【記入例・雛型付】労働条件通知書とは?雇用契約書との違いや書き方をサクッと解説

東京弁護士会所属 AIN法律事務所

荒川 香遥弁護士(あらかわ こうよう)【監修】

学習院大学卒業。弁護士として医療法人・社会福祉法人・中小企業の顧問業務に携わる。特に介護士によるブラック労働環境の問題や、労使紛争トラブルの予防法務に力を入れ、企業側視点で次世代の働き方を推進。労使共に幸せな仕組み作りを日々模索する。

労働条件通知書とは?
労働条件通知書は交付しないと違法になる
労働契約書と雇用契約書の違いは?他の形式で代用できる?
労働条件通知書の必須記載事項9項目と明示事項9項目
裁量労働制や歩合制、シフト制、変形労働時間制などの記載例
有期雇用契約を更新する場合・しない場合の対応方法
昇格や降格、異動など労働条件に変更があった場合の対応は?
労働条件通知書は、いつ交付していつまで保管するのか?
トラブルになるケースとは? -3つのケース-
2019年4月電子交付が可能に!その概要とやり方

労働条件通知書とは労働契約時に企業と労働者の間で、取り交わす必要のある書類のこと。法的に雇用契約書の作成は任意である一方で、労働条件通知書は交付しないと違法となります。労働条件通知書に決まった書式はありませんが、必須記載事項がいくつかあります。そこで、書類を作成する際に押さえておきたい基本的な事項のほか、電子交付の際の注意点などを詳しく解説します。

労働条件通知書とは?

労働条件通知書とは、企業と労働者が労働契約を結ぶ際に交付する書面で、契約期間や就業場所、就業時間や給与といった労働条件をまとめたものです。労働条件を口頭のみで伝えることによる認識の相違を防ぎ、企業と労働者の間でのトラブルを回避するために、労働条件通知書を発行します。「企業が労働力として雇用する人材」が対象となるため、正社員だけではなく、契約社員やパート・アルバイトなどにも発行する必要があります。また労働条件通知書に明示しなければならない項目は決まっているものの、企業によって書式はさまざまです。労働条件通知書の記載事項については、後ほど紹介します。

労働条件通知書は交付しないと違法になる

労働基準法第15条第1項で、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」という「労働条件の明示義務」が定められているため、企業は労働条件通知書を労働者に渡す義務があります。この書面を渡さなかった場合は違法となり、労働基準法第120条第1号に基づき、30万円以下の罰金を科されます。

労働契約書と雇用契約書の違いは?他の形式で代用できる?

労働契約書、雇用契約書、就業規則との違いや内定通知書、採用通知書、オファーレターの違いは以下の通りです。
内定通知書/採用通知書/オファーレターとの違い
各項目について詳しく解説します。

雇用契約書・労働契約書との違いは?兼用できる?

民法の規定に基づく「雇用契約書」や労働契約法の規定に基づく「労働契約書」は、いずれも企業と労働者の関係における労働条件を示したものです。記載内容は「労働条件通知書」とほぼ同じですが、労働者の合意が必要か不要か、書面での交付が義務か任意かという点で違いがあります。雇用契約書・労働契約書は、企業と労働者の双方の合意が必要ですが、労働条件通知書は、合意は必要ありません。また雇用契約書・労働契約書は、口頭で労働契約を結ぶことも認められています。一方、労働条件通知書は、現行法では書面での交付が義務付けられているという点が異なります。記載事項はほぼ同じである労働条件通知書と雇用契約書・労働契約書ですが、仮に労働契約等をめぐりトラブルになった際に有効なのは雇用契約書・労働契約書です。そのため、それぞれの書類を別々に発行するのではなく雇用契約書・労働契約書と兼用する企業も多く見られます。兼用する際は「労働条件通知書兼雇用契約書」という名前の書面を労働者と取り交わします。労働条件通知書兼雇用契約書を作成する際は、労働条件を書いた後、労働条件に同意する旨や契約書を保管する旨を記載し、企業・労働者の双方の署名・捺印欄を設けましょう。

就業規則で代用は可能?

就業規則とは、全ての労働者が守られなければならない規則や、基本的な労働時間や休日、給与規定などを定めたものです。労働条件を示しているという点では労働条件通知書と類似していますが、対象者が異なります。就業規則は全ての労働者に適応となる基本的な事項を規定したものですが、労働条件通知書は就業規則に規定された労働条件をもとに、労働者一人ひとりに向けて整え直して作成します。
就業規則に労働者一人ひとりに適用される労働条件を具体的に規定し、適用部分を明らかにした上で就業規則を作成すれば、労働条件通知書を改めて交付する必要はなく、代用できるとされています。しかし、両書面の記載内容は類似しているものの完全には一致していません。そのため、就業規則に具体的な労働条件を記載するのではなく、個別に労働条件通知書を交付するケースが一般的です。

内定通知書/採用通知書/オファーレターとの違い(正社員の場合)

内定通知書・採用通知書・オファーレターは、いずれも求人に応募してきた人に企業が内定を出し、労働契約を締結する意思を示す際に証拠として示すものです。労働契約を締結した際に出されるものという点では労働条件通知書と一致していますが、書面での交付義務があるかどうかが違います。内定通知書・採用通知書・オファーレターの形式は企業の裁量に委ねられており、書面として出さずに口頭のみで意思表示をすることもできます。一方労働条件通知書は、現行法において書面での提出が義務付けられているという点が異なります。
内定通知書・採用通知書・オファーレターと労働条件通知書は、兼ねることもできます。別の意味合いを持つものとして別々に交付するケースもあれば、書類作成の工数などを考えて両者を兼ねたものを交付するケースもあるなど、対応は企業によってさまざまです。兼用する場合は、労働条件通知書に記載すべき項目を確実に盛り込みましょう。

労働条件通知書の必須記載事項9項目と明示事項9項目

労働条件通知書の書式は定められていませんが、記載が必要な項目が多いため、雛形を使うと効率的に作成することができます。労働条件通知書の雛形は、厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー」に掲載されています。「一般労働者用」「短時間労働者用」「派遣労働者用」「建設労働者用」「林業労働者用」の5つの区分で、それぞれ「常用、有期雇用型」と「日雇型」に分けられています。また、いずれの雛形も「Word版」と「PDF版」のダウンロードが可能です。

労働条件通知書はどのような内容を記載しても良いのではなく、法律によって記載事項が決められています(労働基準法施行規則第5条参照)。必ず労働条件通知書に記載しなければならない事項を「必須記載事項」、該当がある場合のみ書面や口頭で明示する必要がある事項を「明示記載事項」と言います。

【必須記載事項】労働契約の期間

契約期間の定めがあるのか、いつからいつまでが契約期間なのかを明記する必要があります。

・無期契約の場合:「期間の定めなし」とし、契約開始日を記載
・有期契約の場合:契約開始日と終了日を記載
・試用期間がある場合:契約開始日と終了日、または「入社後何カ月間」といった形で、試用期間を記載

【必須記載事項】就業の場所

会社名、支店名といった具体的な就業場所を記載する必要があります。転勤の有無まで記載する義務はありませんが、転勤を想定していなかった労働者と後々トラブルになる可能性もあるでしょう。そのため転勤の可能性がある場合は、最初の就業場所を書いた上で、「その他会社が指定する事業所」や「国内・外への配置転換・転勤を命ずる場合がある」といった言葉を追記するのが望ましいです。

【必須記載事項】従事する業務

入社後に担当する業務内容について、記載する必要があります。いくつかの業務に携わる場合、一つに限定せず、複数の業務内容を記載します。

【必須記載事項】始業時刻終業時刻

労働時間の始まる時間と終わる時間を記載する必要があります。始業時間就業時間の定めがない場合、労働時間に関するルールを記載します。

【必須記載事項】休日休暇

休日休暇や休憩時間について、記載する必要があります。また、有給休暇の日数や付与する際の条件も記載します。

【必須記載事項】賃金

賃金の決定方法や計算方法(月給、日給、時給など)、支払方法、賃金の締切り及び支払時期に関する事項を記載する必要があります。また、社会保険料など控除対象となる項目についても記載します。残業代を支給する場合は残業時の「割増賃金率」を、みなし残業代を支給する場合は「何時間相当の残業代としていくら支給するか」を明記することが重要です。

【必須記載事項】退職に関する事項

退職事由や退職する際の手続きといった退職に関する事項を記載する必要があります。定年退職や解雇といった退職事由、定年退職となる年齢、退職の何日前までに連絡が必要かといった自己都合対象の際の手続きについて、記載します。

【必須記載事項】有期契約労働者については、労働契約の更新有無と基準

従来、有期契約労働者の労働契約の更新基準については書面での明示義務がありませんでしたが、2013年4月からは書面での明示が義務付けられました。そのため、有期契約労働者に対しては、労働契約を更新する可能性の有無や更新基準を記載します。更新の有無に関しては、「自動的に更新する」「更新する場合があり得る」「契約の更新はしない」という3つを書き、該当するものに丸を付けるのが一般的です。更新基準に関しては、「契約期間満了時の業務量により判断する」「労働者の勤務成績や態度により判断する」「労働者の能力により判断する」「会社の経営状況により判断する」「従事している業務の進捗状況により判断する」の5つがあります。5つ全てまたは実態に即したものだけを記載し、該当するものに丸を付けるのが一般的です。

【必須記載事項】交替制勤務をさせる場合は、就業時転換(交替期日あるいは交替順序など)に関する事項

企業で働く労働者を2組以上に分けて交替制勤務をさせる場合は、「就業時転換」として交代期日や交代順序を記載する必要があります。始業時間就業時間が「何日おきに変わるのか」「どういった順番で変わるのか」などを記載します。

【明示記載事項】昇給に関する事項

昇給の有無といった昇給に関する事項は、明示する必要があります。昇給を想定していない場合は「なし」、想定している場合は「本人の実績、会社の業績を勘案し昇給することがある」といった書き方が一般的です。「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則」の第2条に基づき、パートやアルバイトなど短時間労働者に対しても昇給の有無の明示が書面・Eメール・FAX等による方法での交付が義務付けられています。

【明示記載事項】退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定方法、計算方法、支払方法、支払時期に関する事項

退職手当の制度がある場合、明示する必要があります。退職手当が「誰に」「どう計算した金額を」「どういう方法で」「いつ」支給されるのかを明示しましょう。「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則」の第2条に基づき、パートやアルバイトなど短時間労働者に対しても退職手当の有無の明示が書面・Eメール・FAX等による方法での交付が義務付けられています。

【明示記載事項】臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

業績に応じて報奨金や賞与などを支払う規定がある場合、明示する必要があります。「どういう基準で」「いつ」「どういう方法で」臨時に支払われる賃金や賞与が支払われるのかを明示しましょう。「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則」の第2条に基づき、パートやアルバイトなど短時間労働者に対しても賞与の有無の明示が書面・Eメール・FAX等による方法での交付が義務付けられています。

【明示記載事項】相談窓口に関する事項(パートタイム労働者)

パートタイム労働法」第9条から第13条までの規定に基づき、企業はパートやアルバイトといったパートタイム労働者に対して、実施する雇用管理の改善措置の内容を説明することが書面・Eメール・FAX等による方法で義務付けられています。パートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するための体制整備の一つとして、相談窓口の明示が必要です。

【明示記載事項】労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項

労働者自身で諸費用を負担するケースがある場合、明示する必要があります。例として、従業員用食堂で労働者が支払う食費や、作業着や制服といった勤務の際に必要な作業用品が挙げられます。

【明示記載事項】安全、衛生に関する事項

社内の安全衛生についての規定がある場合、明示する必要があります。例として、機械の点検や保護具の着用といった災害補償に関することや、喫煙場所や健康診断といった安全衛生に関することが挙げられます。

【明示記載事項】職業訓練に関する事項

職業訓練に関する規定がある場合、明示する必要があります。職業訓練を受ける場所や期間などを示すと良いでしょう。

【明示記載事項】災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

労働者が怪我をしたり、病気になったりした場合の補償があるようであれば、明示する必要があります。「どういった場合」「いつ」「いくら」補償されるのかを示すと良いでしょう。

【明示記載事項】表彰、制裁に関する事項

表彰や制裁に関する規定がある場合、明示する必要があります。「どういった場合」「どのように」表彰されたり、制裁を受けたりするのかを示すと良いでしょう。

【明示記載事項】休職に関する事項

産休・育休といった法的に認められた休職はなく、企業独自の休職制度がある場合、明示する必要があります。「どういった場合」「どのくらいの期間」休職することができるのかを示すと良いでしょう。

記載事項 記載内容
必須 労働契約の期間 ・契約期間の定めの有無
必須 就業の場所 ・会社名、支店名といった具体的な就業場所
※転勤の可能性がある場合は、それが分かるように記載するのが望ましい
必須 従事する業務 ・入社後に担当する業務
※いくつかの業務を担当する場合、担当する全ての業務を記載
必須 始業時刻終業時刻 ・労働時間の始まる時間と終わる時間
※定めがない場合、労働時間に関するルールを記載
必須 休日休暇 ・休日休暇や休憩時間
・有給休暇の日数や付与する際の条件
必須 賃金 ・賃金の決定方法や計算方法、支払方法、賃金の締切り及び支払時期
・社会保険料など控除対象となる項目
・残業時などの割増賃金率
必須 退職に関する事項 ・退職事由や退職する際の手続き
・定年退職となる年齢
・自主退職の場合の連絡期日
必須 【有期契約労働者の場合】
労働契約の更新有無と基準
・労働契約を更新する可能性の有無
・更新基準
必須 【交替制勤務の場合】
就業時転換(交替期日あるいは交替順序など)に関する事項
・交代期日や交代順序
明示 昇給に関する事項 ・昇給の有無
※短時間労働者も同様
明示 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定方法、計算方法、支払方法、支払時期に関する事項 ・退職手当を「誰に」「どう計算した金額を」「どういう方法で」「いつ」支給されるのか
※短時間労働者も同様
明示 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項 ・臨時に支払われる賃金や賞与が「どういう基準で」「いつ」「どういう方法で」支払われるのか
※短時間労働も同様
明示 相談窓口に関する事項 ・相談担当者の部署、名前
明示 労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項 ・社員食堂の食費や作業着代など、労働者が自己負担する費用
明示 安全、衛生に関する事項 ・機械の点検や保護具の着用といった災害補償に関すること
・喫煙場所や健康診断といった安全衛生に関すること
明示 職業訓練に関する事項 ・職業訓練を受ける場所や期間など
明示 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項 ・「どういった場合」「いつ」「いくら」補償されるのか
明示 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項 ・「どういった場合」「どのように」表彰されたり、制裁を受けたりするのか
明示 休職に関する事項 ・企業独自の休職制度(産休・育休など法的に認められた休暇以外)
・「どういった場合」「どのくらいの期間」休職することができるのか
(参考:「労働基準法施行規則」より)

裁量労働制や歩合制、シフト制、変形労働時間制などの記載例

労働者の勤務形態や給与形態によっては、労働条件通知書を書く際に注意が必要です。

裁量労働制

裁量労働制とは、労働時間が労働者の裁量に委ねられていて、実働時間に関係なく契約した労働時間を勤務したものとして給与を支払う制度のことです。毎日決められた時間で勤務するわけではないため、始業時刻終業時刻の書き方に注意が必要です。「裁量労働制:始業(08:00)終業(17:00)を基本とし、労働者の決定に委ねる」といったように、労働時間が労働者の裁量に委ねられていることが分かるように書きましょう。また、「一日のみなし労働時間を8時間超とした場合」「深夜勤務をした場合」「法定休日に出勤した場合」など割増賃金を支払う必要がありますので、賃金の項目に明記します。なお裁量労働制を導入する際は、労働条件通知書の交付の他に、労使協定の締結が必要となります。

歩合制

歩合給とは、労働者の仕事の成果や出来高に応じて給料が変わるという給与形態のことです。一定額の「固定給」に加えて、業績によって上下する「歩合給」が支払われます。毎月の給与額が変動するため、賃金の書き方に注意が必要です。「出来高給:(基本単価50,000円、保障給130,000円)といったように、最低限保障される「保障給」とそれ以外の出来高に依存する賃金に分けて書きましょう。なお、保障給は最低賃金額を下回らないように設定する必要があります。

シフト制

シフト制とは、時間を決めて労働者を置き換える勤務形態のことです。毎日決まった時間で勤務するわけではないため、始業時間終業時間の書き方に注意が必要です。「1カ月単位の交替制として」といったように、どのくらいの期間でシフトが変わっていくのかを明記した上で、「次の勤務時間の組み合わせによる」として、シフト勤務の場合の始業時間・終業時間を記載しましょう。シフトパターンが決まっている場合、「始業(10:00)終業(18:00)」「始業(11:00)終業(19:00)」など、想定されるシフトを全て記載する必要があります。シフトパターンが定まっていない場合、「労働時間は1週間40時間以内とし、勤務日および時間については、勤務シフト表により前月末日までに通知する」といったように書きましょう。

変形労働時間制

変形労働時間制とは、労働時間を月・年単位で計算した上で、日・週ごとに労働時間を振り分けていく勤務形態のことです。勤務時間が一定ではないため、始業時間終業時間の書き方に注意が必要です。「1カ月単位の変形労働時間制として」といったように、労働時間がどういう単位で決まるのかを明記した上で、「次の勤務時間の組み合わせによる」として日・週ごとに想定される始業時間終業時間を全て記載しましょう。
なお、変形労働制は所定労働時間や残業の考え方などがやや複雑な制度のため、労働条件通知書の交付の他に、労働者に制度の説明もすると良いでしょう。

有期雇用契約を更新する場合・しない場合の対応方法

有期雇用契約の労働者に対しては、契約期間が終わるタイミングで契約更新の有無を決める必要があります。契約更新する場合としない場合とでは、企業がすべき対応が異なります。

有期雇用の契約更新するしない

契約更新する場合の対応

契約更新をする場合、新たな契約期間を定めた労働条件通知書や雇用契約書の交付が必要です。なお、当初の契約期間が終了しても更新手続きをすることなく雇用が継続していると、法的には「以前と同じ労働条件で、期間の定めのない雇用契約が締結された」と判断されます。そのため、有期雇用契約を継続したい場合には、契約期間を把握した上で、確実に新しい契約を締結しましょう。

契約更新しない場合の対応

契約更新をしない場合、契約満了となり雇用は終了となるため、特別な対応は必要ありません。しかし、契約更新を3回以上実施していると通常の解雇と同様の手続きが必要になるケースがある、雇用期間が5年を超えると本人が希望すれば無期雇用に切り替わるため雇用を終了できないといった例外もあるため、注意が必要です。

昇格や降格、異動など労働条件に変更があった場合の対応は?

労働者と労働契約を結ぶ際に労働条件通知書と併せて渡す就業規則には、昇格降格や異動といった労働条件の変更に関する規定が書かれています。つまり、労働者は契約締結時に、労働条件が変更になる可能性があることにも合意しているものと見なされます。そのため、労働条件に変更があった場合、必ずしも労働条件通知書を変更し再交付する必要はありません。ただし、後々のトラブル防止のため、労働条件通知書の再交付はしないにせよ、労働条件が変更になった旨の通知はすることが望ましいでしょう。

労働条件通知書は、いつ交付していつまで保管するのか?

交付時期

いつ交付していつまで保管するのか

労働条件通知書は、労働契約を結ぶ際に交付するものです。企業と労働者の双方が合意することで労働契約が成立するという点から、採用内定時に労働契約が締結しているものと推察され、過去の判例においても、同様の解釈がなされています。そのため、労働条件通知書は本来、内定の時点で交付するのが望ましいと言えます。
しかし、内定時には就業場所や賃金などが全て決まっていないケースも多く、内定時に正式な労働条件通知書を交付するのは難しいでしょう。そのため、実務的には、内定時での交付は難しい旨を説明して入社日までに交付する、内定時に確定・予定している条件を記載したものを仮交付するといった対応をするのが一般的です。内定者に不安を与えないため、内定時に労働条件通知書を交付できない場合は十分な説明を行いましょう。

保管期間

労働条件通知書の保管期間は、労働者が退職または死亡した日から3年間です。これは、労働基準法109条「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない」という規定と、労働基準法施行規則第56条第3号「雇入れ又は退職に関する書類については、労働者の退職又は死亡の日」を起算日とするという規定に基づくものです。契約開始日や入社日から3年間ではないため、注意が必要です。労働基準監督署の調査や、労働者が退職したあとにトラブル対応で必要となるケースもあるため、雇用契約書などと併せて保管しておきましょう。

トラブルになるケースとは? -3つのケース-

企業側が正しい対応をしないと、労働者とのトラブルに発展するケースがあります。

ケース①:労働条件通知書が交付されない

労働条件通知書を交付しないと、労働者とのトラブルに発展する恐れがあります。正社員には交付しても、パートやアルバイトには交付しないというケースも中にはあるようですが、労働条件通知書は全ての労働者に対して交付することが義務付けられたものです。雇用形態に関わらず、全ての労働者に確実に交付しましょう。

ケース②:労働者にとって重要な情報が足りない

労働条件通知書を交付していても、労働者にとって重要な情報が不十分だった場合はトラブルに発展する可能性があります。「転勤があるとは思っていなかった」「賞与が毎年もらえるものだと思っていた」といった不満を労働者が抱えることにより、退職などにつながる恐れがあります。転勤を想定しているのであれば「(最初の事業所)、その他会社が指定する事業所」、賞与の支給の有無は業績次第であれば「本人の実績、会社の業績を勘案し支給することがある」といったように、労働者の理解を得られるように記載しましょう。

ケース③:労働条件通知書どおりの対応がされていない

労働条件通知書を交付していても、実際の対応がそれに即したものでないと労働者とのトラブルに発展する恐れがあります。例として、労働条件通知書に書いてあるよりも実際の勤務時間が長い、残業代が規定どおりには支払われないといったことが挙げられます。勤務時間や賃金に関わる内容に相違があると、トラブルが起こりやすいため、労働条件通知書の記載内容通りに対応しましょう。

2019年4月電子交付が可能に!その概要とやり方

雇用に関する各種書類のIT化が進んでいるという背景を受け、厚生労働省は2018年9月7日に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令」を発表しました。この省令は、現在は書面での交付が義務付けられている労働条件通知書について、2019年4月からは電子交付を認めると改めたもので、企業側の負担軽減につながることが期待されています。

電子交付の方法

電子交付は、次のいずれかの方法でのみ、認められています。

・ファクシミリ(FAX)を用いる送付
・電子メールなど、特定の者しか受信できない電気通信による送付

電子交付をする際に注意したい3つのポイント

電子交付をする際に注意すべき3つのポイントを紹介します。

ポイント①:労働者が希望したこと

労働者がFAXや電子メールなどでの交付を希望している場合のみ、電子申請が認められます。労働者がどういった形での交付を望むのかを事前に確認し、希望に合わせた形式で交付しましょう。

ポイント②:受信を特定の者に限る電気通信による送付であること

特定のもののみが受信できる電気通信によって、送付しなければいけません。第3者がアクセスできるウェブサイトへのアップロードや不特定多数での共有を前提としたフォルダ・ファイルの利用は、省令違反と見なされる可能性があるため避けましょう。

ポイント③:労働者が書面に印刷できるものであること

労働者が労働条件通知書を自分で印刷できるような形式で送らなくてはなりません。特定の電子デバイス上でしか見られないもの、SNSなど印刷を前提としていないもの、期限が過ぎると閲覧できなくなるものなどを使っての送付は、省令違反と見なされる可能性があるため避けましょう。

まとめ

労働条件を記した労働条件通知書は、企業側が全ての労働者に対して交付することが義務付けられた重要な書面です。2019年4月からは電子交付が可能となりますが、労働者の希望を確認や送り方などに注意が必要です。労働者にとって重要な情報である必須記載事項や明示記載事項を確実に明記し、記載内容通りに実際に対応することで、労働者とのトラブルを回避しましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/unite株式会社、編集/d’s JOURNAL編集部)