スキルベース採用とは?スキルの定義や導入する効果、ポイントを解説

d’s JOURNAL編集部

現代の人材市場は多様化し、労働者の選択肢も増えています。従来の終身雇用やメンバーシップ型の雇用から、柔軟な雇用形態が求められるようになりました。特にキャリア採用においては、企業はスキルに特化した人材を選択し、即戦力となる人材を採用することが重要となっています。そこで登場してきたのが「スキルベース採用」です。
この記事では、「スキルベース採用」の効果や導入におけるポイントなどを解説します。

「スキルベース採用」とは

「スキルベース採用」は、人材の持つスキルや能力を重視した採用手法の一つです。
新卒採用・キャリア採用において、人材の学歴や職種にとらわれず、スキルテストや適性検査などを活用し客観的に人材の実力や適性を評価した上で、適切なポジションに配置することを重要視したものです。
近年では、正社員・契約社員・派遣社員等の雇用形態や、ジョブ型・メンバーシップ型等の雇用システムなど人材活用体系が複雑化してきていますが、「スキルベース採用」は、これら各種の採用時に有用なアプローチです。

スキルベース採用における「スキル」の定義

そもそも業務を遂行する上で必要な「スキル」には、業務スキルや非認知能力、コミュニケーション能力など、専門的な知識や技術、能力、特性などがあります。
「スキルベース採用」では、企業が特定のポジションや業務に必要なスキルを明確に定義し、人材のスキルを客観的に評価して適切な採用判断を行っていくことが重要です。業界や職種によって異なる場合がありますが、一般的なスキルのカテゴリとその詳細をいくつかご紹介します。

業務スキル

・専門知識:特定の分野や業界に関する知識。人営業やマーケティング、法律、医学など。
・技術的スキル:コンピューターソフトウェアやハードウェアの操作、設計、開発などの技術的な能力。

コミュニケーションスキル

・バーバルコミュニケーション:言葉を使ったコミュニケーション能力。効果的なプレゼンテーションや説明が含まれます。
・ノンバーバルコミュニケーション:表情、ジェスチャー、ボディランゲージなどを通じて情報を伝達する能力。

リーダーシップスキル

・チームマネジメント:チームを効果的に指導し、調整する能力。
・ビジョン設定と戦略策定:組織やチームの方向性を示し、その達成に向けた戦略や計画を策定できる能力。

問題解決スキル

・論理的思考:問題を分析し、論理的なアプローチで解決策を導き出す能力。
・クリティカルシンキング:情報を評価し、主観的なバイアスを排除して意思決定する能力。

柔軟性と適応性

・変化への適応力:新しい状況や環境に適応し、柔軟に対応する能力。
・学習意欲:新しいスキルや知識を習得しようとする意欲と能力。

時間管理と組織能力

・タスク管理:複数の仕事を適切に計画し、それぞれの進捗状況や優先順位を管理する能力。
・スケジュール管理:期限内に処理すべきタスクや対応する順序、作業にかかる時間などを管理して確実に実行する能力。

「スキルベース採用」と「ジョブ型採用」の関連性

「スキルベース採用」とよく似ている言葉として誤解されがちなのが「ジョブ型採用」です。
両者とも従来の学歴や経歴だけでなく、実際に業務を遂行する上で必要なスキルや適性を重視するアプローチという意味で、人材の持つスキルや能力を重要視して採用を行う点が共通しています。
しかし、「スキルベース採用」は、人材のスキルを基準にして広範なポジションに適用する“採用手法”を指すのに対し、「ジョブ型採用」は、ジョブディスクリプション(職務記述書)として職務内容を明確に定義し、職務や役割で評価する“雇用システムを前提に採用するもの”です。

導入することで期待できる効果・メリット

「スキルベース採用」の最大のメリットは、定量的な判断が可能になることです。ただし、採用を成功させるためには、適切なスキルテストや評価基準の設定、組織全体での共通理解と取り組みが必要になるため注意が要ります。

優秀な人材の獲得

人材の持つスキルや能力を重視するため、優秀な人材を効率的に獲得することができます。従来の学歴や経歴に基づく採用に比べて、人材の実力や適性を客観的に評価できるため、より適切な人材を採用することが可能です。

即戦力の見極め

人材のスキルに応じた適切なポジションに配置することができます。新入社員や新規メンバーであっても、即戦力として活躍できる可能性が高まります。長期的なトレーニングや研修期間を短縮し、組織に早くから価値を提供できる人材を見極めることができます。

組織の多様性と柔軟性

人材のスキルに焦点を当てるため、さまざまなバックグラウンドや経験を持つ人材を採用できます。これにより、組織内での多様性が増し、さまざまな視点やアイデアが生まれます。また、組織の成長や変化に柔軟に対応できる人材を確保できるため、競争力のある企業を形成できます。

コスト削減

一定のスキルを有していることが判断できれば、採用プロセスやトレーニングにかかる時間やコストを削減できます。また、スキルに応じた適切なポジションに配置することでミスマッチを防ぎ、無駄なリソースの浪費を防ぐことができます。

エンゲージメントの向上

人材の適性に合った仕事を提供することで、従業員のエンゲージメントが向上します。個々のスキルを最大限に活かせる環境を提供することで、モチベーションや生産性が向上し、離職率の低下にもつながります。

組織の競争力強化

優秀な人材を確保し、即戦力として活躍させることで、企業の競争力を強化することができます。企業の目標達成や成長に必要な人材を効果的に配置することで、持続可能な競争優位性を築くことができるようになります。

「スキルベース採用」にも残課題が

「スキルベース採用」は、多くのメリットがある一方で、導入するにあたっていくつかの課題も存在します。

スキルの客観的評価

「スキルベース採用」では、人材のスキルを客観的に評価することが重要です。しかし、コミュニケーション能力やリーダーシップ力など、スキルの種類によっては単純に数値化できるわけではありません。企業が求めるスキルによっては、適切なスキルテストや適性検査を導入して客観的な評価を行う必要があります。

非認知能力の評価

業務に必要なのは技術的スキルだけでなく、非認知能力も重視されます。コミュニケーション能力、問題解決力、柔軟性などの、人間的な資質や能力の非認知能力は、人材の成功や組織への適合度に影響するため、評価が重要です。しかし、非認知能力を客観的に評価するのは難しく、適切な手法を導入する必要があります。

グローバルな適用

多国籍企業や国際的な展望を持つ企業では、「スキルベース採用」をグローバルに適用する必要があります。異なる国や文化においても公平な評価を行うためには、言語や文化の違いを考慮したスキルテストや評価基準が必要です。特に、言語や文化に依存しない能力の評価が重要です。

既存の採用プロセスへの統合

「スキルベース採用」を導入するには、既存の採用プロセスに組み込む必要があります。従来の採用プロセスとの整合性を図りながら、「スキルベース採用」の要素を統合することが求められます。特に、採用担当者や面接官に対して、「スキルベース採用」の理念や評価基準を理解させるトレーニングが必要です。

偏りの防止

「スキルベース採用」では、人材の持つスキルに焦点を当てるため、過去の経歴や学歴に基づく偏りを防ぐことが重要です。一部のスキルを持つ人材に過度に偏った採用が行われないよう、公平で均衡の取れた採用を行う仕組みを構築する必要があります。

「スキルベース採用」導入のポイント

「スキルベース採用」を導入する際には、いくつかのポイントに注意することが重要です。ポイントを押さえることで、効果的に適切な人材を採用することができます。また、採用プロセスの改善や効果の測定を継続的に行い、必要に応じて調整することも重要です。

企業のニーズと戦略の明確化

導入する前に、企業自身が何を求めているのか、どのような戦略を持っているのかを明確化することが重要です。採用の目的やビジョン、組織の成長に必要なスキルを把握しスキルマップなどに落とし込み、それに基づいて「スキルベース採用」の枠組みを構築します。

スキルの定義と評価基準の策定

「スキルベース採用」では、スキルを客観的に評価することが重要です。人材に求められるスキルを明確に定義し、それを評価するための採用基準を策定します。スキルに応じた評価方法やテストを導入することで、公平かつ一貫性のある採用判断が可能となります。

スキルテストや適性検査の導入

「スキルベース採用」においては、人材のスキルを正確に把握するためのテストや適性検査の導入が重要です。適切なスキルテストサービスを利用したり、独自にスキルテストを開発したりすることで、人材の実力を客観的に評価できます。

選考プロセスの見直し

従来の面接ではスキルを十分に評価することが難しい場合があります。「スキルベース採用」を導入する際には、面接プロセスの見直しや面接官のトレーニングが必要です。面接の際に重要なスキルを的確に評価する質問やシナリオを用意し、一貫性のある評価を行います。

スキルテスト結果と面接評価のバランス

スキルテストの結果と面接評価をバランスよく考慮することが重要です。テストの結果だけに依存することなく、面接での印象や非認知能力も総合的に判断することで、より適切な採用判断が可能となります。

組織全体の共通理解と取り組み

導入する際には、組織全体での共通理解が必要です。人事・採用担当者や面接官、経営陣など、全ての関係者がスキルベース採用の理念や目的を理解し、取り組んでいくことが重要です。定期的なトレーニングやコミュニケーションを通じて、採用の成功に向けて全員が協力することが重要です。

まとめ

人材採用のアプローチを見直し、より活躍できる人材を見つけるために具体的な行動が求められている今、企業の競争力を高めるための有効な採用手法の一つ、「スキルベース採用」を取り入れてみてはいかがでしょうか。
優秀かつ即戦力となる人材を確保するためにも、自社に必要な業務のスキルを客観的に評価し、適切なポジションに配置することが重要です。

外部サービスを含む適切なスキルテストを選考プロセスへ組み込むことで、人材と企業の両方にとってメリットが生まれる「スキルベース採用」を効果的に活用してみてください。

(編集/d’s JOURNAL編集部)