加速する採用DX!実績や精度が上がった「AI面接」のイマ

タレンタ株式会社

専務取締役 兼 CFO 中村究

プロフィール

近年、大手企業を中心に人材採用業務のDX化が進む中、面接におけるAI活用に再び注目が集まっています。以前は最新技術であるからこその精度や活用方法において課題もありましたが、技術の進歩やAIビッグデータの集積などにより、面接に活用できるサービスなどが増えてきました。実際に、AIなどの採用DXについて詳しく知りたい人事・採用担当者も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、AI選考ソリューション「HireVue(ハイアービュー)」を始め、人事領域のDX支援を行っているタレンタ株式会社の中村究氏に、AI面接の実態を伺いました。

実用化が進むAI面接

まずはAI技術の現時点での傾向を教えてください。採用DXにおいてAIはどのように進化しているのでしょうか?

中村氏:AIとは言わばパターン予測システムです。「この場合は、この答えを出す……」ということを、バイアスなく正確に行うことができます。例えば、AI面接(AIアセスメント)に使われている表情分析技術は2015年ごろから実用化されており、これは初期のAI技術と言えるものです。しかし、そのころは候補者が書いたテキストや面接ビデオの表情、声などを分析することが主流で、実用的かと言うとまだ課題が多くありました。その後、2020年ごろから人が話す言葉(自然言語)を処理する技術水準が飛躍的に向上し、候補者が話す内容によって「この人はこの業務に対して、このように考える傾向がある」という発話の分析が可能になりました。つまり、面接などの人事系業務への実用化が実際に動き出したのは、技術的なブレークスルーを経たつい最近、2021年くらいからなのです。

AIの歴史

実際にAI面接を取り入れる企業が出てきたのはここ数年のことなのですね。AIは具体的にどのようなことができるのでしょうか?

中村氏:AIは言葉の意味は理解できません。しかし、テーマやキーワードを設定した対話においては、候補者の話すスピードや一文の長さ、間の取り方、さらには接続詞・助詞・助動詞の散りばめ方まで分析することができます。そのためには「ハイパフォーマー」と呼ばれる優れた人材に関するデータを、AIがあらかじめ学習しておく必要があります。「入力値(例題)」と、それに対応する「正解」というペアのデータを教師データと言いますが、この教師データの蓄積がAIの活用には欠かせません。現在のAIの進化は、このデータがある程度溜まってきたことも1つの要因です。

AI面接が得意・苦手とすること

AIは候補者のどのような能力を見るのが得意なのでしょうか?

中村氏:認知能力などを基にした、あらゆる業種や職種において求められる一般的な「職務遂行能力」や「社会人基礎力」の判定が得意です。例えば、業務の中でトラブルが発生した場面を考えてみましょう。候補者がピンチに陥ったとき、どのような行動を取るのかという行動特性や、その行動を実際にするのかという行動再現性などを予測する能力は、⼈間よりもAIの方が客観的に判定できます。AIの強みであると言えますね。

反対に、AIが予測するのが苦手なこともあるのでしょうか?

中村氏:自社のカルチャーにこの候補者が合うかどうかというカルチャーフィットや、企業独自の採用基準、自社で必要な専門性などの判定はAIの不得意分野と言えます。また、志望動機や学生のころに力を入れていたことなどの話も正解となる基準がないため、AIでの判定は難しいでしょう。採用基準と評価方法において、人間が判断した方がよい分野は存在します。

AIの得意・不得意分野

AI面接を活用するメリット・デメリット

AI面接を導入する企業側のメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?

中村氏:まず、候補者選考の効率化が挙げられます。AIを1次選考で活用した場合、それぞれの候補者に学習能力や達成意欲がどの程度あるかということを一度に測れるため、人事・採用担当者は自社の基準に合う候補者だけと2次選考で面接することができます。また、AIを導入することで選考における公平性や透明性の確保にもつながります。人間の判断にはどうしても無意識のバイアスがかかってしまうものですが、AIの判定はそれがありません。

AIに判定されるとなると心理的な抵抗感を持つ候補者もいるのではないでしょうか?

中村氏:たしかに、AIが面接に導入され始めた6年ほど前ですと、そもそもビデオで撮影されること自体に抵抗感を持つ人が多くいましたが、オンラインでの会話が一般的になってきている現在では、心理的な抵抗も薄れてきていると感じています。AI面接を導入すると「人間同士の対話時間が減ってしまうのでは?」と懸念する声もありますが、これも考え方によると思っています。たしかに全ての候補者と対話する時間は減りますが、AIで選考を効率化した分、企業側が採用したいと思う候補者との時間はじっくり取ることができます

なるほど。人事・採用担当者も、優先するべき業務にリソースを割けるのはメリットですね。人材の質という点では、AI面接を導入することで多様化が進むという考え方と、反対に画一化が起こってしまうという考え方があるかと思いますが、いかがですか?

中村氏:ここに関しては私もまだ結論を持っていませんが、どちらの意見もそれなりに正しいのだろうと思います。一つは、先ほど申し上げたようにAIはバイアスをかけずに判定できるため、学歴や国籍、民族や性別などの偏りがない人材を採用することが可能です。一方で、エントリーシートをAIで分析するなどの選考方法で使用する際には、過去の内定者のデータや今在籍している社員と同じような人材が集まる可能性が高くなります。このため、人材の画一化が起こることも考えられます。

AIのメリット・デメリット

AIと人間のハイブリッド選考が重要

これからAI面接を導入したい企業が注意しておくべきことはありますか?

中村氏:AI先進国のアメリカでは、2020年からAIの倫理規制が始まっています。データ取得の可否についても選別が進んでおり、今後欧州でもAIの法制化が進むと言われています。日本ではまだ規制はありませんが、日本の企業が外国人を採用する場合には欧米の法規制に配慮したデータの取得を意識していく必要があるでしょう。

グローバル採用では特に意識したい点ですね。新卒採用や中途採用などはいかがでしょうか?

中村氏:現在、AI採用が進んでいるのは新卒を対象にした分野です。中途採用の場合は配属される部署を指定して募集を行うことが多いため、面接にはその部署の部長や課長などが面接官として同席することがあります。中途採用においてもAI面接を導入すれば、採用の効率化を図ることが可能です。ただし、部署ごとに求められる専門能力についてはAIで個別に測ることは難しいため、AI面接後に実技やワークショップなどを取り入れることも大切です。

AIが得意な分野はAIに、不得意な分野は人間が担うということが重要になってきますね。

中村氏:そうですね。全てをAIに任せるのではなく、AIと人間のハイブリッドで選考を進めていくことが大切です。まずは企業がどのような人材を採用したいのか、今後どのように成長していきたいのかといった目線を持って数年単位でAIを活用し、データを蓄積していくことが必要だと考えます。データが溜まってくると、AIのスコアと人間の判定に食い違いが起きるケースが出てきます。そのときに、なぜAIと人間の評価が違うのか検証することで、人事・採用担当者が自らのバイアスに気付いたり、AIでは判定できない能力を大切にしていることがわかったりします。AI面接は、企業の採用基準づくりにおける一つのベンチマークとして活用することをおすすめします。

ハイブリッド面接

AI面接の導入事例

実際にAI面接を導入した企業ではどのような効果があったのでしょうか?

中村氏:株式会社阪急阪神百貨店では、「お客さまと自然に接することができるコミュニケーション能力を測りたい」というお考えから、AI面接を導入されています。AIが判定した優秀層は、これまで人事・採用担当者が面接で優秀だと判断していた人物像とは異なる人材が多く、多様な候補者との新鮮な出会いがあったようです。また、AIが選んだ優秀層以外を人事・採用担当者が確認するハイブリッド評価を実施することで、百貨店にマッチするファッションマニアやフードグルマンなどの、個性的な人材の発掘に時間をかけられるようになったと聞いています。

AIと採用担当者がそれぞれの強みを活かした事例ですね。他にもAI面接導入で効果があった企業はありますか?

中村氏:もう一つはユニ・チャーム株式会社です。「候補者が選考に出向くための移動時間や交通費など、地理的なハンディキャップをなくしたい」、「採用担当者の人的バイアスを極力削減した公平な選考を行いたい」という思いから、インターンシップ選考でAI面接を導入されています。公平な選考の実現に加え、面接で使うはずだった時間を2割削減でき、その時間を候補者とのコミュニケーションに活用して相互理解を深めることもできたそうです。

【取材後記】

AI技術は数年前と比べて格段に進歩し、採用選考への活用も広がりを見せていることがわかりました。中村さんがお話しくださったように、AIと人間、それぞれの得意な分野を活かし合うことで、より自社に合った最適な人材の採用や、面接業務の効率化につながるのではないでしょうか。

企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、制作協力/株式会社はたらクリエイト

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