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有識者が語る「テレワーク」とは。知っておきたいメリット・デメリットと実態-働き方改革に向けて

PROFILE

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社

ワークスイッチ事業部 事業推進部 ゼネラルマネージャー
メディア Work Switch編集長
総務省テレワークマネージャー
成瀬 岳人

業務コンサルタントとして複数プロジェクトに従事。その後、ワークスタイルコンサルティングサービスを立ち上げ、複数社の労働時間改善やテレワーク導入、働き方改革関連公共事業の企画・運営に注力する。現在は『Work Switch』の編集長や、働き方改革エバンジェリストとしての顔も持つ。

少子高齢化を背景に労働力不足が深刻化する中、労働力確保・生産性向上が国を挙げて叫ばれています。2018年6月には「働き方改革関連法案」が参議院を通過し、ますます労働力確保と生産性向上への取り組みは本格化。このような中、女性や地方人材の活用を目的に、テレワークが推進されるようになりました。合わせて、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会での交通機関の混雑緩和の目的でもテレワークが注目されています。ここでは、テレワークを検討する際に抑えておきたいメリット・デメリット、および現状のテレワークの実態についてご紹介します。

テレワークとは?導入背景と目的-仕事に最適な場所・空間を自分で選択できる働き方

テレワークとは? リモートワークとの違いは?

テレワークとは「Tele=離れたところで」と「Work=働くこと」が語源となる造語です。“テレ”とあることから電話を使った仕事と誤解されることもありますが、電話とはあまり関係ありません。では、何を指すかというと、国内では、“ICT(情報通信技術)を活用し、場所や時間を有効に活用できる柔軟な働き方(日本テレワーク協会より)”と定義づけられています。簡単には『仕事に最適な場所・空間を自分で選択できる働き方」と言うことができるでしょう。また、これもよく誤解されるのですが、テレワーク=在宅勤務とは限りません。「在宅勤務」だけに限らず、このほかに、オフィスの外、例えば喫茶店などを利用する「モバイルワーク」、このごろ見かけることも多い「サテライトオフィス勤務(勤務先以外のオフィススペースでパソコンなどを利用した働き方)」もテレワークに含みます。
テレワークとは
「テレワーク」と同様に、「リモートワーク」という用語もあります。リモートワークとは、英語で「remote work」と表記され、「remote=遠隔(遠い)」「work=働く」が語源となって誕生した造語になります。テレワークと意味はほとんど同じですが、リモートワークは、『離れた場所にいる人同士が、リアルタイムで一緒に仕事ができる働き方』という、チームワークを踏まえた意味で使われるケースが多いようです。

テレワーク導入の背景は、「労働人口の減少」

こうしたテレワークの導入が活発に議論されることになった背景には、人口減少すなわち労働人口減少の問題があります。
売り手市場となり、企業が人材を確保するのが困難何らかの事情で毎日出勤ができなくなった場合、退職を選択せざるをえない方も多かったのではないでしょうか。しかし、「与えられたミッションを遂行してくれるなら勤務場所、勤務時間や日数は問わない」という考えが普及し、その一環として、テレワークの導入検討が増えてきたと言えるでしょう。
働き方改革
加えて、「働く場所にとらわれない」という企業制度を打ち出すことで、採用面でも強みを発揮し、通勤に何らかの制約のある人材も採用に踏み切れるようになるのです。つまり、離職防止や新たな労働力の活用という観点で、労働参加率の向上につながります。
また、テレワークを語る際、非常に重要な観点が生産性の向上です。労働人口が減るので、一人あたりにこれまで以上に高いパフォーマンスが求められます。テレワークはどこでもいつでも仕事ができるので、より時間を有効に使えるようになります。と同時に、テクノロジーを活用することで業務の高速化が図られるというわけです。

また、東京都の場合、2020年にオリンピックに向けた働きかけがあるでしょう。企業のテレワーク普及により、通勤混雑を緩和したいという狙いもあります。

テレワークの普及率とその実態。テレワークに適した職種とは?

テレワークは現在までに、全国の企業のうち約1割が導入していると言われています。テレワークに適している職種・適していない職種についてですが、究極的にはどの業界・職種でも導入可能と考えています。しかし、現段階として、企画部門や営業・コンサルタント、クリエイター・エンジニアなどの「パソコン一台あれば完結できる仕事」で用いられることが多いようです。当たり前のことですが、その場に人がいなくては成立しない仕事、例えば、販売や配送ドライバー、旅行添乗員などのサービス業においては、導入が難しい側面があります。

テレワークの導入。企業にとってのデメリットとは?

テレワーク導入のデメリット①:ICTの環境整備

まずテレワークはICTを活用することが前提になっていますので、ICT環境を整備することが必須になります。パソコンは一定の性能が必要になりますし、セキュリティ対策をした上でテレワークをする場合、リモートアクセス環境とネットワーク環境を整えることも重要です。並行して考えなくてはならないのが「情報漏洩リスク」です。パソコンに覗き見防止フィルターを取り付ける、ネットワークや端末を制御・管理するなどの対策が必要になります。もちろん、個人のセキュリティ意識の醸成も必要になってくるでしょう。ただ、ICT環境については、今は無料で使えるアプリケーションなどがかなりあります。例えば、チャットツールなどは低コストで利便性の高いものがサービスとして増えています。そのため、初期費用は想像以上におさえられ、ICT環境がまったくない、という状態から始めても、初期の環境構築に数百万、数千万円かかるということにはならないはずです。

テレワーク導入のデメリット②:メンバーマネジメント

一方で、非常に難しいのが「マネジメント」の問題です。マネジメントというと管理職の業務だと考えられることもありますが、この場合は会社の機能としてのマネジメントとお考えください。従来型のピラミッド構造の管理組織は、テレワークにマッチしません。情報のルートが上から下へと定まっていますので、上位者の目の届く範囲に下位者がいたほうが、仕事が進めやすいからです。逆もまたしかりで、下位者にとっても、上位者が側にいることで指示をすぐに仰ぐことができます。しかし、テレワークを導入するのであれば、対面の機会が物理的に減りますので、意識してコミュニケーション機会を増やすことで、「帰属意識・組織一体感」を醸成することが大事になります。全員がそれぞれにミッションを持ち、下から上を支える、という考え方にシフトしなければなりません。マネジメントを切り替え、組織が自律的にそれぞれのミッションに向かって機能していけるかどうかが、テレワークの成否を大きく左右すると言っても過言ではないのです。
同時に、自由に仕事ができる故に、過重労働になるリスクも考えられます。そのため、過重労働にならないようなマネジメント・評価の仕方、客観的な労働実態管理の仕組み化が求められるでしょう。

テレワークの導入。企業にとってのメリットは?

テレワーク導入のメリットは、大きくは生産性向上と人材確保の2点が挙げられます。

テレワーク導入のメリット①:生産性向上につながる

ICTを利活用している企業の方が、利用していない企業に比べて、1.6倍労働生産性が高くなるという結果が出ています(総務省「平成28年度通信利用動向調査」より)。
※「労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)÷従業員数」で計算した場合)

テレワーク導入と1社あたりの労働生産性

テレワーク導入と1社あたりの労働生産性

生産性向上につながる理由として、先ほども少し触れましたが、テクノロジー活用による「働き方の高度化」や、評価の考え方が「成果・実績中心」にシフトすることなどが挙げられます。ただし、一部のスタッフのみテレワーク可とすると、不公平感が生まれたりして、逆に生産性が下がるという事態を招いてしまいます。会社あるいは特定の部門に所属する全員がテレワーク、社を上げて本気で取り組む、とならないと生産性の向上にはなかなか結び付かないのです。テレワークは、制約がある人材にだけ当てはめるのではなく、誰でも必要な人が、必要な時に選択できる働き方にならなければなりません。これはとても重要な観点でしょう。また、実は、生産性の向上は、どちらかと言えば副次的なものです。生産性向上を第一目的にテレワークを導入するのはあまりおススメできません。テレワーク本来の目的である労働参加率向上の意味合いを見失わせる場合もあるためです。

テレワーク導入のメリット②:人材確保につながる

上でも紹介しましたが、テレワークは労働環境を変えざるを得ないという時代背景の中で生まれたものです。この時間、この場所で働いてもらわなければならないという、従来型の企業側の要望を取り払い、個人に寄り添うことで、労働者はより柔軟に企業活動に参加できます。結果、労働参加率を上げることにつながるのです。働き方に柔軟性があることで、定着率も上がり、企業イメージ、ブランドの向上にもつながった例もあります。

テレワーク導入を成功させるには、経営陣の意思が重要

では、テレワーク導入する際に重要なポイントは何なのでしょうか。もちろんシステム導入における工数や費用、メンバーマネジメントするための評価設定などありますが、何よりも重要なのは、経営トップが明確な未来を描き、牽引していくことです。会社や事業がどうなっていくのかどうしていきたいのか。そのためには、従業員にはどのようなワークスタイルでどのように活躍をしてもらわなければならないか。理想の未来を実現するために働き方を変えよう、テレワークを導入しよう…と確固たる意思がなければ話が進みません。未来像があってはじめて、何から着手しなければならないのかが決まるのです。担当者がどんなにシステムを検討しても、全社的に受け入れられることができなければ意味がありません。働き方改革は、経営者が旗を振り、現場目線で進めることが非常に大事だと言えます。
テレワーク導入を成功させるには、経営陣の意思が重要

助成金をうまく活用することで、テレワーク環境を促進

導入に際して、助成金の制度もあります。活用することで費用をおさえられることもあるので、申請検討をしてもよいでしょう。下記に助成金の例を提示します。

Tokyo働き方改革宣言(奨励金・助成金)
女性の活躍推進等職場環境整備助成金多様な勤務形態の実現事業
職場意識改善助成金(テレワークコース)

テレワーク導入事例の紹介

テレワークの導入がうまくいっている企業として、有名なのはサイボウズ株式会社やユニリーバ・ジャパン株式会社などが挙げられるでしょう。サイボウズでは社長が未来を描き、その世界観に共感してきた人たちが入社してきています。
また、弊社パーソルプロセス&テクノロジー株式会社の事例も紹介しましょう。私たち『ワークスイッチコンサルティング』は、「人と組織の成長」を実現するためのワークスタイル変革を支援する事業を行っていますが、自らもテレワークを全社員で実施しています。

・新入社員でも既存社員でもテレワーク勤務
・フルフレックスではあるが、残業時間がゼロであればインセンティブを支給。過剰労働を防ぐ
・コワーキングオフィスを活用
・ビジネスチャットを活用し、遠隔でもすぐに相談・打ち合わせできる環境を実現
・副業・兼業も推奨。自らの学びの機会とする

トップがテレワークということにコミットし、仕事や会議、コミュニケーションのあり方を大きく変えました。当初「全社員に認めるには色々と問題も多いのではないか」という意見もありましたが、先ずやってみる、後から直していく、というスタンスで新しい働き方を捉え、自身がどのように働き方を変えていくか考えていくのが主流です。導入の結果、社員、育児社員、女性管理職がいずれも増加し、意識調査でも9割以上がポジティブな回答。売上・利益率も前年比150%という成果を上げています。

テレワーク導入検討する際に、利用したい「東京テレワーク推進センター」

最後に、テレワークを本格的に導入しようとなったら、最初はスモールスタートで取り組むのがベターです。小さく成功例を作り、順次波及させていくのが好ましいと言えます。何から着手すればいいか分からない、導入がなかなかうまく進まない、という課題をお持ちの企業も多いかと思います。そんな時は、東京都の「ワークスタイル変革コンサルティング」に相談してみるのはいかがでしょうか。実績のあるコンサルタントもおりますので、スムーズな導入に向けた課題整理と解決が可能です。
※対象企業は東京都内に事業所を持つ、従業員999名以下の企業になります。

【まとめ】

テレワークの導入は単に働き方を変えるだけにとどまらず、日々の行動そのものを変えることになると感じました。しかし、ICT環境が整えばテレワークができるというものではありません。労働者の日常も企業のあり方も、従来とは大きく異なってくるでしょう。それだけに、導入には複数の壁や困難にぶつかることも考えられます。そのため、「ワークスタイル変革コンサルティング」など、専門家の助力を仰ぐことは有効になるはずです。
また、大事なのは「何を目的にテレワークを導入するのか?」。自社にとっての目的やメリットでメリットを理解して、導入検討することをおすすめします。
(取材・文/中谷 藤士、編集/齋藤 裕美子)

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