特に中小・中堅企業必見!最新版doda平均年収ランキングから識者が読み解く、2024年の採用戦略【年収データブック付】

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代表 神宅謙一郎(かんやけ・けんいちろう)

プロフィール
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  • 賃上げは「組織全体にバランスよく」が肝心。募集時の賃金を上げるだけでは、かえって人材流出を招くおそれも
  • 人が辞めない会社の特徴は「予定外の残業や休日出勤」がなく、「ほどよい働き心地」が確保されていること
  • 魅力的に求人情報を発信する秘訣は、総論ではなく具体的なメッセージで共感を呼ぶこと

昨今の物価上昇に対応し、日本経済停滞の要因となっていたデフレ体質からの脱却を実現するため、大企業を中心に賃上げの動きが加速しています。採用市場にもその影響は及んでいるものの、中堅・中小企業では賃金で差別化することに限界を感じている人事・採用担当者も多いのではないでしょうか。

この記事では、2022年9月~2023年8月の1年間にdodaサービスに登録した約63万人の平均年収/生涯賃金データから「職種別」「業種別」のランキングと「年代別」の平均年収を紹介。

さらに、「採用パーソナルトレーナー」として数多くの企業を支援する神宅氏を迎え、平均年収ランキングから読み取れることや、中堅・中小企業が賃金などの条件面以外で勝負する方法を聞きました。

出所:日本のビジネスパーソンの平均年収は?平均年収ランキング(平均年収/生涯賃金)【最新版】

2023年平均年収ランキングの傾向

2023年のビジネスパーソン全体の平均年収は414万円で、前回から11万円アップと大幅に上昇しました。男女別では、男性は464万円で15万円アップ、女性は356万円で9万円アップです。年収中央値で見ても、全体で360万円と、前回から10万円も増加しています。男女別の年収中央値は、男性は400万円で横ばい、女性は320万円で17万円アップという結果になりました。

1位は2年連続で医師【職種別の平均年収ランキング】

職種別ランキング1位は「医師」、3位は「弁護士」と、上位には国家資格を必要とする職種が見られました。2位は「投資銀行業務」、4位は「運用(ファンドマネージャー/ディーラー)」、5位は「アナリスト」と金融系専門職に分類される職種はトップ10以内に4つランクインしています。また、「専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)」「企画/管理系」に該当する職種もトップ20には多く、20職種中11職種を占めました。

1位:医師【平均年収:1,028万円】

・職種分類名:技術系(メディカル/化学/食品)
・生涯賃金:-

2位:投資銀行業務【平均年収:947万円】

・職種分類名:金融系専門職
・生涯賃金:-

3位:弁護士【平均年収:825万円】

・職種分類名:専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)
・生涯賃金:-

4位:運用(ファンドマネジャー/ディーラー)【平均年収:810万円】

・職種分類名:金融系専門職
・生涯賃金:-

5位:アナリスト【平均年収:795万円】

・職種分類名:金融系専門職
・生涯賃金:-

6位:MR【平均年収:732万円】

・職種分類名:営業系
・生涯賃金:3億6196万円

7位:金融商品開発【平均年収:719万円】

・職種分類名:金融系専門職
・生涯賃金:-

8位:戦略/経営コンサルタント【平均年収:717万円】

・職種分類名:専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)
・生涯賃金:3億9052万円

9位:内部監査【平均年収:715万円】

・職種分類名:企画/管理系
・生涯賃金:2億9867万円

10位:業務改革コンサルタント(BPR)【平均年収:696万円】

・職種分類名:専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)
・生涯賃金:-

▼11~30位のランキングもチェックする
職種別の平均年収ランキング

1位は投信/投資顧問【業種別の平均年収ランキング】

業種別ランキングの1位は「投信/投資顧問」、2位は「たばこ」、3位は「医薬品メーカー」で、前回の1位と2位が入れ替わりました。前回同様、「金融」「メーカー」「メディカル」のいずれかに分類される業種が平均年収ランキングトップ10のうち9つを占めています。中でも金融は上位に目立ち、12位以内に5業種ランクインしました。

1位:投信/投資顧問【平均年収:750万円】

・業務分類名:金融
・生涯賃金:3億8853万円

2位:たばこ【平均年収:667万円】

・業務分類名:メーカー
・生涯賃金:-

3位:医薬品メーカー【平均年収:647万円】

・業務分類名:メディカル
・生涯賃金:3億3314万円

4位:証券会社【平均年収:596万円】

・業務分類名:金融
・生涯賃金:3億4726万円

5位:財務/会計アドバイザリー(FAS)【平均年収:585万円】

・業務分類名:サービス
・生涯賃金:-

6位:医療機器メーカー【平均年収:562万円】

・業務分類名:メディカル
・生涯賃金:2億9869万円

7位:トイレタリー【平均年収:561万円】

・業務分類名:メーカー
・生涯賃金:3億0884万円

8位:信託銀行【平均年収:549万円】

・業務分類名:金融
・生涯賃金:2億7757万円

9位:診断薬/臨床検査機器/臨床検査試薬メーカー【平均年収:549万円】

・業務分類名:メディカル
・生涯賃金:2億9154万円

10位:総合電機メーカー【平均年収:542万円】

・業務分類名:メーカー
・生涯賃金:2億8291万円

▼11~30位のランキングもチェックする
業種別の平均年収ランキング

全世代で10万円以上アップ【年代別の平均年収】

2023年の年代別の平均年収は「20代」が352万円、「30代」が447万円、「40代」が511万円、「50代以上」が607万円でした。各年代の前回からの上昇幅は20代が10万円アップ、30代が12万円アップ、40代が16万円アップ、50代以上が11万円アップです。男女別に見ても男性は全年代、女性は20代・40代・50代以上で10万円以上アップしています。

( )は昨年の平均年収

「募集時の賃金を上げる」だけでは、かえって人材流出を招くおそれも

——「平均年収ランキング」最新版(職種別/業種別/年代別)を見て、神宅さんはどのような所感を持ちましたか?

神宅氏:職種別・業種別については違和感のないランキングでした。企業のブレーンを担う専門職や企画職、コンサルティング職などはハイクラス人材の採用が盛んなので、給与水準が高まり続けていることも納得できます。

私が興味深いと感じたのは年代別の平均年収です。年齢別の募集時賃金のローデータを詳細に集計していくと、男女とも20代半ば〜後半にかけて急激に給与水準が高くなる。この世代の中途採用の獲得競争は特に激しさを増しているのでしょう。また、50代以降にも募集時賃金の急激な伸びが見られるため、エグゼクティブ人材やハイクラス人材の相場がさらに高まっているのではないでしょうか。

——最近では中堅・中小企業でも賃上げの取り組みが進みつつあると聞きますが、神宅さんが支援している企業でも実施に賃上げの動きは見られますか?

神宅氏:私は独立以来23社の採用を支援してきましたが、中堅・中小企業での賃上げはまだまだ進んでいない印象を持っています。それどころか採用・人材定着の面では、若手の初任給だけが上がることによる逆作用も起きていると感じます。

話をわかりやすくするためにパート・アルバイトの例で考えてみましょう。年を追って最低賃金が上昇しているため、募集時の時給は実際に上がっている企業がほとんど。しかし、入社2〜5年目あたりのベースアップが追いついていないため、中堅どころの人は「私の給与は入社したばかりの人とほとんど変わらない」と感じることになる。社員についても同じで、こうした状態に陥っている中小企業が少なくないのです。

大企業は評価制度なども含めてうまくバランスを取っていますが、中小企業ではそこまで手が回っていません。社長や人事が場当たり的に対応していては、組織内にゆがみが蓄積する一方。20代半ば〜30代の人材はフラストレーションを抱え、「転職したほうが収入が増える」と考えるでしょう。

つまり、賃上げに動く際には組織全体を見てバランス良く対応しなければならないということです。採用の成功を急ぐあまり、募集時の賃金ばかりに目を向けているとかえって人材流出を招いてしまうかもしれません。

賃金に頼らない!「人が辞めない会社」の3つのキーポイント

 

——そうした組織全体への対応を考えると、中堅・中小企業では賃金の魅力で人材を引きつけることに限界を感じているところも多いかもしれません。

神宅氏:さまざまな企業を見てきた中で、私は「人が辞めない会社」には3つのキーポイントがあると感じています。これらはいずれも賃金とは無関係の要素です。

1つめは「残業がない」こと。実質的な超過勤務時間が短いことはもちろんですが、より重要なのは「“あと1時間残って”と急に言われることがない」職場であることです。働き手は事前にわかっている残業ならまだ許容できますが、急に残業が増えてしまうことには耐えきれません。

2つめは「休日出勤がない」こと。これも前述の残業と同じように、予定外の出勤が生じないことが重要です。たとえば、ある24時間稼働の工場では残業を含めて1日10時間働く人もいますし、休日出勤が申し渡されることもありました。しかし、すべて事前に計画された予定通りに進み、勤務が終われば確実に次のシフトの人へ交代して退社できる体制を整えているため、残業や休日出勤への不満は一切聞こえてきませんでした。

そして3つめのポイントは「働き心地」です。ゆる過ぎず、きつ過ぎない「ほどよい人間関係」が保たれている職場は離職率が低い傾向にあります。こうした職場では、たとえ社員の年齢層がバラバラであっても、気の良いベテラン社員と若手社員がバディとして良好な関係を築いているような場面が見られるのです。

現代の若手社員には、放置されることをとにかく嫌う傾向があります。昔ながらの「先輩の背中を見て学べ」というやり方は最も避けるべきでしょう。

——キャリアアドバイザーの方々からは、業種にかかわらず「リモートワークができる職場」を選ぶ転職希望者が非常に多いという話も聞きます。

神宅氏:これも重要なポイントですね。しかし、極めて否定的な会社が多いのも事実です。リモートワークはマネジメントが難しく、管理職の手腕が問われる部分もあり、生産性重視で考えれば社員を出社させようとするのは無理もないことかもしれません。

しかし一度リモートワークを経験した働き手の中には、せっかく解放された通勤を再び強制されるのは苦痛でしかないと感じる人も多いでしょう。採用力を高める観点では、マニュアル化や標準化、ツール導入などを進めて管理職をフォローし、無理なくリモートワークを運用できる体制を整えるべきです。

また、リモートワークでも働き心地を低下させないよう、教える・学ぶ関わりが維持できるように1on1などの機会を頻繁に設け、気軽に質問や相談ができるようにするべきだと思います。

良い求人情報の前提は「母集団の拡大を諦める」こと

——これらのキーポイントを踏まえ、求人票や求人広告などを通じて転職希望者へアピールするために意識すべきことを教えてください。

神宅氏:企業の求人票を見ていると、条件や事実情報だけを並べていて、社名を入れ変えればどこでも使えるような内容になっているケースが多いと感じます。必要なのは求める人物像ごとにテーマを設定し、総論ではなく具体が見える情報を伝えることでしょう。

たとえば「予定外の残業がない」ことを訴求するのであれば、事実情報を書くだけではなく、実際の社員のストーリーを載せたほうがよほど伝わりやすくなります。先輩インタビューなどで「営業部のAさん」と紹介するよりは、「現在35歳で子どもが2人いる営業部の田中さん」として紹介し、仕事だけでなく子育てもがんばっているという具体的なエピソードを伝えるべきです。

また、働き心地の要素を伝えるのはテキスト情報だけでは限界があるかもしれません。動画で職場の雰囲気を伝えたり、選考プロセスの中に職場見学の機会を設けたりしている企業は、面接成功率が高い傾向にあります。

——人事・採用担当者が社内の具体的なエピソードをつかむためにできることは?

神宅氏:求める人物像を明確に絞り込んだ上で、その採用候補者が共感してくれそうな社員を見つけ、密着してみるのがいいと思います。一緒に行動することで、その社員は何を大切にしているのか、どんなことに喜びを見いだして自社で働き続けているのかが見えてくるはず。それが採用候補者に伝えるべき具体的な情報なのです。

良い求人情報とは、採用候補者に向けて書くラブレターだと考えてください。大都会の交差点のど真ん中で「俺と付き合ってくれ!」と叫んでいるような、誰に何を言いたいのかわからない求人情報は誰にも届きません。

——母集団形成のために、幅広い層を意識して情報を届けようとするのは逆効果なのでしょうか。

神宅氏:知名度の高い大企業や人気企業ならそのやり方でいいかもしれません。しかしそうでないのなら、これからの時代は母集団を広げることを諦めるべきではないでしょうか。

母集団が少なくなったとしても、本当にほしい人材と出会えるなら問題はないはず。理想的な採用活動は「応募数1・面接数1・採用数1」なんですよね。人事・採用担当者の方々にはぜひ、質的なヒットを追求した採用メッセージ設計に取り組んでいただきたいですね。

写真提供:神宅謙一郎氏

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取材後記

さまざまな求人サービスの立ち上げに携わり、最先端の採用手法を追求し続ける神宅さんならではの知見が得られた取材でした。インタビューでは「求人情報は原点回帰すべき」という印象的な言葉も。インターネット普及以前の紙媒体をベースとした採用活動では、中小企業は条件で勝負するのではなく、職場への取材を通じて自社ならではの独自性を伝えることにこだわり抜いていたといいます。同じように条件では勝負できなくなった今だからこそ、経験豊富なベテラン人事の知見が活かされるのかもしれません。

企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介

全国での職種毎の平均年収データブック

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