新卒採用の6つのメリット|採用に注力すべき企業の特徴とは

d’s JOURNAL編集部

終身雇用や年功序列といった前提が崩れたことで、現代の日本企業においては人材採用の戦略も多様化しています。そうしたなかにあって、新卒採用に力を入れることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

この記事では、新卒採用のメリット・デメリット、中途採用のメリット・デメリットをそれぞれ詳しくご紹介します。また、新卒採用に力を入れるべき企業の特徴や、採用時に陥りやすい失敗例もあわせて見ていきましょう。

新卒採用に力を入れる6つのメリット

企業として新卒採用に力を入れることには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、主なメリットを6つの項目に分けて解説します。

新卒採用のメリット

 

企業文化を継承しやすい

企業文化は組織の構造や仕組みではなく、実際に働く従業員の行動や精神性に宿る部分が大きいといえます。企業が持つよい文化を継承していくためには、ビジョンや理念に強く共感し、前向きに貢献してくれる人材を増やすことが大切です。

新卒者は就労経験が少なく、まっさらな状態で入社してくるのが大きな特徴といえます。他社を経験してきた中途採用者に比べて、自社の文化や理念を受け入れてもらいやすく、なじみやすいのがメリットです。

そのため、新卒採用に力を入れる企業では、中心者として文化を継承していく人材も確保しやすいといえるでしょう。

社内の活性化が期待できる

企業にとって、新卒者は社内の組織を活性化させる存在でもあります。フレッシュな人材が増えることで、社内の雰囲気や人間関係に刺激が生まれ、組織全体の空気を入れ替えられるようになります。

また、新卒社員には社会人としてのスキルや経験がないため、一から丁寧に研修を行っていく必要があります。新人教育には先輩社員も付き添うのが一般的であるため、研修の過程を通じて、既存の従業員も日常の業務や仕事のあり方を客観的に見つめ直せる機会となるでしょう。

さらに、新卒者の指導役となった既存社員については、責任感の強化や広い視野の確保といったリーダーとしての資質も磨かれていきます。このように、既存の従業員によい効果が期待できるのが、新卒採用に力を入れる重要なメリットの一つです。

また、既成概念にとらわれない新卒者ならではの課題や気づきによって、ルールやマニュアルの改善につながるケースもあります。

将来の幹部候補を養成できる

新卒者は中途採用者と比べて、長い時間をかけて育成できるのが特徴です。会社の業務を幅広く理解する時間があるため、将来の幹部候補を養成できるのも大きなメリットといえます。

また、就労経験がない分、特定の職種や働き方にこだわらず、柔軟に業務へ向き合える人が多いのも特徴です。さらに、年齢の面から見ても、勤務地に制約がない場合が多いため、ジョブローテーションや全国転勤などを経て、幅広い視野を養っていくことができます。

こうした特徴から、新卒者は経営幹部としての育成も視野に入れて採用するのに適しているといえます。

企業の知名度やイメージを向上できる

新卒採用に力を入れることで、企業そのものの知名度やイメージの向上も期待できるようになります。新卒採用は採用市場でもっとも大きな規模を持ち、候補者も熱心に情報収集を行います。

そのため、企業側から積極的に情報発信を行えば、知名度の向上に大きく貢献するのです。一度入社を希望してもらえた候補者は、たとえ採用につながらなかったとしても、自社の価値観やビジョンはしっかりと認知してくれます。

丁寧に採用活動を行えば、自社のファンとして接点を持ち続けられる可能性もあるでしょう。また、新卒採用は社会的な注目度が高く、特色ある採用活動を行う企業は、メディアに取り上げられることもあります。

自社の採用システムや育成システム、社会的な意義についてピックアップされれば、企業のイメージ向上につながるケースも少なくありません。

1人あたりの採用コストを抑えられる

中途採用と比べて、1人あたりの採用コストを小さく抑えられるのも新卒採用に力を入れるメリットです。一般的に、新卒採用は3月卒業予定の学生を対象に、4月からの入社を想定して行われます。

決まった時期にまとまった人数を対象として行うため、採用活動のノウハウが蓄積されやすく、効率的なシステムを構築できるのがメリットです。また、中途採用のように特定の職種やスキルを限定して行うわけではないため、比較的に安定した応募者数が見込めるのも特徴です。

社内の年齢構成を均等にそろえやすい

定期的に新卒採用を行う企業では、社内の年齢層をバランスよくそろえられるのも特徴です。さまざまな年齢層の従業員によって構成された組織は、多様な価値観や幅広い視点を持ち、急激な環境の変化にも柔軟に対応することができます。

また、定年による急激な人材減少などを予防できるのも重要なポイントです。特に規模が比較的に小さな企業では、年齢構成の偏りが生まれやすく、メイン層となる世代が定年を迎えるタイミングで人材難に陥ってしまうのが課題となります。

定期的に新卒の従業員を採用していれば、社員数の増減が落ち着き、安定した経営が行いやすくなるのです。

新卒採用のデメリット


これまでご紹介したように、新卒採用にはさまざまなメリットがありますが、注意すべきポイントもいくつかあります。ここでは、新卒採用のデメリットについて5つの項目に分けて見ていきましょう。

戦力になるまではコストがかかる

新卒採用者のもっとも大きなデメリットは、戦力となるまでに時間とコストがかかってしまう点にあります。当然ながら、中途採用者のような即戦力としての働きは期待できず、半年から1年にわたる研修が必要な場合も多いです。

採用コストや育成コストを回収できるまでにはある程度の期間を要するため、企業にはその負担に耐えられるだけの資金計画が求められます。

採用工程が多い

中途採用と比べて、新卒採用は募集から入社に至るまでの工程が多く、時間がかかってしまうのも難点といえます。就労経験のない学生を対象とするため、企業文化に合うかどうかをじっくりと見極めるために、1人の候補者について複数回にわたる選考を行うのが一般的です。

また、多くの人材にアプローチをするためには、企業説明会などの企画も実施する必要があり、場合によっては大がかりな取り組みが求められます。さらに、選考時には学生であるため、内定を出してからも入社までには大きなタイムラグが生じます。

こうした理由から、新卒採用では一連のプロセスに1年近くの時間がかかるケースもめずらしくありません。

一度に多くの人材が入社する

新卒採用では、同じタイミングで一度に多くの人材が入社することとなります。そのため、企業としては混乱を避けるために綿密な受け入れ態勢を整えなければなりません。

採用のシステムが十分に構築されるまでは、受け入れ先の部署を決めたり、育成担当者を選定したりするのに多くの時間がかかってしまうと想定されます。入社後のフォローは、人材を定着させるうえで特に重要な工程にあたるため、十分な人的リソースとコストを割く必要があります。

また、新入社員を対象に研修などを行う際には、まとまったコストを確保しなければなりません。人数が多ければ多いほど、必要となる資金も増えていくため、慎重な計画が求められます。

社会人経験がない

就労経験がない新卒者は、企業文化などを柔軟に受け入れやすいというメリットを持っている反面、当然ながら社会人としての経験は不足しています。入社後には、企業で働くうえでの基本的なマナーやスタンスなども含めた幅広い視点での育成が必要です。

また、人によっては社会人生活になじめず、せっかく入社をしても離職してしまうケースがあります。実際のところ、新卒者の離職率はほかの世代と比べて特に高く、多くの企業にとって重要な課題となっています。

退職理由には、「人間関係の悩み」や「労働環境の問題」といった一般的なものももちろん多く含まれています。しかし、「実際に働いてみるとイメージと大きな落差があった」「額面収入と手取りの差額 に驚いてしまった」など、新卒者ならではの原因による離職も決して少なくありません。

このように、社会人経験がないことは、採用する企業にとってリスクにもなり得るのです。

景気や社会情勢に左右されやすい

新卒採用の募集数や入社数は、景気に左右されやすく、社会情勢によって人気の職種にも大きな偏りが生まれるのが特徴です。ピンポイントで採用することが多い中途採用に比べると、安定した見通しを立てるのが難しく、コストをかけても十分な結果が得られない可能性もあります。

また、業績が振るわないタイミングでは、企業としても採用イベントなどに十分な投資を行うことが難しくなります。そのため、特に大企業と比べて体力面で不利な中小企業では、新卒採用のハードルが高くなりがちです。

さらに、売り手市場が続く現代においては、内定辞退のリスクも高い傾向にあります。新卒の社員は、上の世代と比べて幅広いキャリアと可能性を追求できるため、せっかく採用コストをかけても入社につながらないリスクもあります。

中途採用のメリット

新卒採用には多くのメリットがある一方、注意すべきデメリットもあります。企業の状況によっては、新卒より中途採用が適しているケースもあるため、両者の特徴を正しく把握しながら最適な戦略を見極めましょう。

ここでは、中途採用のメリットを3つのポイントに分けてご紹介します。

中途採用のメリット

 

即戦力を獲得できる

中途採用では、ある程度のスキルや経験を持った候補者を対象とするため、即戦力となる人材を採用できるのがメリットです。自社の業界・業種の未経験者にも対象の枠を広げることはありますが、それでも社会人としての経験は一定以上積まれていると想定できます。

そのため、中長期的な育成が求められる新卒採用と比べると、戦力になるまでのコストを大幅に抑えることが可能です。

不足したポジションをピンポイントで採用できる

中途採用では、業務に必要とされる経験やスキル、資格などを明示した状態で募集をかけるのが一般的です。「○○業界で〇年以上の営業経験」や「〇〇資格保有者」など、具体的な条件を絞って採用を行うため、不足しているポジションの人材をピンポイントで獲得できるのがメリットとなります。

また、採用にかかる時間が短く、条件に合う人材が見つかれば数週間~数カ月程度で入社してもらうことも可能です。そのため、社内で急な離職などが起こったときの対策としても有効な方法です。

組織に新たな視点が生まれる

中途採用者には、自社にない経験やスキルも期待できます。たとえば、同業他社での就労経験を持つ人材を獲得すれば、独自のスキルやノウハウを自社に吸収できるチャンスにもなります。

また、他業界からの転職者は、社内に新たな視点や気づきをもたらすケースも少なくありません。特に規模の小さな企業では、知らず知らずのうちに社内の人材の傾向性や価値観に偏りが生じることも多いものです。

新しい人材の考え方やノウハウに触れることで、新たなビジネスチャンスが生まれるケースもあるでしょう。さらに、業種によっては、採用者が持つ人脈が大きな財産となることもあります。

中途採用のデメリット

中途採用にも、新卒採用と同じようにメリットとデメリットの両面があります。ここでは、中途採用時に気をつけるべきポイントとして、2つのデメリットを確認しておきましょう。

企業文化になじめないリスクがある

まっさらな状態で入社してくる新卒者とは異なり、中途採用者は前職で培われた経験や価値観にある程度の影響を受けていると想定できます。個人差はあるものの、前職の企業文化や仕事の進め方になじんでいた場合には、どうしても新たな環境に強いストレスを感じやすくなるものです。

以前勤めていた企業と自社の方針の文化に大きなギャップがある場合、フィットするまでに予想以上の時間がかかってしまう可能性もあるでしょう。そのままなじむことができなければ、社内コミュニケーションや業務にも影響を及ぼし、商品・サービスの質が低下してしまうリスクもあります。

すぐに転職されてしまうリスクがある

中途採用には、新卒採用とは異なる面での離職リスクがあります。転職者は前職での経験がある分、新しい企業で業務のミスマッチや社風とのギャップを感じれば、すぐに再び転職してしまう可能性があるのです。

また、すでに転職を経験していることから、1つの企業に勤め続けている人と比べれば、離職にそれほど抵抗がない面もあります。中途採用は、1人あたりの採用コストだけを見れば新卒採用よりもかさんでしまいやすいため、より慎重に人材を見極めることが重要です。

新卒採用に力を入れるべき企業の特徴

 

国内の企業においては、終身雇用制度が長きにわたって前提とされてきたことから、人材採用についても新卒採用が主要な選択肢となっていました。長期的に自社を支えてくれる若い人材を対象に、ポテンシャルを中心とした見極めを行い、じっくりと育成していくという考えが当然のものとされてきたのです。

しかし、終身雇用の前提が崩れた現代では、転職に対する抵抗感も薄れ、新卒採用の立ち位置にも大きな変化が生まれています。企業によっては、中途採用をメインに行い、即戦力の人材で組織を固めるという戦略が最適なケースも少なくありません。

こうした状況で、新卒採用に力を入れたほうがよいケースにはどのようなパターンがあるのでしょうか。ここでは、新卒採用が適している企業の特徴を見ていきましょう。

自社の企業文化を継承したい

人材採用の目的を「自社の企業文化を継承していくこと」に置く場合は、やはり長く自社に勤めてくれる新卒者の存在が重要な価値を持ちます。これまでもご紹介したように、社会人経験が豊富な中途採用者は、すでに前職での働き方やカルチャーに影響を受けているケースが多いものです。

そのため、純粋な意味で自社の企業文化を受け継いでもらうというのは、あまり現実的な方向性ではありません。自社の文化を大切に継承していってもらうためには、まっさらな状態の新卒者を一から育てていくのが近道といえるでしょう。

若手が成長する企業風土をつくりたい

企業によっては、若手の成長率やキャリア形成を自社の強みとしていくのも有効な戦略となります。優秀な人材はキャリア形成に高い意識を持っているため、「その企業でどのように成長できるか」が入社の基準とされるケースも多いです。

そのため、若い人材の育成に強みを持つことができれば、採用市場においては特別な競争優位性が生まれるのです。この場合は、新卒者を積極的に採用して、育成制度の充実を図りながら実績を築いていく必要があります。

新規事業の立ち上げを検討している

新卒採用に力を入れたいもう一つのケースとしてあげられるのが、「新規事業の立ち上げを検討している企業」です。新しい事業を立ち上げる際には、豊富な経験を持った既存社員だけでなく、柔軟性が高くフラットな視点を持った新卒者の力も重要な価値を持ちます。

また、新規事業は既存の業務と比べて、新入社員にも主体者としての自覚を持たせやすいのが特徴です。先輩社員にも経験のない分野であれば、ある意味では関係者全員が対等な存在となる場面も増えていきます。

単に言われたことをこなすだけでなく、全員が業務の方向性や目的を模索するプロセスも必要となるため、携わるメンバーには自然と責任感が芽生えていくのです。そのため、新卒採用に力を入れるタイミングとしては、うってつけの機会といえるでしょう。

新卒採用のよくある失敗例

 

人材採用の目的は、あくまでも組織全体の力を強め、企業としてさらなる利益を獲得することにあります。新卒採用によって確かな成果をあげるためには、明確な目的と目標に基づいて戦略を固めることが大切です。

ここでは、新卒採用時に起こりやすいよくある失敗例として、いくつかのパターンをご紹介します。

目的のない採用活動の実施

採用活動を行う際には、企業としての目的を明確にしたうえで最適な戦略を練る必要があります。しかし、スタート地点があいまいなまま採用活動を始めてしまうケースも決して少なくはありません。

よくある失敗例としては、目的のない新卒採用によって、社内の年齢構成がいびつになってしまうというものがあげられます。組織の年齢構成については、ある程度の長期的な視野で考える必要があり、数年あるいは数十年といった歳月の経過を見越した判断も求められます。

ところが、目の前の採用活動に専念するあまり、年齢のバランスが不適切になってしまうことも多いのです。たとえば、高齢の既存社員が多い企業では、焦って新卒者の採用にこだわるべきかどうかは慎重に判断する必要があります。

新卒採用によって表面的な平均年齢は下がったとしても、年齢差による従業員同士のギャップはなかなか埋まらず、離職や人間関係の悪化につながるリスクもあるでしょう。この場合は、間を取り持つ年齢層の人材を中途採用で先に獲得するほうがよい場合も多いです。

採用人数の設定があいまい

採用活動を成功させるうえでは、優秀な人材や自社に合う人材を獲得するだけでなく、入社後のフォロー体制も充実させる必要があります。せっかく優れた人材が入社してきても、社内の育成システムが整っていなければ、ポテンシャルを十分に活かすことはできません。

そこで重要となるのが、「明確な採用人数の設定」です。採用した人材を十分に活かすためには、自社のリソースやノウハウを踏まえて、現実的に何人の新卒社員を育てていけるのかを慎重に検討する必要があるのです。

また、新卒採用は複数のプロセスによって選考を行うため、スタート地点における応募者の母数も逆算しておく必要があります。採用市場や採用工程の分析を行い、何人の母集団を目標にすべきなのかを十分に研究することが大切です。

採用基準の設定があいまい

必要なスキルや経験が明確化しやすい中途採用と比べると、新卒採用はどうしても採用の基準があいまいになる傾向があります。不明確な採用基準で選考を行えば、当然ながら採用後のミスマッチが起こりやすくなるため、パフォーマンスの低下や離職率の増加につながります。

また、採用基準があいまいであれば、その後の人材育成や人事評価、人員配置の基準もブレてしまうため、軸を持った組織づくりが行えません。焦って採用活動に着手してしまう前に、まずは自社の課題や将来像にじっくりと向き合い、新卒採用の目的やビジョンを固めることが大切です。

まとめ

新卒採用に力を入れることで、企業には新たな変化や刺激がもたらされるとともに、企業文化の継承や幹部候補の獲得といったさまざまなメリットが生まれます。一方、当然ながら即戦力としての働きは期待できず、育成コストの増加や高い離職リスクといったデメリットも存在します。

企業の状況によっては、新卒採用よりも中途採用のほうが適しているケースもあるため、幅広い選択肢に目を向けてみることも大切です。両者の違いを理解したうえで、現状をじっくりと分析し、自社に合った採用戦略を立てましょう。

(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)

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