外国人労働者を受け入れる際のポイントと注意点を解説

d’s JOURNAL編集部

人手不足の解消のために、外国人労働者の受け入れを検討する場合もあるでしょう。受け入れにあたっては多くのメリットがある一方で、注意点についても押さえておく必要があります。

また、実際にどのようなステップで受け入れの手続きを進めていけばいいかを把握しておけば、スムーズに取り組めるはずです。この記事では、外国人労働者を受け入れる際のポイントと注意点を解説します。

外国人労働者の受け入れとは

外国人労働者の受け入れを考えるときには、まず外国人労働者の区分や現状などを理解しておくことが大切です。基本的なポイントについて見ていきましょう。

外国人労働者とは

外国人労働者(foreign worker)とは、国を越えて働きにくる労働者を受け入れ国の視点で捉えたときの呼び方です。外国人労働者といっても、日本に移住して働く人や期間限定で滞在している労働者、留学ビザなどで日本に滞在しながら一定のルールのもとで働く外国人留学生などさまざまな形態があります。

日本国内で働く外国人労働者が増加したきっかけは、バブル景気による人手不足だといわれています。また、同時期に起こった為替の変動によって近隣のアジア諸国との間で経済格差が広がったことも要因でした。

1990年に改正出入国管理法が施行され、専門的な技術を持った外国人について在留資格の整備が実施されました。さらに、技能実習制度の創設や高度人材ポイント制の導入などによって、外国人労働者数は徐々に増加していったといえます。

近年では、国内の人手不足がより深刻な課題となっており、2019年に新たな在留資格として特定技能制度がスタートしたこともあり、外国人労働者が今後も増加していくことが見込まれています。

外国人労働者の区分

外国人労働者は、就労資格という観点から見ると大きく4つに区分されます。それぞれの特徴についてまとめると、以下の通りです。

外国人労働者の主な区分

在留資格の分類 主な特徴
就労目的で在留が認められる者 いわゆる専門的・技術的分野の人材。高度な専門的な職業(大学教授、弁護士など)、大卒ホワイトカラー、技術者(エンジニアなど)、外国人特有又は特殊な能力等を活かした職業(通訳、料理人、パイロットなど)の3つに大別される。
身分に基づき在留する者 定住者(主に日系人)、永住者、日本人の配偶者等
特定活動 技能実習、EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者など
資格外活動 留学生のアルバイトなど。本来の在留資格の活動を阻害しない範囲内(留学生:1週28時間以内、就学生:1日4時間以内)で、相当と認められる場合に報酬を受ける活動が許可される。

(参考:厚生労働省「我が国で就労する外国人のカテゴリー 」)

「身分に基づき在留する者」については、他の在留資格とは異なり、活動に制限がありません。そのため、さまざまな職種で活躍する機会があり、報酬を受け取ることが可能です。

一方、その他の在留資格は許可されている活動内容が決まっています。特に、留学生のアルバイトについては週28時間以内という制限が設けられているので、事業主は採用にあたって注意が必要です。

外国人労働者の現状と受け入れ

外国人労働者の採用を検討している場合、国内における現状と受け入れ状況を把握しておく必要があります。それぞれのポイントについて解説します。

日本で就労している外国人労働者の推移

厚生労働省が公表している「外国人雇用状況の届出状況まとめ」(2023年10月)によれば、日本で働く外国人労働者数は204万8,675人で、外国人労働者を雇用する事業所数は31万8,775所となっています。

前年の2022年10月と比較すると、外国人労働者数で12.4%の増加、事業所数で6.7%の増加であり、届出が義務化された2007年以降において過去最高を更新しました。製造業やサービス業などで働く人が多い点も特徴です。

外国人労働者数は2008年の統計では48万6,000人となっていますが、2023年に至るまで一貫して増加傾向にあります。日本国内の人手不足は多くの業種で起こっているため、今後も外国人労働者数は増加していくことが予測されます。

(参考:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ 」)

国別の割合

外国人労働者数を国別で比較すると、2023年10月時点において「ベトナム」の約51万8,364人が最も多く、外国人労働者数全体の25.3%を占めています。続いて「中国」の約39万7,918人、「フィリピン」の約22万6,846人となっており、この3カ国の割合を合計すると55.8%となり、全体の半分以上を占めていることがわかります。

さらに、前年と比較して増加率が高い国を取り上げると、「インドネシア」が56.0%(約4万3,618人)で最も多いです。次いで、「ミャンマー」が49.9%(約2万3,690人)、「ネパール」が23.2%(約2万7,391人)の割合で増加しています。

他にも、ブラジル・韓国・タイ・ペルーなどからも外国人労働者を受け入れており、さまざまな国から多くの人を雇用していることがわかります。

(参考:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ 」)

都道府県別の割合

都道府県別の外国人労働者の割合を比較すると、「東京」が外国人労働者数全体の26.5%となる54万2,992人となっています。次いで、「愛知」の10.3%(21万159人)、「大阪」の7.1%(14万6,384人)の順です。

すべての都道府県で外国人労働者を受け入れていますが、対前年の増加率で見ていくと、「青森」が28.7%の増加、「北海道」が27.4%の増加、「秋田」が26.5%の増加という結果になっています。また、外国人労働者を雇用する事業所数を都道府県別に比較すると、「東京」が7万9,707所となっており、全体の25.0%を占める割合です。

次いで、「大阪」の2万5,450所(8.0%)、「愛知」の2万5,225所(7.9%)となっています。対前年の増加率では、「長崎」で14.2%、「佐賀」で13.6%、「熊本」で12.2%という結果が出ています。

(参考:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ 」)

産業別の割合

外国人労働者数について、産業別の割合で比較をすると「製造業」が27.0%(55万2,399人)と最も多くなっています。次いで、「サービス業(他に分類されないもの)」が15.7%(32万755人)、「卸売業・小売業」が12.9%(26万3,555人)という結果です。

他にも、宿泊業・飲食サービス業、建設業、医療・福祉、情報通信、教育・学習支援業などで多くの外国人労働者が働いていることがわかります。外国人労働者を受け入れている事業所の規模は、「30人未満」のところが全体の36.1%を占めています。

次いで、「100~499人」の事業所で23.3%、「30~99人」の事業所で19.3%となっており、500人未満の事業所で全体の8割近くを占めている状況です。

(参考:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ 」)

年齢・性別による割合

出入国在留管理庁が公表している「在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表」の2023年6月末のデータによれば、「25~29歳」の年齢層が52万6,804人で最も多いことがわかります。20~49歳の年齢層が多い傾向が見られ、性別については男女比の割合でそれほど顕著な傾向は見られません。

(参考:出入国在留管理庁「在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表 」)

外国人労働者を受け入れるメリット


企業が外国人労働者を受け入れるメリットとして、次のような点が挙げられます。

外国人労働者を受け入れる3つのメリット
・グローバルな人材の獲得につながる
・若い人材の採用に結び付く
・海外進出の足がかりを得られる

それぞれのメリットについて、ポイントを解説します。

グローバルな人材の獲得につながる

外国人労働者を受け入れることで、グローバルな人材の獲得につながるというメリットを得られます。外国人労働者のなかには、母国語に加えて英語や日本語など、3カ国語以上を話せる人がいることも珍しくはないものです。

海外の顧客と接し、通訳が必要な場面などにおいて活躍してもらえる機会は多いでしょう。また、異なる文化で育った人材は新たな価値観や考え方を社内にもたらしてくれる場合があります。

外国人労働者を受け入れることで、社内で英語を使用するといった取り組みが行えたり、新たな企業文化を構築したりする流れを生み出せるはずです。さらに、国内では採用が難しい専門技術や技能を備えた人材を獲得できる可能性がある点もメリットだといえます。多様な人材を受け入れる環境を整えることで、組織力を強化することにもつながるでしょう。

グローバルな人材の採用について、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『グローバル人材とは?定義や求められる能力、社内で育成する方法を解説』 )

若い人材の採用に結び付く

日本は少子高齢社会であることから、若い人材を獲得することは年々厳しいものになっています。一方で、世界的に見れば人口は増加傾向にあるため、外国人労働者を受け入れる体制を整えることで、若手の人材に多く巡り会うチャンスを得られるはずです。

海外の若手人材を採用できれば、人手不足の問題を徐々に解消することにつながりますし、組織の若返りを図ることにもなるでしょう。職種によっては、そもそも国内での人材の確保が難しい場合もあるので、少し視野を広げて海外の労働市場に目を向けてみるのも一つの方法だといえます。

特に、新卒のエンジニアについては海外から積極的に採用している企業が多くなっています。情報通信に直接関わる業種でなくても、社内のIT化・デジタル化はどの企業でも取り組みを進める必要があるものなので、国内で人材を獲得しづらい場合には外国人労働者の採用も検討してみましょう。

海外進出の足がかりを得られる

海外への事業展開を検討している場合、外国人労働者を採用することによって、ビジネスを加速化できる場合があります。外国語に精通し、海外の事情に詳しい人材を獲得することで、販路の拡大など海外進出の足がかりをつかめる可能性があるでしょう。

また、海外の人材を受け入れることは、社内の活性化にも結び付きます。日本人とは異なる文化や環境で育ってきた人材であれば、従来の発想にとらわれない新しいアイデアを生み出してくれることが期待できます。

既存の従業員にとっても刺激となり、新たな企業文化を根付かせるきっかけにもなるでしょう。海外への進出を考える際は、いちから取り組もうとするよりも、海外の人材を受け入れて取り組んでいくことも検討してみましょう。

外国人労働者を受け入れるときの注意点


外国人労働者を受け入れる際は、メリットだけでなく注意すべきポイントも押さえておく必要があります。主な注意点として、以下のものが挙げられるのでそれぞれ見ていきましょう。

外国人労働者を受け入れる3つの注意点
・文化や習慣の違いによるトラブルが起こる恐れがある
・コミュニケーションが取りづらい
・受け入れのための体制を整える必要がある

文化や習慣の違いによるトラブルが起こる恐れがある

外国人労働者は当然ながら、日本人とは異なる文化や習慣のなかで育ってきているため、いきなり日本文化に合わせてもらうことは難しい部分があります。異文化に対する理解がなければ、思いがけないところでトラブルに遭遇してしまうこともあるでしょう。

文化の違いをきちんと理解し、お互いの立場を尊重するためには、社内で交流する機会を増やしてみるのも一つの方法です。受け入れる外国人労働者の言語レベルによっては、初めのうちはコミュニケーションがなかなか進まないことも考えられますが、お互いの価値観を理解していくという意味で、交流を図っていくことが大切です。

また、外国人労働者へのサポートだけでなく、日本人の従業員に対しても必要に応じて、異文化理解のための研修などを行ってみることもよいといえるでしょう。それぞれの文化や考え方に触れることで、新たな企業文化の醸成につながるはずです。

コミュニケーションが取りづらい

日本語と外国語は異なるため、言語の壁の問題から働く側・受け入れる側の双方が、コミュニケーションが取りづらいと感じてしまう部分があるでしょう。単に言葉が通じないという点だけでなく、文化や考え方の違いからお互いのことをなかなか理解できないという部分もあるものです。

日本ではよいとされる行為や習慣であったとしても、他の国では悪いものと見なされる場合があります。逆のケースもありますし、お互いの文化や習慣に対して理解を示す姿勢がなければ、交流を図ることが難しいところもあります。

社内で受け入れる体制をきちんと整えないまま、外国人労働者の採用数ばかりを増やしてしまえば、従業員の間で溝が生まれてしまう恐れもあるでしょう。採用計画などに無理がないかを確認して、外国人労働者にとって安心して働ける環境を提供できるかをよく検討してみましょう。

受け入れのための体制を整える必要がある

外国人労働者を受け入れるためには、社内のさまざまな面で体制を整える必要があります。業務やコミュニケーションに支障が出ないように、研修や訓練などを行うだけでなく、事務的な手続きなどもよく理解しておかなければなりません。

例えば、外国人労働者を採用するには、就労ビザを取得する必要がありますが、申請から取得までに1~3カ月程度がかかる場合があります。職種によっては就労ビザを取得できない場合もあるため、事前に受け入れ時期や担当業務などに問題がないかを早めに確認しておきましょう。

また、外国人労働者を常時10人以上雇っているときには、「外国人労働者雇用労務責任者」を置くルールとなっています。労務管理や各種法令などの知識が必要になるため、社内でしっかりと対応できるのかも確認をしておくことが大事です。

社内のリソースが不足しているようであれば、外国人労働者の受け入れに詳しい外部企業のアドバイスやサポートを受けることも検討しておきましょう。

外国人労働者を受け入れるためのステップ


外国人労働者を受け入れるためのステップを把握しておけば、スムーズに手続きを進めやすくなるでしょう。5つのステップをそれぞれ解説します。

外国人労働者を受け入れるための5つのステップ
1. 受け入れ条件と在留資格の選定を行う
2. 採用活動を実施する
3. 在留資格を確認する
4. 雇用契約を締結する
5. 就労後のサポートを行う

受け入れ条件と在留資格の選定を行う

受け入れ体制を整えるためには、まず予定している業務内容や雇用期間が、在留資格と合っているかを確認しましょう。職種や業種などによっては、在留資格の関係から就労できない場合もあるので事前の確認が重要です。

また、通常の採用業務と同様に、求人を募るための雇用条件などを検討する必要があります。給与や賞与、福利厚生など働く側の視点に立って問題がないかをチェックしておきましょう。

賃金や業務内容、雇用期間などをあいまいにしていれば、後からトラブルに発展してしまう可能性があります。せっかく採用しても、早期離職につながる場合があるので、応募者に誤解を与えない表現で求人内容をまとめてみましょう。

採用活動を実施する

雇用条件などを決めたら、実際に採用活動を進めていきます。一口に外国人労働者の採用活動といっても、すでに国内に在住している人を対象にするのか、海外に住んでいる人を対象にするのかによって進め方も違ってくるでしょう。

海外まで採用活動の範囲を広げれば、国内よりも多くの人材を獲得できるチャンスは生まれますが、一方で採用の難易度は上がってしまいます。外国人労働者の採用は、専門的な知識やノウハウが必要になる部分もあるため、初めて取り組む場合は難しく感じる部分もあるでしょう。

自社のみで採用活動を進めていくことに不安があるときは、外国人労働者の採用に特化した人材紹介サービスの利用も検討してみることが大事です。必要な知識やノウハウなどを学べば、次回以降は自社で採用活動を進めることもできるので、まずは円滑に採用活動を進められる体制を整えることが肝心です。

また、採用に関する情報発信をホームページやSNSなどで行うときは、外国語への翻訳も必要になります。言語表現のニュアンスでトラブルとなってしまわないように、あらかじめ専門家のチェックを受けることも大切だといえます。

在留資格を確認する

外国人労働者の採用を決める前に、職種に応じた在留資格を持っているかを確認する必要があります。在留資格のない外国人を就労させてしまうと、不法就労助長罪などの罪に問われてしまう恐れがあるため、十分に注意しなければなりません。

不法就労助長罪とは、出入国管理及び難民認定法の第73条の2に規定されているものであり、違反をすると3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられてしまう可能性があります。在留資格がない人を働かせていた場合などが当てはまります。

また、就労可能な在留資格であっても、認められている活動範囲を超えて業務を任せてしまうと不法就労になってしまうケースがあるので気を付けましょう。特定技能による在留資格であれば働ける業種が限られますし、留学ビザで働いている人であっても週28時間以内といった時間の制限も設けられています。

在留資格の確認は採用担当者が手続きに関する理解を深めることが大事ですが、複雑なルールでもあるので自社だけでの対応が難しいこともあるでしょう。外国人労働者の受け入れについて専門知識やノウハウを持った外部の専門家にあらかじめ相談するなどして、手続きに問題がないかをきちんとチェックすることが大切です。

採用予定者の口頭による申告のみで確認を済ませるのではなく、在留資格があることを証明する書類の原本を必ず確認するようにしましょう。

(参考:e-Gov「出入国管理及び難民認定法 」)

雇用契約を締結する

在留資格の確認が済み、受け入れに問題がなければ雇用契約を締結することになります。給与や待遇、労働時間、福利厚生など働いてもらう条件をお互いに確認し、納得したうえで雇用契約をかわすことが大切です。

雇用契約書の作成にあたっては、日本の労働基準法や外国人雇用管理規程などの法令を遵守し、内容に問題がないかをよく確認しておく必要があります。また、雇用条件について説明をしたつもりになっていても、文化の違いから労働者側にきちんと内容が伝わっていない場合もあるので気を付けましょう。

労働者側からの質問や相談に対して丁寧に応じるとともに、重要事項については何度も確認を行って、理解をしてもらえているかを確認しておくことが大事です。

就労後のサポートを行う

外国人労働者の受け入れが始まったら、就労後も必要に応じてサポートを行っていきましょう。特に、永住者以外の在留資格で働いている人の場合、一定期間が経過すれば更新の手続きが必要になります。

在留資格の更新手続きをサポートして、継続して安心して働ける環境を整えていくことが欠かせません。きめ細やかな支援を続けていくことで、外国人労働者との間によい信頼関係を築き、長期的な雇用につなげていくようにしましょう。

まとめ

外国人労働者を受け入れることは、人手不足の解消につながるだけでなく、さまざまな部分でメリットを得られます。多言語に精通した人材を獲得できることで、ビジネスの海外進出をスピーディーに進められる場合があるでしょう。

また、異なる文化の価値観や考え方に触れることで、社内を活性化することにもつながる場合があります。既存の従業員にとってもよい刺激となり、新しいアイデアの創出につながっていくことも期待できます。

一方、外国人労働者を受け入れるためには、在留資格や労働関係の法令などをきちんと把握している必要があるでしょう。外部の専門家などの協力も得ながら、外国人労働者を受け入れる体制を整えていくことが大切です。

(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)

【Word版】外国人労働者雇用理由書

資料をダウンロード