リファラル採用とは?導入のメリット・デメリット、運用のポイントを紹介

d’s JOURNAL編集部

リファラル採用は、自社の従業員から友人や知人を紹介してもらう採用手法のことです。採用コストを抑え、人手不足を解消する手法として注目されています。

しかし、導入にあたってはメリットだけでなく、デメリットなどもよく踏まえておく必要があるでしょう。

この記事では、リファラル採用の基本的な捉え方やメリット・デメリット、実施のポイントなどを解説します。

リファラル採用とは

リファラル採用の実施を検討する場合は、まず基本的な捉え方を押さえておく必要があります。縁故採用との違いを含めて解説します。

リファラル採用の定義

リファラル採用とは、自社の従業員から友人や知人などを紹介してもらう採用手法を指すものです。リファラル(referral)には、「推薦」や「紹介」という意味があります。

日本国内においては少子高齢化の影響から、人材市場が完全に売り手市場となっているため、業界を問わず注目されている手法だといえます。アメリカなどの国では広く取り入れられている手法であり、日本でもベンチャー企業を中心としてリファラル採用を行う企業が増えています。

縁故採用との違い

リファラル採用は一見すると、縁故採用と似ている印象を受けますが、本質的には大きく異なります。縁故採用では、従業員や社内関係者の親族などから紹介を受け、求める人材の適性などに関係なく、候補となる人材を採用せざるを得ない状況が起こりがちです。

候補者本人が持つスキルや特性では採用の是非を判断できず、紹介者の顔を立てるために不適格な人材を採用しなければならないこともあるでしょう。一方で、リファラル採用でも人材を紹介してもらうという点では同じですが、候補となる人材の適性や能力、企業理念に対する理解度などを十分に判断したうえで、採用するかどうかを決められます。

縁故採用よりも、公平・公正性や適性を担保しやすいのがリファラル採用の特徴です。

リファラル採用が注目される理由

リファラル採用が注目されている理由として、自社の採用力を強化したいという点が挙げられます。業種を問わず、国内においては人手不足の状態が続いているため、知名度の低い企業では人材を見つけるのに苦労してしまう面があります。

従業員の友人や知人を紹介してもらうリファラル採用なら、やみくもに人材を求めるよりも、着実に採用力を強化できるでしょう。自社の企業理念や適性などを考慮して採用活動を行えるので、従業員の離職率の低下にもつなげられるはずです。

じっくりと人材を見極めながらも、着実に採用数を確保していきたいときに適している採用手法だといえます。

リファラル採用の4つのメリット

リファラル採用を導入することで、企業として多くのメリットを得ることができます。主なメリットとして、次の4つの点が挙げられます。

リファラル採用を導入する4つのメリット

・人材がマッチングしやすい
・採用コストの削減につながる
・紹介者のキャリアの見直しにつながる
・転職潜在層を採用できる

それぞれのメリットについて解説します。

人材がマッチングしやすい

リファラル採用のメリットとして挙げられる点は、自社に適した人材を集められることだといえます。候補者の視点で見れば、入社した段階で仲間がいるため、働くことへの安心感を得られるでしょう。

紹介してもらった仲間から、その会社の魅力や風土、社風、業務内容の説明をあらかじめ受けられるため、理想と現実のギャップが生じにくいのです。採用する企業側としても、すでに働いている従業員が紹介してくれる人物であれば、ゼロベースで採用活動を行うよりも安心できます。働く側と企業側の双方がお互いの情報を事前に把握しやすいため、人材がマッチングしやすいのがメリットです。

採用コストの削減につながる

通常の採用活動では、求人誌や求人サイトなどのメディアに広告費を支払ったり、転職エージェントに紹介料を支払ったりする必要があります。採用予定の人数が多ければ多いほど、採用コストも膨らんでしまう部分があるでしょう。

一方で、リファラル採用の場合はそうしたコストが発生しないため、採用コストを大幅に抑えることができます。リファラル採用の場合も、紹介者に対するインセンティブや会食費などは必要ですが、通常の採用活動よりも費用を抑えられるのはメリットだといえます。

紹介者のキャリアの見直しにつながる

リファラル採用は新たな人材の確保を目的としていますが、勤務先に自分の友人や知人を紹介することで、既存社員(紹介者)にとってもキャリアの見直しにつながる効果をもたらします。「なぜ今の企業で働いているのか?」「何がやりたいのか?」「入社時にどんな思いを持っていたのか?」など、紹介者自身の気づきや成長、キャリアの棚卸しにつながることが多いのも、リファラル採用のメリットです。

勤続年数が長くなってきている従業員であれば、入社当時の気持ちや現在のキャリアについて見つめ直す機会が減っていることもあります。リファラル採用を通じて、勤務先の魅力や働きがいを再認識してもらうよいきっかけとなるはずです。

転職潜在層を採用できる

リファラル採用は従業員の友人や知人を紹介してもらうという性質から、転職サービスに登録していない人材を発掘することにもつながります。そのため、転職エージェントなど他の方法を利用してもなかなか人材が集まらないときに、効果的な手法です。

紹介者が他社に勤務する友人や知人に声をかけてくれることで、効率よく転職潜在層にアプローチできます。優秀な人材に対して、直接アプローチを行えるので人材を募集する確度を高められるはずです。

リファラル採用の3つのデメリット

リファラル採用には多くのメリットがある一方で、少なからずデメリットも存在します。主なデメリットとして、以下の3つが挙げられます。

リファラル採用の3つのデメリット

・人間関係に配慮が必要
・従業員の理解が必要
・情報が可視化されづらい

各デメリットについて、それぞれ見ていきましょう。

人間関係に配慮が必要

リファラル採用はあくまで、従業員の個人的な人脈に頼る部分があるため、人間関係への配慮が必要です。採用スケジュールの都合にあわせて進めようとするのではなく、紹介者や候補者の立場や事情もきちんと考えておきましょう。

紹介者に対しては自発的な行動を起こせるように、インセンティブ制度などをきちんと整えておくことが大事です。また、候補者に対しても過度な期待を寄せてプレッシャーを与えてしまわないように、きちんと適性を見極めるようにしましょう。

人間関係に配慮をしないまま採用活動を進めてしまうと、候補者が入社を辞退するだけでなく、既存社員が離職するきっかけになる恐れがあります。企業側が主導するのではなく、既存社員がリファラル採用の活動に取り組みやすい環境を整えてあげることが重要です。

従業員の理解が必要

リファラル採用は従業員がメインとなって行う活動である点を忘れないでおきましょう。企業がどのような人材を求めているのかを既存社員にきちんと伝えておかなければ、人材のミスマッチが起こる可能性があります。

採用活動に余計な手間や労力がかかるだけでなく、既存社員のモチベーションを低下させる原因にもなるでしょう。実際に採用活動を行う前に、どういった方針で実施するのかや自社に必要な人材像がどのようなものであるかを既存社員としっかり擦り合わせておくことが大事です。

情報が可視化されづらい

リファラル採用を進めることで人材を確保できた場合、既存社員に対するインセンティブをどう行うかをきちんと決めておきましょう。基準があいまいなままでは、熱心に採用活動に取り組んだ従業員が十分に評価されていないと感じ、不満が溜まる原因になりかねません。

そのため、本格的にリファラル採用を実施する前に、評価制度を適切に整えておく必要があります。友人紹介に既存社員がどれだけ貢献したのか、どの部署が協力的であったか、最もパフォーマンスを発揮できる人材を紹介したのは誰かなどを一つずつ精査して、きちんと評価することが大事です。

また、紹介してくれた既存社員にインセンティブを支払うときには、与えるタイミングや金額などを企業側が明示しておく必要があります。明確な基準を設けたうえでリファラル採用を実施していくことがよい成果につながる点を押さえておきましょう。

リファラル採用を成功させる4つのポイント

リファラル採用を成功に導くには、事前にいくつかのポイントを押さえておく必要があります。主なポイントとして、次の4つの点が挙げられます。
リファラル採用の4つのポイント

・制度を周知して従業員の協力を得る
・インセンティブに関する施策の実施
・紹介者の負担を減らす
・専用ツールの導入も検討する

各ポイントについて、どのような点を押さえておけばよいかを紹介します。

制度を周知して従業員の協力を得る

リファラル採用は自社の既存社員に行動してもらう必要があるため、制度を周知することが大切です。リファラル採用制度を導入したにもかかわらず、一部の部署でしか認識されていなければ、会社全体の取り組みとして広げていくことはできません。

制度の主旨やインセンティブなどの基本方針を明確に定め、経営層が積極的に社内へのメッセージを発信していきましょう。事業規模が大きな会社であるほど、既存社員や各部署が連携しながらリファラル採用を進めていくことで、自社に合った人材の確保へつなげていけるはずです。

インセンティブに関する施策の実施

リファラル採用におけるインセンティブとは、友人や知人を紹介して入社につながったときの報奨をいいます。具体的に支払うロイヤリティ(対価)などを明確にし、できるだけ多くの従業員に協力してもらうことが成功への鍵となります。

また、なぜリファラル採用を行う必要があるのかをミッション(目的・目標)としてきちんと方向付けして、意欲的に取り組んでもらえるようにしていくことが肝心です。インセンティブに関する部分が不明確だと、採用活動そのものが盛り上がらないばかりか、その後の採用活動にも悪影響が出る恐れがあります。

従業員からの質問などには丁寧に答え、会社として従業員の取り組みをサポートしていくことを心がけてみましょう。

紹介者の負担を減らす

紹介者となる従業員は、自分の業務を抱えながら候補者と人事担当者の双方に連絡を取り合う必要があるため、過度な負担とならないような配慮が大切です。紹介者の負担を減らすために専用ツールを導入したり、既存業務を調整したりするようにしましょう。

紹介者自身や現場のリーダーである管理職の意見も聞きながら、紹介者の負担を軽減していく取り組みを進めていくことで、安心してリファラル採用の活動に力を入れてもらえるでしょう。

専用ツールの導入も検討する

リファラル採用の実施に関する負担を軽減するには、専用ツールの導入も検討してみることが大切です。専用ツールを提供している企業は、単にプラットフォームを提供しているだけでなく、基本的な制度設計などのコンサルティングなども行っているので安心です。

専用ツールはクラウド型のサービスが主流であり、スマートフォンなどから必要な情報にアクセスできる仕様となっているため、採用活動の進行状況を可視化しやすくなるでしょう。また、ツール内ではリアルタイムでデータ分析が行えるので、応募状況や紹介者の貢献度などを明らかにすることが可能です。

特に初めてリファラル採用を行う企業であれば、外部のリソースを上手に活用していくことが重要だといえます。費用対効果を考えたうえで、自社に合ったツールの導入を考えてみてください。

リファラル採用にかかるコスト

リファラル採用は通常の採用活動と比べて、採用コストを抑えるのに向いていますが、それでも一定のコストは発生します。どのようなコストがかかるのかをあらかじめ押さえておきましょう。

紹介報酬

紹介報酬制度(インセンティブ)は、リファラル採用を実施する多くの企業で導入されています。採用決定時に一人あたり数万円から20万円程度の報酬を支払っているケースが多いですが、職種や採用難易度、経営状況などに応じて設定金額には幅があります。

また、応募が得られた時点で何らかのインセンティブを渡したり、報酬を金銭以外(自社サービスの割引券など)にしていたりする企業もあるので、自社のスタイルや競合他社の動向などを踏まえたうえで設定してみましょう。

会食費用

リファラル採用において、候補者との会食の場を設けることは大切です。心理的なハードルを下げることが期待できるので、候補者との会食費用を支給しましょう。

どのような形で会食を行うかは紹介者に任せつつも、上限額や会食の種類などは細かくルールづくりをしておくことが大切です。会食費用について、きちんと会社が負担する姿勢を見せることによって、紹介者も気軽に候補者を誘いやすくなるでしょう。

ただし、安易に制度設計を行うと、会食自体が目的となりかねないため注意も必要です。経費の申請時に誰とどこで会食を行ったのかをエビデンスとして提示してもらうなど、一定の成果につなげていくルールづくりが重要だといえます。

専用ツールの利用料金

リファラル採用に役立つツールを活用することは、採用活動そのものを活性化させるうえで大事だといえます。それぞれのサービスには利用料金がかかるため、自社の採用活動における課題点を洗い出し、問題の解決や負担の軽減につながるサービスを選んでみましょう。

複数の会社のサービスを比較しながら、人事担当者や現場社員の意見なども交えて、自社に合ったサービスを選んでいくことが大切です。

リファラル採用で用いる3つの指標

リファラル採用で人材を確保しようとするときは、効率的に採用活動を進めるために指標を用いることが重要です。ここでは、リファラル採用を行うときに活用できる3つの指標を紹介します。

協力数・協力率

リファラル採用においては、既存社員が何人くらい協力してくれるのか、協力数と協力率をきちんと把握しておくことが大切です。協力数や協力率が高くない場合は、リファラル制度の周知やインセンティブなどに問題がないかを見直してみましょう。

制度を単に導入して成果を待つだけでは、思うような効果を得られないといえます。普段から情報共有を緊密に行い、積極的な情報発信に取り組んでみましょう。既存社員に当事者意識を持ってもらうことが、リファラル採用の成否を分ける部分でもあるため、継続した取り組みを行っていくことが重要です。

一人あたりの紹介数

従業員一人あたり何名の紹介者がいるのかをチェックすることも大事なポイントです。紹介数が多い従業員がいれば、どのようなノウハウを持っているのかヒアリングして、他の従業員にも共有してみましょう。

また、気軽に候補者を紹介できる仕組みを整えることも重要です。既存社員の視点で見たときに、会社が求める人材と候補者がマッチングしているのかを判断するのは難しい部分があります。そのため、カジュアルな雰囲気で行える面談を取り入れたり、勉強会を開催したりするなどして、心理的なハードルを下げる施策を実行してみましょう。

そして、候補者を紹介した後の処遇にマイナス要素があると、次の候補者を紹介しようというモチベーションが低下してしまいます。紹介活動の合否基準やNGルールなどを事前に周知し、リファラル採用の活動体験を通じて、紹介者自身がよい体験を得られるように環境整備を行っていくことが大切です。

応募からの決定数

紹介に応募の結果、何%の採用につながっているのかを共有するのも重要です。紹介数が多いにもかかわらず、採用決定数が少なければ、応募してくる人材とのミスマッチが生じているといえます。

求人情報の発信や合否基準の明確化、入社後の働き方のイメージを共有するなど、紹介者に共通認識を持ってもらえるように施策を実行してみましょう。応募数よりも、応募者の質を高めていくための施策に取り組んでいくことで、採用決定数を高めていけるはずです。

リファラル採用の導入事例

リファラル採用を初めて行う場合、すでに導入している企業の事例を参考にすることで、さまざまな気づきを得られます。ここでは、4社の事例について紹介します。

富士通株式会社

富士通株式会社では、2017年下期に数百人を対象としてリファラル採用のトライアルを実施。スモールスタートでの利点を活かし、不安の声を解消しながら、2018年4月にリファラル採用を正式導入しました。

社員が迷うことのないよう、事前にリファラル専用サイトを整え、リファラル経由の選考プロセスを構築。選考プロセスにおいては、紹介者が「推薦コメントを入れる以上のことに関与しない」「選考に携わらない」ことを徹底しています。

会議に出向いての広報活動や社内報への掲載、ポスターの掲示、研修での周知、採用イベントでの周知などさまざまなプロモーションを継続的に行った結果、初年度には約20名が採用に至り、マッチング率が人材紹介サービス経由の約10倍という成果が表れました。

(参考:『富士通、freeeが取り組む、リファラル採用成功の秘訣【セミナーレポート】』

freee株式会社

freee株式会社では、リファラル採用促進のために「知人を紹介したくなる」組織を作つくるべく、「友達を呼ぶことのハードルを下げる」「採用の重要性、必要性をしっかり伝える」「協力者への感謝の気持ちと称賛」の3つを意識しています。

具体的には、「転職の意思を問わず、誰でもお弁当制度(夕食を無料で食べられる独自の制度)に招待できる」「全体発信だけでなく1on1の際にもリファラル採用の話をする」「称賛の場を設け、自社のロゴ入りTシャツをプレゼントする」などの取り組みを実施。候補者を紹介した社員には「現在、このような動きをしている」と進捗状況を通知し、採用を見送る際は、紹介者である社員に対面で理由を伝えてから候補者へ連絡するなど、紹介者へのフォローを徹底。

2019年9月には、採用全体の9割を占める自社採用のうち、2割がリファラル採用という結果につながりました。

(参考:『富士通、freeeが取り組む、リファラル採用成功の秘訣【セミナーレポート】』』)

LINE株式会社

LINE株式会社は、2019年7月1日にグループ各社でリファラル採用を徹底推進していくことを発表。紹介した社員にリファラル手当を支給するだけでなく、紹介されて入社した社員には30万円の入社祝い金を支給しています。

この他、「以前から支給していた知人との会食費を一人当たり7000円に増額」「社内Wikiに紹介の手順から会食向けの店舗情報までを集約」「コミュニケーションツール上に採用に特化したチャンネルを作成」など、相談や紹介をしやすい環境を整備。

リファラル採用のエントリーから入社までの割合が人材紹介サービス経由のケースの10倍以上になるなど、高い効果を得ることができました。

(参考:『LINEがリファラル採用の徹底を発表。社員自らが「自分たちのチーム」を作る意義』

株式会社セールスフォース・ドットコム

株式会社セールスフォース・ドットコムは、2018年時点で中途入社社員の約半数をリファラル制度によって採用。リクルーターが現場のビジネスリーダーを積極的に巻き込んで施策を行っています。

紹介した社員が最後まで責任を持てるよう、候補者の選考プロセス・ステータスの確認や、面接前のアドバイスを可能とする仕組みを構築。

また、採用情報のグループを作つくり、誰がどのような案件を担当しているのかを常に全員が把握しながら仕事を進めているため、あるポジションで不採用になってしまった候補者を別のポジションで採用するといった動きもあります。

(参考:『セールスフォース・ドットコムが、リファラル採用“約半数”を実現できる理由』

まとめ

リファラル採用は既存社員の人間関係をベースとした採用手法の一つです。すでに働いている従業員から紹介をしてもらうことで、企業理念や価値観などが合った人材を確保しやすいというメリットがあります。

また、採用コストの削減や安定的な人材確保といった面でプラスになる部分があり、多くの企業で取り入れられている手法です。これまでの採用活動で思うように成果が出ない場合に、リファラル採用を導入して採用活動を活性化させてみるのもよいでしょう。

(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)

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