中央建設、5年で従業員数を4倍にした驚異の採用力。人手不足の業界で技術者が集まる理由とは

中央建設株式会社

渡部功治(わたなべ・こうじ)

1972年11月生まれ。愛媛県今治市出身。2005年中央建設株式会社に専務として入社。 2008年に同社の4代目代表取締役に就任する。同年のリーマン・ショックの後に東京に進出。事業の拠点を東京にシフトから会社を急成長させ、現在に至る。

売上とともに社員も増加。人の確保が難しいとされる建設業界で躍進
70歳定年制を業界で早い時期に実現
採用試験は、社長面接のみ。速さと意思決定の確認がポイント

慢性的な人手不足が叫ばれている建設業界。しかしその一方で、多くの人材が集まり成長を続けている建設会社がある。それが東京都港区に本社を置く、中央建設株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 渡部功治)だ。愛媛県今治市からスタートした同社は、東京に拠点を移し、堅実に成長。わずか5年で売上高を5倍に、従業員数を4倍にまで拡大した。注目すべきは短期間で4倍に増やした従業員数であろう。同社に人が集まる理由とは、その環境とは――。その秘訣を代表取締役の渡部功治氏に聞いた。

売上とともに社員も増加。人の確保が難しいとされる建設業界で躍進

1949年、愛媛県今治市で小さな建設会社としてスタートした中央建設株式会社(以下、中央建設)は、4代目社長となる渡部功治氏(以下、渡部氏)の就任後、2010年東京へ進出を果たした。

あても伝手もないところから小さな工事や難易度の高い施工案件などを積極的に請け負うなど実績を重ね、2016年に元請けで施工した「新豊洲Brillia(ブリリア)ランニングスタジアム」をきっかけに、一気に業界での存在感を示していった。ちなみに次代の膜構造である透明建材「ETFE(高機能フッ素樹脂フィルム)」を国内で初採用したその建造物は、2018年の第59回BCS賞(日建連主催)や2019年の日本建築学会賞など数々の賞に選ばれ、注目を集めている。

現在は、総合建設業として、民間法人企業、官公庁、そして個人のお客様などの元請けや大手ゼネコンの下請け案件を中心に、ビル・マンション、工場、医療・商業・宿泊など各種施設の新築から改修まで様々な工事を幅広く手掛けている同社。特徴的なのは、徹底的に施主(ユーザー)目線に立っていることだ。

建物をより長く、より快適に過ごせるように、ユーザビリティを徹底的に考え抜いた提案と施工を実施している。それが常にお客様のベストパートナーでありたいと願う渡部氏のこだわりであり、同社が業界内でのその立ち位置を確固たるものにしている「仕事に対する理念」である。同時にその理念を体現する技術力ある従業員の存在も忘れてはならない。

中央建設株式会社

そんな同社は、組織内での業務や施工を円滑に、かつスムーズに情報共有するために「リレーワーク制度」を導入している。施工のプロジェクトは、同社のすべてのセクションと協力会社がそれぞれの仕事をつないで完遂する。そのために関連するすべてのステークホルダーが適切なタイミングと情報でバトンを回していく必要がある。それがリレーワークなのだという。この概念と制度を徹底させた結果、前述のような5年で売上高を5倍にまで高めた要因のひとつとなった。

リレーワークの運用を少し紹介すると、例えば各セクションを跨いだプロジェクトをスムーズに進行するためには、情報伝達における重要度と優先度をルール化しておくことが必要になる。そこで同社の社内メールや報告文書などでは、下記のような「リレーワークマーク」が使用される。通常、重要、重要・緊急という3つの段階に分けた。

特に急ぎの用事やクレーム対応時には、伝える内容や表現が早口になったり、厳しい口調になりがちだ。それにメールのタイトルなどには【緊急】などの文字を入れてしまうのが人というもの。そうしたことに陥らないよう、社内のコミュニケーションを円滑にする意味でも、明るく親しみやすく、それでいて重要度、緊急性が一見して分かるマークを作り出したというわけだ。さっと相手に理解してもらい、言葉や表現はできるだけ柔らかくする――。ちょっとしたテクニックだが、社内の雰囲気、情報伝達のスムーズさは驚くほど向上するという。

リレーワークマーク

70歳定年制を業界で早い時期に実現

さて、2010年東京進出を果たして以降、成長を続ける同社は、コロナ禍においてはさすがに停滞気味となったものの、稼働率を上げて利益率を確保するために45度アラート体制を敷くなどその勢いを鈍らせることを最大限に抑えている。また内部体制は逆ピラミッド型とし、2人(現場)に対して1人(内勤)を担ぐような体制や、IoTの導入などでコストを抑えつつも技術者が活躍できる現場ファーストの組織デザインを構築している最中だ。活躍する従業員たちも世の中の経済事情に左右されることなく業務に集中できていたことだろう。

さて、まずは同社の就業環境を説明しよう。特徴的なのは定年退職を70歳としている制度だ。渡部氏は以下のように答えてくれた。

「私が社長に就任した2008年頃から、定年退職の上限年齢を70歳にまで引き上げました。それにはこのような背景があります。今や人生100年時代。まだまだ元気で働けるのに、年金問題も含め60歳や65歳定年では老後破綻も懸念される。そうならないために70歳定年はマストだと考えたことです。ですから当社の人材採用も50代、60代の技術者を積極的に受け入れています。

ただし、そうした方々に求めるのは培われたベテランの技術ですので、配属直後に現場を任せられるようなスキルと経験がある方が大前提です。要はやる気と技術、経験があれば、年齢に関係なく受け入れるということです。中央建設と運命共同体として頑張ってくれる方を求めているというわけです」。

さらに、70歳定年制度を導入しても年齢による減給やカットは一切しないという。そのことが社員の安心材料につながり、年齢に関係なく第一線で生き生きと働く技術者が急増していったのだ。これが同社の施工力を担保する形となった。また年齢に関わらず採用する姿勢は、求人の際にも大きな効果をもたらす。つまり長期にわたって培ってきたスキルや経験を活かせる場が求職市場の中でも認知され、我こそはと思う高度な技術を持った求職者が集ってくるという、いわば採用のサイクルをつくり上げたのだ。


 
これまでのスキルと経験を存分に発揮したいと願って集まった技術者の出自もさまざまだ。例えば、大手ゼネコンや地場の建設会社、あるいは中小工務店など多様である。そして卓越した技術力と対応力を持つ建設のエキスパートたちが手掛ける施工品質は、業界内でも認知され有名だ。現在、社員の平均年齢は約50歳。いずれの社員も生涯現役を目標に日々活躍中だという。

「人間力と技術力を兼ね備えた建設のプロが集まる強力なチームを作り上げられたことは私も誇りです。もちろん施工はお客様ファーストでありながらも、社員ファーストでありたい。ですから頑張った分だけ報酬もアップする従業員への還元制度も忘れず整えました。妥協を許さない施工へのこだわりとそれを維持するためのモチベーションアップ策。中央建設には何かあると内外に思わせられる会社づくりをこれからも続けていきたいですね」(渡部氏)。

●より働きやすい環境づくりに邁進
また同社は定年制の整地だけではない。末永く働く環境が土台になければ、社員が走りきることができない。そこで以下のような制度と環境も整えている。

・経験・スキルを正当に評価する給与制度
・遠方の現場向けに借上げ社宅を完備
・家族手当、役職手当など各種手当が充実
・多彩で豊富な福利厚生制度
・事務作業の分業化により残業時間を削減

ポイントは、処遇の良さであることだ。これまでのスキルや経験を活かせる場があり、そして福利厚生や待遇も充実している――。これらのバランスにより従業員のモチベーションも維持されながら、生き生きと活躍することにつながるのだという。

渡部氏

採用試験は、社長面接のみ。速さと意思決定の確認がポイント

70歳定年制を導入し、かつ福利厚生や処遇も見直した同社は、東京進出からわずか5年で、従業員数を4倍にした。現在の従業員数は約110名。20~30代が3割、40~50代が3割、60代が4割の構成だ。今現在も応募者は後を絶たない状況が続いている。同社はどのように採用活動を成功させているのか。

まずは採用ブランディングである。難易度の高い施工案件を技術力でこなしていく実績は自社HPなどで存分にPRする一方で、オフィシャルアドバイザーとしてタレントの渡辺美奈代さん、ブランドアンバサダーに演歌・ムード歌謡歌手の黒木じゅんさんを迎え入れ、その認知活動にも余念がない。両氏はもともと渡部氏と親交があり、中央建設をもっと世に認知されるための活動として今回のオファーにつながったという。

また求人広告も継続的に出稿した。建設業界は人材を採りづらいというイメージがまん延しており、比較的求人広告のライバルは少なめなのが実態だという。そこで同社が積極的に求人広告の展開を行うことで、競合他社よりも必然的に同社の認知度が上がっていくというわけである。最近は直接同社に求人の問い合わせを行う求職者も、徐々に増えている現状だそうだ。

さて、採用プロセスを見ていこう。なんと同社の採用は社長が行う社長面接のみで合否が決まるシンプルなもの。合格率は大体50%程度である。応募者を見るポイントは、自分の意志で主体的に仕事を行ってきた経験があるか、働く上で自分の考え(理念や軸など)を持っているか、自己の責任のもと「自分が受け持つプロジェクトや案件を絶対に成功させる」という強い想いを持っているか、などである。

「生きていくことに真剣に向き合っているか、そして中央建設という船に乗り、仲間と一緒に同じ港を目指してオールを漕いでいけると思えるかが大事ですね。当社に応募していただいた方に対してはこちらも真剣に向き合い、その人生ごと受け入れていく覚悟で面接に臨んでいます」(渡部氏)。

これは同社が掲げる企業理念にどれだけ共感し、社会に対して自分の価値をどのように発揮して貢献できるかをどれだけ考えられるかを図る意味合いもある。それを社長自ら対話の中で見極めるというのである。そのため入社決定の時点で、採用された方の働く意欲はとても高いという。

●経営企画室の設置
また入社後も含め社員との距離感、そしてコミュニケーションの取り方もリレーワークには必要不可欠な要素。一般的な会社や組織、特に建設業界に籍を置く会社の多くは、社員と役員・経営層との心理的距離は遠い。社長の発したメッセージが、役員や経営陣によって意訳され社員へと伝えられる。それが会社と社員のエンゲージメントを薄める原因となるのだ。

そこで同社はそうした会社と社員の間に隔たりをつくらないよう、経営企画室という社内コミュニケーションのハブ的存在となるセクションを設置した。社員が普段仕事を行う上で悩んでいること、問題に思っていることなどを吸い上げる機能のほか、社長である渡部氏のメッセージをしっかり全社に届ける役割も持つ。また月2回~3回の食事会を企画したり(現在は茶話会など)、従業員の労をねぎらう慰労会を開催するなど多様に活動している。先述のリレーワークの一番の肝は、「相互関係の構築」にあるという。直接のコミュニケーションが会社と従業員を発展させるのだ。

「従業員に対してこうしてほしい、というメッセージはしっかり伝えますし、それを理解して実行しているかも把握するようにしています。その代わり、それらをやり遂げた従業員にはしっかり労をねぎらい処遇もわかりやすい形で提示しています。会社を推し進める力はやはり『人』でありますから、しっかりとその関係を深めていくことこそが会社を、そして社員を成長させるポイントだと思っています。

そして、時代はリニューアルの時代です。東京が再開発されれば世界は大きく変わりますし、その一端を担う当社も従業員とともにますます成長していきたいと考えています」(渡部氏)。


【取材後記】

中央建設の本社が立地する東京都港区芝公園界隈を歩いていると、各所で同社の看板を目にする。目を引くのは広告に登場している同社のオフィシャルアドバイザーでタレントの渡辺美奈代さんの姿だ。渡部社長とはかねてから縁があり、新設された同社のHPにも全面的に登場されている。建設業界に働き方改革を起こそうとしている同社とともにその啓蒙普及に努めているのだ。こうした活動も中央建設が世に広まるきっかけの一つとなっているのであろう。また取材の終わりに見せていただいた某大物俳優(故人)の自宅施工事例も圧巻だった。細部まで拘り抜かれた建設技術と施工の狙いに対してただただ感動する時間を過ごさせていただいた。

取材・文/鈴政武尊、編集/鈴政武尊