【人事1人で年間採用51名】知名度高い会社でなくても成功する採用手法

UDS株式会社

経営企画部 採用マネージャー 
清水 亮介

プロフィール

「採用候補者にとって、自社の知名度が低い」ことや、「採用を担当できる人事が1人しかいない」といった課題を持っている人事・採用担当者はいらっしゃいませんか?

その課題解決につながるヒントを、UDS株式会社の採用マネージャー清水亮介氏に教えていただきました。ぜひ、ご覧ください。

※この記事は、dodaが主催したセミナーの内容を要約した上で構成しています

年間採用人数は約50名の中小ベンチャー企業です

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こんにちは。UDSの清水と申します。UDSと聞いて、どんな会社かすぐにわかる人はきっと少ないでしょう。それもそのはず、当社は2009年設立(創業自体は1992年)のベンチャー企業で、正社員は約150名、アルバイトを含めて約400名のいわゆる中小企業です。

事業コンセプトは「まちづくり」を行っており、事業企画や建築設計、店舗運営を展開しています。これまでプロデュースしてきたホテルや商業施設自体の知名度はありますが、社名が表立って出ることはほとんどでありません。ですから、募集をかければワッと人が集まることはほぼないと言えるでしょう。

※UDS(Urban Design System)は、目黒通り沿いにある築33年の老朽化したホテルをデザインホテルとして再生した「CLASKA」や、校舎跡地にコンテナ建築で商業施設をプロデュース設計した「代々木VILLAGE」など、“まちづくり”をコンセプトに、さまざまな事業の企画から建築設計、空間デザイン、店舗運営に携わっています。
詳細は、ホームページでご確認いただけます。

知名度が低いゆえに母集団が集まりにくい状況は、多くの人事・採用担当者の皆さまが抱えている悩みや課題と、ほぼ共通していると思います。当社の場合はこれに加えて、採用職種が多いということ。
具体的には、建築設計、不動産企画、店舗開発、商品企画、サービス(ホテルのフロントスタッフ、レストランのホールスタッフなど)が対象となりますが、私がこれらの職種理解をすべて詳しくできているか、と言われると恥ずかしながらそんなことはありません。

建築設計など専門技術系の職種についてはわからないことが多いというのも正直なところです。加えて、採用体制は少人数制で、東日本全体をほぼ私1人で見ています。それでも、年間50名近くを採用していますので、参考になることがあれば幸いです。

採用がうまくいくコツは社内外に協力体制を築くこと

講演中の画像_USD清水亮介氏

採用で大事にしているのが、「人ありきの採用」という考えです。

人事1人が頑張るのではなく、社内外の人たちを巻き込み、協力してもらいながら採用を行うということです。その際、意識しているのが「採用候補者だけでなく、採用に関わる人たち全員にファンになってもらう」こと。UDSを好きになってもらって、UDSのために頑張ってみようという気持ちになってもらっているんです。いわゆるブランディング活動の一環ですね。

例えば、エージェントを含めた人材サービス会社の人たちはもちろん、当社に営業などでアプローチをしてくる人とも積極的に会うようにしています。特に、アプローチしてきたのが立ち上げ間もない会社やサービスの場合、まだ固定の顧客が少ないことが多いので、自社のファンになってもらいやすいですし、サービス自体の知名度がまだ低い分、ある意味ブルーオーシャン状態。担当の方も自然と頑張ってくれることが多いんですよね。

情報発信については社内のメンバーたちに随時、SNSを通じてシェアしてもらうようにしています。人事だけで行っていたのでは量質ともに限界があります。社内の生の声は、やはり非常に大きなPRとなるでしょう。

また、いずれは転職をしようと考えている、いわゆる転職潜在層の方々も含めて、採用候補者には月間で60~70名に会っています。もちろん、出会った採用候補者の方々にも常にファンになってもらうことを意識しています。そうすれば、今すぐ転職はしないけど、いざ転職しようとなった時に当社のことを真っ先に思い浮かべてもらえます。あるいは、知人や友人を紹介してもらえるかもしれません。

ファンや協力者を増やすには、会社のビジョンを伝えること

講演中の画像_その2_USD清水亮介氏

では、肝心のファンや協力者を増やす方法ですが、大切なのは「ビジョン共感」だと思っています。会社のビジョンを伝え、それに共感してもらうことを重視することで、カルチャーフィットするかどうかを見極めます。そうすることで、実際に採用した際には、会社の未来のため、ビジョンを達成するために、腕を振るってくれます。
結果として、フィット感も高まって、入社当初からすぐに馴染んでくれることが多いんです。

ビジョンを伝える具体的な方法としては、面接の際に会社で作成した「コンセプトブック」を手渡しています。コンセプトブックは半年前に全社を巻き込み、ワークショップを通じて社員一人ひとりが意見を出しあい、みんなで作り上げました。ブック自体の完成度が高いかどうかというよりも、大事にしているカルチャーやスタイルを社員と一緒に言語化するプロセスにこそ、意味があると思っています。

まちづくりというと、何となく聞こえの良いイメージもあるかもしれませんが、実際は多くの人を巻き込んで合意形成を繰り返して仕事を進めていく、地味な仕事の連続です。そうしたことも伝わる作りとなっています。コンセプトブックは社員同士のコミュニケーションや、意思統一のためのツールとしても活用しています。

コンセプトブックの画像
※UDSが作成しているコンセプトブック。UDSが目指しているビジョンや、社員が目指すUDSらしい行動基準(スタイル)が分かりやすくまとまっています。詳細はこちらからご覧いただけます。

また、採用につながるイベントを「建築BAR」と名付けて開催することもあります。直接的な採用イベントというよりは、テーマを「建築やまちづくりの未来を語る」、と採用色をあまり強めないことが多いですね。

人事が主体になるといかにも「採用」の要素が強くなりますが、社内の人を巻き込み、ゆるやかなイベントとすることでUDSに興味がある周辺の方々を取り組むことができます。当社がどういう会社なのか、何を目指しているのか、どんな社員がワクワクしながら働いているのか、まずは採用候補になりえる人たちに知ってもらうのが大きな狙いです。

イベントの様子
※「建築BAR」というイベントを開催し、UDSの事業企画から、設計、デザイン、運営までを手掛けられる仕事の魅力を発信。“ちょっと一杯飲みながら、ざっくばらんに聞いてみませんか?”と呼びかけることで、採用候補になりえる転職潜在層にアプローチしています。

ビジョンを深掘りするには経営層とよく話すのがカギ

講演中の画像_USD清水亮介氏

会社のビジョンを理解するためには、経営についてのより深い理解が求められます。ビジョンや経営についてもっともよく知っているのは、当然のことながら経営者です。採用活動に経営層を巻き込むのは不可欠。経営層と話をすることで、次にどんな事業展開を考えていて、それに伴ってどんな人材が必要となるか、見えてくることも少なくありません。
事業背景や経営者のビジョンから理解できるので、自社に合った人を採用しやすくなるのです。
私自身も経営層とよく話をするように心がけていますし、面接前には必ず直接、口説いてもらうポイントを伝えています。

当社の代表は「経営は人がすべて」と常日頃から語っていますし、社内外にも発信しています。私自身もこれはその通りだと考えています。というのも、ポジションありきの採用では限度があり、人ありきの採用をすることで、新しい発想が出てきて、次の事業が生まれてくるからです。ビジョンを明確にし、会社をより力強く成長させるためにも、経営層と同じ目線で採用の最前線に立ってもらうことがとても大切ではないでしょうか。

まとめ

採用活動を効果的に進めるには、転職を考えている顕在層ばかりでなく、潜在層にアプローチするのも重要なポイントと言えます。候補者と会う時には「会社のファンになってもらう」という気持ちも大切になるでしょう。ファンになってもらうには、会社のビジョンを伝えることが欠かせません。そこから共感が生まれ、自社で働くことへの意欲につながる可能性は決して低くないのです。

会社のビジョンを語るには、普段から経営層とのコミュニケーションも大事になってきます。採用は、会社の行く末を担う重要な経営活動の一つ。清水氏が実践しているように、経営層をはじめ全社を巻き込むのが、最良の方法と言えるかもしれません。