RPO(採用代行)とは?費用や委託できる業務範囲、メリット・デメリットについて解説

2017.10.12(最終更新2022.03.24)
d's JOURNAL編集部
RPO(採用代行)とは?
RPOで代行できる業務の範囲とは?
RPO(採用代行)が注目されている背景とは?
RPO(採用代行)導入のメリット・デメリット
RPO(採用代行)導入の費用や料金の相場は?
RPO(採用代行)導入に当たって注意すべきことは?

今多くの企業が検討・導入しているRPO(採用代行、採用アウトソーシング)サービス。欧米では2008年頃から急速に伸びてスタンダードになっています。ここでは、そのRPOのメリットデメリット、RPOを導入する際のポイントや注意点など、RPO活用法のノウハウを紹介していきます。

RPO(採用代行)とは?

「RPO」とは、Recruitment Process Outsourcingの略で、企業の採用プロセスの全て、もしくは一部を代行するサービスのこと。人事部機能のアウトソーシングサービスを指す「HRO」(Human Resource Outsourcing)の一部です。日本では「採用代行」「採用アウトソーシング」と呼ばれることもあります。

RPO(採用代行)とは

RPOビジネスと人材ビジネス(派遣・紹介)との違いは?

RPOの特徴や、比較されることの多い「人材派遣」「職業紹介事業」との違いを表にまとめました。

RPOと類似するサービスとの違い

契約期間 料金形態 特徴
RPO 長期 / 短期 定額型
もしくは従量単価型
・採用に関わる業務を代行する
・委託する業務やプランにより料金形態が異なる
人材派遣 短期 時給制 ・企業の依頼業務に適した人材を派遣する
・雇用期間が限定されることが一般的
成功報酬型
職業紹介
長期 成功報酬型 ・企業の採用要件を満たした人材の紹介や採用支援を行う
・紹介した人材が入社した際に料金が発生する
前受金型
職業紹介
長期 前受金型 ・企業の採用要件を満たした人材の紹介や採用支援を行う
・事前もしくはプロセスの中途に料金が発生する

それぞれのサービスの特徴を見ていきましょう。

RPO

「RPO」とは、サービス会社が企業から業務委託を受け、「採用に関するプロセスを代行」するサービスのこと。作業スペースの確保や業務に携わるスタッフの管理・指示は、委託会社が行います。料金はサービス会社によってさまざまですが、「定額型」もしくは「従量単価型」を採用しているところが大半です。新卒採用・中途採用で正社員を採用する際に利用するケースが一般的ですが、近年はスポット的に活用する企業も増えています。

人材派遣

「人材派遣」とは、人材派遣会社が企業の依頼内容に適した「人材を派遣」すること。派遣会社は、自社が紹介する人材(派遣社員)に関する面接調整や入社条件の交渉などの対応はするものの、他社採用候補者の対応や求人広告対応などの代行は行いません。また、派遣社員への指揮命令は、派遣先の企業が行います。「繁忙期のみの増員」といったように、一定期間での人員確保に利用されることが大半です。

成功報酬型職業紹介

職業紹介(人材紹介サービス)とは、企業の求人情報を基に、最適な「人材を紹介」するサービスです。コンサルタントが担うのは人材紹介と採用支援までであるため、選考や内定者対応は自社で行う必要があります。なお、成功報酬型では、採用決定後に初めて紹介手数料が発生するため、初期費用はかかりません。

前受金型職業紹介

前受金型の職業紹介は、成功報酬型職業紹介と同様に「人材を紹介」するまでがサービスに含まれます。ただし、前受金として、報酬の一部を求人申し込み時、もしくは採用プロセスが進むごとに支払うことが特徴です。専門技術を持った人材や高位のポジションにある人材を紹介する場合に利用されることが多く、外資系企業を中心に活用されています。

RPOで代行できる業務の範囲とは?

RPOで委託できる業務には大きく「コンサルティング」と「アウトソーシング」の2種類がありますが、対応範囲はサービス会社によって異なります。採用プロセスは多岐にわたるため、自社の業務体制や課題、目的に応じて、委託する範囲を決定することが大切です。ここでは、代表的な業務をご紹介します。

RPOで代行できる業務の範囲とは

採用計画・採用戦略

根本から採用体制を構築することを目的とする場合は、採用計画や採用戦略などのコンサルティング部分を委託することも可能です。

採用計画・採用戦略で委託できる業務

コンサルティング ・採用計画の立案補助
・予算案作成の補助
・人材要件の定義
・採用プロセスの設計
・採用ブランディングの企画立案
・採用市場の調査 など

母集団形成

母集団形成(自社に興味や関心を持っている人材を集めること)に関わる領域では、幅広い業務を委託することができます。

母集団形成で委託できる業務

コンサルティング ・採用手法の選定と企画
・求人広告の企画、運用
・採用ホームページやオウンドメディアの立ち上げ、コンテンツ企画
・各種採用イベントの企画、運営
・エージェント管理
・求人票案のご提案 など
アウトソーシング ・企業説明会やインターンシップへのエントリー対応、リマインド作成
・各種イベントの受付、案内
・採用サイト、SNSの情報更新 など

応募受付・書類選考

RPOでは、「採用候補者への連絡」や「応募書類の管理」などの事務的な作業の他、書類選考に関する業務を依頼することも可能です。

応募受付・書類選考で委託できる業務

コンサルティング ・選考基準のアドバイス
・書類選考プロセスの改善提案 など
アウトソーシング ・応募書類の回収、管理
・選考結果の通知 など

面接選考

「面接選考は自社で担当したい」と考える企業が多いこともあり、RPOでは「日程の調整」「選考結果の通知」など、面接選考の周辺業務に対応しているケースが大半です。

しかし、中には「面接代行」や「合否決定」を委託可能な会社もあります。そのようなケースでは、1次面接のスクリーニングをRPOに委託し、最終面接は自社の役員と人事部門が担当するなど、選考のフェーズによって役割を変えることが多いようです。

面接選考で委託できる業務

コンサルティング ・面接官トレーニング、研修の企画、運営
・面接マニュアルの作成 など
アウトソーシング ・適性検査、面接日程の調整
・面接当日の受付、案内
・適性検査の結果や面接結果の管理
・選考結果の通知 など

内定対応

人材派遣や職業紹介では、人材紹介や採用支援までを業務対象とすることが一般的ですが、RPOでは、面接選考以降に発生する、内定者に関わる業務を委託することもできます。

内定対応で委託できる業務

コンサルティング ・内定辞退者へのヒアリング、個別面談
・内定者研修、説明会の企画、運営
・内定者向けイベントの企画、運営 など
アウトソーシング ・内定書類の送付、回収
・入社前書類の送付、回収 など

RPO(採用代行)が注目されている背景とは?

有効求人倍率の上昇による採用市場の激化を背景に、RPOの導入や導入を検討する企業は年々増えつつあります。ここでは、「コンサルティング」と「アウトソース」の2つの側面から、企業がRPOに注目をする理由について簡単に解説します。

コンサルティング部分の注目理由

とりわけコンサルティング領域においては、自社にノウハウのない職種や領域の、「採用ノウハウの吸収」や、中長期的な採用拡大を見据えた、「抜本的な採用力の向上」を期待し、注目を集めているようです。例えば前者の場合は、「自社のIT強化が急務だが、採用ノウハウがない」「優秀な外国人材の採用を実現するための知見が欲しい」などのケースが当てはまるでしょう。また、後者の場合は「採用目標未達の状態が続いているので、採用フローの見直しや面接官の面接力を改善したい」といったニーズが該当します。

アウトソーシング部分の注目理由

採用における「ノンコア業務」を業務委託し、採用担当者を「コア業務」に集中させることを目的に、アウトソーシング領域への注目が集まっています。こうした背景には、採用人数の増加に伴う人事業務の逼迫(ひっぱく)や、採用力を高めるためのコア業務の磨き込みが必要となっていることなどが挙げられるでしょう。

RPO(採用代行)導入のメリット・デメリット

RPOを導入することにより、企業にはどのような影響があるのでしょうか。メリット、デメリットをそれぞれ見ていきましょう。

RPO(採用代行)導入のメリット・デメリット

メリット

RPOを導入することによって得られるメリットを3つ紹介します。

突発的な採用ニーズに応えることができる

RPOは、幅広い業務に対応しています。また、一度受注した経験があれば、RPOの会社にノウハウが蓄積されるので、次の依頼がしやすいというメリットもあります。「●月に新規事業を始めることが決定した」「大型案件を受注した」などで「突発的な採用ニーズが発生した」「社内の人員だけでは賄えず、早急にリソースを確保したい」といった場合にも、柔軟な対応が可能です。

採用力を高めることができる

RPOを提供しているサービス会社は、採用市場のトレンドを把握し、求職者の動向や適切な採用チャネルを把握することにたけています。採用や集客のノウハウがない企業でも、RPOの知見や手法を利用することで、集客力を高めることができるでしょう。また、サービス会社とともに採用基準を定めたり面接力を高めたりすることで、自社の採用力の向上も期待できます。

業務工数を削減することができる

採用における「ノンコア業務」を業務委託することで、業務工数を削減できるというメリットもあります。例として、「採用候補者への連絡」や「データ管理」などの事務的な業務をアウトソーシングすれば、人事部門が「採用計画の立案」や「面接の実施」などのコア業務に専念しやすくなるでしょう。採用のプロセスは時間との勝負でもあるため、人事部門の人手不足を解消し、機会損失を防ぐためにも有効な手段です。

デメリット

RPOにはさまざまなメリットがある一方で、懸念される点があることも把握しておきましょう。

委託先とのすり合わせ業務が発生する

RPOに採用業務を委託するとしても、事前の擦り合わせや途中のミーティング設定などの業務は必ず発生します。特に採用計画は、自社の基本方針であり採用候補者を選定する際の基準となるため、自社の意向を事前にしっかりと伝えておくことが重要です。選考業務を依頼する場合も、自社が求める人材とのミスマッチが起こらないよう、「入念な打ち合わせ」や「定期的なチェック」などの対策が必要になるでしょう。

新たな改善業務が発生することもある

採用業務を進める上で、新たな業務が発生することもあります。業務委託を受けた以上、RPOの担当者は主体的に動いていきますが、より採用を強化するためには、企業担当者の協力を仰いだり、社内の仕組みそのものを改善したりする必要もあるためです。具体的には、RPOからの「面接官の研修」や「面接フローの見直し」「現状の採用課題解決に向けた施策」などの指摘を受け、社内の体制を整える必要が生じる可能性があります。

RPO(採用代行)導入の費用や料金の相場は?

それでは実際にRPOを導入する場合、どのくらいの費用が必要になるのでしょうか。もちろん、RPOサービスを提供する会社によって考え方はさまざまなので一概には言えません。しかし、大きくは委託する業務の難度や、発生する業務の工数などが費用算出時の根拠やポイントとなるようです。例えば、アウトソーシング部分よりはコンサル部分の方が高度なスキルや知識が求められるため、おのずと費用は高くなる傾向があるでしょう。また、コンサル部分の中でも、スタッフの熟練度に応じて料金が変動する可能性もあるでしょう。なお、スタッフが常駐か、非常駐かによっても価格は変わるため注意が必要です。

RPO(採用代行)導入に当たって注意すべきことは?

採用業務の範囲は明確に分けておく

特にコンサルティング部分から委託する場合、RPOは何でもやってくれるものだと思ってしまいがちです。しかし、RPOは何でも屋ではありません。特に、経営層とのコンセンサスを取ることや現場との要件擦り合わせなど、人事・採用担当者が経営層・現場をマネジメントしていくことが求められます。「ここまでしてくれると思っていた」と期待外れとなってしまわないように、契約締結時にきちんと採用業務において委託先に任せる範囲、自社で担う範囲を明確にしておきましょう。

丸投げではなく、定期的な情報共有を心掛ける

RPOがうまくいくこつは、人事・採用担当者自身が「自分たちで採用する」という自覚を持って進めていくことです。上流部分の設計にせよ、面接調整にせよ、全てを委ね過ぎずに、常に「この施策で問題はないか」「進捗は滞っていないか」などの意識を持って進めることが大切です。定例ミーティングを設けると同時に、情報管理ツールなども用いながら、すぐに情報共有ができる環境を整備しておくとよいでしょう。

まとめ

RPOを活用し採用業務を外部委託することには、「採用力の向上」や「業務工数の削減」などのメリットがあります。一方で、委託先との擦り合わせが必要であること、新たな業務が発生する可能性があることを忘れてはいけません。RPOを導入する際には、段階的な導入やコア業務との切り分けなども視野に入れながら、委託する業務を検討しましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)