれたのか?そして、この施策の先にどんな未来を描いているのか?――社長である田口一成氏、採用業務全般を担当する石川えりか氏に話を聞きました。

「募集要項って必要ある?」と、スキル・経験などのハードルをなくした

「募集要項って必要ある?」

ボーダレス・ジャパンさんの中途採用ページに掲げられている、”私たちの採用に 「募集要項」はありません。”というコピーはとても鮮烈で、「募集要項をなくす」という施策自体もインパクトが大きかったです。そこで、是非お話をお聞きしたいと取材に伺いました。まずはこの施策に取り組んだ背景から教えていただけますか?

石川氏:私たちボーダレスグループは現在19の事業を展開していて、それぞれの事業をグループ各社が担っています。各社はいずれも成長期を迎えていて、採用熱が高いんです。採用したいのは、ただオペレーションを回す人材ではなく、事業を回すことができる人材。――たとえば、スタートアップの2番手、3番手のような人材です。これまでは、リファラル採用と自社の採用ホームページからの応募でなんとかやってきましたが、それでは求人ニーズに追いつかないという課題があったんです。

求人メディアへの出稿や人材紹介サービスの利用はしていなかったのでしょうか?

石川氏:求人メディアへの出稿はしていませんが、人材紹介サービスを利用したことはあります。実は、大手の紹介会社から40名ほど推薦されたのですが、内定者は1人もいませんでした。青年海外協力隊やNPO出身者、大手企業出身者など一見合いそうな方々でしたし、実際に経験としては十分だったのですが、うちのカルチャーに合わなかったんです。そこで、「採用はお金をかければ良いというものではない」と学び、今後の採用施策についてボス(田口社長のニックネーム)に相談したんです。それが今年の5月頃です。

田口社長はどんなアドバイスを?

石川氏:いろいろブレストを重ねる中で、「募集要項っている? 無くしちゃえばいいじゃん」と(笑)。というのも、当社で活躍しているのは、その職種について未経験だったメンバーが多いんですね。未経験者の場合、募集要項に色々書かれているのを見ると「こんなことできないかもな…」と一歩ひいてしまう可能性があります。募集要項が無ければ、その心理的なハードルも無くなるだろうと。

田口氏:以前面接した方が営業職の方だったのですが、「自分のこのスキルで、企画職なんて無理です…」と遠慮されていたんですね。要件が書かれていると「このスキルはないから無理だろう」って萎縮しちゃうのは、もったいない!ってずっと思っていたんですよ。
もったいない

たしかにそうですね。募集要項に書かれている経験が必須だと感じて二の足を踏んでしまいそうです。

石川氏:ですので、募集要項を出してそこに「あてはめる」のではなく、私たちが応募者のやりたいことや価値観に合わせて、スキルや経験関係なく仕事を提案していくというのが、この施策の狙いです。

未経験でも、変化を通して成長できる人材がマッチする

未経験でも、変化を通して成長できる人材がマッチする

募集要項をなくすことで受け皿がとても広くなりますが、実際にボーダレス・ジャパンさんが求めているのはどのような人物像なのでしょうか?先ほど人材紹介会社から40名の推薦が上がってもマッチングしなかったという話もお聞きしましたが、御社で活躍できる人材像が気になります。

田口氏:ソーシャルビジネスなどの経験は必要ありません。結局活躍できるのは、成長意欲のある人です。ただの「頑張り」だけでは不十分で、自己否定をしながら素直に変化していけるような人材ですね。ボーダレス・ジャパンでは、同じ業務を3年以上継続させないというカルチャーがあるんです。だって、だいたい3年も同じ仕事をやっていたら飽きるじゃないですか(笑)。一つの仕事ができるようになったら、次の活躍の場へと異動し、できないことに挑戦してもらってポテンシャルを引き上げています。

ボーダレス・ジャパンさんは、19の事業を各グループ会社が担っています。たとえば、革製品事業を手がけるグループ会社から、飲食事業を手がけるグループ会社への異動ということもあり得るのでしょうか?

田口氏:はい、頻繁にあります(笑)。グループ内で自由に行き来するようなカルチャーが根付いていますね。ちなみにうちでは、会社命令の人事異動はありません。

えっ!?そうなんですか。

田口氏:異動は、本人が「行きたい」という意思ありきです。――僕らは「やりたい人任せ」と呼んでいるのですが、本人の意思を尊重しています。それに加えて、各グループ会社がどんな事業をやっているかが分かるように情報のシェアも大事にしています。事業を超えてヘルプすることも多くあります。異動希望に限らず、例えば、福岡である事業の新店舗がオープンする…となったら、熊本や宮崎にいる別事業の店舗スタッフが「私、▲▲の経験があるので、手伝いますよ」「オープン時、●●の準備が必要だから、その期間行きますね」など、声が上がるのが当たり前です。横のつながり・交流を盛んにすることで、次のステップや挑戦を考えられるようにしているんです。

石川氏:よりお互いの事業が目指すことや仕事がわかるように、先日はじめて社内報『BORDERLESS IMPACT』(下記写真参照)を作成したのですが、これもグループ各社からメンバーが集まって制作を進めていきました。
IMPACT

田口氏:皆、自分のことを理解しているから「これができる」「このスキル活かせる」がわかっているし、「これがやりたい」が明確なんですよ。ですので、メンバーたちは3年を待たずとも、どんどん異動していきますね。

なるほど。そういった意味でも「成長意欲」「変化できる」といったパーソナリティーがないと、活躍するのが難しいんですね。

田口氏:そうですね。おっしゃる通りで「与えられた仕事をやる」「なんとなく」というスタンスで働いていると、弊社では難しいかもしれませんね。

リリースからわずか11日で、100件の登録

リリースからわずか11日で、100件の登録

今年の5月に「募集要項をなくす」という施策のアイデアが出て、その施策を8月にリリースするまでの3カ月間はどのように準備を進めていったのでしょうか?

石川氏:採用ホームページを通して、「募集要項をなくす」ということをどんな言葉やコンテンツで伝えるべきか?これについて一番頭を使いましたね。ボーダレス・ジャパンは「ソーシャルビジネスで世界を変える」をテーマに掲げているので、社会問題に関心がある人にはある程度認知されていますが、社会問題に関心の無い人にとっては無名の企業です。そんな方に振り向いてもらうためにどうすればいいのか、社内のマーケターに相談しました。

なるほど。

石川氏:実はマーケターの中に、社会問題に関心がなく、社員紹介をきっかけに「自分の力を試したい」と商社から転職したメンバーがいます。彼から、「社会問題に取り組むのは意識高い感じがして、そもそも自分は違うと思っていた。たけど、実際に入社してみるとそんなことなくて。意識が高くなくても十分に挑戦できる仕事だ」という話を聞きまして。それから、広告会社出身者や自衛隊出身者など、未経験入社の方たちのインタビューコンテンツを数多く制作していきました。

たしかに、ボーダレス・ジャパンのホームページ内にある「シゴトファイル」という社員インタビューコンテンツは充実していますね。未経験の仕事に挑戦している方のインタビューが多くて、仕事のイメージがつきやすいです。8月に「募集要項をなくす」という中途採用ページをリリースからの応募状況はいかがですか?

石川氏:リリースから11日が経過して(取材時当時)、登録者数は100件。面談を希望される方は20件ありました。今年に入って中途採用ページからの応募が最も多かった7月が15件だったので、かなり手応えのある進捗だと思います。実際に、応募いただいた方からは、「ソーシャルビジネスというと、大学で専門分野を学んでいる、NPOでの就労経験がないと難しいのではというイメージが払拭された」というフィードバックをいただいています。

――その他、何かこの施策に対する反響はありますか?

田口氏:本件をFacebookに投稿したら、「いいね!」というよりも「好き!」という反応が多かったですね(笑)。施策自体の考え方やスタンスに共感いただけているようです。予想以上に反響が大きいと実感しています。

石川氏:社内からは「募集要項が無いんだったら、友人・知人にも声を掛けられそう」というポジティブな声が上がっています。メンバー自ら「こんな募集をやってるよ」とSNSで拡散する動きも自然に発生している。リファラル採用にもさらなる良い影響が出そうな気がしますね。

それでは最後に「募集要項をなくす」という斬新な採用のその先に、どんなビジョンを描いていますか?

田口氏:社会課題に対してビジネスで挑戦したい人の「働く場」を増やしていきたいと思っています。そのためにも、ソーシャルビジネスに取り組んでいる会社と姉妹カンパニーとなり、当社に登録してもらえれば、ボーダレスグループに限らずソーシャルビジネスの現場で働くことができる。そんな世界観を作っていきたいですね。

取材後記

採用したい人材の要件をこと細く設定し、ベストマッチングを狙う。それが中途採用のセオリーとも言えます。この「常識」を疑い、正反対の施策を打ち出すボーダレス・ジャパンは、採用だけではなく人材についての考え方も非常にユニークだという印象を持ちました。多様化する社会において、既存の価値観にとらわれない、全く新しいタイプの会社と言えるでしょう。取材中、「社員は3年で必ず仕事を変えるというルールを導入しようかな」と田口氏がポロっとつぶやくなどと、同社からは人事施策のアイデアが次々と出てきています。今後もボーダレス・ジャパンの新しい取り組みに目が離せません。

(取材・文/眞田 幸剛、撮影/加藤 武俊、編集/齋藤 裕美子)

Facebook

Twitter

はてなブックマーク

このエントリーをはてなブックマークに追加

ご案内・お問い合わせ

dodaでは「人材採用の課題解決を支援する」さまざまなサービス・情報をご提供しております

ダイレクト・ソーシング ジャーナルについて お問い合わせ

TOPに戻ります