「社員の才能を開花させたい」サイバーエージェント流、採用力強化のキーワード

株式会社サイバーエージェント

取締役 人事管轄 曽山 哲人

プロフィール

今期より株式会社サイバーエージェントが、人事領域の体制を『採用育成本部』と『人事本部』の2部門に分けました。この取り組みからは、“採用”にさらに力を入れるという同社の考えが読み取れます。

取締役 人事管轄である曽山氏が考える、“採用”強化の必要性とは? また“採用”を強化することで、どのような未来を描いていくのか? じっくり伺ったお話を紹介します。

サイバーエージェントが人事領域の体制を変えた狙いとは

今期よりサイバーエージェントは「採用育成本部」と「人事本部」の2部門制で、人事領域の業務を遂行すると聞きました。この体制に至った経緯を教えてください。

曽山氏:今期より、人事部長だった武田 丈宏が執行役員に就任しました。」その結果、我々がCA18と呼んでいる18人の取締役・執行役員の中に、人事管轄から私と武田の2名が入ることになったのです。

人事管轄に2人の役員がいる状態になったため、これまで以上に効果的に成果を上げていく必要があります。そこで責任の所在と、業務の役割分担を明確化しました。『採用育成本部(メンバーは約10名)』は、私の管轄。『人事本部(メンバーは約30名)』は、武田が管轄します。

『採用育成本部』と『人事本部』の担当業務は、それぞれ次のようにしています。

採用育成本部

  • 新卒・中途の採用
  • グループ企業も含めた人材育成プログラムの展開

人事本部

  • 労務・総務
  • 人材の能力開発(社内の適材適所を実現するための社内ヘッドハンティング業務)
  • 人材科学センター(適材適所のためのデータ分析をする部門)との連携業務
  • 事業推進業務(全社会議や大型研修などの運営業務)

2部門制に分ける前は、『人事本部』『人材開発本部』『事業人事本部』という3部門制で人事領域の業務を遂行していました。2部門制にしたのは、役員人事を変更するタイミングだったことに加え、“採用”を強化する必要性を感じていたことも理由です。

これまでは、新卒採用業務を『人材開発本部』が行い、中途採用業務は『事業人事本部』が中心となりながらも、全社横断で行っていたため採用業務が複雑化していました。

そこで『採用育成本部』を立ち上げることによって、新卒・中途採用と人材育成を集中して行う体制を作り、『人事本部』が労務や総務といった業務を担う役割分担にしたのです。

もっともサイバーエージェントは、集中と拡散を繰り返すことで成長してきた会社です。今回のように人事領域を3部門制から2部門制にするまでの間も、何度か変化はありました。事業方針や市場環境の移り変わりに合わせて体制変更の必要性を感じたら、柔軟に変えていくつもりです。

採用の有り方は、刻々と変化を続けている

インタビュー答える曽山氏_その1

さきほど採用を強化する必要性を感じていたというお話がでました。サイバーエージェントの採用における課題を教えてください。

曽山氏:今感じている大きな課題はありません。当社では多くの現場社員が採用に関わってくれていますが、活躍している社員が採用にも積極的に参加していますし、新卒採用で実施しているインターンシップなどでも大きな反響をいただいています。現場のマネジメント層からも、優秀なメンバーが配属されているといったフィードバックを貰っています。

しかし現状に満足せず、採用には力を入れ続ける必要があると思っています。有効求人倍率は年々高まっており、転職や就活、採用の手法も多様化しています。そういった環境の変化に対応していくには、採用と人材育成の専門組織が必要だと考えました。

今回『採用育成本部』という専門組織を作ったことで、社員の“才能開花”を一気通貫でサポートできるようになりました。採用担当者の多くは、自分が採用に携わることで入社した社員を、末永くサポートしていきたいと思っています。

しかし採用だけを専門に行う組織体制だと、入社した社員が配属された後にサポートしようと考えても、どうしても踏み込めない部分があります。その状態を打破したかったのです。

入社した社員たちにとっても、その方が良いと思うのです。採用組織が入社後も継続してサポートしてくれることで、仕事の悩みや部署異動を前提とした社内でのキャリア構築に対する要望も、同じ相手に相談できるからです。社員に安心感を持って働いてもらうためにも、採用と育成を一つの部署で行う意義が大きいと思っています。

才能開花で、大化けする社員を生み出していく

インタビューに答える曽山氏_その2

社員の才能を開化したいという思いを実現するための組織体制変更なのですね。それが自社の採用を強化していくことにも繋がると。

曽山氏:そうです。サイバーエージェントは入社した社員の才能が開花し、“大化け”できる会社であるという認識をもっと広げていきたいと思っています。実際に、この大化けという部分には実績があります。

当社は、市場環境の変化にあわせて新規事業を数多く生み出し、継続的な事業拡大を図るという経営方針のもと、去年だけでも13社を設立しました。どの業界を見回してもこれだけ新規事業を立ち上げている会社は少ないのではないでしょうか。そのうえ新会社の社長は大多数が20代です。

立ち上げた新会社の生存率は5年で約5割。この数字も一般的なデータと比較すると圧倒的に高い数字だと思います。そのうえ事業が上手くいかなかった5割の会社の社長や社員に対しても、当社はセカンドチャンスを提供しています。

そのため事業が失敗したことが理由で退職する社員はほとんどいません。事業で失敗した経験がある人は、その学習により同じ失敗はしないからこそ、他事業部から引く手数多の状況です。

事業立ち上げを経験した社員を引き抜いた事業部は、事業成功の確率が上がりますよね。たとえ失敗しても、それを経験した社長や社員も他の事業部でそれまでの経験を活かすことでまた成長します。こういった循環の形ができています。

意欲的な社員には20代の若手でも、抜擢して大化けする環境を提供する。大化けしたら素晴らしいし、大化けできなくても、その失敗を糧に学ぶことができる。そのような社員の才能が開花する環境を作っています。当社に入ったら大化けできるという事例をもっと増やし、そんな認識を広げていきたいですね。

曽山さんは、社員たちと日ごろから頻繁にコミュニケーションを取られていると伺っています。社員の方たちとお話をされていて、大化けした社員が増えたことを実感する場面はありますか?

曽山氏:「自分が、こんなに活躍できるとは思わなかった」というセリフが、社員の口から自然に出てきた時に実感します。こんなに嬉しいことはないですよね。本人の想像を超えた活躍ができる社員が増えれば、事業にも良い影響を与え会社の成長にもつながります。

社員たちから直接聞くフィードバックは、何よりも大事だと思っています。それは、人事施策を行う上で、私が最も大切にしている人ありきという部分にもつながります。

まとめ

人事領域を『採用育成本部』と『人事本部』の2部門制に分けたのは、採用と育成を一気通貫で行い社員のキャリアをサポートすることで、社員たちが才能を開花できる環境を作りたかったからだと曽山氏は語ります。新卒・中途を問わず、採用候補者を取り巻く環境や採用手法は、目まぐるしく変化しています。

その変化に対応する上でも、採用と育成に力を入れていくことは、どのような企業にも求められていくのではないでしょうか。サイバーエージェントの取り組みや考え方から、その重要性を感じ取ることができます。次回の記事では、人事施策を実行していく上で、曽山氏が重視している感情マネジメントについてフォーカスした内容をお届けします。