採用手法のこれからを考える ダイレクト・ソーシング ジャーナル

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元キャリアアドバイザーの人事が語る、採用候補者の価値観に合わせた動機形成術

PROFILE

株式会社フィエルテ

人事課長 金丸 健人

青山学院大学卒業後、2006年に株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)へ入社。IT・インターネットサービス業界のキャリアアドバイザーとして約7年間、転職希望者のキャリアコンサルティングに携る。2013年、社内公募制度を活用してグループ会社である株式会社インテリジェンス ビジネスソリューションズ(現パーソルプロセス&テクノロジー株式会社)へ出向・転籍し、コンサルタントとしてIT・通信系企業の人事・採用や業務コンサルティングに従事。その後フリーランスを経て、2017年に株式会社アバントへ入社。グループ全体の中途採用に携った後、グループ会社であるフィエルテの専属人事へ。現在は同社の人事業務全般に関わるHRBPとして活躍中。 GCDFキャリアカウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。

「面接しても採用につながらない」「応募者の内定承諾率が低い」といった悩みを抱えている人事・採用担当者が少なくありません。多くの企業が人材採用に苦戦する状況にあって、連結決算・開示業務のアウトソーシング事業を手がけている株式会社フィエルテ(東京都新宿区)は、2018年7月からダイレクト・ソーシングの活用をスタートして、わずか半年の間に7名の経験者採用に成功しています。今回は人材紹介会社のキャリアアドバイザーを経て、現在は同社の人事課長を務めている金丸健人さんのもとへお伺いし、実践している人材のターゲティング方法や人事としての面接への関わり方、採用候補者の意向を醸成させるノウハウから、これからの人事・採用担当者の「資質」「あるべき論」まで、幅広くお聞きしました。

採用すべき人材のターゲット設定が明確であれば、採用候補者が簡単に見つかる

採用すべき人材のターゲット設定が明確であれば候補者が簡単に見つかる

貴社がダイレクト・ソーシングを活用して採用を始められたきっかけについて教えてください。

金丸氏:ここ2年ほどは人材紹介のみで採用を行っていました。しかし、当社では人事部門であっても利益貢献を担うプロフィット組織としての意識を持つことが重視されます。会社が求める人材の早期採用に加え、人事としていかに会社に利益をもたらすかを考えた結果、今年の予算を作成するタイミングで「昨対比で採用コストを削減する」という成果目標を立てました。具体的には30%の採用単価削減を目標に掲げたのですが、人材紹介経由の採用を減らさなければ達成できないことが明らかだったので、求人広告やダイレクト・ソーシングを上手く活用していこうと考えたのです。しばらくは求人広告がメインでしたが、緊急度の高い求人が増えてきたこともあり、夏頃にはダイレクト・ソーシングもあわせて活用していくことにしました。

 

2018年の7月からダイレクト・ソーシングを使い始め、わずか数カ月で7名の経理担当者を採用されたと聞いています。どのような部分に力を入れて採用活動を進められたのでしょうか。

金丸氏:採用すべき人材のターゲット設定はかなり詳細に行っています。スカウトメールの文面を個別に書き分けることは敢えてしておらず、当社事業の独自性・成長性・将来性、他社の経理職との違い、描けるキャリアなどをしっかり伝えるようにしています。また、面接には必ず人事が同席します。特殊なケースを除き、現場担当者だけに面接を任せることはありません。一方的な面接にならないように、応募者の方に当社の事業を深く理解してもらうための説明をするだけでなく、人事主導で応募者の方の歩んできた人生やキャリア選択の理由を聞き、その方の価値観を確認した上で、入社への意向・動機形成を行うようにしています。フェーズごとに多少のノウハウはありますが、トータルで考えると採用成功のための計画をしっかりと立て、一つひとつの取り組みに関して地道な努力を積み重ねているというイメージですね。

採用における各フェーズに貴社や金丸さん独自のノウハウがありそうですね。まずはターゲティングからお伺いしますが、人材紹介会社に提出されている未経験者採用のターゲット要件を見せていただきました。ものすごく細かいですよね。特に具体的な人物像設定(ペルソナ像)については業界別に8種も作成されているなど、採用すべき人材のイメージが手に取るようにわかります。

金丸氏:ペルソナ像の設計については、PowerPointできちんとした資料にはしていません。ガチガチにターゲットを固めるよりも、皆と議論を重ねながら随時アップデートをしたいためテキストデータでまとめています。
ペルソナ設計

採用の手始めに求人を作るとき、ターゲット設定やペルソナ像を作成するだけで後工程がかなり楽になります。求めている人物像をしっかり把握することにより、求人広告やスカウトメールを作成する際にも「どのような方に向けて作っているのか、どのような方に届ければいいか」が明確になりますし、選考時の迷いも少なくなります。ペルソナ像にピッタリの方から応募があれば、「まさにあなたです!」となるし、「この人は違うな」ということも直感的にわかります。ターゲティングやペルソナ像の作成に関しては、最初から上手くいっていたわけではなく、「こんな感じではないか」というところからスタートして徐々に精度を上げていきました。

スカウトメール文面については基本的に同じものを使っているということですが、どのようなことを伝えているのでしょうか?

金丸氏:当社は一般的な経理業務代行ではなく、事業会社の中ではベテランの経理担当者が担当することの多い連結決算や開示業務を中心に請け負っています。クライアントには日本を代表する大手企業も多く、当社で働くことで経験の浅い方、あるいは未経験の方であっても、大企業の連結決算業務を経験することができます。本人の市場価値も高まりますし、成長志向の高い方にとっては事業会社や他のアウトソーサーでは得られない魅力的な環境があるということを伝えています。

日次や月次の経費精算、伝票処理などを請け負うアウトソーサーとは違うということですね。

金丸氏:経理業務のアウトソーサーというと、どうしてもそのようなイメージを持たれがちなので、スカウトメールや面接では、その違いをしっかり伝えることに腐心しています。また、当社がターゲットとしている方は未経験者、経験者を問わずチャレンジ精神があり、成長志向がある方です。経理として成長したくても、今の環境では難しいと感じている方に対して「当社でチャレンジしませんか?」という内容のメールを送っていますし、面接でもそのような提案をしています。

先に設定しているターゲット・ペルソナ像に合う方にメールを送られているということですね。

金丸氏:ターゲットやペルソナ像が頭に入っているので、データベースを検索して多くの採用候補者が見つかったときでも「この人にはメールを送る。この人には送らない」という判断がスピーディーにできます。例えばスキル・経験が合致したとしても希望業界欄にまったく異なる分野を記入している人には送りません。ターゲット設定がしっかりできているからこそ大量一括送信をすることもありませんし、本当に送るべき人が見えてきます。ダイレクト・ソーシングなので、「まずは様子見」という方もいると思いますが、返信をいただける人の多くは当社への入社意思・応募意思が非常に高いです。

人事が面接に入ることで、本人すら忘れかけている本質的な価値観を引き出す

人事が面接に入ることで、本人すら忘れかけている本質的な価値観を引き出す

面接を現場任せにしないということでしたが、どのように面接を行っているのでしょうか?

金丸氏:人事は選考のすべてのフェーズでオーナーシップを持つべきだと考えているので、基本的にはすべての面接に同席するようにしており、とくに未経験者採用に限っては人事のみで面接を行っています。一次面接を私の部下である人事担当者が行い、二次面接は人事責任者である私が担当するというスタイルです。経験者の方、年収の高い方に関しては、経理業務のスキルや経験に関するジャッジが発生するので、一次面接は現場担当者、二次面接では現場責任者に入ってもらいます。ただし、当社は人事が3名のみなので、どうしても面接に入ることができないケースも発生します。その場合は一次面接が始まる前の段階で、応募者の方にアンケートを記入してもらうようにしています。これによって人事が面接に参加できない場合でも、現在の活動状況や転職の軸、希望年収といった情報を確実に押さえるようにしています。現場担当者だけで面接をすると、こうした情報を聞き漏らしてしまうことも多いのです。
面接前事前アンケート

そのようにして人事が入る面接では、採用候補者の方の歩んできた人生やキャリア選択の理由を聞くということをされていると。

金丸氏:現場の面接官はスキルや経験の確認をすることがほとんどですが、私たち人事は学生時代、アルバイト、新卒時の就職先、転職先など、応募いただいた方が「何かを選ぶ」という行動にフォーカスし、「なぜそのような選択をしたのか」「そのときどう思ったのか」といったことを、できるだけ掘り下げて聞くようにしています。とくに私は共通項を見つけることが好きなので、「Aの選択の理由と、Bの選択の理由には、このような共通項があると思いますが、本質的にはこういうことを考えて大きな決断をされているのではないでしょうか」とお聞きすることが多いですね。その人自身ですら忘れかけているような「自分が大事にしている本質な価値観」を呼び戻していただくことで「私は何者なのか」とご自身で考えていただくことを大切にしています。難しく聞こえるかもしれませんが、実際のところは履歴書や職務経歴書を辿って質問を繰り返していくだけなので、アプローチの仕方としてはとてもシンプルです。

そのような面接により応募者の価値観を把握した上で、ときには感情に訴えるような意向・動機形成を行うということですが、具体的な事例を教えていただけますか?

金丸氏:以前、応募者の方の中に転職回数の多い方がいらっしゃいました。その方の転職の理由を一つひとつ丁寧にお聞きしたところ、必ず上司や組織とケンカをして辞めていることがわかりました。さらにケンカの理由を掘り下げて聞いてみたのですが、その方はビジネスパーソンとしてより良き成果を生むために、会社のためになると忖度なしに真っ直ぐに提案する、仕事に対するプロフェッショナルイズムを持っている方だったのです。しかし、今まで在籍していた企業は保守的な方が多かったようで、煙たがられてしまっていただけだった。根回しや段取りは不足していたかもしれないが、本質的には、無駄なく最短ルートで成果を出そうとする人材だということが分かった。真っ直ぐな性格だからこそ、根回しが上手くない方だったと言えるかもしれませんね。

その方に対して、どのような言葉をかけられたのでしょうか。

金丸氏:その方は当社と事業会社との二択で迷っていました。私は「例えば、アウトソーサーである当社で、さまざま企業のプロジェクトで力を発揮してはどうでしょうか。成果志向や改善志向が強いあなたは一社の事業会社のために仕事をするよりも、コンサルティングやアウトソーサーといった立場に回って、より多くの会社のために価値を発揮すべきだと思います」といったような言葉をおかけしてご入社を選択いただきました。

その方の生き方、本質的な価値観を把握していないと、そのような動機形成はできませんよね。

金丸氏:そうですね。逃げの転職を繰り返している人はダメですが、一つひとつの会社でやりきっている方、夢が叶わず苦渋の決断で辞めている方に対しては、たとえ転職回数が多くとも、しっかり向き合おうと考えていますし、応募者の方にもそうした部分を見ているとお伝えします。多少はテクニック論的な部分もあるのですが、「ここまで自分のことを見てくれているんだ」という安心感を持ってもらえるよう心がけています。

人事に必要な資質である「人への興味」は、後天的な努力でも補える

人事に必要な資質である「人への興味」は、後天的な努力でも補える

人材のターゲティングから、採用候補者の価値観を引き出す面接、意向・動機形成など、さまざまなノウハウを教えていただきましたが、それらはキャリアアドバイザーとしての経験によって得られたスキルなのでしょうか。

金丸氏:身も蓋もない言い方になりますが、要は「人に興味があるかどうか」だけの話だと思っています。人に対する興味があって、その人を理解しようと考えていれば、キャリアアドバイザーの経験は関係ありません。私も経験があるからわかるのですが、キャリアアドバイザーといっても基本的には営業です。多くの求人企業と採用候補者とをマッチングさせることで成果となるし、評価もされます。ただ、私は単純に目の前で困っている人を助けたい、なんとかしたいと考えながら仕事をしていたので、その人の人生が転職して良くなるのであれば全力でサポートするし、その人にとって今の会社に留まることがベストだと考えれば「転職しない方がいいですよ」とはっきり言うこともありましたね。

現在の金丸さんは採用候補者側の視点に加え、経営視点やビジネス視点を持って仕事をされているように見えます。

金丸氏:企業や経営側の視点というのはアバントグループに入社してから身に付いたものだと思います。ビジネスの世界で人事として結果を出すこと、ビジネス視点でマッチングを行うことの重要性については、ここで人事の仕事をすることで、上司や現在の社長から叩き込まれた部分が大きいですね。以前は個人に寄り過ぎていたと思いますし、今振り返ってみれば「あまちゃん」だったと思います。とは言え、採用候補者に寄り添う気持ちが必要であることは間違いありません。人事、とくに採用に関わる仕事には論理(合理性)と感情のバランスが重要なのではないかと考えています。

先ほど人事、採用には「人に興味があることが大切」とおっしゃっていましたが、それはある意味、先天的なものですよね。何らかの方法で後天的に補うことはできないのでしょうか?

金丸氏:前提として、先天的に人に興味を持っている方が人事をやるのが理想だとは思います。ただし、後天的な努力でもカバーすることは可能だと考えています。「関わるすべての人はお客様だ」という意識を持つことが大事です。人に興味があるかないかは別にしても、ビジネスのあらゆる場面では、「相手のニーズを汲み取り、何をしたら相手が喜ぶか」という考え方は絶対に必要でしょう。この考え方は、お客様だけに限らず、自社の社員や採用候補者に対しても、同じことが言えます。「人に興味を持とうとする姿勢、人に興味を持っている態度を示すことができる」という能力の重要性を理解する。そして、自分の意識や行動を変え、その能力を努力によって習得し、多くの人からリスペクトされているビジネスパーソンは、皆さんの周りにも数多くいらっしゃるのではないでしょうか。

それでは最後にこの記事を読まれている人事・採用担当者の方々へのメッセージをいただければと思います。

金丸氏:長らく商社不要論が叫ばれていますが、人事も商社と同じような立場にあると考えています。極端な話、経営者が求職者に直接声をかけて人材を集められるようなシステムや仕組があれば人事・採用担当者は必要ありません。私自身も専門能力を活かして、「経営者の右腕として機能しなければ会社にいる必要がなくなってしまう」という思いで仕事をしていますし、必要な人材をしっかりグリップする能力もそのうちのひとつでしかありません。大げさに言えば、今後は人事・採用担当であって経営者と同等の視点やスキルが問われてくると思っています。いつまでも裏方意識ではいけないと思いますし、人事も強くなるべきです。その方が仕事も楽しいはずですから。
人事はもっと強くなるべき

【取材後記】

今回の取材で金丸さんが語ってくださった、採用すべき人材に関する詳細なターゲティング、現場任せにしない面接への姿勢、面接における応募者の価値観への迫り方、その価値観に基づいた意向・動機形成のエッセンスは、多くの人事・採用担当者が参考できる内容だったのではないでしょうか。
また、金丸さんは社会全体における人事のあり方、見られ方に対して、強い危機感を表明されていました。根本的に人が好きであるということに加えて、「単なる仲介役ならば会社にとって不要な存在」という意識を常に持ち続けていることが、金丸さんの仕事に対する妥協なき姿勢、会社にベネフィットを提供し続ける原動力となっているのでしょう。これからの人事採用担当者は、こうした危機意識を持ちつつ、人事としての専門スキル・知識を活かして経営・ビジネスの観点から会社に貢献できる存在を目指すべきなのかもしれません。

(取材・文/佐藤 直己、撮影/石山 慎治、編集/齋藤 裕美子)

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