【成功体験談付】エンジニア採用にも有効!「カジュアル面談」活用術
選考前に社員と採用候補者がカジュアルに話す「カジュアル面談」は、採用ブランディングや企業のファンづくりに有効な手法として注目されています。しかし、その趣旨を履き違えたまま、採用面接のような面談を実施する企業も多く、候補者は面談なのに面接のように志望動機などを聞かれ、落とされたなどの不満を募らせているケースもあります。
そのような中、株式会社Meetyが2020年10月にリリースしたカジュアル面談プラットフォーム「Meety」は、企業・候補者双方から支持され、1年足らずで急成長を遂げています。カジュアル面談が支持される理由や面談を成功させるための心得を同社代表取締役の中村氏に伺うとともに、Meetyを使って面談を実施したUbie株式会社の事例も併せてご紹介します。
人事任せにせず、全員が採用に関わる姿勢が必要
──採用手法としてカジュアル面談が注目されるようになった要因は何だと考えますか?
中村氏:背景にあるのは採用難です。特に、ITエンジニアは超売り手市場になっていて、自分からわざわざ求人サイトに登録しなくても、SNSのDMでスカウトが来るような時代になっています。その結果、企業が求人サイトで募集をかけても、候補者に情報が届かない状況が生まれています。そこで、いきなり募集という形ではなく、まず転職潜在層に自社への興味を持ってもらうところから始められる、ミートアップやカジュアル面談が広がり始めました。
当社は、この採用難の時代に新たな採用の在り方を提案すべく、企業と転職潜在層がライトにつながれる接点づくりを目指して、2019年11月にミートアップ・プラットフォームの運用を開始しました。ところが、コロナ禍でイベントが次々とキャンセルになり、方向転換を余儀なくされました。その後、「企業と転職潜在層がライトにつながる接点」という機能をカジュアル面談が担えるのではないかと思い、今に至ります。
──カジュアル面談の課題は何でしょうか?
中村氏:既存のカジュアル面談を見てみると、建前ではカジュアルと言いながら、人事・採用担当者が前面に出てきて、面談というより採用面接になってしまっているケースが多いです。しかし、エンジニアが求めているのは、その企業のエンジニアがどんなことを考えているのか、プロジェクトマネージャー同士で語り合ってみたい、ということなんです。そこに人事が出てきても、専門的な話もできず、何も得られないまま面談が終わってしまいます。双方にメリットのない体験ですよね。
人事が面談を一手に引き受けて対応し続けるのは難しいですし、エンジニアも含めて全社員が採用担当としてフロントに立たなければ、求める人材を確保できない時代になっていると思います。採用候補者がウィンドーショッピングでもするように気軽に企業を訪れ、安心して話ができるような良い面談体験の場が求められているんです。
──企業側にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
中村氏:採用に有効なところが大きいです。しかし、カジュアル面談はあくまでライトなつながりを主眼にしていますので、選考にすぐに進んでもらうようなスタイルには向いていませんし、採用は人事がやるものだと考えている企業とは相性が良くないかもしれません。今Meetyをご活用いただいているのは、現場にも採用に積極的に関わってほしいと考えている企業が多いのではないでしょうか。
Meetyでは、あからさまな採用コンテンツは少なくて、「こんなテーマで話そうか」といったものがメインになっています。転職活動をするのはまだ早いかなと思っている人たちが、そういうコンテンツに興味を持ってくれて、採用につながったという声をたくさんいただいていますね。
志望動機を聞くのはNG。二度と面談に来なくなる可能性も
──カジュアル面談の参加者から「思っていたものとは違って失望した」という声も聞きますが。
中村氏:カジュアル面談の定義があいまいで、面談に対する期待値が双方食い違ってしまっているのが原因ですね。カジュアルと聞いて、候補者は現場の人とざっくばらんに話せると思っていたのに、人事・採用担当者が出てきていきなり「志望動機は何ですか?」と質問され、選考の合否まで決められる。
あるいは、現場の人に面談の趣旨がきちんと伝わっていなくて、「君は今日、何しに来たの?」みたいに上から目線で候補者に対応してしまうとか。候補者からすれば、だまし討ちに遭ったようなもので、二度とその会社を訪れたいとは思わないでしょう。
こういう「事故」を防ぐために、Meetyでは「志望動機を聞くことはNG」「会話を主導するのはカジュアル面談を実施する方」「あなたが質問する場ではなく、参加者の質問に答える場」といったガイドラインを設け、候補者が安心して面談を申し込めるようにしています。カジュアル面談を自社で取り入れたい人事・採用担当者には、このガイドラインを徹底してほしいですし、現場を巻き込んだ採用活動を進めていただきたいと思っています。
ただでさえ忙しい現場の人に採用に携わってもらうのはハードルが高いと感じるかもしれませんが、それを乗り越えないと、この採用難時代に人材を確保することはできません。経営トップや人事・採用担当者が自ら旗を振り、採用成功時のインセンティブ制度にも工夫を凝らすなどの取り組みが不可欠でしょう。
面談者と応募者が語る、カジュアル面談成功術
医療現場の業務効率化を図るAI問診サービス「AI問診ユビー」と、生活者の適切な受診行動をサポートする事前問診サービス「AI受診相談ユビー」を提供するUbie株式会社は、カジュアル面談を積極的に実施。Meetyでは80を超えるカジュアル面談のテーマを設けています。
カジュアル面談を行う同社の重藤祐貴氏に、面談構成やスタンス、質問内容などを伺いました。
──カジュアル面談の構成や流れ、内容を伺えますか?
重藤氏:まずは「カジュアルに話ができることが本当にうれしい」と気持ちを伝えています。その後、なぜ応募してくれたのか、どんな話ができたらうれしいのかなど応募者の期待と求めることを聞いて、それをベースに面談を進めていきます。今回ご紹介する事例で言うと、転職先として当社を考えてくれていたので、会社概要や仕事内容、働き方などを伝える流れになりました。
その他、応募者の現職や転職活動の軸、やりたいことなどもヒアリングしました。
──面談者と応募者が話す割合は、どのくらいが理想でしょうか?
重藤氏:基本的には面談担当者が7割程度話すのがいいと思っています。特に、応募者が当社を志望していることが明確な場合は、相手の知りたいことにきちんとお答えできるよう心がけています。
──カジュアル面談で自社のPRはどのように行っていますか?
重藤氏:相手のニーズに合わせるのが前提ですが、相手からの質問の返答にPRを織り込むのが基本のスタンスです。今回の場合は、応募者が当社の情報を聞きたいのが明確だったので、ストレートにPRしました。
──カジュアル面談で大切にしているポイントは何でしょうか?
重藤氏:まずは手数(量)とスピード、そしてやってみることが何よりも大切です。また、メンバーが楽しんで取り組み、それがボトムアップ的に社内に広がるとよいでしょう。社内でカジュアル面談の実施が増えると、どんなテーマが興味を持ってもらいやすいかなどの実行の結果検証ができるので、まずは取り組むのが大切ですね。
次に、面談を受けて同社に入社した応募者(前職:官公庁)に、カジュアル面談で感じたことやメリット・デメリットを伺いました。
──カジュアル面談に対して、どんなイメージを抱いていましたか?
応募者:過去に転職活動をしたことがなく、カジュアル面談も初めてだったので、実際どのくらいカジュアルなのか、実質選考なのではないか、などと見えない部分が多かったです。
──カジュアル面談を受けて、どんな印象を持ちましたか?
応募者:採用する・されるという立場ではなく、対等な立場でカジュアルに話を聞けたので、職場や働く人(将来一緒に働くかもしれない人)の雰囲気が良く伝わってきました。
──重藤さんとの面談の感想を教えてください。
応募者:役所で働いていると、いろいろなタイプの渉外担当の方と接する機会がありますが、すごく優秀で、とても話しやすい印象でした。こういう方が楽しそうに働く組織は、すごく良いのではなのではないか、と期待しました。
──カジュアル面談を通して、入社の決め手になったことはありますか?
応募者:転職理由の一つが、子育てと仕事の両立でした。私は、スタートアップ企業ではその両立が難しいと考えていたんです。しかし、重藤さんがスケジュールを画面共有で見せてくれて、リアルな勤務状況を教えてくれたので、自分が働くイメージができるとともに、重藤さんやUbieに対する誠実さを感じました。カジュアル面談では、そうした採用面接で聞きにくいことや、見たり知ったりできないことを直接実感として得られますね。
──さまざまなカジュアル面談の経験を通して、応募者側のメリットを教えてください。
応募者:メリットは4つあります。
①申し込みや話す内容のハードルが低いこと
②所要時間が短く、転職活動の負担になりづらいこと
③自分に合う職場なのか、ある程度判断できること
④選考を受ける企業を絞れる。転職活動の工数が減る
自分がどんな企業に転職したいのか、どんな環境ならフィットするのか、採用面接に進む前にカジュアル面談を利用するメリットはとても大きいと実感しました。
まとめ
採用難時代の新たな切り札として注目されているカジュアル面談ですが、採用は人事の仕事と考える傾向がいまだ強く、人事が前面に出てくるケースも少なくありません。しかし、エンジニアやデザイナーなどの専門職との面談を人事に一任するのはリスクが高く、自社にマッチする人材を見極めることも困難です。
この現状に対し、Meetyはあくまで現場同士のコミュニケーションを重視し、また現場を巻き込んだ採用活動を推奨しています。実際、先進的な企業では、現場のスタッフが面談に積極的に参加し、成果を上げていると言います。これから、社員全員が採用活動に参加するのが当たり前という時代がやってくるのかも知れません。
写真提供:株式会社Meety
企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/森 英信(アンジー)