経験の浅い人事こそ「ダイレクト・ソーシング」を。マーケットの理解が採用の近道に

S&J株式会社

取締役 管理本部 本部長
中村 佳史

プロフィール
S&J株式会社

管理部
太田 優香

プロフィール

人事経験の浅い2名体制で採用を行うS&J株式会社。情報セキュリティサービスというニッチな領域で事業を展開する同社では、高い専門性を要するポジションの即戦力採用に苦戦していました。しかし昨秋、ダイレクト・ソーシング(ダイレクトリクルーティング)をはじめて導入し、いきなり5名の採用に成功。何が功を奏したのでしょうか。採用を担う管理本部長の中村佳史さんと、管理部の太田優香さんに話を聞きました。

即戦力が欲しいものの、ターゲットからの応募が来ない

即戦力が欲しいものの、ターゲットからの応募が来ない

貴社の主な事業の内容と、採用ターゲットについて教えてください。

中村氏:当社は情報セキュリティソリューションサービスを提供している会社です。主軸事業となるSIEM(Security Information and Event Management)と呼ばれるツールを自社で開発し、お客様企業に導入しています。このツールによって、企業内のさまざまなシステムログの相関分析を行い、セキュリティ事故を未然に防いだり、事故が起きてしまった時にリアルタイムで検知できるようになります。また、このツール開発・導入だけでなく、運用も一気通貫で手掛けているのが当社の特徴の一つ。かなりニッチな領域ですよね。

採用ニーズが高いのは、主に技術系の2職種。「セキュリティコンサルタント」と、「SOC(Security Operation Center)アナリスト」です。セキュリティコンサルタントは、お客様のセキュリティ対策を全体的に支援するポジションで、高い専門性とコンサルティング経験が求められます。もう一つのSOCアナリストは、SIEMの運用を担うポジションで、IT全般のスキルを広く持ち、セキュリティ知識・経験も併せ持っている人材が採用ターゲットです。

ダイレクト・ソーシングを導入される前は、どのように採用してきたのですか。

中村氏:今でこそ50名近くの従業員が在籍していますが、3年前は代表を含め7名の会社でした。この3年間で急激に業容拡大しました。

これまで新卒採用は行っておらず、中途採用のみに注力しています。私も太田もこの会社に入るまでは人事の経験がなく、現在も他のバックオフィス業務と兼務するため、これまでは工数のかからない人材紹介だけを利用してきました。

以前は推薦もある程度上がってきていたのですが、専門性の高い職種がゆえに、徐々に推薦が少なくなりまして…。昨年の4月からは半年間で1名しか推薦を上げてもらえなくなりました。そうなるともう選考どころではないですよね。

そんな状況でしたので、何か手を打たねばと思い、昨年の夏頃に、初めて求人広告を使って募集を試みました。続けて2社を利用してみたのですが、最初に利用したほうは、応募は多数あったものの条件に適う人はほとんどおらず、結局一人も採用には至りませんでした。2社目のほうは、最終的に2名採用に至りましたが、掲載当初は応募がなく、「セキュリティ業務未経験可」と採用条件を緩くし、ようやく応募をいただけるようになりました。最終的には運良くいい人が採用できましたが、効率という意味では満足のいくものではありませんでしたね。

それでダイレクト・ソーシングに興味を持ったわけですね。

中村氏:ただ、いきなりダイレクト・ソーシングにたどり着いたわけではありません。

最初は、欲しい人材との接点がなかなかつくれないので、自社で社員紹介制度をつくろうと思ったのです。セキュリティ分野の専門性など、特殊な採用条件のため、社員のつながりで探したほうが見つかりやすいだろうと。ただ、どうやってつくればいいのか全く知識はありませんでしたので、いろいろ調べていたところ、パーソルキャリアさんで社員紹介制度のセミナーを開催しているという情報に行き当たりました。

そのセミナーの内容は社員紹介制度のノウハウが中心でしたが、セミナーの終盤で、doda ダイレクトの紹介がありました。社員紹介制度にも興味はあったのですが、制度設計から運用に乗せるまで時間も手間もかかるため導入までのハードルは結構高いなと。その点ダイレクト・ソーシングは、申し込んだらすぐに人材のデータベースにアクセスでき、求めるターゲットに直接アプローチできるのがとても魅力的に感じました。

人材紹介でも求人広告でも、なかなか推薦や応募がなかったので、「こちらから先にレジュメを見て、選ぶ側に回りたい」という思いが強かったのです。
これまで取り組んだことのない採用手法でしたが、社長に「今のままでは絶対に即戦力となる人材が採れません」と、その頃覚えていた危機感を強く訴えて、doda ダイレクトの導入を決めました。

ダイレクト・ソーシングで採用条件に適う5名の採用に成功

ダイレクト・ソーシングで採用条件に適う5名の採用に成功

昨年11月にdoda ダイレクトの利用を開始したということですが、実際使ってみてどうでしたか?

中村氏:結果からお話しますと、2カ月の利用期間で5名の採用に成功しました。

セキュリティコンサルタントとSOCアナリストに2職種を募集したのですが、5名の内訳としては、セキュリティコンサルタントが1名、コンサルタントに応募してきて面談を経て営業として採用した方が1名。SOCアナリストが3名という結果で目標採用人数を達成することができました。

「いままでは何だったのだろう」と思うほど、納得のいく採用ができたと思います。求めている人物像ともマッチし、5名採用という結果に、社長も非常に満足していました。

「こちらから先にレジュメを見て、選ぶ側に回りたい」と話されていましたが、人材のデータベースを直接見てみて、どう思われましたか。

中村氏:最初に、セキュリティコンサルタントの採用条件を満たす人がいるかどうかを探してみたところ、「思っていたより少ない」と思いました。

検索すると、最初は結構な数の人がヒットします。でも、レジュメを詳しく見ていくと、例えば事業会社の情報システム部門の方で、セキュリティにも関わったことがあることは間違いないのだけれども、当社が求めるレベルまで深くは経験していない、といったようなことが多くありました。ニッチな業界だからということもあると思います。

また、自社のセキュリティを担う立場ではなく、お客様の会社のセキュリティを“外部から”コンサルティングする経験がある人は非常に少ないということが、多くのレジュメを見てはじめて理解できました。これは私にとって大きな気づきでしたね。

さらに、当社で即戦力となりそうな方の給与水準や、現職の勤め先の傾向がつかめたことも、データベースに直接アクセスすることで得られたメリットです。

成功要因は「マーケット」と「採用ターゲット」の理解

成功要因は「マーケット」と「採用ターゲット」の理解

ダイレクト・ソーシングで飛躍的な成果が出たのは何がポイントだと思いますか。

中村氏:いま話したことと重なるのですが、採用マーケットを把握できたことが大きかったと思います。セキュリティコンサルタントの採用ターゲットがマーケットに少ないことをリアルに理解できたからこそ、一人ひとりの候補者とのコミュニケーションを大切にしなければならないと気づけました

スカウトメールを送る際は、送り先の候補者の経歴をしっかり読み込んだ上で、「あなたのこのご経験を当社は必要としている」など一人一人に表現を変え、熱意を伝えました。「当社が成長していくには○○が足りない。ぜひあなたの○○のスキル・ご経験で補ってほしい」と、あえて課題感を伝えることで、候補者に入社してもらうことへの期待の大きさが伝わるようにしましたね。また経歴だけでなく、希望条件も確認し、その条件に合わせて自社の魅力を伝えられたことも工夫した点の一つです。その意味では、レジュメからその人がどんな良さ・強みを持っているのか、転職に何を求めているのかをしっかりと読み取る力が身についたように思います。

もう一つのポイントは、当社がこれから向かう方向をきちんと説明できるようになったことです。これは人事・採用担当者にとって当たり前のことなのでしょうけれど、われわれは人材採用の経験が浅くて、そういうことが必要ということすら知らなかった。スカウトメールへの反応や面接を通じて、候補者の方に「入社したい」と思っていただくために何を伝えるべきなのかが、自ら積極的に採用に関わったことで初めて理解できました。

これまで人材紹介で採用していた時とはどう違ったのでしょうか。

中村氏:人材紹介の場合、基本的に「待ち」の姿勢になっていました。こちらが求める募集職種とマッチしない方が推薦されることが多かったこともあり、推薦された人に対して「ここが違う」「ここが希望通りでない」という感じで、“減点法”的な見方をしてしまっていました。それは求人広告を出した時も同じです。

ダイレクト・ソーシングの場合は、ゼロから自分たちで能動的に探していかなければなりません。そうすると、「この人はどんな良いものを持っているのだろう?」という感じで、“加点法”的に見るスタンスに自然となりました。そこの違いが大きいですね。

ダイレクト・ソーシングを行う上で難しい点、苦労したことはありましたか。

太田氏:SOCアナリストはコンサルタントとは違い、思っていたよりも対象者が多かったのです。そこからアプローチ対象を絞り込んでいくのが結構大変でしたね。

キーワードを少しずつ変えて検索し直したりして、試行錯誤に労力を使いましたね。できる限り転職意欲の高い方にアプローチできるよう、直近の転職活動状況やマイページへのログイン日なども絞り込み条件に設定しました。その結果、スカウトメールに数多くの返信をいただくことができた点は良かったと思っています。ただ、想像以上に返信が多かったこともあり、面接の日程調整には、だいぶ工数がかかりましたね。

今後の課題としては、どのようなものがありますか。

太田氏:配属先の責任者とコミュニケーションをとって、どういう人材が欲しいのかを、より綿密に要件定義しなければいけないと感じています。

今回ダイレクト・ソーシングを行った時に、当初はそこをおろそかにしてしまったがために、本来ターゲットではない人にスカウトメールを送ってしまい、無駄に面接の工数がかさんでしまった部分もあったので、そこは改善していきたいですね。

中村氏:従来利用していた人材紹介は、採用に至らない限りコストは発生しないので今後も使っていきますが、成果が期待できるメインの採用手法としては「ダイレクト・ソーシングしかない」と考えています。

先日、ダイレクト・ソーシング経由で入社した方から「スカウトメールに感銘を受けて入社しました」と言われたことがあったのですが、非常に嬉しく、自分がやってきたことが報われてよかったと感じました。こうしたやりがいを感じられるのも、ダイレクト・ソーシング ならでは良さかもしれないですね。

【取材後記】

人材採用に通じていないとダイレクト・ソーシングは難しい、使いこなせないと思われるかもしれません。しかし、採用業務の経験が比較的少ない人でも、ダイレクト・ソーシングを行うプロセスを通じて「相手の立場で考える」ことで採用の基本、重要なことを学んでいった様子が分かりました。基本に忠実に、試行錯誤を繰り返すことが「採用力」を養うための一番の近道のようです。

(取材・文/畑邊 康浩、撮影/石山 慎治、編集/岩田 巧)