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セールスフォース・ドットコムが、リファラル採用“約半数”を実現できる理由

PROFILE

株式会社セールスフォース・ドットコム

Recruiting Director(リクルーティング ディレクター)
古瀬

オレゴン大学卒業後、FXアナリストとして活躍。Executive Searchファームに転職し、IT業界に特化した人材に対するキャリアコンサルティングに従事。2013年株式会社セールスフォース・ドットコムへ入社。現在はリクルーティング ディレクターとして中途採用チームをリードしている。

株式会社セールスフォース・ドットコム

Employee Recruiting Manager(エンプロイー リクルーティング マネジャー)
佐田

関西学院大学卒業後、システムエンジニアおよびIT業界向けのエージェント業務を経験。リクルーターとして日本オラクル株式会社で勤務した後、2012年株式会社セールスフォース・ドットコムへ入社。16年を超える中途採用リクルーター経験を活かし、Employee Recruiting Managerとして活躍中。

世界No.1のCRM(顧客管理)プラットフォームを提供し、日本で大きく成長を続けるセールスフォース・ドットコムは、中途入社社員の約半数をリファラル(社員紹介)で採用しています。成長に合わせて拡大する採用活動において、自社のカルチャーにマッチしたハイクラスの人材を、スピーディーかつ大量に発掘しなければならない環境の中、同社のリクルーターはどのように現場の社員を巻き込み、リファラルを促進しているのでしょうか。企業カルチャーや制度・システム、採用チームとしての取り組みといった観点を中心に、リファラル採用約半数を実現している理由について、同社の中途採用をリードするRecruiting  Director(リクルーティング ディレクター)古瀬氏、Employee Recruiting Manager(エンプロイー リクルーティング マネジャー) 佐田氏のお二人にお話を伺いました。

グローバルと連携し、リファラルをプログラム化して推進

グローバルと連携し、リファラルをプログラム化して推進

グローバル、日本法人共に成長を続けている貴社ですが、現状、中途採用に関して抱えている課題などはありますか?

古瀬氏:私たち中途採用チームは、会社のビジネス成長に合わせて四半期毎に定められた採用に関するKPIを追っています。実数値は伏せますが、ビジネスインパクトを与え、会社のカルチャーやバリューに見合った人材をスピーディーかつ大量に発掘し採用していくことが求められています。

佐田氏:当然ですが、採用できれば誰でも良いというわけではありませんし、スピードとボリュームを両立したうえで、当社のカルチャーに合った方を見極めるスクリーニングもしていかなければなりません。課題というよりは苦労している部分ですね。

中途採用チームは何名程度の組織で構成されているのでしょうか?

古瀬氏:私と佐田を含めリクルーター、それらをサポートするコーディネーター、そのほかにマーケティング・イベント担当とソーシング担当など、十数名規模の組織になります。

貴社の中途採用の約半数はリファラルで行われていると伺っていますが、日本法人設立当初からリファラルでの採用が活発だったのでしょうか?

佐田氏:私は2012年入社ですが、2011年当時のデータを見ても中途採用の2、3割は社員紹介だったようです。会社の規模が大きくなったこともあり、プログラム化して回し始めたのはここ3年といったところでしょうか。
リファラルはここ3年

古瀬氏:以前は国や地域別に採用を行っていたのですが、グローバルと連携し始めたのも3年ほど前です。本社にはグローバル全体でリファラルを推進・管理するチームも誕生し、全社単位で国や職種に合わせた戦略を走らせています。

人材紹介サービスやダイレクト・ソーシング手法も併用されているということですが、どのように使い分けているのでしょうか?

古瀬氏:私が入社した2013年から、この5年の間に当社の社員数は大幅に増えています。それだけの人数をダイレクト・ソーシングだけで確保するのは、リクルーターの工数も踏まえるとさすがに難しいと考えています。そういう意味でも、リファラル採用を今後も主軸に、イベントや勉強会、フェア出展など、勢力的にリクルーター候補者に直接当社の魅力を伝えるダイレクト型手法に取り組んでいくつもりです。

佐田氏:実は本格的にダイレクト・ソーシングに舵切りした際に、人材紹介比率をどうしていくのかは検討しました。しかし、やはりその判断は厳しいんです。四半期のビジネスにミートさせるため、計画的に採用を行っていくことを考えると人材紹介サービスも併用していくことが求められますね。リファラルやダイレクト・ソーシングなど、ある程度の期間が必要になる採用を継続的に進めつつ、足りない部分を人材紹介サービスで補完していくというのが全体的な採用方針になるかと思います。

社を挙げて採用に取り組むカルチャーと独自のシステムがリファラルを促進

社を挙げて採用に取り組むカルチャーと独自のシステムがリファラルを促進

5年で5倍の規模に成長したという話をお聞きすると、“中途採用の約半数”というリファラル経由も相当な人数になると思います。貴社がリファラル採用を活発に行うことができている理由について教えてください。

佐田氏:泥臭いことも含め、さまざまな施策に取り組んでいます。紹介をしてくれた社員にインセンティブを出すということもしていますが、それ以上に大きなところで2つの理由があると考えています。

2つの理由とはどんなものでしょうか?

佐田氏:1つにはロイヤリティの高い社員、会社に満足している社員が多いということが挙げられます。当然ですが、会社を知り合いに紹介するということは、その人の人生を変えることになります。自分自身が満足していない会社に知り合いを引き込み、人生を変えようとは思わないですよね。まずはその意識を醸成させるというのが重要です。

古瀬氏:当社では、社員エンゲージメントは最重要として捉えています。創業者兼CEOであるマーク・ベニオフが年度明けに提言し、その目標に沿って全社員が今期の目標を作成、社内SNS(Chatter)上に掲載する「V2MOM」(Vision、Values、Methods、Obstacles、Measures それぞれの頭文字)というものがあり、一人ひとりが会社成長を自分事化しているんです。

佐田氏:そういうこともあり、当社の場合は、知り合いに「ウチの会社いいよ」という話をしてくれる社員が圧倒的に多いですし、セミナーやイベントを開催する際も、特に催促しなくても知り合いに口コミでつたえてくれたり、大々的に自身のSNSで告知をしてくれる社員が多いんです。また、自身の取り組みや心を動かされた活動をSNSにアップして、セールスフォース・ドットコムの文化を発信してくれているのも大きいのではないでしょうか。知り合いに声を掛けたら、その社員のSNSを見ている知り合いは、「あぁ、あの会社ね」「こんな風に過ごすことができる会社なんだ」と、自然にイメージすることができますから。

もう1つは、私たちリクルーターが現場のビジネスリーダーを積極的に巻き込んでいることです。当社では現場のリーダーたちも人を採用しないとビジネスに大きなマイナスが出ることを理解しています。本気で採用を考えているリーダーたちに対して、「みんなの力で組織を作っていこう」という雰囲気を醸成してもらえるようなアプローチをしています。

とくに営業サイドではヘッドカウントと売上が連動しているので、「採用ができない=予算を達成できない」という状況になりかねないので死活問題でもあるんです。そうした意味でもみんな相当本気です。

古瀬氏:私たちにとっては本当にありがたいことですが、マネージャーやリーダーが自主的に独自の採用KPIを設け、動いてくれている部門もあるほどです。やはり会社のトップ、そしてマネージャーやリーダーが、「ビジネスの成長のためには人材が必要である」と認識し、採用へのコミットが非常に高いことは、リファラルに限らずすべての採用手法における成功要因であると思いますね。

「ビジネスの成長のためには人材が必要である」と認識し、採用へのコミットが非常に高い

貴社のカルチャーが後押ししてくれている部分が大きいということですね。その他にシステムや制度面など、リファラルを促進する仕組があったら教えてください。

古瀬氏:リクルーターが使っている採用管理システムと社員紹介システムは連携しているので、社員はリクルーターが使っているシステムと同じユーザーインターフェースを使用して会社に知り合いを紹介できます。また、紹介した社員は知り合いである候補者の選考プロセスやステータスを常に見ることができる仕組みになっているため、今どのようなステージにいるのか瞬時に判断でき、面接前にアドバイスをすることも可能です。紹介して終わり…という一方的なコミュニケーションではなく、最後まできちんと社員自身が責任を持てるプロセスにしています。

佐田氏:プロセスが可視化されているので、リクルーターは手を抜くことができません。何もアップデートしていないと社員から「僕が紹介した人はどうなってるんですか?」と突っ込まれることになりますから。

採用チーム内で進捗状況や候補者情報の共有に関して工夫されていることはありますか?

古瀬氏:先ほどもご紹介した当社の社内コミュニケーションツールであるChatterを使って採用情報のグループを作り、誰がどんな案件を担当しているのかについて、常に全員が認識し、把握できる状況で仕事を進めています。ワンチームで動くことによって、あるポジションで決まらなかった候補者を別のポジションの選考に乗せ、採用するといった動きもできています。

佐田氏:常に全体把握は行うように徹底しています。もちろん個人に課せられるKPI設定はありますが、会社全体として採用ミッションを達成していくために、お互いの進捗共有は重要ですね。

リクルーター自身が会社のブランドを担う意識を持ち、候補者と向き合う

リクルーター自身が会社のブランドを担う意識を持ち、候補者と向き合う

あるポジションで決まらなかった候補者を別のポジションで選考するという話がありましたが、紹介のあった人材を一定期間プールして、ポジションが生まれた時に再度アプローチするといった動きもされているのでしょうか。

古瀬氏:過去に接点を取っていた方も含め、当社のデータベースにプールし、随時情報はアップデートしています。

佐田氏:会社が成長していくと数年前には無かったポジションもたくさん生まれるので、その時ご縁がなくても最適なポジションが出てきた際に、再度こちらからお声がけをすることはあります。逆にどうしても来ていただきたい方に対しては、会社や事業で何らかのアップデートがあった際に、それを切り口に会う機会を作り、3年越し5回目のアプローチでようやくタイミングが合い、応募いただいたというケースもありました。

古瀬氏:「今回は力不足を感じ、不採用という事実にも納得したけれども、数年後にまた機会ができたら挑戦してみよう。」と思って下さる方も結構多いですし、そのための工夫もしています。グローバルの施策で候補者の方から、「面接の感想やリクルーターとの相性に関するフィードバック」をいただいています。貴重な声を参考にし、候補者の方々に対するコミュニケーションやアプローチの仕方を改善し続けるように努めています。つまりは、リクルーターも候補者から評価されており、世界各国のリクルーターは公正な指標で評価される。候補者の方々と接点を持つことでリクルーターも社外の方から評価され、フィードバックを元に改善できる。リクルーターとしてのスキルをアップする環境も整っていると感じます。

リクルーターとしてのスキルをアップする環境

入社される方にも、そうでない方に対しても、きちんとエンゲージメントされているのですね。「リクルーターも会社のブランドを担っている」という意識を持たれているのでしょうか?

古瀬氏:そうですね。現在では求職者がリクルーターや面接官の評価についてダイレクトに書き込めるサイトもありますし、そうした口コミはあっという間に広がるので、私たちの対応ひとつで会社のブランドを傷つけてしまう可能性もあると考えています。

佐田氏:古瀬が言う通り、セールスフォース・ドットコムの看板を背負い、その会社に入りたいと思ってもらう最初のきっかけが私たちである場合が多い。だから、リクルーターとしては最低限、候補者の方々に対して当社の正確な情報を伝える必要があるのですが、それに加えて候補者の方が在籍している業界や会社、現在の仕事内容、状況などをしっかり理解した上でお話をする必要があると思います。こちらが一方的にセールスフォース・ドットコムの話をするだけでは、「この人、わかってないな」と思われてしまいますからね。きちんと候補者の方の現状や置かれている状況を理解した上で、弊社に入ったらどのようなキャリアを歩むことができるのかを提示する。それが当社のリクルーターだと考えています。

当社のリクルーターとは

中途採用チームとして、今後目指すべき目標やビジョンなどがあったら教えてください。

古瀬氏:今後も会社の成長に合わせて採用人数を増やしていくことは間違いありませんが、一方で日本の労働人口は減少していきます。その中で会社の成長に貢献できる質の高い採用を継続していくためには、リクルーター各自のキャパシティやプロダクティビティを向上させていくことが重要ですし、そのための新しいスキームを作る必要があると思っています。また、新しいスキームをきちんと導入した際には、リクルーターの数そのものを増やしていくことも考えています。

豊富なリクルーター経験をお持ちのお二人ですが、これからのリクルーター、人事・採用担当者に求められる資質やスキルはどのようなものであるとお考えでしょうか?

佐田氏:私は「営業力」だと思います。営業力がなければ人材の発掘も、ネゴシエーションも、クロージングもできません。それにプラスしてマーケットに対する理解、さらには数字をベースに考えられる力も必要でしょう。これらスキルはすべて営業に通じるものですよね。現場を巻き込む際にも、営業力は必要になります。当社は会社自体が「ビジネスには人材の採用が重要」という考えはあるものの、主体的に動いていかないとなかなか浸透しない。そういう意味でも、営業力は重要だと思います。

古瀬氏:「トラスト、信用される力」は大事です。候補者の方に対しても、お客さまに対しても、現場のリーダーやマネージャーに対しても信用される力がなければ難しいと思います。先ほど佐田が言っていたように「候補者の方は私たちリクルーターに人生をかける」わけですから、信頼されるかどうかが何よりも求められるのではないでしょうか。

信用される力。リファラルなど、ダイレクトな採用手法においては重要な要素ですよね。

佐田氏:特にカジュアル面談やインフォーマルな接点を持つ際、リクルーターは候補者の方からは、かなり厳しい目で見極められていると考えたほうがいいと思います。ごく稀にですが、候補者の方から他社のリクルーターについてお話いただくこともあるんです。そういう時はピリッとしますよ。
候補者の方からに信用いただくのはもちろんですが、その方のキャリア形成に関わるわけですから、しっかりした情報を持って、相手の立場に立って話すことが大切です。「この人に会った価値があった」と思っていただかないことには次につながりませんから。

【取材後記】

エンゲージメントの強化やコスト削減の観点から多くの企業で導入され始めているリファラル採用ですが、部門を超えて社員を巻き込むことの難しさもあり、運用に苦戦している企業も少なくないと聞きます。今回のお二人の話をお聞きすると、「全社を挙げて採用にコミットする意識が高い」という同社特有のカルチャーがリファラルを成功に導いている大きな要因であることがわかります。加えて、現場マネジメント層への積極的なアプローチ、社員と選考プロセスを共有できる仕組(採用の見える化)、採用チーム内での連携など、リファラル採用の活性化を目指す人事・採用担当者が参考にできるポイントもあったのではないでしょうか。また、お二人自身がリクルーターとして、自社のブランドを背負う意識を持ち、「候補者に信用される存在でなければならない」と考えられている姿勢こそが、同社の採用ブランド力構築につながっていることも感じられました。

(取材・文/佐藤 直己、撮影/石山 慎治、編集/岩田 巧、齋藤 裕美子)

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