経理・法務・総務職採用、ほとんどの求人票がNG!?専門キャリアアドバイザーが解説【転職希望者のホンネ】

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パーソルキャリア株式会社

キャリアアドバイザー 瀬戸口瑞恵(せとぐち・みずえ)

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  • 経理・法務・総務の転職希望者は、「どんな経験・スキルが得られるか」「どのような職場環境なのか」を軸にして企業を探している
  • 魅力的な求人票の特徴は「将来的な仕事の広がり」が見え、「論理的に職場環境を理解できる」内容が押さえられていること
  • 必ずしも大手有利とは限らない。「一気通貫で働ける場所」や「家族との時間を大切にできる働き方」を求め、あえて中小企業を選ぶ人も

人材紹介サービスや求人広告、ダイレクト・ソーシング…。どんな採用手法も、対象となる転職希望者の志向性やニーズを理解していなければ採用成功はありません。今回は「経理・法務・総務」の“ホンネ”を掘り下げます。これら管理系職種の転職希望者と長年向き合う、パーソルキャリアのキャリアアドバイザー・エキスパートの瀬戸口氏が、実例を基に魅力的な求人票づくりや最適な選考プロセスを実現するヒントをお届けします。

求人票に期待するのは「未来の自分」をイメージできること

「経理・法務・総務」の転職希望者は、大別すると以下の2つの観点で企業を見ています。

①どんな経験・スキルが得られるか
②どのような職場環境なのか

ただ、企業側の求人票を見ていると、転職希望者が気にしているこの2つに関する情報が薄く(あるいはまったくなく)、有効なメッセージを伝えられていないと感じることも少なくありません。順を追って説明します。

転職希望者のホンネ①:どんな経験・スキルが得られるか

「経理・法務・総務」の転職希望者の多くは、「今できる業務はこれ、この先に挑戦したい業務はこれ」と明確に切り分けて考えています。

たとえば法務なら「契約関連の業務だけでなく、先々はM&Aにも関わってみたい」、総務なら「ファシリティ管理や規定整備が一通りできるようになったので、将来は株主総会の仕事をやってみたい」、経理なら「現状は月次決算を担当しているので、次は年次決算をやってみたい」といった形です。このように、順を追ってキャリアを積んでいきたいと考える人が多いのです。

しかし企業側の求人票では、仕事内容として「◯◯を担当していただきます」と、現時点で任せる業務しか書かれていないことがほとんど。転職希望者にしてみると、これでは未来の自分がイメージできません。

現状のどんな経験・スキルを評価し、現時点でどんな仕事を任せ、将来的にどんな役割に挑戦できる可能性があるのか。求人票ではぜひ「未来を語る」ことを意識してください。

次の職場を論理的に分析する

転職希望者のホンネ②:どのような職場環境なのか

「経理・法務・総務」の転職希望者は、職場環境をかなり細かな部分まで把握したいと考えています。

企業の中で守りを担う管理部門を経験している人は、ソーシャルスタイル理論で分類すると「アナリティカル」(データ収集・分析が得意で論理的に思考する)タイプが多いという特徴があります。アナリティカルタイプの人は転職活動で企業を見る際に、自分がどんな状況の職場に入り、どのように働けるかをイメージできれば安心する傾向がありますね。

「マネージャーはどんなキャリアの、どんな考え方の人なのか」「そのマネージャーの下にはどんなメンバーがいるのか」「転職した場合、自分はどの立ち位置になるのか」…。こうした情報が求人票にない場合は、高確率でキャリアアドバイザーに質問が入るのです。

また、最近では「現職でリモートワークができない」ことを理由に転職を検討する人も増加しています。コロナ禍を経て、リモートワークは「やろうと思えばできる」ことが多くの職場で証明されました。総務については工事立ち合いや社内の設備・物の移動など、一部リモートワークがしにくい特徴があるものの、経理・法務・総務といった管理部門はリモートワークに対応しやすい職種でもあります。それにもかかわらず「出社」を強制しようとする企業からは、人材が徐々に離れつつあるのかもしれません。実際に、私が接している転職希望者のうち、リモートワークを希望しない人は全体の1割程度です。

「一気通貫を求めて」「忙し過ぎて」…あえて中小企業を目指す人も

次に、年代別に見る「経理・法務・総務」の転職希望者の特徴をお伝えします。

20代では、キャリアップの意向が明確だと感じます。前述のように「この職種で、こんな業務ができるようになりたい」とイメージしているのです。また、年収アップや、会社の規模感を重視して大手志向になる人が多い年代でもあります。

その意味では、20代の転職希望者に大手企業が強いのは事実です。ただ、大手の管理部門では業務が細分化され過ぎていることも多く、「一気通貫でさまざまな業務を経験して成長したい」と考える人は、あえて規模の小さい会社へ動くこともあるのです。中小企業は、いかに幅広く、裁量の大きい業務を若手のうちから任せられるかを伝えるべきでしょう。

30代以上になると、家庭や育児との両立を目指して転職しようとする人が男女問わず増えます。また、「現在の会社では上が詰まっている」と話す人も30代では多いですね。役職が付くまでに、あと10年かかってしまうかもしれない、年収もそれまで上がる見込みがない…。そんな現実を前に転職を決意する人も少なくありません。

40代に入ると、「もうちょっと落ち着いた環境で働きたい」という志向の人が増えてきます。特に経理では、「大手だと3カ月に1回など頻繁に決算処理するので忙し過ぎる」という理由からあえて中小へ動く人も。また、都市部ではなく郊外に住宅を購入したことによって、狭いエリアで転職先を探そうとする人も増えます。

未経験者募集で伝えられる「上司と部下の距離の近さ」も強みに

 

最後に、私が支援させていただいた方々の転職決定事例をご紹介します。

経理の経験者(20代)のケースでは、前述したように、それまで所属していた大手企業で業務が細分化していることに不満を感じていました。担当する決算でも、一部の業務しか任されない環境だったのです。そこで、早期に幅広い決算業務を任せてもらえる中小企業に的を絞って転職活動を行い、その中の1社に決定しました。

大手企業で法務部門に在籍していた人(20代)のケースでは、未経験で入ったにもかかわらず、職場では誰も業務を教えてくれず、ピリピリした風土の中で孤独感を覚えていたそうです。そのため、経験者ではなく未経験者を対象に募集している企業を探し、「育成・研修体制」や「周囲のフォロー体制」に強みを持つ中小企業への転職が決まりました。

このように、若手人材だからといって必ずしも大手を選ぶわけではありません。早い段階で大きな裁量を与えることができたり、上司と部下が近い距離で仕事を教えられたりする中小企業の環境が、転職希望者にとって大きなメリットになることもあるのです。

こうした転職希望者のホンネを参考にして、管理部門の採用活動をブラッシュアップしていただければと思います。

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企画・編集/田村裕美(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介

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