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2017.06.13

スキルマッチよりカルチャーマッチ。面白法人の“逆張り”採用選考プロセス

PROFILE

面白法人カヤック

採用責任者 佐藤 謙太

前職は、販促メディアを運営する大手企業で総務・労務を担当。その後、料理人になろうとしていたところで声をかけられ、2015年7月に面白法人カヤックに入社。面白採用キャンペーン以降の選考プロセスの改善に並々ならぬ熱意を注ぐ。採用以外にも「クソゲー供養会」といったクリエイター向けイベントの企画や、プロレス団体の広告の企画なども担当。

横浜国立大学大学院 国際社会科学研究院/経営学部

准教授 服部 泰宏

1980年、神奈川県生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了後、滋賀大学経済学部専任講師、准教授を経験した後、横浜国立大学大学院の准教授に着任。現在に至る。日本企業における組織と人の関わり合いや、日本のビジネス界における知識の普及に関する研究などに従事。2013年以降は、人材の採用に関する科学的アプローチである「採用学」の確立に向けた研究・教育活動に取り組み、「採用学研究所」の代表も兼務。近年の主な著書に「採用学」(新潮選書)がある。

今年も4月1日限定で実施された“経歴詐称”でエントリーできる「エイプリル採用」や、ゲームのうまさで内定を出す「いちゲー採用」など、ユニークな採用キャンペーンをいくつも展開してきた面白法人カヤック。

こうした手法ばかりが注目を集めますが、実はその裏で選考プロセスのあり方を刷新し、社員の定着率や内定承諾率が劇的に向上していると言います。

そこで今回は「組織社会化(※)」をテーマに、カヤックの採用責任者である佐藤謙太氏と、「採用学」の第一人者である横浜国立大学大学院准教授の服部泰宏先生との対談を実施しました。前編ではカヤックが取り組む施策に迫ります。

(※)組織社会化とは、社会用語で「個人が自己の属する集団ないしは、社会の規範 ・価値 ・習慣的行動様式を学習し、内面化していく過程」をさします。

採用の段階から、入社後の活躍と定着を重視

対談する服部先生

服部先生:カヤックでは、採用の段階から「組織社会化」を意識されていると伺いました。非常に興味深いなと思ったんです。一般的にカヤックさんと言えば、履歴書の代わりにGoogleの検索結果を使って選考を行う「エゴサーチ採用」ですとか、様々展開している“面白採用”などをイメージする方が多いんじゃないでしょうか。

佐藤氏:そうですね。面白採用は、僕が入社する前から行ってきたものですが、「こういう施策を面白がってくれる人を集めたい」という意図の上でやっていて。話題性も重視しているものの、あくまで採用のゴールは「入社した社員が活躍すること」だと設定しているんですよね。だから、「組織社会化」に関してはかなり注力しています。

服部先生:「組織社会化」をかみ砕いて説明すると、新入社員が組織に適応して、活躍中の人々と同じように振る舞えるようになり、早い段階からパフォーマンスを発揮してもらうこと。せっかく良い人材を採用できても、「定着できずに短期間で辞めてしまう」「期待通りの活躍ができない」と悩む企業は多いはずです。ただこの点は、“あくまで入社後の問題”と考える人事担当者も多く、採用段階から意識しているケースはかなり少ない印象なんですよね。

佐藤氏:たしかにそうでしょうね。実はカヤックとしても、明確に課題を感じていたわけではないんですよ。

服部先生:組織課題だったわけではない?

佐藤氏:必要な人材の採用はできていましたからね。個人的には、「退職率が高いな」とか、「入社後のミスマッチで退職しているケースがあるな」というのは感じていたんですが、最初からその解決策を模索していたわけではありません。

自分が行ってきた施策とその成果を、人事部の外部アドバイザーをしてくれている神谷俊さんと一緒に振り返ってみたら、「僕が採用担当になって1年以上経つけど、ほとんど退職者が出ていないな」と気づいたんです。

面接を一新して、内定承諾率が2倍以上に伸長

カヤックの佐藤氏

服部先生:佐藤さんは、採用でどのような施策を実施したのですか?

佐藤氏:僕は入社当時から、エンジニア・デザイナーといったクリエイター採用をメインのミッションとして担っています。クリエイター採用の場合、一般的にはスキルマッチを重視する傾向が強いんです。しかし、僕としてはスキルが合っているかどうかを前提に、母集団形成をすることの効率の悪さたるやないなと思っていたんですよ。

服部先生:スキルマッチは非効率……それはなぜでしょう?

佐藤氏:「組織社会化」の観点では①組織文化の理解、②仕事の進め方や役割の把握、③必要な技術を認識・習得するという3つのポイントがありますよね。

人材の母集団で言えば、①②が合う人よりも、スキルが合いそうな人の方が圧倒的に多いし、集めやすい。だからまず書類選考や人事面接でスキル要件を定めて人材を集め、その中から会社のカラーに合う人を探すといった選考が主流なんだと思います。しかし、そうすると100分の1の砂金を探すような感覚になりますよね。

加えて、人事がスキルに対する理解が浅いと、採用ポジションの担当者の面接で「なぜこの人物を?求めているスキルと違う…」というミスマッチが発生する可能性も高い。そこで「選考の流れを、逆にした方が良くないか?」と考えたんです。

僕が面接ですべきなのは、いかにカヤックの文化を言語化して伝えるか、だと設定したわけです。募集の段階でスキルに対しては、一定の基準は設けているため、最低限のスキルは満たされていることを前提に、人事がOKと言えば後はスキルや仕事の進め方などのチェックだけで、ほぼ内定が出せる世界を目指したいなと思いました。

服部先生:まずはスキルではなく、面接でカルチャーマッチを重視することにしたのですね。

佐藤氏:一次面接は、そもそも面白法人ってなんだとか、成長にコミットする姿勢とか、カヤックが考える“活躍”が何なのかとか、客観的な目線でプレゼンテーションします。社内で活躍している人材像の調査データなども揃えているので、「カヤックで活躍する人材って、こういう考え方をして、こういう言葉をよく使うんです。あなたとタイプが似ていると思いませんか?」 と伝えて、お互いの文化をすり合わせていく感じです。

だから、一次面接の時点で採用候補者に組織社会化の話をしているんですよね。その上で、二次面接で採用ポジションの責任者が仕事やミッションの話をしながらスキルを確認して、最終面接は役員に、改めて会社の風土・理念とか「社員同士が面白くはたらけることを大事にしている」といった人間関係の話をしてもらっています。

服部先生:選考のフェーズごとに何を伝え、採用候補者のどの部分を見るのかが明確になっているんですね。たしかにこの流れであれば、採用候補者の方も内定が出た時点で、会社についても、仕事の進め方についてもある程度理解していて、「いいな」と思って入社してもらえる。

佐藤氏:実際、新入社員の方には入社後1カ月で振り返り面談を行い、入社前後でのギャップをヒアリングしているんですが、「まあ、こんなもんでしょうね」という言葉が大半で、戸惑いはほとんど見られません。それに以前は30%程度だった内定承諾率も、この1年で80%に伸びています。

僕としては会社の目的が「面白いものを生み出す」ことだから、人事以外は採用に時間をかけ過ぎない方がいいと思っているんです。しかも工数をかけた上に30%しか承諾してもらえなかったら、悲しいじゃないですか(笑)。

だからこそ、入社後の定着や立ち上がりという点でも、採用活動の生産性という点でも、スキルから判断ではなく、はじめから人物面でマッチさせるという手法にたどり着いたんです。

対談風景_佐藤氏と服部先生

取材後記

多くの企業が苦戦するエンジニア・デザイナーといったクリエイターの採用。しかし、カヤック佐藤氏は「全社的な工数を考えれば、一次選考のスキルマッチは効率が悪い」と考え、まず組織文化とのマッチングを重視しました。その結果、内定承諾率は大幅に上昇し、退職率も下がりました。
もちろんすべての企業に同じ効果が期待できるわけではありません。しかし、「採用活動における課題を見極め、本質的な改善を行う」という発想と行動には、多くの人事が学ぶべき点があるのではないでしょうか。後編に続きます。

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