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離職率はほぼゼロ。1年じっくりかけて1名を採用する“ピープルファースト”採用とは

公開日:2019.06.19

PROFILE

株式会社ソニックガーデン

代表取締役社長 倉貫 義人

1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS株式会社(旧 株式会社東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープンソース化を行う。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年にTIS株式会社からのMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを創業。2019年1月に著書『管理ゼロで成果はあがる~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』を出版。

せっかく採用した人材が、カルチャーフィットせずに早期退職してしまう。採用費用をかけず、なるべくスムーズに人材を採用したい。採用数が人事部のコミットメントとして捉えられているー。
組織が成長する上で欠かすことができない採用。その質はもちろん上げたいけれど、毎月の採用数も追い求めることは、決して珍しくはないでしょう。

今回、お話を伺った株式会社ソニックガーデン代表の倉貫さんは、そんな採用のあり方に疑問を唱えるお一人です。数を重視する採用どころか、ソニックガーデンでは、年間にたった一人しか採用しないことも。その上、ソニックガーデンは受託開発を行う会社ながら、管理や上司などが存在しない希少な組織体制で社員数40名を突破しています。

いったいソニックガーデンの採用やマネジメントなどはどのようにして行われているのでしょうか。そして、今を生きる企業が彼らのスタンスから学ぶべきこととは何か。お話しをお伺いしました。

クリエイターの生産性を上げる「管理ゼロ、上司なし」の組織

働き方改革の流れで、勤務時間や組織体系の見直しを図る企業は多いです。ただ「管理ゼロ、上司なし」の体制はそう簡単に実現できるものではないですよね。

倉貫氏:実は僕も、前職ではチームのメンバーを管理してばかりだったんですよ。だから、管理することで生まれる課題が見えたし、解決したいと考えて今のような体制にたどり着きました。

管理することで生まれた課題というと?

クリエイターの生産性を上げる「管理ゼロ、上司なし」の組織

倉貫氏:生産性が高まらないことです。僕自身、振り返ってみるとクリエイティブな職業に就きたいと思ってプログラマーの道を選びました。クリエイターに限らないかもしれませんが、僕らのような職種の人間が“生産性を上げるために必要なこと”ってなんだと思いますか。

労働時間の削減、リソースの再配分など、マネジメントによる負担管理でしょうか。

倉貫氏:いえ、僕らの出した答えは違いました。「クライアントを深く理解し、彼らの想像を超える価値を提供するために必要なことを考えること」、これが大切ではないかと。管理から始めるのではなくてその先にいるクライアントや事業そのものを第一に考えたんです。

そうはいっても、“社員の管理”はどの企業でも当たり前のように行われていますよね。どのように仕組みとして取り入れたのでしょうか。

倉貫氏:もちろん、一気にすべてをガラリと変えることはできないので徐々に管理を減らして今のスタイルに落ち着きました。ソニックガーデンは、前職でつくった社内ベンチャーをスピンアウトして生まれているので、創業時から気心が知れているメンバーと仕事ができていたんですね。現在社員数が40名になりましたが、創業時のままの空気感やカルチャーを維持することに注力しています。

管理しない体制自体は、社会人になるときに誰しもが抱いていたはずの「希望」を忘れないでいてもらうことでつくり上げています。

希望、ですか。

希望

倉貫氏:はい。今、会社員として働く方の中には「どうせルーティーンワークだから」「組織の歯車だから」と、自分の仕事に誇りを持てていないケースもあると思っています。しかし、そんな方でも社会人になったばかりのころには、「能力を発揮したい」「自分で考えて決断したい」と強い意思を持っていたと思うんですよね。その意思を、忘れずに持ち続けてもらうことが、自立した組織の形成には大切です。

そのために意識しているのはどのようなことでしょうか。

倉貫氏:決まり切ったタスクを消化してもらうのではなく、当事者に考えさせることと、決断させることですね。ただし、社員のセルフマネジメントレベルに合わせて、任せる仕事の抽象度を変えています。たとえば、新卒で入社したばかりの社員に「1000万円渡すから売上つくってきて」と言ったところで、良いアウトプットは生まれません。そこで当社では、段階を踏んでセルフマネジメントを身に付けてもらうことで、自分で考えられる人材を育成しているんです。

履歴書を見ない、体験入社をさせる…最長1年かける採用方針「ピープルファースト」

採用においては、他社と比較すると時間をかけて内定を出されている印象を受けます。こだわっているのはどのような点でしょうか。

履歴書を見ない、体験入社をさせる…最長1年かける採用方針「ピープルファースト」

倉貫氏:僕らは良い人がいない限り採用しない、「ピープルファースト」という採用方針を掲げています。まず前提の話ですが、信頼を築く前に採用することは百害あって一利なしだと思っていて。SIerだと、制作案件の発注をもらったけれどリソースが足りないから急いで人員を集めるケースが多いと思うのです。ただ、案件・スケジュールありきで無理に採用してしまうと、経験上、何かしらのトラブルが生まれていました。

一度も会ったことがなければ、納期を守ってくれる人なのかどうかわからないですし、スキル面の不安もある。カルチャーマッチしているかどうかわからず、プロジェクトが円滑に進むのかどうかも見えない…。そんな状態を生み出すかもしれないのに、信頼関係がない人を採用するメリットとはなんだろう、と。

入社は、信頼を築いた上での話なんですね。では、入社に至るまでには、どのようなプロセスを経ているのでしょうか。

倉貫氏:まずはトライアウト(適性検査)として、第一段階の面接やスキルチェックなどを行っています。オンラインツールで面談を実施したり、Web試験を受けていただいたりしています。特徴的なのは、履歴書を見ていないことです。前職も聞かないし、出身校も聞かない。あくまでも、現状のスキルや人柄を重視しているためです。

履歴書を見ていない

その後、お互いに感触が良いと感じた場合は、初めてリアルな場での面談を設けています。そこからは、プロジェクト単位での仕事が始まります。

会社員なら副業先として、フリーランス(離職中)なら一つのクライアントとして、入社前から一緒に働く環境をつくるのですね。

倉貫氏:そうです。一緒に働くことで、面接や雑談の中では見えなかった業務上でのコミュニケーションの取り方やその人が大事にしている考え方などが垣間見えてきます。プロジェクトを進める中で信頼を築いて、その信頼をお互いに実感できたときが入社のタイミングです。1名を採用するのに1年間かけるケースもありますね。

そこまで長い期間を要して、いざ採用をするとき、求職者のどのようなポイントを確認するのでしょうか?

倉貫氏:カルチャーフィットしているかどうかですね。そもそも採用って、企業が一方的に求職者を選ぶことではないと思っています。お互いに選び合ってこそ成立するものですから。だから求職者への情報を多くするために、面接の際にも日頃のコミュニケーションの中でも、会社の方向性や大事にしていることをあけすけに発信しているんです。

なんでも発信

良い悪いではなく、お互いにとってフィットする環境ではないなら、無理に採用する必要はないと思っています。実際に、一緒に仕事をしてみて「何か違う」とお互いに感じる場合もありますから。

組織が大きいか小さいかは関係ない。関わる人すべてを幸せにするために

ピープルファースト採用を継続してみて、ミスマッチが減っている実感はあるのでしょうか。

組織が大きいか小さいかは関係ない。関わる人すべてを幸せにするために

倉貫氏:ありますね。入社後の試用期間である1年間のどこかで齟齬を感じて退職したメンバーはいるものの、本採用後に退職したメンバーはいないんですよ。入社前の1年間と試用期間の1年間、計2年間でじっくりと相性を確かめているからこその結果のように思います。

40名の社員が在籍していて、離職率がほぼゼロ。とても真似できることではないようにも感じます。小さな組織のまま成熟していく上でのメリットやデメリットなどもあるのでしょうか。

倉貫氏:メリットやデメリットとして語れることはあまりないですね。あくまでもスタンスの違いだと思います。企業としての成長をまったく考えていないわけではありませんが、それよりも私にとって重要なのは、クライアントの幸せだったり一緒に働くメンバーの働きやすさだったりするわけです。

40名まで増えてきた中で、カルチャーとして育ったと感じるような文化もありますか。

倉貫氏:ありますね。たとえば、先日とあるメンバーがミスをしたときに、一緒に改善方法を考えていたんです。すると「ソニックガーデンのメンバーって、ミスを責めないですよね」と言われて。「責めないことが文化なのですかね」と、彼は続けました。でも、本当は違うのです。

責めないことが文化なのではなく、責めることが組織にとってのメリットなのかどうか考える人が多い

責めないことが文化なのではなく、責めることが組織にとってのメリットなのかどうか考える人が多いだけ。責めたところでそれが改善につながらなかったら意味がないですよね。本質が何かを考えている。つまり、本質を問う人が集まったのが、ソニックガーデンなのだと気が付きました。

弊社のような組織だと、セルフマネジメントの必要性を常に考えなければなりません。ただ「セルフマネジメントができる」って、一人で仕事を円滑に回せるようになることではないと思うんですよね。自分だけではなく、関係者をも含めて円滑に働ける環境をつくることが必要ですから。

そう考えると、組織がどのような目的に向かって走っており、何を達成したいのか、クライアントや社員をどうすれば幸せにできるか。組織の大小に限らず、僕らに関わっているすべての人を幸せにするために、組織の在り方を考えることが、これからも重要なのだろうと感じています。

【取材後記】

短期の売り上げを見越して採用数を増やす、案件のリソース不足を埋めるために人材を急募する…。採用の目的は、企業の置かれている状況によって異なるものでしょう。しかし信頼できる人を見極めて入社してもらい、共に成長することは、企業にとっても求職者にとっても、最善の選択のはずです。

倉貫さんのお話を伺って感じたのは、採用戦略やスタイルは、企業が持つ魂によって成り立つものであるということ。そうして生まれた採用のスタイルすら、もしかしたら企業らしさをつくる要素となり得るのかもしれません。

(取材・文/鈴木 しの、撮影/黒羽 政士、編集/田中 一成(プレスラボ)・齋藤 裕美子)

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