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評価制度の因数分解で自社の最適人材が見えてくる。面白法人流の組織文化のつかみ方

2017.06.15

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面白法人カヤック
採用責任者 佐藤 謙太(写真 左)

前職は、販促メディアを運営する大手企業で総務・労務を担当。その後、料理人になろうとしていたところで声をかけられ、2015年7月に面白法人カヤックに入社。面白採用キャンペーン以降の選考プロセスの改善に並々ならぬ熱意を注ぐ。採用以外にも「クソゲー供養会」といったクリエイター向けイベントの企画や、プロレス団体の広告の企画なども担当。

横浜国立大学大学院 国際社会科学研究院/経営学部
准教授 服部 泰宏(写真 右)

1980年、神奈川県生まれ。日本企業における組織と人の関わり合いや、日本のビジネス界における知識の普及に関する研究などに従事し、人材の採用に関する科学的アプローチである「採用学」の確立に向けた研究・教育活動に取り組む「採用学研究所」の代表を兼務。近年の主な著書に「採用学」(新潮選書)がある。

 
 

「僕らは、研修などはあまり好きじゃないので、入社後に新メンバーがどう立ち上がるかではなく、入社した時点で立ち上がっていてほしい(笑)」と話すのは、面白法人カヤックの佐藤謙太氏。

面白法人カヤックでは、活躍が期待できる人材の選定や、組織へのスムーズな定着をハイレベルに実現しています。横浜国立大学大学院准教授の服部泰宏先生との対談後編では、2人の会話を通して、中途入社社員における入社前・後のイメージギャップを減らすアイデアや、抽象的な組織文化の掴み方を紹介します。
 
 

INDEX
入社前にキャリアパスまで提示する、カヤック流“コミットメント面談”
“サイコロ給”の制度が、カヤックの文化をつくっている
 
 

|入社前にキャリアパスまで提示する、カヤック流“コミットメント面談”

服部先生
服部先生:前回のお話で、一次・二次・最終面接のそれぞれで役割を設定しているとおっしゃっていましたが、その他にも「組織社会化」のために新たに取り入れた施策などはありますか?

佐藤氏:いわゆる法律的な雇用契約とは別に、「心理的契約」という概念がありますよね。その部分を意識した仕組みを導入しました。

服部先生:「心理的契約」は、アメリカ発の考えですね。会社が人材に何を求め、何を求められるのか、給与や勤務地はもちろん、どんな活躍を望み、どんな成果を出してほしいのか、それに対してどのような価値や対価を提供できるのか。そこを入社時点でクリアにしておこうよ、ということだと思います。

佐藤氏:そう、僕らも入社時点で明確にしていた方がいいと考えています。内定後の条件通知の前に、「会社はあなたにこんな価値を提供してほしいと考えています」「あなたはどんな価値を提供してほしいですか?」といったことを語り合う“コミットメント面談”という場を設けるようにしました。このコミットメント面談で話した内容は全てPCでメモ書きすることでログを残し、内定者に条件通知書と一緒に必ずお渡ししています。

服部先生:「心理的契約」を文書化しているのですね。コミットメントの内容はかなり具体的に詰めるのでしょうか?

佐藤氏:そこは職種によって異なります。企画職などは結構フワッとしてしまうこともありますが、エンジニアはより定量的です。たとえば、「ゆくゆく新規ゲームのサーバ開発を全部やりたい」という目標があったときに、まず現状の評価を伝えるんですね。

その上で、最初は既存ゲームの運用で成果を出しましょうと。その次のステップとして、各ゲームにはイベントの新規開発があります。既存タイトルで実績を積めば、次のステップはおそらく新規プロジェクトへのアサインとなるので、この階段を一緒に目指していきましょう……。といったマイルストーンを設定して、いかに成長にコミットできるかを伝えています。

服部先生:目の前のミッションだけでなく、職種によってはキャリアパスまで提示するケースもあるわけですね。人事の方に相談を受けると、「心理的契約は重要だけど、明確にするのは怖い」と、皆さん口を揃えておっしゃっていて、そこが「心理的契約」という考えが日本に馴染まない要因のひとつかなとも思っているんです。ちなみに、この面談は人事が行うのですか?

佐藤氏:いいえ、配属先の部署の責任者が話すようにしています。もちろん人事も同席して一人ひとりの目標を理解して、入社後にフォローする形です。ただ、入社後に予定していたプロジェクト自体が計画変更して、ミッションやステップが変わるケースもどうしてもあって。そういう時は都度面談の場を設けて、新しいコミットメントを決めていくようにしています。
 
 

|“サイコロ給”の制度が、カヤックの文化をつくっている

佐藤さん
服部先生:一次面接でのカルチャーマッチや、内定後のコミットメント面談は、会社の文化や活躍人材のイメージを掴めていないとなかなか運用が難しいですよね。

佐藤氏:人材紹介サービスの営業担当の方にも、企業の文化を理解して、カルチャーが合う人材を提示するのはかなり難しいと相談されたことがあります。ある一定の経験数を重ねると、職人的な直感で「合う・合わない」と判断できるらしいんですが、そのステージには中々たどり着けない。「文化を知る」って非常にざっくりしていますからね。ただ、その話をしていた時に1つだけ方法を見つけたんですよ。

服部先生:会社の文化を掴む方法について、ぜひ伺いたいです。

佐藤氏:当社代表の柳澤が、「評価が文化をつくる」と常々言っているんですね。「どういう人を評価するのか」ということに対して人が集まり、その評価に則って成果を挙げた人、その評価が好きな人が会社に残るわけですよね。だから、評価が文化をつくるんだと。だからカヤックは、毎月サイコロをふって給料を決めるんだっていうロジックを語っていて。

たしかに評価制度をきちんと理解すれば、その中で「この人は給料を上げていけそうか?」という判断は、割と論理的にできるなと思うんです。実際、その考え方を伝えたことで推薦してくれる採用候補者のマッチ度が高まった人材紹介サービスの営業担当の方もいます。

服部先生:それは面白い考え方です。評価軸を理解するって、うちの会社の偉い人=活躍した人は誰だ?ということですものね。人材要件や企業文化を考える時に、そこまで突き詰めて考えている人事はちょっと少ないかもしれません。

佐藤氏:普段使っている言葉を因数分解することが大事だと思っています。たとえば「採用する」って当たり前に使っていますけど、それは自社にとってどういうことなのって。カヤックの場合は、採用することは、「活躍する人を集めること」とイコールなんですね。

それに経営サイドから「スゴい人材を採用しろ」と言われると、ついついよく分からないまま走り出しちゃうことがあると思うんですけど。そこでふと立ち止まって、「スゴい人材ってどんな人ですか?」というシンプルな疑問を紐解いていくと、その会社なりのタイプが絶対あるはずなんですよ。

服部先生:どうしても話題の採用手法やバズワード的な打ち手に引き寄せられがちですが、カヤックさんは本質的なことを愚直にやっているのが素晴らしいですね。自社の事を徹底的に理解して、ちゃんとコミュニケーションをとり続けている。

佐藤氏:各企業によって抱えている課題は違いますし、事業戦略と組織戦略のどちらから入るのが正しいというのもありません。ただ究極的には、企業の活動って人を幸せにできればいいわけですから。僕らは組織戦略が中心ですが、事業戦略で世の中を幸せにするという企業であれば、採用戦略も変わってくると思います。だから採用のテクニックを学ぶより、その手前の原理原則に誠実なことが一番大事だと思いますね。
 
 

【取材後記】

1.スキルだけに縛られず、カルチャーが合うのかを見極める
2.候補者に何を求め、何を提供できるのかを明確にする
3.「採用」などの日常的に使う言葉も、自社なりに因数分解してみる

カヤックの採用と言えば、奇抜な採用手法ばかりが注目を集めますが、そこには母集団の形成から内定承諾まで、あらゆるフェーズにおいて、学術的な知見に裏付けされた緻密な戦略が練られていました。ただし、専門知識だけがすべてではありません。「日常的な言葉を因数分解」すれば、現状を改善するヒントが見えてくるかもしれない。佐藤氏と服部先生の対談から、そんな解決策が見えてきました。
 
 

【横浜国立大学大学院 服部泰宏 先生の関連記事はこちら 】
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