【2026年度市場予測】2,000名の人事データから見えた“中途採用の実態”(企業規模別 調査データ付)

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法人企画部 髙尾 佳宏(たかお・よしひろ)

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リクルーティングアドバイザー マネージャー(法人営業)横山 祐平(よこやま・ゆうへい)

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  • 2025年度「中途採用実績がある企業」は85.7%と高水準だが、従業員数300名以上の企業では採用枠の縮小と厳選採用の傾向が強い
  • 2025年度「採用充足度」は前年度でやや低下しており、全体的に採用充足に苦戦した結果に。一方で、従業員数20~300名未満の企業のみ充足度が改善傾向であった
  • 2026年度の中途採用市場は、「厳選採用」が継続する見込み。採用成功のポイントとして「現場・人事・上位決裁者の目線をそろえた採用活動」がより重要になる

先行きが見えにくい経済環境の中、採用市場はどう変化しているのか。パーソルキャリアが2,000名の人事担当者に調査した最新レポート「2025年度上期 中途採用に関する法人市場調査」を本記事では分析。データを取りまとめた調査担当者の髙尾氏と、日ごろ企業と接している法人営業の横山氏(大手企業担当)・江添氏(中小企業担当)の意見も交え、最新の市場動向をひもときます。

先行き不透明な経済状況から採用枠を縮小し、厳選採用を行う大手企業が増加

──まずは2025年度上期の「採用実績の推移」について、調査結果の所見を聞かせてください。

髙尾氏:全体では85.7%の企業が「中途採用をした」と回答しており、前回調査時に引き続き高い水準を維持しています。

従業員規模ごとに見ていくと、特に大きな変化があったのは従業員数20名未満の企業です。前回調査時(2024年度下期調査)では、前々回調査(2024年度上期調査)と比べて4.2ポイント増と大幅に向上し、中途採用活動が拡大傾向にあると見られていました。今期は0.7ポイントの向上にとどまっており、裾野の広がりに安定が見られるようになったと言えます。

「年間採用人数10名以上の割合の変化」に注目すると、従業員数300名以上の企業では、前回調査時より2.4~2.6ポイント減少しています。中堅企業・大手企業が、大量採用から厳選採用に転換している傾向が見られます。

「2025年度 採用実績の推移」

出典:2025年度上期 中途採用に関する法人市場調査レポート

──日ごろ、企業を担当する営業の実感としては、この結果をどう見ていますか。

横山氏:データの通り、大手企業は厳選採用傾向だと感じます。私は主に製造業を担当しており、通商政策の不透明さや物価上昇の影響で、「今後の景気や成長曲線に対して採用数が適正なのか」を慎重に見ている企業が多い印象があります。採用枠そのものを減らす企業もあり、その影響で転職希望者1人に対して求める要件が高まっていますね。

他方、領域別に見ると、航空・宇宙産業や防衛関連産業では新規求人が増加しています。また、AI活用トレンドの拡大によって、データセンターの需要をとらえている半導体・電子部品業界でも採用意欲の高まりが見られます。

江添氏:中小企業、特に従業員数20名未満の企業では、継続して新規採用をしようとする動きが強いと感じます。従業員数300名未満の企業でも、これまでは単発的に中途採用を行っていた状態から、計画的・継続的に採用していこうとする動きが目立つようになりました。中小企業で中途採用活動が継続傾向にある背景には、苦戦する新卒採用や、企業内で組織の若返りが必要な状況が影響していると考えられます。

業界別では、中小企業でも横山さんが挙げた領域で採用意欲が高まっているほか、コンサルティング関連やマーケティング関連の職種でも、若手・経験者ともに採用が活発ですね。

求める人材要件を切り分け、複数人数を採用することで活路を見いだす中小企業も

──続いて、「採用人数の推移」についてはいかがでしょうか。

髙尾氏:ここでは、採用実績に関して「採用した」と回答いただいた企業に対し、具体的な採用人数をヒアリングしています。結果、従業員数300名以上の企業で「10名以上の採用」比率が減少。特に従業員数1000名以上の大手企業では、「50名以上の採用」が前回調査と比べて大きく減少していますね。

「2025年度 採用実績の推移(従業員規模ごとの直近の動き)」

出典:2025年度上期 中途採用に関する法人市場調査レポート

横山氏:大手企業の採用人数が減少している背景には、採用の厳選化が進む中で、各社が“即戦力となる人材”をより強く求めるようになり、その結果、競合他社とのバッティングが増えたことが影響していると考えられます。「採用通知を出しても入社に至らない」、「求める人材からの応募が来ない」など採用したくてもしきれないという状況に直面することが増えてきました。

採用枠数が抑えられていることで、1人の転職希望者に対して多くの要件や経験を求めるようになり、その結果、採用要件に合致する転職希望者の母数が限られるという現実もあります。大手企業の場合は、SDGsやダイバーシティーといった社会課題に対応できる人材のニーズも高まっていますが、こうした採用も簡単ではありません。

──半面、中小企業の採用人数は維持傾向にあるようです。

江添氏:データにあるように、維持傾向だと感じています。ただ、中小企業の場合はもともと1人の転職希望者に求める要件が厳しく、「幅広い領域の業務に対応できる人材を採用したい」というニーズが強いことから、大手企業と競合するケースも増えています。採用枠そのものを絞っているわけではないので、本当に求める人材を精査し、要件ごとに求人を切り分け、複数人数を採用することで活路を見いだしている企業もあります

 

「柔軟性」を活かした選考ができる中小企業は強い

──企業の採用充足度については、どのような変化が見られますか。

髙尾氏:下表のグラフは従業員規模ごとの回答結果をまとめており、ピンクからグレーにかけては採用充足度が計画想定通り、ブルーは計画を下回ったことを表しています。全体で見ると、若干ではあるものの採用充足度は前回調査から低下しています。その中で唯一、従業員数20~300名未満の企業のみ、採用充足度がやや高まっています。

「2025年度 採用充足度(従業員規模ごと直近の動き)」

出典:2025年度上期 中途採用に関する法人市場調査レポート

──全体的に採用充足度が低下している要因はどこにあるのでしょうか。

横山氏:大手企業では、コロナ明けの時期にあった「人材要件を下げてでも採用し切る」という動きがほとんど見られなくなっています。結果、2025年度は、計画通りの採用ができないまま時間が過ぎてしまうことも珍しくありません。採用活動を担う人事部門には、かなりプレッシャーがかかっている状況です。

──大手企業が厳選採用姿勢を堅持していることは、中小企業にとって追い風となりますか?

江添氏:中小企業も厳選して採用しなければならない状況は同じなので、必ずしも追い風とは言えないと思います。一方で、「大手企業の採用手法にも引けを取らない方法」を体現できるようになった中小企業は強いですね。たとえば、1次面接から社長が出て転職希望者と話す、選考プロセスを大幅に簡略化して選考スピードを早めるといった、中小企業ならではの柔軟性を発揮することで、採用成功につなげるケースが増えています。

大手・中小ともに模索が続く「採用体制の強化」。その勝ち筋は?

──調査では従業員規模別に「採用難度」についても聞いていますが、やはり高止まりの傾向なのでしょうか。

髙尾氏:はい。採用難度は全体的に高い状態が続いています。大手企業では「採用要件にあてはまる採用が難しくなった」「今までと同じ有料人材サービスで採用が難しくなった」と回答する企業が増えています。一方、従業員数20~300名未満の採用充足が進んでいる企業のみ、難度が下がっているという特徴も見られます。この設問項目は、コロナ明け以降すべての企業規模で高まり続けていたのですが、今回初めて従業員数20~300名未満の企業で低下が見られました。

「2025年度 採用難度(従業員規模ごと直近の動き)」

出典:2025年度上期 中途採用に関する法人市場調査レポート

──「自社の要件に合致する人材を見つけづらい」という傾向は、さまざまな企業規模で共通していますね。

横山氏:求める人材要件が高まり、それに見合う転職希望者が見つかりづらくなっているのは間違いありません。大手企業は厳選採用傾向で採用枠も限られているため、採用要件をなかなか緩和できない実情もあります。

江添氏:中小企業でも同じ難しさに直面しているところが多いですね。その中でうまくいっている企業では、制度変更や人事業務改革が順調に進み、結果につながるケースが見られるようになりました。採用担当の体制を強化し、採用活動にコミットできる状況を整えた上で、経営層から求められる人材スキルを理解し、経営と同じ目線で採用を進めています。

横山氏:採用体制の強化については、大手企業でも模索しているところが多いです。特に課題として挙がることが多いのは「現場との連携」ですね。人事は間接部門なので、人数をなかなか増やせません。そのため、現場への権限移譲を進め、部門ごとに人事を置くなど新たな枠組みをつくって採用成功につなげるケースも増えています。

2026年度の「採用市場の見通し」と「対策アクション」

──2026年度の採用市場は、どのように推移していくと見ていますか?

横山氏:全体的には2025年度に引き続き、厳選採用傾向のままで進むと見ています。求める人材要件に優先順位をつけ、「ミドル・シニア層からもスキル重視で採用する」「マネジメント経験がなくてもスキルが適応する場合は採用する」といった柔軟な対応をする企業が増えていくのではないでしょうか。

江添氏:中小企業でも、ミドル・シニア層や外国籍人材を対象に、採用の間口を広げる企業が増えてきています。新卒採用がかなり難しい状況が続いているので、第2新卒など若手ポテンシャル層を対象とした採用も盛んになっていますね。2026年度もこうした傾向が続くと思います。

──厳しい市場環境の中、人材紹介サービスを活用して採用成功につなげていくために、企業はどのようなアクションを取るべきでしょうか?

横山氏:私たちエージェントには、人材をご紹介する以外に、採用活動に関する全般的なノウハウ提供にも期待していただきたいと考えています。もはや「採用は人事がやるもの」という感覚では乗り越えられない状況になっており、人事とエージェントが一体となって現場に入り込んでいく動きが欠かせません。私たちは、現場の皆さんに適切な市場感を持ってもらったり、受け入れ態勢を整えてもらったりするために動くことも多いです。こうした面でもご相談いただきたいですね。

江添氏:採用成功のためには、「現場・人事・上位決裁者」の目線を合わせていくことが欠かせません。その点で、エージェントが価値を発揮できる余地は、まだまだあると思っています。また、うまくいっている事例や手法を活かし、各社が「自社に何を取り入れられるのか」を現実的に見極めていくことも重要です。私たちとしても、そうした判断に役立つ情報提供を、今後さらに強化していきます。

髙尾氏:諸外国の政治・経済動向の影響もあり、採用の見通しが立てにくい状況は続いていくでしょう。私自身は今後、単年度だけではなく、2~3年後も見据えて採用動向を分析できるような調査にも力を入れ、現場で活かせるデータを提供し続けたいと考えています。

【取材後記】

今回の取材で感じたのは、採用の前提が静かに変わってきていることです。景気の先行きや競争環境の不透明さから、大手企業は厳選採用へ。一方で中小企業では、要件を切り分けたり、選考スピードを上げたりと、工夫によって成果を出す例が増えていました。採用は条件面だけでなく、仕組みづくりの重要性が増している時代に入ったのかもしれません。

企画・編集/酒井百世(d’s JOURNAL編集部)、南野義哉(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/宮本七生

 

人事2,000名に聞いた! 2025年度上期 中途採用に関する法人市場調査レポート

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