RPO(採用代行)とは?費用や委託できる業務範囲、メリット・デメリットについて解説

d's JOURNAL編集部

今多くの企業が検討・導入しているRPO(採用代行、採用アウトソーシング)サービス。欧米では2008年頃から急速に伸びてスタンダードになっています。ここでは、そのRPOのメリットデメリット、RPOを導入する際のポイントや注意点など、RPO活用法のノウハウを紹介していきます。

RPO(採用代行)とは?

「RPO」とは、Recruitment Process Outsourcingの略で、企業の採用プロセスの全て、もしくは一部を代行するサービスのこと。人事部機能のアウトソーシングサービスを指す「HRO」(Human Resource Outsourcing)の一部です。日本では「採用代行」「採用アウトソーシング」と呼ばれることもあります。

RPO(採用代行)とは

RPOビジネスと人材ビジネス(派遣・紹介)との違いは?

RPOの特徴や、比較されることの多い「人材派遣」「職業紹介事業」との違いを表にまとめました。

RPOと類似するサービスとの違い

契約期間 料金形態 特徴
RPO 長期 / 短期 定額型
もしくは従量単価型
・採用に関わる業務を代行する
・委託する業務やプランにより料金形態が異なる
人材派遣 短期 時給制 ・企業の依頼業務に適した人材を派遣する
・雇用期間が限定されることが一般的
成功報酬型
職業紹介
長期 成功報酬型 ・企業の採用要件を満たした人材の紹介や採用支援を行う
・紹介した人材が入社した際に料金が発生する
前受金型
職業紹介
長期 前受金型 ・企業の採用要件を満たした人材の紹介や採用支援を行う
・事前もしくはプロセスの中途に料金が発生する

それぞれのサービスの特徴を見ていきましょう。

RPO

「RPO」とは、サービス会社が企業から業務委託を受け、「採用に関するプロセスを代行」するサービスのこと。作業スペースの確保や業務に携わるスタッフの管理・指示は、委託会社が行います。料金はサービス会社によってさまざまですが、「定額型」もしくは「従量単価型」を採用しているところが大半です。新卒採用・中途採用で正社員を採用する際に利用するケースが一般的ですが、近年はスポット的に活用する企業も増えています。

人材派遣

「人材派遣」とは、人材派遣会社が企業の依頼内容に適した「人材を派遣」すること。派遣会社は、自社が紹介する人材(派遣社員)に関する面接調整や入社条件の交渉などの対応はするものの、他社採用候補者の対応や求人広告対応などの代行は行いません。また、派遣社員への指揮命令は、派遣先の企業が行います。「繁忙期のみの増員」といったように、一定期間での人員確保に利用されることが大半です。

成功報酬型職業紹介

職業紹介(人材紹介サービス)とは、企業の求人情報を基に、最適な「人材を紹介」するサービスです。コンサルタントが担うのは人材紹介と採用支援までであるため、選考や内定者対応は自社で行う必要があります。なお、成功報酬型では、採用決定後に初めて紹介手数料が発生するため、初期費用はかかりません。

前受金型職業紹介

前受金型の職業紹介は、成功報酬型職業紹介と同様に「人材を紹介」するまでがサービスに含まれます。ただし、前受金として、報酬の一部を求人申し込み時、もしくは採用プロセスが進むごとに支払うことが特徴です。専門技術を持った人材や高位のポジションにある人材を紹介する場合に利用されることが多く、外資系企業を中心に活用されています。

RPOで代行できる業務の範囲とは?

RPOで委託できる業務には大きく「コンサルティング」と「アウトソーシング」の2種類がありますが、対応範囲はサービス会社によって異なります。採用プロセスは多岐にわたるため、自社の業務体制や課題、目的に応じて、委託する範囲を決定することが大切です。ここでは、代表的な業務をご紹介します。

RPOで代行できる業務の範囲とは

採用計画・採用戦略

根本から採用体制を構築することを目的とする場合は、採用計画や採用戦略などのコンサルティング部分を委託することも可能です。

採用計画・採用戦略で委託できる業務

コンサルティング ・採用計画の立案補助
・予算案作成の補助
・人材要件の定義
・採用プロセスの設計
・採用ブランディングの企画立案
・採用市場の調査 など

母集団形成

母集団形成(自社に興味や関心を持っている人材を集めること)に関わる領域では、幅広い業務を委託することができます。

母集団形成で委託できる業務

コンサルティング ・採用手法の選定と企画
・求人広告の企画、運用
・採用ホームページやオウンドメディアの立ち上げ、コンテンツ企画
・各種採用イベントの企画、運営
・エージェント管理
・求人票案のご提案 など
アウトソーシング ・企業説明会やインターンシップへのエントリー対応、リマインド作成
・各種イベントの受付、案内
・採用サイト、SNSの情報更新 など

応募受付・書類選考

RPOでは、「採用候補者への連絡」や「応募書類の管理」などの事務的な作業の他、書類選考に関する業務を依頼することも可能です。

応募受付・書類選考で委託できる業務

コンサルティング ・選考基準のアドバイス
・書類選考プロセスの改善提案 など
アウトソーシング ・応募書類の回収、管理
・選考結果の通知 など

面接選考

「面接選考は自社で担当したい」と考える企業が多いこともあり、RPOでは「日程の調整」「選考結果の通知」など、面接選考の周辺業務に対応しているケースが大半です。

しかし、中には「面接代行」や「合否決定」を委託可能な会社もあります。そのようなケースでは、1次面接のスクリーニングをRPOに委託し、最終面接は自社の役員と人事部門が担当するなど、選考のフェーズによって役割を変えることが多いようです。

面接選考で委託できる業務

コンサルティング ・面接官トレーニング、研修の企画、運営
・面接マニュアルの作成 など
アウトソーシング ・適性検査、面接日程の調整
・面接当日の受付、案内
・適性検査の結果や面接結果の管理
・選考結果の通知 など

内定対応

人材派遣や職業紹介では、人材紹介や採用支援までを業務対象とすることが一般的ですが、RPOでは、面接選考以降に発生する、内定者に関わる業務を委託することもできます。

内定対応で委託できる業務

コンサルティング ・内定辞退者へのヒアリング、個別面談
・内定者研修、説明会の企画、運営
・内定者向けイベントの企画、運営 など
アウトソーシング ・内定書類の送付、回収
・入社前書類の送付、回収 など

RPO(採用代行)が注目されている背景とは?

有効求人倍率の上昇による採用市場の激化を背景に、RPOの導入や導入を検討する企業は年々増えつつあります。ここでは、「コンサルティング」と「アウトソース」の2つの側面から、企業がRPOに注目をする理由について簡単に解説します。

コンサルティング部分の注目理由

とりわけコンサルティング領域においては、自社にノウハウのない職種や領域の、「採用ノウハウの吸収」や、中長期的な採用拡大を見据えた、「抜本的な採用力の向上」を期待し、注目を集めているようです。例えば前者の場合は、「自社のIT強化が急務だが、採用ノウハウがない」「優秀な外国人材の採用を実現するための知見が欲しい」などのケースが当てはまるでしょう。また、後者の場合は「採用目標未達の状態が続いているので、採用フローの見直しや面接官の面接力を改善したい」といったニーズが該当します。

アウトソーシング部分の注目理由

採用における「ノンコア業務」を業務委託し、採用担当者を「コア業務」に集中させることを目的に、アウトソーシング領域への注目が集まっています。こうした背景には、採用人数の増加に伴う人事業務の逼迫(ひっぱく)や、採用力を高めるためのコア業務の磨き込みが必要となっていることなどが挙げられるでしょう。

RPO(採用代行)導入のメリット

RPO(採用代行)導入のメリット・デメリット

RPOを導入することによって得られるメリットを3つ紹介します。

突発的な採用ニーズに応えることができる

RPOは、幅広い業務に対応しています。また、一度受注した経験があれば、RPOの会社にノウハウが蓄積されるので、次の依頼がしやすいというメリットもあります。

「●月に新規事業を始めることが決定した」「大型案件を受注した」などで「突発的な採用ニーズが発生した」「社内の人員だけでは賄えず、早急にリソースを確保したい」といった場合にも、柔軟な対応が可能です。

採用力を高めることができる

RPOを提供しているサービス会社は、採用市場のトレンドを把握し、求職者の動向や適切な採用チャネルを把握することにたけています。採用や集客のノウハウがない企業でも、RPOの知見や手法を利用することで、集客力を高めることができるでしょう。

また、サービス会社とともに採用基準を定めたり面接力を高めたりすることで、自社の採用力の向上も期待できます。

業務工数を削減することができる

採用における「ノンコア業務」を業務委託することで、業務工数を削減できるというメリットもあります。例として、「採用候補者への連絡」や「データ管理」などの事務的な業務をアウトソーシングすれば、人事部門が「採用計画の立案」や「面接の実施」などのコア業務に専念しやすくなるでしょう。

採用のプロセスは時間との勝負でもあるため、人事部門の人手不足を解消し、機会損失を防ぐためにも有効な手段です。

RPO(採用代行)導入の注意点

RPOにはさまざまなメリットがある一方で、懸念される点があることも把握しておきましょう。

委託先とのすり合わせ業務が発生する

RPOに採用業務を委託するとしても、事前の擦り合わせや途中のミーティング設定などの業務は必ず発生します。特に採用計画は、自社の基本方針であり採用候補者を選定する際の基準となるため、自社の意向を事前にしっかりと伝えておくことが重要です。

選考業務を依頼する場合も、自社が求める人材とのミスマッチが起こらないよう、「入念な打ち合わせ」や「定期的なチェック」などの対策が必要になるでしょう。

新たな改善業務が発生することもある

採用業務を進める上で、新たな業務が発生することもあります。業務委託を受けた以上、RPOの担当者は主体的に動いていきますが、より採用を強化するためには、企業担当者の協力を仰いだり、社内の仕組みそのものを改善したりする必要もあるためです。

具体的には、RPOからの「面接官の研修」や「面接フローの見直し」「現状の採用課題解決に向けた施策」などの指摘を受け、社内の体制を整える必要が生じる可能性があります。

RPO(採用代行)導入の費用や料金の相場は?

RPOの活用を検討する際には、費用面も含めて判断することが重要です。RPOを取り扱う企業は数多くあるため、コストパフォーマンスの優れた依頼先を見極めるためにも、費用の仕組みや相場についても理解しておきましょう。

よくある料金パターン

RPOサービスは依頼できる業務の範囲が幅広く、組み合わせのパターンも膨大にあるため、費用の相場を一概にいくらと算出するのは難しい面があります。ただ、基本的な料金体系は、「月額一律料金型」と「業務範囲に応じた従量課金型」2パターンに絞られます。

前者は、作業項目によってあらかじめベンダー側が決めた月額をもとに算出する方法です。依頼する業務量が多い場合はお得になりやすい一方、依頼する業務量が少なければ割高になる可能性もあります。

後者は依頼する業務内容とボリューム、期間に応じて料金を計算する方法であり、依頼内容をカスタマイズできるベンダーが多く用いている料金体系です。基本的には1件の依頼ごとに費用が発生するケースが多く、依頼内容に応じて見積もりを出してもらい、契約するかどうかを検討することとなります。

従量課金型の費用モデルケース

RPOの依頼料金については、ベンダーのホームページなどでいくつかのパターンが掲載されていることも多いため、依頼先を選ぶ際にはチェックすることをおすすめします。ここでは、従量課金型における費用の例をご紹介します。

依頼内容 費用の目安(月額)
新卒・中途採用の媒体管理 5~70万円
選考日程調整 5万円~
DM・スカウト配信 3万円~
発着信対応 5万円
面接官代行 30万円~

求人媒体の管理は、掲載数や管理内容によって大きく費用が変動する業務です。一から採用オウンドメディアを立ち上げる場合などであれば、応相談とされる場合が多いです。

選考日程の調整やDM・スカウト配信業務、発着信対応は、対象となる人数や方式によって費用が変わります。たとえば、DM配信は一斉送信かターゲットを絞るかなどによっても料金が動くことがあるので、細かく条件のすり合わせを行うことが大切です。

面接官の代行は細かな業務範囲や面接官のレベルなどによって料金が異なりますが、多くの場合は初年度に着手金が発生します。いずれにしても、費用はベンダーが担う業務内容やクオリティによっても変わるため、あくまでケースバイケースです。

見積もりを提示してもらった段階で、気になる点があれば質問を投げかけ、疑問を解消しておくことが大切です。

RPO(採用代行)を効果的に活用するためのポイント

RPOを導入する際には、いくつか意識しておきたいポイントがあります。ここでは、RPOを導入する際に目を向けるべきポイントについて解説します。

対応品質と教育システム

RPOを利用する場合、依頼する業務の内容によっては、サービスベンダーが自社の顔として窓口業務を対応する可能性もあります。応募者にとっては、サービスベンダーの担当者がその企業のイメージを決定づける存在となるため、内定率にも関わる重要な部分といえるでしょう。

そのため、RPOの依頼先を見極める際には、まずコミュニケーションや対応などの品質を確かめることが大切です。対応品質については、自社から依頼相談を持ち掛けたときの営業担当の対応などからも判断できます。

社内教育がしっかりと行われていれば、実際に窓口業務を担当するメンバーだけでなく、営業担当の対応品質も高いクオリティが保たれるでしょう。反対に、営業担当の対応に問題がある場合は、依頼を見直すという判断も必要となります。

該当業務の実績とノウハウ

RPOはBtoB向けのサービスであるため、どちらかといえば口コミなどで情報収集するのは難しい面があります。そこで、ホームページなどに掲載されている採用実績や成功事例が重要な情報源となります。

そのうえで、採用業務は幅広いため、サービスベンダーによって得意とする分野が異なる点にも注意が必要です。「新卒採用の実績が豊富」「ピンポイントでのキャリア採用が得意」など、ベンダーの得意分野と自社が依頼したい業務の組み合わせを踏まえて、きちんと相性を見極めることも大切です。

そのためには、過去の採用実績を通じて、自社に近い業種や業態の企業でどのような結果を残しているかを確認しておくとよいでしょう。

情報管理の信頼性

情報管理の信頼性も、RPOベンダーを見極める基本的なポイントです。採用業務では多数の個人情報を取り扱うため、データの管理には細心の注意が求められます。

たとえベンダーの不手際が原因でデータの流出などが起きたとしても、ブランドイメージの低下をはじめとする損害を被るのは、採用を行っている依頼主の企業です。

そのため、RPOベンダーを選ぶ際には、プライバシーマーク取得などの情報管理体制をチェックし、信頼できる相手かどうかを見極めることが大切です。

自社との相性

採用に対する考え方は企業によってバラバラであり、大事にしたいプロセスや採用の基準などは細かくすり合わせることが前提となります。そのうえで、やはりベンダーと自社の基本的な相性も、RPOがきちんと機能するかどうかを決めるポイントといえるでしょう。

まずは、採用に関する考え方や連絡方法、契約書の締結方法といったポイントが自社と合っているかを見極めることが大切です。また、情報共有のルールや使い慣れているツールといった細かい点にも目を向け、情報のすり合わせが行いやすいかどうかをチェックするとよいでしょう。

ただし、ベンダーとの相性を見極めるためには、採用における自社のスタンスを明確にしておかなければなりません。あらかじめRPOを活用する目的や解消したい課題について、社内で明らかにしておくと、依頼先選びがスムーズに行えます。

見積もり内容の明確化

RPOでは幅広い業務を委託するため、見積もり内容が複雑化しやすい傾向があります。あいまいな状態で進めると、思いがけない追加費用が発生する場合もあるので、必ず見積もりの段階で不明瞭な点を解消していくことが大切です。

見積もりの時点での対応も、ベンダーの対応品質を見極める手がかりになるので、気になる点は遠慮をせずに尋ねてみるとよいでしょう。

まとめ

RPOは社内リソースを節約しつつ、高度な採用活動を行える画期的なサービスです。外部の専門的な知識やノウハウによってサポートを受けつつ、自社の従業員をコア業務に専念させられるため、採用活動の効率を大きく向上させることができます。

RPOサービスを取り扱う企業は数多くあるため、まずはRPOのサービス内容と基本的な依頼先選びのポイントをおさえておきましょう。そのうえで、自社がどのような課題を抱えているのかを明らかにし、相性のよい依頼先を見極めることが大切です。

(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)

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