人事(採用担当)採用のカギは経営方針・役割の幅!専門キャリアアドバイザーが解説【転職希望者のホンネ】
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人事(採用担当)では、「経営者と考え方が合わない」「今の会社では転職市場で勝てない」という理由で転職に動く人が多い
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採用だけでなく、研修やエンゲージメント、組織開発まで。「一気通貫でさまざまな役割を経験したい」と考え、あえて中堅・中小企業を目指すケースも
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中堅・中小企業の採用力は社長次第。人材や組織への真剣な想いがあるのなら、外部へ積極的に伝えていくべき
人材紹介サービスや求人広告、ダイレクト・ソーシング…。どんな採用手法も、対象となる転職希望者の志向性やニーズを理解していなければ採用成功はありません。今回は、「人事(採用担当)」の“ホンネ”を掘り下げます。人事領域の転職希望者と長年向き合う、パーソルキャリアのキャリアアドバイザー・エキスパートの瀬戸口氏が、実例を基に求人票などで訴求すべきポイントや最適な選考プロセスを実現するヒントをお届けします。
厳しい採用環境の中で「現在の会社を見限る」人事が増えている
「人事(採用担当)」の人が転職を意識するようになったきっかけを聞くと、現在の厳しい転職市場環境が大きく影響していることがわかります。
実際の転職理由で多いのは「経営者と考え方が合わない」というもの。経営者の人材に対する考え方に共感できなかったり、苦労して採用した人材を大切にしてもらえなかったりしたことによって、その会社を見限ってしまうのです。
また、人事の場合は競合優位性を常に意識しています。現在の転職市場では、リモートワークやフレックス勤務などの条件がないと他社に負けてしまうことが明白。しかし経営者がその事実をなかなか理解せず、手を打たないままでいると、「それなら競合優位性が整っている会社へ移って採用の成果を出したい」と考えるようになります。これは中堅・中小企業から転職する人に特に多いですね。
加えて最近では、「自分自身がリモートワークができない」ことを理由に転職を検討する人も増加しています。コロナ禍を経て、リモートワークは「やろうと思えばできる」ことが多くの職場で証明されました。それにもかかわらず「出社」を強制しようとする企業からは、人材が徐々に離れつつあるのかもしれません。実際に、私が接している転職希望者のうち、リモートワークを希望しない人は全体の1割程度です。
ルーティン業務ばかりの大手から、「何でも任される」中小へ移る人も
次に、人事(採用担当)の経験者が目指すステップアップについてです。
これは現職の規模感や、現職で任されている仕事によって異なります。「現在は新卒採用を担当しており、中途採用もできるようになりたい」「採用だけではなく研修も担当したい」など、担当領域を広げるために転職を検討する人も多い印象です。
昨今では、エンゲージメント向上やオンボーディングの充実、組織開発への貢献など、人的資本経営の流れの中でさまざまな役割が人事に期待されています。こうした仕事を経験できる企業を探す人も少なくありません。
大手企業に在籍している人の場合は、「業務が細分化され過ぎているので、一気通貫でさまざまな役割を経験できる環境へ移りたい」と考え、あえて中堅・中小企業に絞って転職活動をするケースも多いです。
中堅・中小企業では大手と比べて担当業務の幅は必然的に広く、大手の3年目ではルーティン業務しか担当できないのに、中小では3年目で採用から育成まで幅広く担当しているといったことも珍しくありません。中長期でのキャリアアップを踏まえ、こうした環境を目指す人の転職を数多く支援してきました。
「人の役に立ち、感謝される仕事がしたい」と考え大手を離れた人事
実際の採用決定事例を基に、転職希望者のホンネを見ていきます。
大手企業から中小企業へ移った人事経験者(20代)のケースでは、「人事の存在意義」が大きな鍵となっていました。
この方は、もともと「人の役に立ち、人から感謝される仕事がしたい」という想いを強く持っていました。そのため人事の仕事を選んだのですが、大手企業の中では人が「ただの数字やデータになってしまっている」と感じ、誰かから直接感謝される機会が皆無だったそうです。「自分が採用した人が活躍し、会社の成長に貢献している様子を間近で見ていたい」。そんな動機から、中小企業の人事へと転職しました。
中小企業から中小企業へ転職した人(30代)のケースは、少しドキリとする内容かもしれません。転職理由が「自社の経営方針や将来性に不安を感じたから」というものだったのです。冒頭でご紹介したように、採用活動において競合優位性を持てない自社に見切りをつけ、転職に動いたのでした。
この方の場合は、「経営者の考え方」を何よりも重視して転職活動をしています。選考では中小企業の社長や役員と膝を突き合わせて話し、人材への考え方や採用戦略についてヒアリングしていました。結果、「この社長の下で働きたい」と思える会社が見つかり、転職が決まりました。
社長の姿やメッセージが最大の強みになる
この事例のように、経営者の近くで仕事をする人事(採用担当)の場合は、小さい会社であればあるほど社長の考えや社風が転職の意思決定に影響します。
自社の社長が転職希望者にどんな印象を持たれるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。人事(採用担当)にとって魅力的な会社になるためには、社長が転職市場の現実を理解し、積極的に人材へ投資する姿勢を持っていることが不可欠だと言えるでしょう。
現段階で自社の社長がそうした考え方を持っていない場合は、採用活動を始める前に、できる限り意識を変えてもらうよう働きかけるしかありません。
逆に、これまで対外的な発信をほとんど行っていない社長でも、人材や組織への真剣な想いがあるのなら、その魅力を積極的に外部へ伝えていくべきでしょう。人事(採用担当)の採用においては、そうした社長の姿やメッセージが最大の強みになるはずです。
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企画・編集/田村裕美(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介
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