例文あり◆未経験者だって2週間あれば内定承諾。返信率が上がるメスライオン流スカウトメール術

株式会社ネオキャリア

人事戦略本部 代表直属特命採用責任者
宇田川奈津紀

プロフィール

「狙った候補者は絶対に逃さない――」。驚異の返信率を誇るスカウトメールで、次々に採用成功を実現している「メスライオン」こと株式会社ネオキャリアの宇田川奈津紀氏。この夏、6カ月で600名の人事が受講した大人気セミナー「スカウトメールHOW TOパワーアップ講座」が復活。メスライオン流の採用ノウハウが詰まったセミナーの内容をレポートします。

※この記事内容は、dodaが主催したセミナーより抜粋・要約してお送りいたします。登壇者の情報は、セミナー開催当時のものになります。

スカウトメールで採用を成功させるための体制準備(採用戦闘態勢の準備)

スカウトメールで採用を成功させるための体制準備(採用戦闘態勢の準備)

こんにちは。メスライオンの宇田川奈津紀です。2018年4月に総合人材サービスを展開する株式会社ネオキャリアに転職いたしました。入社後すぐに取りかかったのは、32事業部の全案件を把握すること。現場ヒアリングに約2カ月もの時間がかかりましたが、200件以上の求人に対してその採用戦術が適正でどの求人をダイレクト・ソーシングで動かすのかの戦略を立て実施しています。
人事の方の中には、「ダイレクト・ソーシング(スカウトメール)は工数がかかる」「経験ない職種はスカウトメールなんて打てない」「採用だけをやっているわけではないので工数をできるだけ省きたい」と思っている方もいらっしゃると思います。でも大丈夫ですよ。経験の浅い人事スタッフでも、2週間で内定承諾を出した実績もあります。その極意を一つずつ伝授していきたいと思います。

まず、スカウトメールで採用成功を目指すなら事前準備が不可欠です。メスライオンがお勧めするスカウトメールの事前準備は1.会社の魅力理解2.現場ヒアリング3.採用戦術の見極め4. スカウト権限の委譲 になります。

①会社の魅力理解

「会社の魅力は充分に理解している」と思っている人事の方もいらっしゃると思いますが、会社の概要はわかっていても「求職者にとっての魅力」となると、わかっているようでわかっていないもの。面接で沿革は説明できるけれど、経営者のビジョンや今後の事業展望、競合との違いなどについて話すのが苦手な方が多いのがその証拠です。「経営者のビジョン」を通して貴社でならどんな未来を描けるのかを考え、競合他社との比較から「事業内容の理解」を深めること。そして「自身が入社した理由」を思い返してみてください。ここから見落としていた会社の魅力が見えてきます。

②現場ヒアリング

次の「現場ヒアリング」ですが、皆様は現場責任者と膝と膝を突き合わせて打ち合わせを行っていますか?採用要件が書かれたExcelをもとに採用活動を行っても、採用成功は望めません。「Java経験3年以上とありますが、どんな経験を求めているのか」「なぜ30代じゃないとだめなのか」など、自分自身がイメージできる様ピンポイントのターゲット層を聞き出してください。また、競合との違いも現場責任者にヒアリングしましょう。こちらが理解するまでミーティングを重ねることで、現場との信頼関係を築くことに繋がります。条件緩和などの代替案交渉を行えるほどの発言力、スクリーニング権限を得ることができれば、自ずと決定率は高まります。

③採用戦術の見極め

そして「採用戦術の見極め」とは、案件の優先度と難易度(市場感・マーケット感)を踏まえて採用戦術を組み立てていくことです。優先度は経営陣や現場責任者へ確認。難易度がわからなければ、人材サービス会社などへヒアリングしましょう。その上で人材紹介、求人広告(求人媒体)、転職フェア、ダイレクト・ソーシング(スカウトメール)、リファラル(社員紹介)など5つの採用戦術の中から、最も案件に適している手法を選ぶことが大切です。

この時、求人に対して最低2つの戦術を立てそれをいつ実施するのかを私は決定しております。

例えば弊社の場合、

・エンジニア責任者はスキル要件が高く人材紹介サービスでもなかなか推薦に上がってこないため、自分でスキル要件を確認できるダイレクト・ソーシングをメイン。人材紹介サービスは2番目の戦術に。
・営業職は世の中の求人の中で最も多く採用している職種であるため、広く候補者に認知してもらう活動が必須。多くのメディアやツールを駆使する必要がある。

人事・採用責任者は、各種採用ツールを総合的・効果的に運用=ディレクションを行う立場になります。皆様も一度、その案件にその戦術は本当に合っているのか疑ってみてください。

④スカウト権限の委譲

最後にお伝えしたいのが「スカウト権限の委譲」について。なかには「経験したことのない職種のスカウトはできない」と思っている方もいるのではないでしょうか。実際に、人事が良いと思っても現場ではイマイチの評価となることも少なくありませんが、現場サイドとしっかりすり合わせができていればこうした認識のズレは生じません。
メスライオン流のすり合わせ手法は、まずは現場からヒアリングした内容を元に人材サービスの人材データベースを抽出してみる。そして、人事採用側でピンポイント人材には“◎”を、会いたい人材には“○”を、要件に合っているのかよくわからない場合は“△”を、要件に一致していない場合は“☓”と、4つの評価を行い、その内容を現場責任者に見てもらいます。もし求めるスキルに差異があれば、「なぜこの方は☓で、この方は◎なのか」をしっかり現場からヒアリングし、職務の理解を深めます。私はこれを繰り返し「レジュメのピックアップはもう君に任せれば大丈夫だよね」という状態まで持っていくことで、現場責任者からスカウトの権限をもらうことに成功しています。

こうすれば、面接確約のスカウトメールでも自身で判断をして送ることが可能になります。

未経験でも2週間で2名内定承諾。返信率を上げる効果的な方法

スカウトメール配信の工数ではなく、内定までの工数と考える

「スカウトメールで採用できない」とおっしゃっている皆様、もしかして、既存で設定されているテンプレ-ト上のスカウトメール文面を引用して一斉に配信していませんか。私も昔はテンプレを活用していました。だって送信作業は50名に対して5分くらいで終わりますからね。でも、結果返信は1件もありませんでした。
スカウトメールは、転職のタイミングに目に触れるかどうかなのでこれを毎日繰り返していたらいつかは採用できるのかもしれませんが、今以上に効果を上げるには何かを変えなくてはなりません。何を変えるのか…もうスカウト文を変えるしか私には思いつかなかったです。
スカウトメール配信の工数ではなく、内定までの工数と考える

私もスカウトを始めたばかりの頃、文面フルカスタマイズに所要時間は4時間以上かかりましたが返信率は10%以上。スカウト未経験の人事スタッフでも、スカウトメール総合計数100通(20通/日)を5日間に渡って配信し、返信率12%、内定率17%を実現。たった2週間で内定承諾を2名獲得することに成功しています。テンプレに比べて工数はかかりますが、その効果は歴然です。

スカウトメールの対応は午前中に行うこと

私としては、フルカスタマイズしない理由が見つかりません。とはいえ、スカウトだけをやっているわけではないので、いかに効率を上げるかは重要課題。メスライオン流のスカウト効率UP術は、データベース抽出とスカウト文面作成は午前中に行います。なぜ午前中なのか?と思う方もいるかと思いますが私は、過去の面接来社率から午前中の来社率を計ってみたんです。午前中は、リスケもしくは来社無しが多かったんです。ですからなるべく午後以降の面接を設定する様にしています。素敵な事に午前中にスカウトを送ってみたらお昼に返信がきたなんてことも度々あるんです。あとは、そもそも、私一人で全ての求人を採用完結させることは難しいです。スカウトで全てを採用しようなんて思わなくていいんです。急いでいる案件は紹介会社と手分けしつつ、メンバーを育てることにも注力しています。急募案件でしたので私とメンバーは1日20通のスカウトを実施しましたがこれ毎日やっていたら苦しくなっちゃいますよ。こう考えてみてください。1日5通打ったら月100通ですよね。100人にアプローチできたら状況は変わってきます。もちろん、フルカスタマイズだったら、ですよ。

メスライオンの極意!「スカウトメール」例文公開

メスライオンの極意!「スカウトメール」例文公開
スカウトメールを書くにあたって会社の評判を下げてしまったり、相手を傷付けてしまったりする様な内容でなければ自由に書いて良いのではないかと思います。決められたフォーマットにそう必要なんてないと思います。それよりも大切なのは、読み手の気持ちになること。たとえば、「我が社は創業○○年で……」なんて、本当に求職者が欲しい情報なのでしょうか? こうした会社案内は求人原稿や求人票に書けばいいことです。会社のホームページを覗けば書いてあるかもしれませんよね。スカウトメールを書くのに必要な公式は「インスパイア」×「オリジナリティ」×「プライオリティ」。この3つの要素を取り入れ読み手にインパクトを与えることができれば、その分だけ返信率は上がります。
3つの要素
「インスパイア」は、私の場合は、大好きなアーティストや文豪からヒントを得ます。「アーティストの素敵な歌詞に心が震えたこの感覚を、スカウトメールにしたためるならどのような表現が良いかな…」というイメージです。「オリジナリティ」はフルカスタマイズということももちろんですが、自社ならでは、を加えるということ。最後の「プライオリティ」は「あなたでなければならない」理由を盛り込むということです。

ではここで、第二新卒者に対してどのようなスカウトメールを送るのか、実例を見てみましょう。

導入は「相手に語りかけるように」が鉄則

<例文1>
○○○様

はじめまして。
私、ネオキャリア 人事採用責任者の宇田川 奈津紀と申します。
この度、doda ダイレクト上にある○○○様のレジュメを拝見し
あなたの自己PRを何度も読ませていただきました。
是非とも一度お会いしたいと思いスカウトメールをお送りしました。

なぜ私が、○○○様にお会いしたいと思ったのか、
それは○○○様の【▲▲▲▲のご経験】でございます。

まず、スカウトを送る相手に語りかけるためにもターゲットの名前やIDは必ず入れましょう。人事・採用担当者の名前で送るのではなく読み手に「男性なのか女性なのか」、「どんな人からオファーが届いているのか」をイメージ持たせるために、必ずフルネームを記載します。
そしてスカウトで最も大切なのが【▲▲▲▲のご経験】というところ。レジュメに記載されている職務内容や自己PRを通して、この人に会いたいと思った理由を書くことです。とは言っても難しく、長く書く必要はありません。レジュメをしっかり読んでいるということが伝わればOKです。この場合、上から7行目で読み手に向けた文章を入れているので、(パソコン/スマートフォンに関わらず)スクロールしなくてもフルカスタマイズだと伝わることもポイントの1つ。これによりプライオリティを高めつつ、ここから相手の心を少しずつ掴み始めていきます。

相手の気持ちを踏まえた「おもてなし」を

<例文2>
今の○○○様が、理想と現実で苦しんでいる事は何でしょうか?
また、今後どの様なキャリアビジョンをお考えでしょうか?
転職するにあたり○○○様が最も大切にしている事をおうかがい
したいと思っております。その上で、弊社で実現可能かどうかお話を
させていただきたいと思っております。

私は、○○○様と是非ともお会いしたいと思っております。
こちらからお招きしておりますので志望動機は一切不要です。
○○○様のビジョンが弊社にあるかどうか見に来てください。

ここでのポイントは、疑問文で投げかけるということ。先ほども「語りかけるように」とお伝えしましたが、心理学的にも、疑問文には答えなければいけない気持ちになってしまうと言われています。「読み手が今何を考えているのか、何に悩んでいるのか(現在について)そして、今後どのようなことを目指していくのか(未来について)」といったことを、疑問形式で投げかけることで、読み手自身が「自分はどういうことを考えているのか」と、改めて転職を考えるきっかけにもなります。ですから、現在から未来の話に耳を傾ける姿勢を文章で表しましょう。そして最後の締めでは、面接・面談のハードルを下げてください。まずは、お会いしてあなたと話したいと伝えることが大事だと考えています。

もてなし感は大事。でも最後は必ず「自分で決めてもらう」こと

スカウトメールは「まず会っみよう」と思ってもらうことが何よりも重要です。ですから、まずは自社について興味を持ってもらうことが大事になるため、“志望動機は一切不要”と記載しました。しかし順調に選考に進むことになり、いざ社長面接で志望動機を聞かれた際、「呼ばれたから来ただけです」などと言われたら困ってしまいますよね。ですから初回の面談終わりに、この先の選考に進むか辞退するかを、求職者本人に決断していただきましょう。これで「お招き感」は取り除けますし、「ここからはちゃんと選考ですよ」と区切ることが大切です。「じゃあ、志望意欲の醸成はどのように行えばよいのか」と困る方もいるかもしれませんね。もし選考に進むことになれば、私(人事・採用担当者)がリクルーターとしての役割も担い、応募者と一緒になって志望動機を探していけばいいんです。とは言え、私は応募者に志望動機の答えを教えている訳ではありません。応募者のやりたい事とは何なのかをヒアリングし「ウチの会社ならこんな事にチャレンジができますよ。でもこの部分は実績を出さないと厳しいすね。それでもチャレンジしてみますか?」と一緒になってやりたい事を見つけているんです。それが会社と応募者の最高のご縁を結ぶ形だと思っています。

【まとめ】

今回のセミナーで印象に残ったのは、採用は恋愛と一緒だという宇田川氏の言葉。膨大なDBの中からたった一人に向けてメッセージを送り、自分(自社)に興味を持ってもらうというのはまさに恋愛そのものだと感じました。過熱していく転職市場において、攻めの採用手法としてダイレクト・ソーシングを取り入れる企業が増えている今、求職者たちが受け取るスカウトメールの数も多くなるばかり。その中でプライオリティを高めるためには、事前準備、そして文面をフルカスタマイズすることが採用成功の近道であると改めて気付かされました。工数削減のためテンプレを使用してしまいがちですが、結果重視なら断然フルカスタマイズを選ぶべきです。ぜひ多くの人事の方に、メスライオン流テクニックを実践してみていただきたいと思っています。
まとめ
(取材・文/佐々木 智晴、撮影/加藤 武俊、編集/齋藤 裕美子)