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まずは「知るきっかけ」づくりから―事業成長に欠かせないエンゲージメント経営とは

PROFILE

株式会社スタメン

執行役員 カスタマーサクセス部長 森山 裕平

新卒でブライダル関連企業へ入社し、空港やテーマパークでのプロデュース、コンサルティングなどに携わる。その後2011年に名古屋のIT企業へ転職。WEBメディア事業の立ち上げを経験し、事業責任者として経営企画や新規事業開発などを歴任する。 2018年1月に株式会社スタメン入社。TUNAG導入企業のコンサルティング部隊の責任者として組織課題解決に向けたソリューション構築とコンサルティングを行い、これまでに200社を超える企業のエンゲージメント経営を支援。

エンゲージメント経営って結局なんだろう…。そんな疑問を持たれている方はいませんか?

人事・採用領域ではバズワードとなり、日々飛び交う「エンゲージメント」という言葉。発信者によってその定義は微妙に異なり、目指すゴールもさまざまです。働き方の多様性が増す昨今、個人と企業の結び付き方を見直すべきであることはなんとなくイメージできるものの、どんな姿を目指せばいいのか、具体的にどう取り組めばいいのかが曖昧なまま、動き出せない企業も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、エンゲージメント経営を支援するサービス「TUNAG」(ツナグ)を展開する株式会社スタメンを訪ねました。同社はなぜエンゲージメントを重視しているのか。その背景にある思想とアクションのヒントを、執行役員の森山裕平さんに伺います。

エンゲージメント経営は理念実現のために必要な手段

「そもそもエンゲージメントってなんだろう?」というところからお聞きしたいと思います。御社ではエンゲージメントをどのように定義づけていますか。

エンゲージメント経営は理念実現のために必要な手段

森山氏:これは「TUNAG」の事業における価値観そのものですが、私たちはエンゲージメントを「会社と従業員、および従業員同士の信頼関係」と定義しています。サークル的なワイワイガヤガヤではなく、信頼関係をベースにして、その上に立脚する形で帰属意識や責任感、貢献意欲、成長意欲、心理的安全性などをつくるということ。信頼関係を構築し、その土台の上で、会社が目指すものへの浸透度合いや従業員同士のつながりを強化していく。最終的にその総量で一体感のある強い組織を作っていこうという考え方です。

なぜエンゲージメント経営を重視されているのでしょう?

森山氏:これを築いていかないと、急速に人材を成長させるのが難しいからです。信頼関係に基づいて大きな裁量を与え、任せるからこそ人材は成長します。経営側から見ればチャレンジングかもしれませんが、事業成長のためには欠かせないことだと思っています。僕は、代表の加藤厚史とは前職時代から一緒に働いてきたのですが、信頼関係をもって、大きなチャレンジを与えられる文化の中でサービスを成長させてきました。そのときのポイントがエンゲージメントだったんです。

御社自身は、エンゲージメントを高めるためにどのような工夫をされているのでしょうか。

森山氏:理念に基づいて社内にメッセージを発していくことを常に意識しています。「一貫性がある状態」ですね。僕たちは「一人でも多くの人に、感動を届け、幸せを広める。」という経営理念を掲げています。すべてのメッセージはこの理念から発せられるんです。

たとえば以前東京オフィスを改装したのですが、その際は自分たちで家具を手づくりしました。「スタメンは一人でも多くの人に感動を届けなければいけない。そのためにどんどん成長していく会社であることを実感するために、みんなでオフィスをつくりたい」と発信した。これって、「コストを圧縮するために家具を手づくりしなさい」という指令を出したとしてもやること自体は同じかもしれませんが、理念とのつながりや会社としての一貫性はまったく感じられませんよね。

確かに、そうですね。

森山氏:そうした状況は、僕たちのコンサルティング先の企業でも見られます。よくあるケースとしては「従業員のニーズがあるから」「世の中で流行っているから」という理由で取り入れられている施策が多いことです。しかしそれだと、「その施策は何のためにやっているんだっけ?」と問われても、「そういえばよくわかりません…」となってしまう。いろいろやってはいるんだけど、まとめると一貫性がないということもよくあります。会社として「かくありたい」という理念があり、その実現のために会社成長が必要であり、その手段としてエンゲージメント経営があるということを整理しておくべきだと思います。

「知るきっかけ」が増えれば、具体的な「行動変容」につながる

「TUNAG」のサービス紹介では、「体温の伝わるITコンサルティングサービス」という言葉が印象的でした。

森山氏:僕たちは一般的に言うとHRテクノロジー系のIT企業ということになるのかもしれません。でも、ただ業務効率化ツールを提供するだけではなく、リアルな場面にコンサルタントが関わり、組織を活性化するためならむしろ紙のツールを提案することもあります。エンゲージメントの向上がテクノロジーだけで完結することはあり得ない。リアルとITを行き来しながら醸成していくことが必要だと思っています。たとえば運送業のクライアントなら「トラックに乗せてください」とお願いすることもあるし、飲食チェーンのクライアントなら店舗を訪れ、各店長が大切にしている味へのこだわりを知ることもある。そんな「体温の伝わる」関わり方を大切にしています。

コンサルティングはどのように進めているのですか?

森山氏:まず、ツールの側面としてはTUNAGでは「社内制度」を重視しています。取り組みや福利厚生など、社内横断で実施する制度です。社員個人のタイムラインには自分に必要な制度が上がってきて、実際に制度を使うことで新たなコミュニケーションが生まれる仕組みになっています。

エンゲージメント向上につながる社内制度や施策には、どのようなものがあるのでしょう?

森山氏:社内制度を実施する場合、会社には大なり小なり課題や対処したい問題があるはず。それらが改善された際に組織がどんな姿になっているべきなのか、まずはそのビジョンを設定することから始めると良いと思います。
たとえばコミュニケーションの活性化が課題なのであれば、求められる仕組みは「対面のコミュニケーションが生まれるもの」になりますよね。すると、シャッフルランチや1on1 MTG、部活動、自己紹介リレーなどが考えられます。制度設計段階で目的や利用イメージをしっかり持ち、社員にどのような体験をしてもらうかを想定して設計するのが大切です。

「知るきっかけ」が増えれば、具体的な「行動変容」につながる

また社内制度にかけるパワーは、企画2割・運用8割ぐらいがちょうど良いと思っています。なぜなら、運用の方が企画よりもはるかに難しいから。運用をする際に重要になるのは「可視化」ですね。「可視化」のポイントは2つあります。1つ目は、制度利用そのものを可視化すること。「この制度を使いました!」と、利用の声を共有していくことで、制度をきっかけにコミュニケーションが発生する仕組みにしていくのです。そうすることで、ヒトに対して興味が生まれます。さらに、他のメンバーの制度利用をきっかけに、自分も利用してみようという動機が生まれる。つまりコトに興味を持つようになります。このサイクルが重要です。

2つ目は、利用実績を可視化することです。どの制度がどの部署でどのくらい使われているかをしっかりと把握する。作りっぱなし、やりっぱなしにせず、利用実績のデータを見ながら常に改善していくことが必要ですね。

TUNAGでも、主語が人であることを意識しています。細かい部分ではありますが、「サンクスメッセージがAさんによって贈られました」ではなく「Aさんがサンクスメッセージを贈りました」と表示されるように設計しているんです。Aさんを主語にすることで、他の社員がAさんに興味を持つように意図しています。そうしてAさんの詳しいプロフィールを見にいくことで、理解と共感、行動変容につながっていきます。

「2:6:2」の中間層を重視して、隠れたキーマンを探す

「せっかく制度を設けたのに活用されない」という悩みもよく聞かれますが、実際に使われるようになるものなのでしょうか。

森山氏:そういった悩みは多いですよね。僕たちは「2:6:2の法則」(※)になぞらえてその解決策を伝えています。社内制度やツールでよくあるのは、上位の2割は活用してくれるけど中間の6割には使われないということです。だから僕たちは中間層を見ます。真ん中の人たちが使いやすいものを提供し、上位の2割と合わせて「8割に利用される制度」を目指しているんです。

※集団における組織構造の考え方。2:6:2はそれぞれ、優れた実績を出している上位2割のグループ、平均的である6割のグループ、あまり実績を出していない2割のグループを指す。別名“働きアリの法則”。

 
「2:6:2」の中間層を重視して、隠れたキーマンを探す

どんな組織でも、上の2割には声が大きくて承認欲求の強い人たちが集まっています。でもエンゲージメントを高めるのは中間層なんですよ。6割の中には、組織の潤滑油となるハブ役の人が意外と多いんです。目立った主張はしないけど陰でコミュニケーションを取り、どこかの部署と部署をつなぎ合わせるハブになっていることもあります。実際にTUNAGを運用しながら、「制度は使っていないけどよくコメントしている人がいる」といった観点で、隠れたキーマンを探すようにしています。

キーマンが隠れたままで、中間層に制度が使われない状態の企業は、コミュニケーションに課題があるということでしょうか。

森山氏:まったく会話がない企業もあれば、部署をまたいでしまうと会話がないという企業もあります。いろいろなケースがありますが、総じて社内コミュニケーションは薄いですね。そして、そうした企業では「効率化」といったキーワードがよく聞かれます。

僕たちが目指すのは「廊下ですれ違ったときに、TUNAGをきっかけにして会話が生まれる」という状態なんです。「この間TUNAGで見たけど、釣りに行ったの?」とか。今の日本では無駄だと言われるようなコミュニケーションかもしれませんが、昔の高度経済成長期には、どんな会社でも当たり前にできていたことだと思うんですよね。オンライン上なら、みんなが集まって自由に会話するきっかけをつくれる。家で例えると家族が無意識に集うリビングのような場所も簡単につくれます。それがTUNAGなんです。

それがTUNAG

クライアント企業のエンゲージメント向上を、定性面や定量面で測る指標はありますか?

森山氏:定性面では制度を使ってもらった感想や、その後の変化についてのヒアリングをよく行っていますね。定量面では、TUNAGへのログイン頻度や社内制度の利用率が重要な指標です。部署ごとに見ると、制度の利用率が高いところは業績も高いという事実も見えてきています。社内制度がよく使われている部署は、能動的に動ける人が多い。そうした部署は必然的に業績も高まっていくということですね。社内制度そのものはエンゲージメント向上のために設計しているので、利用率が高まれば必然的にエンゲージメントは上がっていくはずです。

もう一つ、定量面での変化を測るエンゲージメント診断を行い、サーベイで数値化しているのですが、これはあくまでもコンサルタントやクライアント企業が持つ感覚値の「答え合わせ」として使っています。サーベイを重視し過ぎるのは危険だと思っているので。

それはなぜでしょう?

森山氏:こうした診断には、どうしても忖度が働くじゃないですか。回答する側は「上司はこんな答えを期待しているんだろうなぁ」と考えてしまうものだし、下から上を告発するためのツールとして使われてしまいかねないという負の側面もあります。そもそも、設問に対して「よく当てはまる」「当てはまる」「あまり当てはまらない」「当てはまらない」といった回答の選択肢があったとして、「よく」や「あまり」の基準は人によってバラバラですよね。その状態で点数を付けることへの違和感もあります。だから、僕たちの場合はあくまでも感覚値の答え合わせに使っています。組織は定量と定性で合わせて見ないと、判断を誤ってしまいます。

組織は定量と定性

「孤独で社内に敵ばかり」の人事部門も、自信を持って会社を変えていけるように

コンサルティングに入っていく際には、人事部門の方々からどのような反応がありますか?

森山氏:僕たちはクライアント企業と日々真剣に向き合う仕事をしているので、あえて言葉を選ばずに言わせてもらいますが…人事の方々の中にもエンゲージメント経営の重要性が「わかる人」と「わからない人」がいますね。日本で人事をやっている方の多くは採用や人材育成に注力していて、組織全体の課題を考える仕事をあまり経験できていないのではないでしょうか。

実はスタメンには、代表の加藤をはじめとしてHR専門の人間がいません。TUNAGは経営・事業づくりを経験したメンバーから生まれたサービスなので、HR領域の中でもちょっと考え方が違うのかもしれませんね。

だからこそ僕たちは泥臭く人事・採用担当の方と一緒に動くようにしているんです。企業によっては、「人事・採用担当者は孤独で社内に敵ばかり」という状況のときもあります。せっかく新しいことを提案しても誰も共鳴してくれず、突き返されてしまうとか。でも、そんなふうに動き出す人がいなければ組織は変わりません。当社のコンサルタントはそんな想いで伴走しています。

逆説的な言い方になってしまうかもしれませんが、最終的にはTUNAGがなくても自社の課題を見つけ、変化に向けて動いていかなければいけないのかもしれませんね。

森山氏:そうですね。大切なのは成功体験を積むことだと思います。何か一つでも社内制度を成功させられれば、共鳴してくれる社員も増えますから。そうやって人事部門が自信を持って会社を変えていけるまで伴走し、その上でその会社がTUNAGというサービスを卒業できるなら、僕たちも幸せに感じます。

自信を持って会社を変えていける

【取材後記】

エンゲージメント経営は人材を成長させ、事業を伸ばしていくために欠かせないもの。冒頭にそう言い切っていただくところから始まった森山さんへの取材は、多くの気付きを得る時間となりました。会社の未来へ純粋に目を向けたいけれど、日常ではサーベイの数値に振り回されたり、経営から突然下りてくる方針に右往左往させられたりしてしまう…。そんな悩みを抱える人事・採用担当者の方はまず、社内に「互いを知るきっかけ」があるかどうか、点検してみても良いのでは?

(取材・文/多田 慎介、撮影/黒羽 政士、編集/檜垣 優香(プレスラボ)・齋藤 裕美子)

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