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人事こそ“マーケター”であれ。200名の中途採用に挑むエイチームの戦略

PROFILE

株式会社エイチーム

社長室 人材開発グループ
安藤 春香

2011年、株式会社リクルートジョブズに入社。4年にわたって求人媒体の企画営業職で活躍し、HR領域の知見を深める。その後、「新たなビジネスを創出する企業で、培ってきた経験を活かし、採用・育成・教育・組織活性化に取り組みたい」と考え、2015年に株式会社エイチームへ入社し、人材開発グループに所属。現在は中途採用チームの主要メンバーとして活躍中。

転職サイトへの掲載や人材紹介サービスの活用、自社採用ホームページの充実はもちろん、ダイレクト・ソーシング、SNS広告、リファラル採用、リアルイベントなど、「採用手法の多角化」が年々進んでいます。こうしたメディアやツールを積極的にテスト導入し、効果実績をきめ細かく分析して、「潜在(転職未検討)層向け」「顕在(転職検討)層向け」など目的ごとにすみ分けを行い、ユーザーのタッチポイント(接触ポイント)にあわせて複合的に活用する。そんなマーケティング観点に基づいて、様々なメディアやセミナーを使い分ける「クロスメディア戦略」を展開している会社があります。スマホ向けゲーム/アプリスマホゲームや、引越し比較・予約サイト『引越し侍』などのライフスタイルに関するWebサービスやECサイトを展開し、さまざまなビジネス領域に挑戦する総合ITベンチャー企業、株式会社エイチームです。

クロスメディア戦略がスタートした経緯とは?メディアの特徴をどう捉え、効果を出しているのか?新施策導入に不可欠な「社内の理解」をどのように得たのか?人材開発グループの安藤春香氏にお話を伺いました。

ミッションは、わずか5名で200名採用を達成すること

ミッションは、わずか5名で200名採用を達成すること

まずはエイチームの「クロスメディア戦略」がスタートした経緯を伺えますか?

安藤氏:現在、当社は売上高が約346億円(2017年7月期)で、社員数は841名(2018年4月30日現在)なのですが、今期は新卒採用で80-100名、中途採用では純増で200名採用を目指しています。

この採用目標のベースには、売上高1000~2000億円規模への成長を見据えた中長期的な経営戦略があります。私たちはその実現に向けて数年前から年間150~200名規模の採用計画に取り組んできました。ただ、「いかに実現するか」と考えた時に、そもそも従来の採用手法だけでは圧倒的に候補者の母集団が足りていなかったんですね。

高い採用目標の実現には、採用手法のテコ入れが不可欠だったと。

安藤氏:はい。それに中途採用はマネージャーを含めた5名の少数メンバーで取り組んでいることもあり、工数の面でも、採用手法の抜本的な見直しが欠かせない状況でした。そこで2年ほど前にスタートしたのが、「クロスメディア戦略」だったのです。

以前はどのような採用手法をとっていたのでしょうか?

安藤氏:私の入社前の話なのですが、当時は中途採用担当の人事は2名。大手求人広告や人材紹介を活用して、とにかく応募を集めて候補者対応するだけで精いっぱいだったと聞いています。

そこでまず人事サイドの人員強化を行い、スマホゲームの開発などを行う事業部向けの担当者と、WebサービスやEC事業向けの採用を手掛ける担当者とをそれぞれ設けることになって。ちょうどそのタイミングで私がWeb系の採用チームのメイン担当としてジョインしました。

抜本的な改革に向けて、安藤さんはどんなことから始めたのでしょうか?

安藤氏:まずは従来の採用手法の効果検証ですね。たとえば当時、ある大手求人メディアに定期的にエンジニア採用の求人広告を出稿していたのですが、「当社が求める人材層の集客ができていないな」と気が付きました。当社は本社が名古屋なのですが、そのメディアでは中部エリアのIT系人材数がそもそも少なく、そのうえ有効応募は数パーセントしかありませんでした。

採用ニーズとうまくかみ合っていなかった、ということでしょうか?

採用はマーケティング
安藤氏:もちろん、求人を掲載することで人目には触れますから、認知を目的としたブランディング観点ではいいかもしれません。しかし、「採用ブランディング」と「採用マーケティング」では施策がまったく異なります。ブランディングならば、認知向上が成果になりますが、マーケティングの目標はあくまでも応募をゴールとした「人材獲得」です。

であればと、すべての応募チャネルを見直し、「この大手メディアは事務職の募集メインにしよう」「デザイナー、エンジニア、マーケターなど専門職は、この新しいメディアのこの手法を試そう」などと、予算を再配分したのです。このスタンスでまず1年間、採用活動を行った結果、コストダウンを図りながらある程度の成果を出すことができました。

「採用マーケティング」と「採用ブランディング」を両立する

「採用マーケティング」と「採用ブランディング」を両立する

まずは各求人メディアの特徴や効果的な活用方法を掴んでいったわけですね。

安藤氏:1年目は、テストマーケティング的な意味合いも込めて、手あたり次第にメディアを増やしたので工数も莫大にかかり、ものすごく忙しかったです(苦笑)。また、実績が出たとはいえ2年目も同じことを繰り返すだけでは、来期・再来期と進むほど先細りになっていきますし、同じチャネルだけでは「採用できない層がある」といった課題も見えてきました。

2年目は、新たな施策に取り組む必要があると。

安藤氏:そうです。私はもともと営業出身なのですが、「短期的な目標達成に注力しつつ、2~3年先を見据えた種まきを並行して行う」という営業時代の発想が、人事にも必要なんだなと実感したんです。そこで、各メディアの初期接点から入社までのコンバージョン、あるいは応募獲得までのリーチ数といった実績をもとに、「顕在層向けメディア/潜在層向けメディア」に分けてみたんですね。

さらに、エンジニア向け勉強会の定期開催をはじめとする「非転職者層へのブランディング」をスタートさせていきました。リアルイベントを積極的に行ったんですね。これをきっかけに各メディアやチャネルにおいて、「『認知』『獲得』『動機形成』など、どんな目的で用いるのが効果的なのか」という分析が進み、採用広報の「認知」から「入社」に至る全プロセスにおけるセグメンテーションが整理でき、さまざまな採用手法を複合的に活用して効果を最大化する戦略が形になってきたのです。

エイチーム社のクロスメディア戦略(イメージ)

エイチームクロスメディア戦略

短期的な「マーケティング」と、数年後を見据えた「ブランディング」の組み合わせが、現在のクロスメディア戦略のベースとなっているわけですね。ただ、イベント開催などは現場の協力も不可欠だと思いますが、どのように巻き込んでいったのでしょう?

安藤氏:正直に言えば、開始当初は「勉強会って何のためにやるの?ブランディングって応募に直結しないよね?」という意見もありました。現場は忙しいから当然の反応ですよね。そこで「採用に結び付くんだ」という証拠を用意しようと、イベント参加者の方々からいただいたアンケートを分析してみたんです。すると、勉強会にはこの2~3年で延べ1000名以上の方にご参加いただいたのですが、そのうち5~8%が何らかの形でエイチームグループに応募もしくは採用に直結するイベントに参加していた。

この割合は、数字として決して悪くないんですね。というのも、エイチームの採用HPが、募集要項からエントリー完了までのコンバージョンが大体1%程度なんです。この2つのデータを比較すれば、勉強会経由の応募獲得はマーケティング観点で見てもかなり高い数値になりますよね。こうした明確な証拠を持って、「施策として“あり”ですよね。だから協力してほしいんです」と提案していきました。

明確なレポーティングは、現場のやる気も起こすカギにもなる

明確なレポーティングは、現場のやる気も起こすカギにもなる

社内調整にも、分析したデータが効力を発揮したのですね。

安藤氏:実は過去、エンジニアに「これやりたいんだけど」とお願いをした時に、「目標は?」「ゴールは?」「KPIは?」と言われ続けてきた経験があるんです。そのときに、攻めの人事を実現するためには、多角的なデータが重要だなと気づきました。

お話を伺っていると、「攻める」ために新しい施策を積極的に導入している印象を受けます。

安藤氏:最近はもう新サービスの情報を得ることが身についていて、「趣味:プレスリリースのチェック」になっています(笑)。現場のエンジニアから、「安藤さん、このサービス面白そうだよ、知ってる?」と教えてもらうことも増えましたね。その中で、気になったものは必ず問い合わせて話を聞くようにしています。例えば、求人メディアであればユーザー特性やアクティブユーザーの割合、名古屋在住のユーザー人数など、出せるデータはすべて提供してもらいます。

そして工数がひっ迫されないようであれば、まずどんなものでも試してみます。年間1~2割の施策は見直して実施を中止し、その浮いた費用・工数を新しい施策にあてていく形を取っています。

施策ごとに細かなKPIなども設定されているのでしょうか?

安藤氏:いえ、多種多様なチャネルを展開している分、KPIを厳密に設定し過ぎると業務がパンクしてしまうんですよね。ですから、「1掲載ごとの採用目標人数」「イベント全体での集客数」など、全体だけにKPIを置き、あえてざっくりさせています。唯一厳密に追いかけているのは、短期施策として注力している「スカウト」いわゆる、ダイレクト・ソーシングですね。

ダイレクト・ソーシング(ダイレクトリクルーティング)では、どのようなKPIを?

安藤氏:スカウト媒体だけでも常に10以上利用しているのですが、あまりにも多いと現場が配信しきれなくなってくるんですね。とはいえ、現場に「お願いね」と言うだけでは対応してもらえません。そこで私が毎月2時間ほどをかけて、Excelでデータベースを作成。メディアごと、職種別、月ごとにそれぞれの媒体で何件スカウトを配信して、それが何件開封されて、何件応募に至ったか、そのコンバージョンをすべて「見える化」しています。

このデータを見れば、職種と媒体の相性の良し悪しはもちろん、「このメディアは全体的に返信率が高いから優先的にスカウトを打とう」とか、「イベントと絡めてこのタイミングで一斉配信してみよう」といった実績に応じた戦略も立てやすくなります。こうした指標をもとに現場と相談をして、スカウトを打つ優先順位、内容、タイミングの出し分けをコントロールしているんです。

安藤さんは、もともと分析やデータ整理がお好きなんですか?

安藤氏:いえ、むしろ今でも「数字に弱い」と周囲からは言われています(苦笑)。でも、明確なレポートがあれば現場もやる気が起こる、きっと動いてくれると思ったんですよね。私たちは採用マーケターであると同時に、コーポレート部門ですから。現場が求めていることを捉え、示し、後ろから後押しをする…。常に現場ファーストで「何が必要か」を考えています。

少しずつ、協力者も出てきて効果も出てきたかなと思っていますが、潜在層に向けたブランド認知は活動量がまだまだ少ない。いかに全社的に巻き込んでいくかは課題ですね。事業戦略に貢献する人事の実践には、「私がやりたい」「会社がやるべきだ」ではなく、「みんながやりたい」という状態にならなければ動かないと思いますので、コミュニケーションを重ねて全体最適を目指したいですね。
安藤氏

【まとめ】

当初は社内の理解を得にくかったという「エンジニア向け勉強会」だが、現在企画立案などはすべて現場のエンジニアが主導しているという。安藤氏は、「データの有効活用や採用戦略が、メンバーが採用に対して自走する雰囲気づくりにも役立ち、人事は現場担当者と候補者様の接点を最大化することに全力投資できています」と語る。人事がマーケター的アクションを起こすことは、自社に最適な採用戦略の企画・立案以外にもさまざまな可能性を秘めているのだ。
(取材・文/太田 将吾、撮影/石山 慎治、編集/齋藤 裕美子)

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