中小、DX・IT人材採用難の突破法!成長が見込める“ポテンシャル人材”の見極め方、教えます

コォ・マネジメント株式会社

代表取締役 窪田 司

プロフィール

近年、特に中小企業では採用難が続き、即戦力となる人材の確保も難しくなっています。さらに、自社で活躍できる人材を見抜くことは難しく、採用に苦労されている人事・採用担当者の方は多くいるのではないでしょうか?
そこで、今改めて注目されているのが「ポテンシャル採用」です。求職者の潜在能力を見抜き「将来的に戦力化する」採用手法で、特に採用競合が多く即戦力の人材採用が難しいIT業界やエンジニア系の職種で取り入れようとする企業が増加しています。
今回は、さまざまな中小企業の採用に携わるコォ・マネジメント株式会社代表取締役の窪田司氏にポテンシャル採用を行うにはどんなことに留意し、どのように採用計画の構築や面接を進めればよいのか、ポイントを伺いました。

なぜ今、「ポテンシャル採用」が注目されているのか

近年、即戦力採用ではなく、求職者が将来発揮するであろう能力の伸びしろを見る「ポテンシャル採用」が注目されています。なぜ今取り入れようとする企業が増加しているのでしょうか。

窪田氏:ポテンシャル採用が注目されている背景は2点あると思っています。1点目は、生産年齢人口の減少による人手不足に伴い、需給の逼迫(ひっぱく)が起きていることが要因だと考えます。日本の生産年齢人口は1990年代から減少しており、人口自体も2008年をピークに減少へ向かっていて、働き手が足りません。このことから、求人倍率が高騰し採用の難易度も上昇していると言えます。

2点目は、若年層の減少と中・高年層の増加により、企業が求める人材条件を満たす求職者が減少していることが考えられます。定年延長などで日本は労働力人口自体はなんとか確保できていますが、特にITやDXなどの成長産業では、新しいスキルを習得し活躍できる人材を採用したくても、そのような人材を見つけるのは困難だというのが現状です。

コォ・マネジメント株式会社 代表取締役 窪田 司

実際に、採用現場でも即戦力となる若手を採用することが難しくなっていると感じますか。

窪田氏:そうですね。最近「第二新卒」という用語をあまり聞かなくなっていると感じています。第二新卒採用の人は社会人経験があり即戦力化しやすいため、企業も積極的に採用したい人材です。しかし、近年ではこの層のマーケットが縮小し、採用が難しくなっていると感じます。その要因としては、SNSの流行によって転職活動の可視化が起きたことが挙げられるでしょう。これまでは、前職を退職してから転職活動をするというのが一般的でしたが、最近では辞める前から転職活動を行う人が増加しています。特に即戦力の人材ほど積極的にSNSなどを活用して情報の発信や収集をしているため、退職する前に大手や有名企業などにスカウトされてしまい、中小企業での採用は特に難しくなっている印象です。

社会的な需給逼迫(ひっぱく)の流れや転職活動の可視化などにより、即戦力となる人材の中途採用は難しくなっているのですね。

窪田氏:社会的にIT化やDXの流れが加速する中で、スキルを持つ人材の即戦力採用は特に難しくなっていると感じます。特に、中小企業は条件面や待遇面で大手企業に比べて劣ることから、即戦力が採用できないのであれば未経験者や経験の浅い人材を採用して人材育成を行うことで、将来的に戦力化しようという「ポテンシャル採用」の流れにつながっているのだと思います。

入社後を見据えた「自社にとっての良い人材」の定義が重要に

さまざまな社会的背景もあり「ポテンシャル採用を取り入れたい」という企業は今後増加していくのではないかと感じます。人事・採用担当者の中には、ポテンシャル採用で将来的に伸びしろのある人材を確保するには、どうすればよいのか悩む人もいるでしょう。ポテンシャル採用を取り入れる際に意識しておくべきポイントはありますか。

窪田氏:「自社にとっての良い人材」をしっかりと設定することが非常に大事だと思っています。例えば「IT人材が欲しい」という場合、「IT人材」という言葉の定義はとても広いです。レベルの高いプログラミングスキルを持つ人材なのか、社内のシステム化を進める上で必要な比較的ITリテラシーの高い人材なのか、要件によって求めるスキルは異なります。ここを具体化せず「IT人材が欲しい」というだけで採用を行うと、ミスマッチが起きやすくなると感じています。このため、まずは「自社にとってのIT人材とは、どのようなスキルが必要なのか」を整理すること。その上で、例えば「自社で3年後に活躍できるIT人材の要件」というペルソナを具体的に人物化し、設定することが重要です。しっかりと要件定義をしておくことで希望する人材を明確にし、今後の採用や採用後の振り返りにも活かすことができるでしょう。

また、採用段階で見る要件と、入社後に育成段階で見る要件を設定することも必要でしょう。採用段階で全ての要件を満たす人材は即戦力となるため、そのような人材を確保するには難易度が高くなります。このため、採用時に身に付いていてほしいスキルと、今後自社で育成して身に付けてほしいスキルを切り分け、採用の段階での不要な条件を減らして求職者の間口を広げることが重要です。

コォ・マネジメント株式会社 代表取締役 窪田 司

「自社にとっての良い人材」を整理する上で、まずどのようなことから始めたらよいのでしょうか。

窪田氏:企業が置かれている状況によっても異なりますが、すでに社内にハイパフォーマーと呼ばれるロールモデルがいる場合は、「ハイパフォーマー分析」と言われる自社にとっての好業績者を分析することから始めます。適性検査や行動分析を行い、自社にとっての好業績者はどのようなスキルが高く、どのような行動が多いのかということを洗い出し、「自社にとっての良い人材」の要件を明確化します。

一方で、新分野に展開するなどでまだハイパフォーマーがいない場合は、スキル面の要件定義ができないため「自社にとって譲れないカルチャー・社風」を整理し、カルチャーフィットする人材を見抜いて採用することが必要でしょう。

ハイパフォーマー分析を通してスキル定義をすることは比較的行いやすいと感じますが、ポテンシャル人材に対して自社のカルチャーと合うのか見極めることは難しいのではないかという印象があります。自社のカルチャーを整理する際のコツはありますでしょうか。

窪田氏:カルチャーの定義に関しては、大手企業よりも中小企業の方が難しいと感じます。なぜなら大手企業ほど他社との交流が活発なため、他社と比較して「自社らしさ」を感じる機会が多いからです。自社カルチャーは、他社のカルチャーに触れたときに気付きやすいと思っています。自社のカラーが強い中小企業などの場合は、自社らしさを客観視しにくいため、「合う人材」よりも「これまで合わなかった人材」からカルチャーフィットを考えるのがお勧めです。退職者リストや早期離職者リストを確認し、これまで退職した人たちのどのような要件が自社に合わなかったのかを整理して共通項を見つけることで、今後合わない人材を採用してしまうリスクの低減につながります。

ポテンシャル採用面接には「構造化面接」が有効

人材要件を整理し、実際にポテンシャル採用面接をする際にはどのようなことに留意したらよいのでしょうか。

窪田氏:ポテンシャル採用の面接では構造化面接が有効だと考えます。構造化面接とは、自社の採用要件を明確にし、評価基準や質問項目をあらかじめ決めておく面接手法で、いわゆるマニュアル化された面接です。先ほどお話しした「自社にとっての良い人材」という人材要件を明確化したら、次に質問項目を作成します。設定した人材要件によって質問項目は異なりますが、ポテンシャル採用においては成長角度と教育効果を見抜くことが重要です。成長角度が高い人材の特徴として、PDCAサイクルを多く・正しく回していることが挙げられます。面接では「過去の経験の中で計画から改善までをどのように行い、そこからどのような力を付けたのか」を聞くことは有効だと思います。

また、教育効果を測る際には、指導に対してどの程度吸収力のある人材なのかを見ることが有効でしょう。面接では「過去新しい業務について指導されたときに、どのようにその業務になじんだのか」「どのように新しい業務を習得していったのか」というような、本人のプロセスを確認する質問を行うのもよいでしょう。

評価基準については、どのように策定したらよいのでしょう。

窪田氏:評価基準は4段階評価や5段階評価で作成します。求職者が過去に経験した業務効率化を例に、評価基準の具体的な事例を見てみましょう。

■評価基準の具体例

評価 内容
1 業務効率化に対する具体的な取り組みを行わなかった
2 業務効率化に取り組むための計画立案をし実行したが、評価・改善は行わなかった
3 業務効率化のための計画を立案して実行し、評価・改善を行った
4 業務効率化のための計画立案から改善を行った上で、その結果を活かしてさらなる効率化を目指した
5 業務効率化のための計画立案から複数の改善案を策定し、失敗を繰り返しながらもトライ・アンド・エラーを繰り返した

窪田氏:人材要件の定義と同様に、評価基準についても自社に合わせてできるだけ明確に設定しておくことで、人事・採用担当者による評価のブレを少なくすることができるでしょう。

最後に、ポテンシャル採用を活用したい中小企業の人事・採用担当者に向けて、メッセージをお願いします。

窪田氏:ポテンシャル採用は、条件面や待遇面では同業他社と競うのが難しいと感じている企業にもとても有効な採用手法だと思います。ポテンシャル採用を通して成長角度と教育効果の高い人材を採用し自社で育成に取り組むことで、3年~5年後には企業の採用力も向上するでしょう。私自身もさまざまな企業の採用に関わる中で、採用力だけではなく社内全体の雰囲気がより良くなっていくのを実感していますので、ぜひポテンシャル採用に取り組んでいただきたいと思います。

【取材後記】

採用需給の逼迫(ひっぱく)が起こる中で、特に中小企業の人事・採用担当者にとっては即戦力となる人材の採用に苦労しているという現状が見えてきました。

ポテンシャル採用は人材を確保したら安心という採用手法ではなく、将来を見据えた育成までを考えて実践していくことが大事だと感じました。「自社にとっての良い人材」を細部まで定義し、育成後の成長角度と教育効果をしっかりと見極めることで、将来的に自社で戦力として活躍する人材の採用につながるのではないでしょうか。

(企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、制作協力/株式会社はたらクリエイト